転売業者の荒稼ぎを防ぐYellowHeart、チケットをブロックチェーンで一元管理

YellowHeart(イエローハート)は、人気コンサートのチケットを買おうとしたことのある人の誰もが経験した思われる問題を解決しようとしている。そういう人気チケットは、転売業者(ダフ屋)がかっさらってしまい、非常に高く転売されることが多いのだ。

CEOのJosh Katz(ジョシュ・カッツ)氏によると、彼がYellowHeartを創業したのは彼自身が大の音楽ファンであると同時に、ダフ屋に食い物にされることにうんざりしてきたからだ。同時にまた、彼によると、それはコンサートに行く人たちだけの問題ではない。むしろそれは、ファンとアーティスト両方が、ウィンウィン(Win-Win)の逆のルーズルーズ(Lose-Lose)になっていることだ。ミュージシャンは高く売られたチケットにふさわしい額の利益をシェアできない。

そこでYellowHeartは、ミュージシャンやコンサート会場やそのほかのイベント主催者たちに、チケット転売のルールを作らせる。カッツ氏が望むのは「勇敢なアーティストがチケットを正価より高い値段で売るのはノー!と宣言する」ことだ。しかし彼が予言する現実としては、チケット価格の天井を設定し、転売で得た利益は売った者とアーティストまたは指定したチャリティーと分け合うルールになるだろう。

「チケットがどこで売られようと、そのルール守らなければならない」とカッツ氏は付け加える。なぜ守らざるをえないかというと、チケットの販売はすべてオープンなブロックチェーンの上で行われるからだ。そして「すべてのトランザクションがYellowHeartを経由し、売り上げもすべてYellowHeartを通る」。

計画では、そのようなチケット発行のプラットホームを来年の第2四半期に作る。カッツ氏によると、ユーザーは自分のチケットをYellowHeartのスマートコントラクトを使えるマーケットプレースならどこででも売れる。「でもそんなパートナーができてスマートコントラクトの統合が行われるまでには少々時間がかかるだろう」とカッツ氏は認める。

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カッツ氏によると、ブロックチェーンにはそのほかの利点もある。どのチケットにもユニークな(それ1つしかない)キーが付いていて、それはユーザーの本人性に結びついておりユーザーの仮想ウォレットに所在する。したがってニセモノは作れない。チケット発行のプロセスはエンドツーエンドで完全にデジタルであり、その例外は会場側が切符売り場でチケットをプリントするときぐらいだ。

同氏は音楽業界にいた履歴があり、以前はホテルやレストランなどの顧客のためにオリジナルのプレイリストを作るEl Media Groupを創業した。彼はザ・チェインスモーカーズと一緒にYellowHeartを作り、マネージャーのAdam Alpert(アダム・アルパート)氏はDisruptor Records(ディストラプター・レコーズ)のCEOでもある。

「ザ・チェインスモーカーズとは長年、転売業者の問題を率直に話し合ってきた。今回はうれしいことにYellowHeartがパートナーとなり、アーティストとファンがコントロールを取り戻せるスマートで効果的なソリューションを提供してくれた」とアルパート氏は声明で述べている。

そしてカッツ氏によると、YellowHeartはコンサートに限らず、どんなイベントのチケット管理にも利用できる。彼によるよ「スポーツや劇場などでも便利に使えるはずだ。今回はたまたま創業者が全員音楽業界出身だから、手はじめが音楽になっただけだ」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

海外チケットを手軽に購入可能に、二次流通のチケットストリートがStubHubとサービス開始

音楽ライブやスポーツ観戦など、興行チケットの二次流通サービス「チケットストリート」を運営するチケットストリート。2014年8月にeBay子会社のStubHubとグリーベンチャーズから合計約3億円の資金調達を実施していたが、その際に発表されたStubHubとのサービス連携が始まる。同社は12月10日より、チケットストリート内で海外興行チケットを購入できる二次流通サービス「チケットストリート・海外チケット powered by StubHub!(チケットストリート・海外チケット)」を開始する。

チケットストリート・海外チケットでは、StubHubが取り扱う二次流通チケットのうち、日本から購入可能な全米およびイギリスの5万イベント・10万枚以上のチケットが対象。対応するのは電子チケットのみで、購入後数分でダウンロード可能になるという。一方で紙チケットには対応していない(そもそも国際郵便ではチケットを送れないそうだ)。価格は日本円で本国で購入するのと同価格、決済はクレジットカードに対応する。「日本のチケットを購入するのと同じように簡単に購入できる」(チケットストリート代表取締役会長の西山圭氏)

チケット購入の際は、その座席からの眺望やチケット価格をサイト上で比較できるStubHubの機能「3Dシートマップ」も導入する。こちらは現在海外チケットにのみ提供されている機能だが、今後は国内のスタジアムなどでも利用できるようになる予定だ。

では実際に米国の興行チケットを欲しがる日本人なんてそれほど多いのだろうか? 西山氏に聞いたところ「英語版のStubHubでチケットを購入している日本のユーザーも実はかなり多い。2013年には約1万枚のチケットが売れている」とのことだった。またクロスボーダーで購入されるチケットは、平均価格が他のチケットと比較して大幅に高いのも特徴だ。例えばワールドシリーズで1枚1000ドル、スーパーボウルで1枚3000ドル程度になるという。そんなプレミアチケットこそ、ファンは国をまたいででも手に入れて、現地に見に行きたいのだ。

興行チケットの売上拡大施策は「北風と太陽」

チケットストリートにはもともと別の運営者がいたが、2011年10月にアサップネットワークが買収。アサップネットワークの創業者である西山氏と、同社のスタッフだった現・チケットストリート代表取締役社長の山本翔氏がチケットストリート株式会社を立ち上げてサービスを運営してきた。

西山氏に聞いたところ、チケットストリート社としての初月売上は176万円。これが現在数十倍の売上に成長しているそうだ。「もともと(興行チケットの)マーケットプレイス自体には伸びしろがあると思っていて興味を持っていた。一方でアサップネットワークスでは山本とともにコンテンツ屋をやっていて、『ゲーム以外の日本型コンテンツビジネスはこれ以上伸びない』という共通認識があった。それでコマース、マーケットプレイスをやろうとなった。この市場は大手企業であるほど既存ビジネスとコンフリクトするので、ベンチャー以外は参入できない」(西山氏)

西山氏は成長の背景に「興行市場全体の成長」があると説明する。2013年で約5000億円とも言われる興行市場は現在年率20%程度で拡大中。それにともなってチケットストリートのような二次流通の市場も伸びているのだそうだ。

例えば音楽興行だけを見てみると、2011年に1600億円だった市場は2013年には2300億円にまで成長。かつては6000億円もあった音楽ソフト市場(2013年で2900億円)をまもなく逆転するとも言われている。

この流れを受けて、興行主側もこれまでの「二次流通を制限することで売上を守る」という考えから、「二次流通を認めることで売上を伸ばす」という考えに変わってきているのだそうだ。

西山氏は「まさに北風と太陽」と語るが、日本の興行主はこれまで、本人確認や転売をさせないような仕組みを導入するなど、チケットを購入者にとって不便になるような施策をとってきた。その結果、一般の人々はチケットを買いづらくなり、売上でも苦戦するという悪循環が起こっていた。これに対して、米国など海外では、二次流通を公認のものとし、チケットの抽選についても公平にすることで、チケットの拡販につとめた。二次流通を公認にすることでそのコミッションなども取れるようになるし、チケット獲得のチャンスが公平になることで、結果的に市場も拡大すると判断したのだ。実はすでにワン・ダイレクションなど複数の海外アーティストがチケットの二次流通を公式に認めるという動きもある。

アウトバウンド、インバウンドの需要を取り込み拡大へ

チケットストリートでは今後、海外チケットの国内販売にとどまらず旅行や保険など、各種のアウトバウンド需要を取り込んでサービスを検討していくという。またインバウンド需要の取り込みも狙い、多言語サービスの提供も予定している。

ちなみに西山氏に同社のイグジット戦略を聞いてみたのだけれど、「決めていない」とのことだった。「大事なのは二次流通市場の社会的確立。オークションと同じように扱われるのであればニッチだ。社会的な地位と信頼性の確立を目指したい。同時に二次流通が興行ビジネスのエコシステムに組み込まれる必要がある」(西山氏)。社会的な信頼を考えればIPOも視野に入れるべきだが、エコシステムに組み込まれるということを考えれば、買収も選択肢の1つになるとのことだった。

ではチケットストリートに出資するeBayが買収するということはありえるのだろうか? 西山氏は「あくまで個人的な考え」と前置きした上で、「30億ドルの買収資金があると言っている会社が本気でやるつもりなら、(8月の)ファイナンスのタイミングで買収してもおかしくはない。だが(eBayが)自ら進出するよりも、ローカルのナレッジを尊重したほうが勝算があると考えたのではないか」と語った。確かにeBayはこれまで日本進出に挑戦したが撤退しているし、日本以外の地域でも参入に苦戦したとも聞く。イグジットについては今後の話ではあるが、同社ではまず2年以内をめどに年間流通総額50億円を目指すとしている。


Live Stylesの「tixee」はチケットとメディアの”パッケージ”を再発明する

「ソーシャルチケッティングサービスと言われてきたが、我々はそれだけを目指しているわけではない」——スマートフォン向けのチケット販売サービス「tixee」を提供するLive Styles代表取締役CEOの松田晋之介氏は、自社のサービスについてこう語る。

その理由は同社がアップデートしたばかりのiOSアプリにある。これまで、アプリ上でのライブやイベントのチケットを購入し、アプリ上に表示されたチケットをスワイプして電子的な”もぎり”を実現していたtixeeだが、今回新たにアーティストなどの情報を配信する「フィード」を実装した。

フィードには、ユーザーがフォローしたアーティストやスポット、スポーツチームなどのアカウントに関連するTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeの情報が配信される。各アカウントをタップすると、関連するチケットを直接そこから購入できる。このフィードの導入によって、ユーザーとチケットの接点を増やし、購買を喚起させることをねらう。「『興味のあるチケットを買ってもらう』ということはすでに実現できた。今後は『どれだけチケットを売る力があるか』が課題になってくる」(松田氏)。

松田氏は、今回のリニューアルで意識したものとして「ぴあ」の存在を挙げる。ぴあはもともと映画やコンサート情報誌としてスタートし、そこからチケット販売サービスを展開してきた。松田氏は「チケットとメディアをパッケージしたぴあは、当時のルネッサンスだった」とコメント。tixeeはチケット販売からスタートしたが、今回のフィードの導入を契機としてメディア機能を強化し、スマートフォン時代にに最適なチケットとメディアのパッケージを実現すると語る。

業績やユーザー数については開示していないLive Stylesだが、2013年秋以降は業績も好調だという。これまで年1回、大規模なイベントを単発で開催するクライアントが中心だったが、イベント規模は小さくとも定期開催するというクライアントへの営業を強化したことが奏功していると説明する。クライアントも、音楽プロモーターのほか、美術館や新聞社、テレビ局など拡大してきた。tixeeでのみチケットを販売する数千人規模のイベントもあるという。

同社では今後、ユーザーの属性やフォローするアカウントにあわせて情報を配信することも検討する。


日本のイベント切符販売のスタートアップ、PeatixがシリーズAのラウンドで300万ドル調達―アメリカとシンガポールに進出

東京に本拠を置くオンライン・チケット販売のスタートアップ、Peatixはフィデリティ・ジャパンがリードするシリーズAのラウンドを完了し、300万ドルを調達した。

PeatixはアジアのEventbriteを目指しており、各種イベントの主催者にチケットはんbプラットフォームを提供している。2011年5月のサービスのスタート以来すでに1万件のイベントを処理してきたという。

同社はちょうど1年前に100万ドルのシード資金を調達している。投資家は500 Startups、DG Incubation伊藤忠テクノロジー・ベンチャーズ、SurveyMonkeyのCEO、Dave Goldberg〔FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグの夫〕などだった。

500 Startupsと伊藤忠テクノロジーは今回のシリーズAのラウンドにも参加している。またフィデリティ・ジャパンのDavid MilsteinがPeatixの取締役に就任した。

今回の増資を機に、Peatixは海外への進出を行う。共同ファウンダー、竹村詠美取締役は家族ぐるみでシンガポールに移住するという。また今日からサービスをアメリカにも拡大する。日本、シンガポール、アメリカで社員を採用する計画だ。現在Peatixの社員は日本に20人、シンガポールに3人、ニューヨークに6人いる。

竹村氏はわれわれの取材に対し、来年には3万から5万のイベントを取り扱うべく計画していると語った。

シンガポールにはSisticという現地のチケット販売で圧倒的なシェアを誇る手強いライバルが存在する。Sisticは主要なイベント会場やイベント・プロモーターとの間で独占的な販売だり契約を結んでおり、 The Business Timesによれば、2010年にはシンガポール市場の60%から70%を押さえていたという。

竹村氏は「PeatixはSisticに正面から競争を挑むつもりはない。日本でもアメリカでも既存の支配的なチケット販売プラットフォームが存在する。Peatixは日本でこの2年間、そうした大手チケット販売会社と直接競争することなく成長を続けてくることができた。伝統的なイベントに適した既存のチケット販売ルートに乗りにくい、オンライン登録に適した非伝統的なイベントが膨大に存在するからだ」と述べた。

ここでいう非伝統的なイベントとは、インディーの主催者によって小規模な会場で行われる各種イベント、勉強会、パーティーなどだ。竹村氏によれば、こうしたイベントの数は急速に拡大しているという。

〔日本版〕シリーズA資金調達についてのPeatixのブログ記事はこちら。こちらはTechCrunch Japanによる紹介記事[jp]PeaTiXはクレジットカード課金でチケットを発行できるイベント作成・管理ツール。 

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+