TikTokの未来を知る、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その3)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第1部第2部も併せてチェックしてほしい。

TikTokの次の動きは?

TikTokの未来を知るには、Douyinの機能を見るのが一番いい。クリエイター向けのアプリなので、TikTokは今後クリエイターのマネタイズに注力すると思われる。米国ではまだベータ版だが、今後リリースされる機能は動画内のEC機能。DouyinではAlibabaのTaobaoと連携して動画ショッピングが可能になっている。

米国ではFacebookがShopifyと最近Shopsをローンチ。ByteDanceはこれを見てもしかしたら米国ではローンチ日を早めるかもしれない。最近では寄付用のステッカーをリリースしたが、これで少しずつユーザーにアプリ内で決済することや、クリエイターに投げ銭する行為を慣れさせることを目指している。投げ銭はライブ配信でよく見かけるが、ByteDanceもTikTok内でライブ配信を始めている。

TikTokはインフルエンサーマーケティングの価値を理解しているので、去年あたりからCreator Marketplaceをリリース。

まだベータ版だが、今のところSquareなどが使って自社プロダクトをプロモーションしているらしい。今後はセルフサーブの広告管理ツールを出すらしい。これをリリースすると、ByteDanceは唯一の中国含め全世界の広告セルフサーブプラットフォームとなる。

今後はブランドやクリエイターにAIで作られたコンテンツやエフェクトのレコメンドをするかもしれない。もしくはARフィルターを第三者が開発できるようにオープン化する可能性もある。最終的にはクリエイター向けの動画、音楽、EC、ポッドキャスト、解析、フィンテックなど、クロスプロダクトツールが出来上がるかもしれない。

TikTokを活用した新プロダクトのローンチ

ByteDanceは間違いなくTikTokのユーザー、コンテンツ、そしてAIアルゴリズムを活用して新しいプロダクトをリリースする。彼らの採用スピードを見るとそれが明らかだ。

ユーザーと直接関係性を作り、そのネットワークを活用して新しいプロダクト、もしくはよりハイマージンなプロダクトを売り込む。これは特に新しい施策ではない。SNSですとFacebookがInstagramとFacebook Messengerで同じようなことをやっていた。過去記事でも話したが、ディスニーもDisney+の大赤字事業を活用してクルーズ船やディズニーランドへの年間パスを売り込もうとしているのと同じ。

TikTokはデータ収集ツールや広告のマネタイズプラットフォームだけではなく、トップオブファネル、いわゆるユーザーにリーチして他のプロダクトを売り込めるプラットフォームとしても認識しなければいけない。実際に中国ではTikTok内でByteDanceの新しいメッセージアプリのDuoshanをプッシュしてた。

これからTikTokが出しそうなプロダクトを以下まとめた。

ロングフォーム動画

2019年中旬ぐらいからDouyinは15分動画のアップロードを数名のクリエイターにテストし始めた。ByteDanceは過去にVineのクリエイターが後々YouTubeへ移行したことを知っているので、それを避けるためにロングフォーム動画も試しているはず。

ByteDanceはNetflixの類似プロダクトであるXigua Videoを中国で運用している。現在は5500万DAUで、1日の平均試聴時間は70分。

Netflixは一部データを活用してユーザーが何を見たいかを分析して映画やテレビ番組を制作しているため、TikTokも同じことをやり始めてもおかしくない。最近だとXigua自体がBBCやPBS、そして子供番組の出版社などからコンテンツを獲得し始めている。そして直近では元Disney+のトップであるKevin Mayer(ケヴィン・メイヤー)氏をTikTokの新しいCEOとして採用。メイヤー氏はDisney+を1年もたたずに5000万ユーザーまで伸ばし、過去だとMarvel、Lucasfilm、Pixar、21st Century Fox、Club Penguin、Maker Studiosなどの買収を担当した。ByteDanceがこの領域に入るのはほぼ間違いないはず。

映画や著名IPの獲得もそうだが、TikTokはもしかしたら次世代メディアやZ世代に流行っているBratやCrypt TVの買収に取り掛かるのが面白いかもしれない。そしてTikTok自体がインハウスのスタジオを作ってクリエイターと一緒に番組を作ることはやってもおかしくない。個人的にはこれはQuibiが本来やるべきことだと思っている。

音楽ストリーミング

実はByteDanceはインド、インドネシア、ブラジルで自社ストリーミングアプリのRessoを既にリリースしている。TikTokとSpotifyのUIを組み合わせたものとなる。こちらもTikTokと同様、コメント、制作、コンテンツ共有を強調していて、直接TikTokに投稿できるようにしている。そして歌詞を他社プラットフォームより強調しているのがポイント。TikTokはミーム・曲の文化をユーザーの頭の中に叩き込みたいので、音楽からミームを作るために歌詞からインスピレーションを与えるために歌詞を前に出している。

引用:Routenote

TikTokはさらにユーザーから好きな音楽のデータを取得できるし、さらにTikTokでよく聞く音楽をRessoに誘導させることもできる。今後は中国でも流行っているカラオケ・ライブ配信アプリなどもTikTok内に入れたりして、Spotify、Apple、WeSing、Kugouなどの競合と対抗する可能性もある。
今後TikTokが音楽のレーベル会社を作ってもおかしくない。

ゲーム

ByteDanceはゲーム市場に入り込むことについてはかなり発言している。ここ数年にかけて数社のベーム開発会社を買収していて、ByteDanceのゲーム部門は1000人以上の従業員がいる。中国の旧正月時期の人気ゲームの3つがByteDanceからのゲームだった。そして3月に日本でも「ヒーローズコンバット」をローンチして1週間ほどアプリストアで1位だった。

ユーザーをソーシャル領域で囲い込んでゲームを売り込む戦略はTencentと非常に似ている。ByteDanceとしてはToutiao上のユーザーの多くがゲームをプレーしているのが分かっている。中国で最もスマホゲームの広告費を使う会社トップ100のうち、63社は広告予算の半分以上はToutiao上で使っている。こうなるとByteDanceは将来アプリ内課金、アプリ内広告、そしてセルフサーブ広告ネットワークを全部自社で保有するかもしれない。

フィンテック

中国ではスーパーアプリが流行っている中、その中でもフィンテックが最もマネタイズできるポイントだと思っている。中国ではないが過去だとスーパーアプリを目指しているGrabのCFOもGrabのフィンテック事業は本業である配車サービスの20倍の市場だと発言している。ByteDanceも同じく、個人・法人ローン、保険、ウェルス・マネジメント商品を2,00万人のユーザーに提供している。今後も決済やスマホのウォレットを提供してもおかしくはない。


教育

この領域はByteDanceのかなり重要なプライオリティになっている。今年だけで教育関連で1万人採用すると発言している。実際に何をするかは噂にしか出てないが、学校用のハードウェア、AI家庭教師、家庭教師ポータル、そして有料授業などの話が出ている。過去には中国の学生と海外の英語を教える先生をマッチングするサービスのGogokidをリリースしているが、トラクションがあまり伸びてなかった。初期従業員で元ToutiaoトップのChen Lin(チェン・リン)氏は次の1億人DAUのプロダクトを探すことを命じられていて、それが教育かメッセージにあると言われている。

メッセージ

Tencentは競合プロダクトをWeChatや自社のAndroidアプリストアのYingYongBaoをブロックすることが有名。ByteDanceのSnapchat類似プロダクトのDuoshanも初月で500万ダウンロード達成したときにブロックされた。ByteDanceはDuoshan以外に今年新しくリリースしたFlipchatなどでメッセージ領域に入れるかを試している。

引用:Techcrunch

最近だと米国のTikTokではアプリ内で他のユーザーにメッセージするように勧められていて、Douyinでは知らない人と一緒にゲームをプレーする機能も作っているので、メッセージはかなり興味があるように見える。

ニュースフィード

ByteDanceはニュースフィード系のプロダクトをこれからも試してFacebookやTwitterにプレッシャーを与えにいくと思われる。Toutiaoもそうだが、それ以外にはTopBuzz、News Republic、インドネシアのBaBe、インドではHeloなど。さらにインドではDaily Huntに投資して、2016年にはRedditを買収しようとしていた。キャッシュもかなり持っているので、今後はMusical.lyと似た形で買収からのユーザー獲得戦略に入るかもしれない。

エンタープライズ/B2Bソフトウェア
2019年にByteDanceはSaaSプロダクトのFeishuをローンチした。Feishuチームは1700人いて、Slack、Microsoft Teams、Google Suiteの競合プロダクトである。メール、チャット、ビデオ会議、カレンダー、クラウドで資料のストレージなどの機能が含まれている。

ByteDanceはFeishuを最初は社内用に使っていた。ByteDanceは珍しく中国市場ではなく、米国、ヨーロッパ、日本を初期マーケットとして挙げている。プロダクトの優位性はユーザーが読みやすいように自動翻訳、他国との時差調整を簡単にできる仕組み、そして立替申請を簡単にできるようにしているとのこと。

その他
ByteDanceはインドと米国でデータセンターを2019年から運用始めている。これは自社プロダクトようかもしれないが、もしかしたらクラウドホスティングサービスのリリースを考えているかもしれない。クラウドサービスとSaaSソフトウェアだと完全Microsoftの領域に入ってくる。そしてさらにライブ配信、検索、EC、電子書籍なども考えられる。検索を作ればGoogleのように検索とYouTubeのループを作れる。さらに2019年には中国で安いAndroidスマホをリリースした。これは「ByteDance OS」を作ろうとしているかもしれない。過去にはFacebookなども試して失敗した。

結論

ByteDanceはGoogle、Facebook、Instagram、Snapなどの競合に最もなり得るサービスかもしれない。過去にはあり得なかった中国と米国・世界の市場を取りに行けて、デジタル広告でマネタイズできている。しかもいまだにTikTokからちゃんとマネタイズが出来ていないのに140億〜200億ドルの売上を保てている、非常にパワフルな会社である。

この会社を作り上げられたのは創業者が考えたソーシャルグラフが必要ない、SNS、コンテンツ・広告アルゴリズム、そしてTikTokにおいては画期的なUI。このループは今のところ、ほとんどの会社は止められなさそうだ。そして裏側ではどんどんプロフィールデータ、ソーシャルグラフ、興味グラフ、コンテンツグラフをデバイスIDごとにデータ収集している。このエンジン、グロースサイクルを聞くと恐怖感しか思い浮かばない。

もちろんTikTokの人気度が下がってダメになるかもしれない。ByteDanceのほかのプロダクトもまったく上手くいかないかもしれない。ただ、万が一TikTokがダメになっても、TikTokで育った世代が期待する編集方法、ストーリーの伝え方を見るべき。ジャンプ、ワイプ、音楽を利用したトランジションが今までの動画とは圧倒的に速い。間違いなくTikTokの影響で今の若手層のコンテンツ・エンタメに対しての価値観、期待値が変わった。この次世代ユーザーが次の消費者になると考えると、今のうちにTikTokに入り、何に引き寄せられているかを調べるべきであると思っている。いまだとTikTokは、Z世代のプラットフォームだけではなくミレニアル世代にも入っている。この層に何かしらのプロダクトやサービスを売り込みたい人にとって、TikTokを見なければいけないプラットフォームになっている。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019
(TikTok)
Songs Are Becoming Hits on TikTok Before They’re Even Released(Rolling Stone)
Why Fintech May Be the Future of Ridehailing for Grab, Uber(Fortune)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
ByteDance’s move into gaming is already paying off(Abacus)
四处挖人,字节跳动横扫教育圈(36Kr)
・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
TikTok’s Videos Are Goofy. Its Strategy to Dominate Social Media Is Serious(The Wall Street Journal)
TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

優れたUIとオンボーディングで成功、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その2)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第1部第3部も併せてチェックしてほしい。

スマホ版YouTubeであるTikTokの特徴的なUI

TikTokはいまだと誰でも聞いたことはあるアプリになった。2019年6月時点では15億人のMAU、その年の10月にはDAUで10億人を超えるとTikTok米国代表が話していた。ユーザーを考えたUI判断とかなりアグレッシブなグロース戦略でここまで来た。

動画ファーストなUIと簡単なオンボーディング
TikTokのUIで一番重要なのは最初の動画ファーストなインターフェース。アプリをロードした瞬間からプレーし始めてユーザーをアプリへ引き寄せるコンテンツを先出しすること。

まず象徴的なのはアカウントを作成する必要がないこと。新規ユーザーとして登録する際には、最初に何に興味があるかを指定するだけ(しかも選ばなくてもいい)。以下がその様子で、約10秒でオンボーディングが終わる。これは2014年のYik YakのUIと似ている(Yik Yakはロケーショントラッキングの許可と通知の許可だけ)。すぐにコンテンツを楽しめるように、わざと最小限のオンボーディングにしている。

TikTokは裏側でデバイスID別に裏アカウントを作っている。そのため、ほとんどのTikTokユーザーはアカウントを作らずコンテンツを見ている。できるだけ大きく動画を見せて、必要があるボタン(プロフィールページ、いいね、コメント、共有)のアイコンだけ出している。Toutiaoのようにアプリ内の行動を見てデータプロフィールをTikTokが作っている。他社のサービスも同じようにアルゴリズムを使ってコンテンツを提供しているが、TikTokとのUIを比較するとどちらがデスクトップベースで作られ、どちらがスマホベースで作られたがわかる。

Instagramでさえスクリーンスペースを無駄にしている。上記の動画、もしくは広告を見ると、スクリーンの100%のTikTok、16%のWeChat、31%のInstagramのどちらをユーザーは選ぶか?

ショートフォーム動画
TikTok上のコンテンツは短い。もともと15秒のリミットがあった(中国のDouyinでは2分まで伸びた)。スマホでは短めのコンテンツが好まれるので、それ専用のプロダクトを作るとUI/UX、ユーザーの期待値も変わる。アテンションスパンが短くなっている中、10分のYouTube動画でも見られなくなっている。有名YouTuberのDavid Dobrikも3分〜5分動画の方がパフォーマンスがいいと発言している。このロングフォームコンテンツからショートフォームのトレンドは多くの人が感じていると思う。

ショートフォーム動画は制作と消費の摩擦を減らしている。いま現在はほとんどのTikTok動画はクリエイター1人で作っていて、1日複数の動画を投稿している。2018年のByteDance広告主向けの資料によると34%のユーザーは毎日コンテンツをアップしているとのこと。

引用:AdAge

これがロングフォームコンテンツであればスマホで撮影と編集はせずに、チームで撮影を行うことが多い。TikTokクリエイターは自分自身でコンテンツを編集しているため、視聴者を理解するためにTikTokコミュニティに入り込んで自分自身でコンテンツを消費しなければいけない。

そしてコンテンツを消費するユーザー側からするとショート動画だからこそコミットしなくてもいい。すぐに始まり、すぐに終わる動画は最悪でもたったの15秒の無駄。各動画は最後のほうにきちんとクライマックスを用意して、もし一部見られなくてもデフォルトで動画がリプレイするので何回も見てしまう。TikTokは裏では各動画の視聴長さ(どこまで見たのか)や複数回見たときはアルゴリズム上かなり高い評価をつける。

短い動画のため、他社サービスより圧倒的なスピードでデータ収集ができて、それでよりアルゴリズムを改善できる。10分間のYouTube動画の時間帯でTikTokでは40個の15秒動画のデータを取得できる。下記データを見ても他のSNSと比較すると圧倒的な差があることがわかる。

引用:Digiday

TikTokの一番近い競合はYouTubeだが、YouTubeはテレビやデスクトップ向けのコンテンツ。実際に2020年3月では1億人はYouTubeをテレビで見ていた。そしてYouTube、Twitter、Instagram、TikTokの1セッションあたりの消費されるコンテンツ量を見るとすごい。

そして今後ショートフォームの動画の間に広告を入れられることを考えると、かなりマネタイズポイントがあると思われる。

The InformationでもTikTokの特徴的なUIをうまくまとめている。

TikTokは「ソーシャルではないSNS」

TikTokのすごいところは、これだけ大きいSNS企業なのにソーシャルグラフを必要としていないところ。Facebookは10日以内で7人の友達が「マジックナンバー」と言われていたり、TwitterやInstagramも人気になるにはフォロワーが重要。逆にTikTokは、友達、フォロワー、アカウントですらいらない。人ではなく、完全にアルゴリズムがコンテンツ、タグ、そして動画内のアクションやものを把握しながらユーザーの視聴履歴、見直した動画、いいね、コメント、共有、視聴後の行動をすべてモニタリングしている。a16z(Andreessen Horowitz)パートナーのConnie Chen(コニー・チェン)氏が言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。

このアンチソーシャルなアプローチはもしかしたら他社プラットフォームと比べて、より長持ちできる施策かもしれない。ほとんどのSNSは友達やフォロワーが増えるとプロダクトのバリューが下がる傾向にある。以前SNSについて説明した記事でもソーシャルメディアからステータスメディアへ進化する話をした。そのフォロワーや友達の概念がそこまでないTikTokはもしかしたら有利なポジションにあるかもしれない。
実際の事例を見てみよう。ハリウッド女優のジェニファー・ロペスのTwitterとTikTokのフォロワー数は、

  • Twitter:4,400万人
  • TikTok:280万人

だが、

  • TwitterにアップしたTikTok動画:100万再生回数
  • TikTokにアップしたTikTok動画:1790万再生回数

とTwitterのフォロワー数が多くてもTikTokのほうがバズった。

TikTokの拡大戦略

チェン氏が言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。計画的な拡大戦略をとっていた。

まず、スマホで最も優れたショートフォームの動画編集ツールを作った。簡単にクリッピングしたり、フィルター、音楽を追加できるようにした。そして他社プラットフォームへ簡単に共有できるようにした。そこでTikTokがとった戦略は動画をTikTokからエクスポートする際には必ずTikTokで投稿すること、そしてエクスポートされた動画は必ずTikTokのウォーターマークが自動的に付けられたこと。それによって、もともと動画編集ツールとして使ってたクリエイターはTikTok上でファンがつき始めたらTikTokで投稿することに注力してくれるようになる。

さらにInstagramのように鍵がかかったアカウントが存在しないこと。Instagramコンテンツを共有したが、そのアカウントが鍵がかかったアカウントだったのでコンテンツが見られない不満はある。TikTokは全世界に公開しているので、そこを気にすることはない。

そしてクリエイターをプライオリティーと置くようにした。クリエイターにはTikTokスタッフからのサポート、どう言うコンテンツを投稿するべきかのメールを送ったり、TikTokスタッフと1対1のデモ、TikTokクリエイターコミュニティ用のイベントやコラボ企画を勧めたりもしている。しかもスマホを安定させるためのスマホスタンドも送ってくれるらしい。以下クリエイター向けのイベントがどのようなものかを見せている動画だ。

初期では各SNSの有名インフルエンサーを囲い込むようにオペレーションチームが託された。うわさによるとTikTokに投稿してもらう代わりにお金を払ったと出ているが、実態はわからない。中国ではセレブにお金を払ってDouyinの初期コンテンツを作っていた。タレントショーのオーディション動画や、Michael Korsとのイベントパートナーシップを行なってグロースした。中国では他のプラットフォームの動画を勝手にとって自社プラットフォームにアップしたも言われている。そして米国とヨーロッパに入るためにMusical.lyを10億ドルで買収。ByteDanceとMusical.lyは同じ株主がいたため、その株主が間に入ってM&Aを仲介したと言われている。

そしてTikTokクリエイターにすぐにソーシャルキャピタルを与えられたのが重要なポイント。過去だと各プラットフォームの初期ユーザーが一番ソーシャルキャピタルを獲得できる仕組みになっていた。TikTokだとフォロワー数関係なく、前コンテンツをプロモーションする。TikTokでは既存のクリエイターに十分なソーシャルキャピタルを与えながら新規ユーザーにも割り当てられるようにしなければいけなかった。Musical.ly創業者で現在TikTokのプロダクトのトップを務めるAlex Zhu(アレックス・チュー)氏はこのプロセスを新しい国を作るように例えている。

このソーシャルキャピタルのアロケーションを計画的に割り振るためにはTikTokとしてはショートフォーム動画、アルゴリズムからのコンテンツディスカバリー、フォロワーに重きをおかないこと、ソーシャルグラフを使わないこととオンボーディングを最小限にすることが重要だった。

SNS事業含め、ビジネスの多くではよりユーザーにリーチできる会社が長期的に勝つ。リーチがなければより良いプロダクトで勝ちに行くのが大まかな戦略だ。TikTokはプロダクトのイノベーションでより大きいユーザーベースにリーチできるようにした。Twitterだと何か投稿したときに基本的にフォロワーが見てくれるため、フォロワー数が少ないほど広がるチャンスが少ない。TikTokはフォロワー数を無視しているため、よりコンテンツが広がる仕組みを作っているからこそ、みんなが使いたがる。これはInstagramがSnapchatをコピーしてStories機能を追加した時と同じ。SnapchatよりInstagramでフォロワーが多かったクリエイターはSnapchatではなくInstagramでStoriesを投稿し始めた。クリエイターは多くのユーザーに一気にリーチするのが目的なため、TikTokに行く理由はわかる。

TikTokがコンテンツの共有を強調するのもリーチを広げるため。動画が2回ループするとシェアするアイコンが緑になる(日本の場合はLINEのアイコンが出る)。そこをタップすると他社プラットフォーム含めて共有できるように見せている。TikTokはモバイルウェブ対応もしていて、友達から受けた動画はかなり高い確度で見てくれると確信している。しかもこのオフプラットフォームで共有するとTikTokは裏側でそのデバイスID別にソーシャルグラフを作れて、将来的にSNSを作る際には役に立つデータを取得できる。

引用:TikTok

そして最後の拡大戦略は圧倒的なマーケティング。2018年から2019年にかけて、1日3000万人のユーザー獲得とPRに使ったと言われている。他社プラットフォームを資金を溶かしたケースも多々ある。

2018年ではGoogle広告で3億ドル、インドだけで毎月1000万ドル使っていた。2019年Q1ではFacebookのAndroid版アプリでは見られた13%の広告はTikTokだった。ピークは2018年9月で、Facebook配下のプラットフォームで米国で見られた広告の22%はTikTok関連だった。

引用:Reuters

しかもこのようなインフルエンサー動画もTikTokのウォーターマークを入れてTikTokを告知してくれていた。

Instagramのユーザー数はTikTokの2倍、合計利用時間はTikTokが上

初期のTikTokの米国の新規ユーザーの30日リテンションの数字は10%と言われていた(だいたい20%が「良い」アプリと分類されるが、SNSだともっと高いケースが多い)。これはおそらく最初のターケティングの問題でもあった。徐々に改善してアプリ調査会社のApp Annieによると2019年初旬では28%〜40%の間にまで上がっていたらしい。

ByteDanceは多額の資金を使って多くの批判を受けたが、これも1つのネットワークを作る戦略である。InstagramもFacebookフィードを活用したからこそ新規ユーザー獲得ができた。以下グラフのように、50〜75%のInstagramダウンロードはFacebook買収のあとに来ている。特に買収直後のグロースはFacebookから来たユーザーが多かったのは間違いない。

引用:MacStories

ByteDanceはFacebookみたいなプラットフォームがなかったので、ハイマージンな広告ビジネスが生む70億ドルの売上とソフトバンク・ビジョン・ファンドからの30億ドルの出資を受けて似たようなことを資金力で解決できた。

そして他社プラットフォームのグロースが遅まっている中、TikTokのユーザー数と平均利用時間が爆発的に伸びている。このグラフを見ると、明らかにInstagramのダウンロードに影響を及ぼしている。

さらに2019年1月と2020年4月の米国での月次のリーチ数を見ると、Instagramの広告プラットフォームは1.2億人でフラット。

引用:DataReportal

いまのところ、FacebookやInstagramのユーザー成長率を見て投資家は心配ではなさそうだが、今後は変わりそうだ。App Annieのデータを見ると、米国のユーザーはInstagramはTikTokより2倍のユーザーがいるのにもかかわらず、合計利用時間はTikTokのほうが上回っている。ComScoreもTikTokの利用時間が2019年10月から2020年3月で93%増したと報道している。そして過去半年では利用時間が倍増したとも報道がある。

引用:eMarketer

TikTokのダウンロードも2020年Q1でかなり加速している。しかも去年末あたりから広告費用を下げると発言しているので、もしかしたらコストを下げながらユーザー獲得ができているかもしれない。

引用:Techcrunch

TikTokの成長振りは2019年のVidCon(米国で毎年開催される多ジャンルのオンラインビデオテクノロジー会議)でも明らかだった。いつもYouTubeインフルエンサーが行くイベントとして知られていたのが、2019年はTikTokインフルエンサーが評判だった。そして全TikTok関連のセッションは満員にお客さんが入っていた。

TikTokのYouTube 2.0へのカギは「音楽」と「ミーム」

SNSを始める際にはだいたい、コンテンツの消費と制作の摩擦を減らす新しいコンテンツ制作ツール、もしくはコンテンツフォーマット、さらにはクリエイターにソーシャルキャピタルを与えられるように仕組みが必要。うまくいけばグロースサイクルが作られ、ネットワーク効果が生まれる。TikTokのグロースサイクルは数字を見るだけでもきちんと回っているのがわかる。

YouTubeは動画フォーマットの大きな成功事例で動画市場では大きなプレーヤーとして存在しているが、YouTubeのプロダクトは横型動画向け、いわゆるデスクトップとテレビ向けのプロダクトで、YouTubeクリエイターはスマホで動画編集をしない。このスマホファースト(縦型)、尚且つショートフォームの動画プロダクトにギャップがあった。このニーズを表しているのがSnapchatとInstagram Storiesだった。

そして米国ではミーム文化が進んでいて、今では若手層がミームをコミュニケーションツール、時にはニュース情報を得るためのものとなっている。ミームの特徴としてはリミックスされることが多くて、一つのミームがリミックスされるほどより世の中で受け入れられているミームとなっている。例えば映画ロード・オブ・ザ・リングから生まれた人気ミームの「One does not simply」をGoogleで検索してもこれだけのバージョンが出てくる。

引用:Google検索

Instagramが公開したデータによるとミーム投稿はミームではない投稿と比べて7倍以上シェアされる。そしてReddit上では新しいミームの人気度を予測するスレッドまで出てきている。

引用:Reddit

TikTokは2つのトレンドに乗っかって成長してきた。それはミームとAirpods。Musical.lyを統合した時には最初はMusical.lyで人気だったリップシンク系のユースケースが多かった。2018年中旬から下旬でTikTokアプリを見ると、元々のMusical.lyコンテンツからVineっぽいコンテンツに進化していくのが見えた。そして使ってたGen Zはミレニアル世代が好む「完璧」なインスタ映えとは違く、より皮肉なジョークやリアルなものを好んでいたため、TikTokがフィットした。

Vineに近しい部分は多かった。Vineも若手層が皮肉なジョークを共有し合う場、そしてリミックスする場でもあった。

そしてVineユーザーのリミックス文化をスケールさせられたのがTikTok。TikTok(Musical.ly)のリップシンク編集ツールを使うと同じ音楽で動画をリミックスできるようにした。TikTokの重要なUIの1つとして、動画内の曲ベースで検索が可能なところがある。これはどの他社プラットフォームも出していない(一瞬Vineも同じような機能を出したが、すぐにシャットダウンした)。

タイミングも重要だった。TikTokが米国で人気になり始めていたときにはAirPodsが爆発的に売れ始めていた。2017年にはApple(アップル)は1600万個のAirPodsを売り、2018年には3500万個、2019年は6000万個、2020年には1億個売ると言われている。AirPodsユーザーは音声付きのミームを聞くのに最適なユーザー層だった。それで生まれたのが音声ミーム。音声ミームの初期の有名事例はAdele(アデル)の「Someone Like You」という曲だ。

その他TikTokのミーム活用法について知りたい方は、以下のポッドキャストでTIkTokが作り上げたミームからのソーシャルコマースの話「#22 TikTokから生まれたOK, Boomerって?」を聞いてほしい。

Lil Nas XとアーティストのTikTok活用方法
Musical.lyのルーツが音楽にあった中、TikTokもそこを強調した。TikTok上で人気になった多くのミームは音楽ベースでもあった。その中で最も有名なのはやはりLil Nas X(リル・ナズ・X)の「Old Town Road」だ。

17週間連続でBillboard Hot 100の1位にランクイン。しかしこれはたまたまTikTokでバイラル化して伸びたのではなく、Lil Nas X自身がTikTokのリミックス文化を活用して伸ばした。

Lil Nas Xは音楽のキャリアをやるために大学を中退した。中退したものの新しい曲作りにフォーカスしなかった。まずはTwitter上で友達作り、ミームをひたすら投稿してフォロワー数を3万人まで伸ばした。フォロワー数を伸ばした後に自分の音楽の投稿をすればバズると思っていたが、そんなに簡単に行かなかった。

面白いミームを投稿すると2000リツイートされるが、歌を投稿すると10リツイートぐらいしかもらえない(Lil Nas X)

それを見たLil Nas Xは戦略を変えて、SoundCloudのURLを出すのではなく、ミームに合わせた歌のプロモーションを考えた。

短く、キャッチーで、面白くなければいけなかった(Lil Nas X)

その結果が「Old Town Road」。踊っているカウボーイと合わせてフォロワーに共有した。

その動画がバイラルになったので、Lil Nasはこれで新しいプレイブックを作った。

  • Old Town Roadに合わせた
  • 短いバイラル動画
  • 曲のリンクは動画の下にリンクする

Twitterで広がり始めた曲がついにTikTokまで、そして爆発的に伸びてBillboardのカントリー・ミュージックカテゴリーに載った。

Lil Nas Xはカントリー・ミュージックのカテゴリーの競争率がほかと比べて低いと知っていて、わざとカントリー・ミュージックとリストしていた。その1週間後にBillboardがカントリー・ミュージックではないと判断し、ランキングから取り除いた。この判断がLil Nas Xにとって良い展開だった。これによって全米でニュースになり、2週間後にはBillboardの全体ランキングで1位になった。

この勢いをさらに加速するためにLil Nas Xは、次に音楽業界のスターとOld Town Roadのコラボ(リミックス)曲を出した。Billboardのちょっと変わったルール上で、リミックス曲はオリジナル曲の再生回数としてカウントされる仕組みになっていた。

リミックス曲が出るたびに何百万と再生回数が増え、Old Town Roadのランキング首位を堅持した。そして17週間後にはマライア・キャリーの記録を破った。5カ月前まで大学中退で銀行口座がマイナスだったと考えると、すごい成長だ。

Lil Nas X自身もこれはラッキーなことではなく、計画性がちゃんとあってここまで伸びたものとのこと。その一例、Old Town RoadがTwitterでバズり始めた1つのきっかけが、1人の男性が馬の上に立ちながら馬が走っている動画だ。この動画はいろんなバージョンが出てきたが、すべての動画はOld Town Roadが音声となっていた。

一番最初のこの動画は2018年12月24日に投稿されていた。そのTwitterユーザーになぜその動画を作ったかと聞いたところ、Lil Nas Xが彼にDMを送ってそのアイデアを提案したとのこと。しかもその動画を見て曲を検索すると知っていたLil Nas Xは、YouTubeとSoundCloud上で曲のタイトルを変更し、バイラル動画で入っている歌詞を追記したのだ!

TikTokでもLil Nas XはTikTokを活用してチャレンジを作り、さまざまなユーザーがOld Town Roadに合わせてミームを作り始めていた。

そして2018年からTikTokから生まれた人気曲が出てきたが、今はアーティスト側がリリース前にTikTokに曲の一部を出してバズらせている。ネットで有名ダンサーのToosieがDrakeから直接連絡もらって、まだタイトルが付いてない曲の一部を渡され「ダンスを考えてくれないか?」と聞かれた。

それで出来上がったのが「Toosie Slide」で、それを踊るチャレンジが出てきた。

最終的にTikTokでヒットして、Drakeが音楽配信アプリで公開した。

これはDrakeだけではなく、多くのアーティストが一部公開をしてTikTokで流行らせてから公開する流れになり始めている。

TikTokは徐々にリップシンクからミーム、そして今ではコメディー、教育(チュートリアル)、アートなどさまざまなコンテンツに広げている。コンテンツ領域を広めるとターゲットユーザー層も拡大するし、TikTokにとってはユーザーの興味グラフを作れるようになる。これはByteDanceが今後YouTubeやほかのSNSと対抗に戦うためには重要な要素となる。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019
(TikTok)
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Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
TikTok’s Videos Are Goofy. Its Strategy to Dominate Social Media Is Serious(The Wall Street Journal)
TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

成功の原点はToutia、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その1)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第2部第3部も併せてチェックしてほしい。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNS企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

過去4年間で世界で最も勢いがあるアプリ「TikTok」。AirPodsやMeme(ミーム)文化が爆発的に伸びていた流れに乗っかったのは確かだが、それ以外にも自社のUI判断やグロース戦略でここまで成長できた。そして何よりもソーシャルグラフが必要のないSNS、コンテンツベースのアルゴリズムを作ったのは過去に存在しなかったこと。そんなTikTokの裏で、運営元であるByteDance(バイトダンス)の最初のサービスであるToutiaoから実際にTikTokのインフラが作られていた。

今ではByteDanceの時価総額が1000億〜1400億ドルになっていると言われている。

2017年11月にBytedanceは当時米国で次世代SNSだったMusical.lyを10億ドルで買収。2018年8月にMusical.lyとTikTokを1つのアプリとして統合。そのすぐ後に30億ドル調達して時価総額が750億ドルまで上がった。当時はほとんどの人から高すぎる時価総額と言われていたが、いま見ると間違ってはなかった。

ByteDanceの2019年の数字を見ると160億〜200億ドルの売上で、2018年から2倍になっている。そして中国のデジタル広告市場のシェアが22%(2017年にはたったの5%)。

引用:Technode

しかもこの160億~200億ドルの売上の5%しかTikTokから来ていない。TikTokはこれから広告プラットフォームとして伸びるので、今後の成長率が加速する可能性もある。今年で創業8年目のByteDanceはTencent(テンセント)、Twitter、Facebook、Snap、Googleの8年目よりも圧倒的に売上が伸びている。

それでは、ByteDanceの凄さの始まりであるToutiao、TikTokなどの他社サービスへの拡大、Musical.lyを買収して米国市場へ参入、そして今後の展望について紹介していこう。

今回の記事の多くはGelt VCで働くTurner Novak(ターナー・ノバック)氏のブログ「The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance」から引用している。興味がある読者はぜひ彼のメルマガや記事をチェックしてほしい。もちろん本記事は、ノバック氏から許諾を得たうえで翻訳・公開している

ByteDanceの初プロダクトはToutiao(今日頭条)

ByteDanceが作った最初のプロダクトは2012年8月にリリースしたJinri Toutiao(ジンリー・トウティァオ)。類似サービスとしては、Facebookの友達のコンテンツがないニュースフィードが一番近いかもしれない。同社はJinri Toutiaoでハイパーターゲティングしたコンテンツや広告をユーザーに提供していた。2018年中旬の2億人DAUがピークで、1ユーザーは1日平均74分使っていた。これはFacebook、Instagram、Snapchatの約2倍の利用時間だ。

引用:Y Combinator

ローンチと初期グロース
創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏は2008年にアイデアを思いついたらしい。当時はMeituan創業者である王興(Wang Xing)氏と一緒にSNSサイトHainei.comを運用していた。Hainei後も張氏はいくつかの会社を作った。彼の経歴を見ると、OTAサイトのKuxanのCTO、Twitter類似サービスfanfouのCEO、不動産リスティングポートあるサイトの99FangのCEOなど。そして大学生時代でもエンタープライズ向けソフトウェアを作り、その後にMicrosoft Chinaで勤務していた。

Toutaioローンチ時の中国のスマホニュース市場は、国がコントロールしていたSinaやSohuなどのメディアやポータルサイトしかなく、デスクトップ向けの長めのテキストコンテンツが多かった。Toutiaoの初期プロダクトは中国のウェブメディアのひたすらクローリングしてスマホ用にフォーマットし直してコンテンツを提供していた。一時期コンテンツの広告も自社広告に変更するまでのこともやっていたらしい。

初期のToutiaoのグロースは、中国版TwitterであるWeiboのインフルエンサーが広げてくれた。Toutiao自体はかなりアグレッシブなプッシュ通知やユーザーにコンテンツ共有を勧めたりした。その結果、90日で1000万ユーザーまで成長できた。新規ユーザーがSinaもしくはWeiboアカウントでログインした際にはまずToutiaoはそのユーザーの趣味・興味あるものや友達の情報をスクレーピングした。そしてユーザーの利用データ(どうタップやスワイプをしたのか、どのタイミングで戸惑ったのか、記事のかける時間、コメント、場所、時間など)をトラッキングして、そのデータを基にユーザーに合わせたコンテンツを提供。これは今のTikTokにも存在する手法だ。

そしてコンテンツのタイトル、カバー写真、記事の長さまでかえるようにした。さまざまな変更をした結果、80%と恐るべし読了率を得られて、それがユーザーの生涯のリテンションレート(Lifetime Retention Rate)を45%という圧倒的に高い数字を初期に達成できた。しかも編集チームを使わず、完全自動化していたため、コストを抑えながら良いプロダクトを作ることができた。

批判とサービスの進化
もちろん多くの大手メディア企業はToutiaoが嫌いでToutiaoを常に訴訟バトルの間に入っていた。TikTokでも起きているが、Toutaio記事の引用元がわからなかったケースが多々あった。さらに記事のフォーマットをToutiaoが変更した時にアプリがクラッシュした。最終的にはToutiaoはユーザーに他社サイトへの誘導を許したが、多くのメディアのほとんどのトラフィックがToutiaoから来ていたのは間違いない。2014年にWeiboのトラフィックが落ち始めた際に、Toutiaoの1億ドルのシリーズCラウンドに参加してトラフィックを流してもらうように約束した。

そしてToutiaoは出版社やキュレーターに直接Toutiaoアプリでコンテンツ制作を依頼して、代わりレベニューシェアを渡した。うまく行き始めた瞬間にToutiaoはすぐにパートナー制作記事へシフトし始めた。2017年には120万人の外部クリエイターと提携していた。最終的にTencent、Alibaba、Baidu、その他スタートアップは中国で似たニュースプロダクトをリリースするが、Toutiaoでうまくマネタイズできていたクリエイターがほかのプラットフォームへ変更する意味がなかった。実際にToutiaoのビジネスモデルはかなりハイマージンで、2015年では2億2000万ドルの売上で黒字化できていたと言われている。

そして徐々にToutiaoは、記事にコメント機能、フィードに写真や就職情報、フィットネス・音楽・ポッドキャストアプリを開けられるボタン、生配信番組、インタラクティブなQ&Aチャネル、そしてNetflix類似の映画視聴プラットフォームXiguaを追加。2018年には他の中国テック企業と同じようにミニプログラムをリリース。第三者にToutiao上でアプリを開発してリリースできるようにした。レストラン、スーパー、薬局のデリバリーアプリが開発された。Toutiao内でも常に新しいアプリを開発して市場のリアクションを試していた。2カ月以内でパフォーマンスがなければシャットダウンするようにしていた。

そしてToutiaoはアプリ内に動画を入れるように注力していた。Facebookと同じように動画フィードの広告を入れられるようになった。初期はスマホ広告に投資し始めていた大手ブランドと交渉していた。ブランド側としては、BaiduやTencentよりToutiaoの広告プロダクトの方がハイパーターゲティングができるため、主要客により簡単いリーチできると思い締結した。そのターゲティングのパフォーマンスが高かったからこそ、2019年7月時点のMeituanの広告費用の85%はByteDanceサービス(Toutiao、Douyin)で使っていた。

Toutiaoはアルゴリズムとディトリビューション基盤とした新規サービス
Toutiaoのフォロワーを使わず、ユーザーの行動をベースにコンテンツ・広告をレコメンドするエンジン、そしてToutiaoによって多くの中国人へリーチできる配信プラットフォームを活用して2016年9月にDouyin(初期はA.meと呼ばれていた)、2017年にはTikTokの2つのショートフォーム動画アプリをリリース。動画アプリをリリースすることによってToutiaoの動画広告在庫が増えるのと、ユーザー層が男性に偏っていたのを変えて女性ユーザーへリーチできるだけでなく、EC要素を入れられるアプリとなった。

それ以外に重要点としては2018年にToutiaoがピークに達していたことをByteDance側も理解していたこと。今後の成長のためには、別のプロダクトから来なければいけないことを理解していた。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019
(TikTok)
Songs Are Becoming Hits on TikTok Before They’re Even Released(Rolling Stone)
Why Fintech May Be the Future of Ridehailing for Grab, Uber(Fortune)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
ByteDance’s move into gaming is already paying off(Abacus)
四处挖人,字节跳动横扫教育圈(36Kr)
・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
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China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
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Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

インドでのTikTokに対する何百万件もの批判レビューをグーグルが削除

インドに何億人ものユーザーを抱えるByteDance(バイトダンス)のショートビデオアプリTikTok(ティクトック)にとって、インドは中国外で最大のマーケットだ。そのインドで、多くの人の目に触れることになったビデオを配信した後、批判にさらされている。

中国の大企業ByteDanceの宝的アプリであるTikTokで出回っていたいくつかのビデオに対して多くのユーザーが嫌悪感を示し、過去3週間にわたって「BanTikTok」「DeleteTikTok,」「BlockTikTok」といったフレーズがインドのTwitter(ツイッター )上でトレンドとなっている。

ユーザーは、家庭内暴力や動物虐待、人種差別、児童虐待、女性のモノ扱いを促進するような数多くのTikTokのビデオを見つけ、Twitter上でシェアした。

その結果、何百万という人々がGoogle PlayストアでTikTokにスター1つという評価をつけ、批判的なレビューを投稿することとなった。TikTokのグローバル評価は4.5だったのが、Google(グーグル)が介入する前の今月初めには1.2まで下がった。

グーグルの広報担当は、虐待の拡散を抑えるための措置として、同社はユーザーが投稿した数多くの批判的なTikTokレビューを削除した、と話した。対応後、TikTokの評価はわずかに上がって1.6となったが、欧州では現在も1.4だ。

「レビューに基づくユーザーのアプリ満足度を示す総合評価は、一時期86%から39%へと落ちた」とモバイル分析会社のApptopiaはTechCrunchに語った。

インドのGoogle PlayストアにおけるTikTokアプリのスクリーンショット

アプリに対して憤慨するという現象は目新しいものではなく、インドだけでもいくつかの例がある。たとえば、Snapchat共同創業者の伝えられたコメントが多くのインド人を怒らせ、そうした人々が誤ってSnapdealのeコマースアプリを削除(Gadget 360記事)し、無残な評価となった例もある。

しかし今回の件は、ソーシャルメディアインフルエンサーのFaizal Siddiqui氏が酸攻撃のパロディービデオを投稿した後に問題が大きくなり、TikTokのインドにおけるコンテンツモデレーションの取り組みに注意が注がれることになった。インドのTikTokユーザー数は昨年後半に2億人に達した(未訳記事)。

インドの政治家Maneka Sanjay Gandhi(マネーカー・ガンディ)氏は、TikTokとインド事業責任者がフィードバックに耳を傾けず、傷つけるような内容のビデオを調べず、指摘を受けたにもかかわらずそうしたビデオを投稿したユーザーに責任を押し付けていたと主張した(Twitter投稿)。

声明文の中で、TikTokの広報担当は「TikTokを利用する人の安全を守ることは最優先事項であり、当社の利用規約やコミュニティガイドラインにはどのようなことが許されないのかを明記してあることをはっきりとさせておく。ポリシーにより、他人の安全性を損なうリスクがあるコンテンツ、あるいは物理的な危害を加えたり、女性への暴力を称賛するようなコンテンツを当社は許さない。問題の行いは当社のガイドラインを守っておらず、我々はコンテンツを調べ、アカウントを凍結した。法執行当局とも連携を取っている」

しかしByteDanceはインドに何人のモデレーターを配置しているのか、どれくらい積極的に不快コンテンツを取り除いているのか(取り組んでいればの話しだが)明らかにしなかった。インドでByteDanceに厳しい精査の目が向けられるのは今回が初めてではない。

昨年、インドの高等裁判所はポルノや不法コンテンツを理由(未訳記事)にGoogleとAppleにTikTokアプリの配信を停止するよう命じた。禁止命令は数週間後に解除(未訳記事)された。

画像クレジット: Presley Ann / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

人気C向けアプリはいかにして初期ユーザー1000人を獲得したのか?

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、D2C企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

元Airbnbのグロース担当のLenny Rachitskyさ(レニー・ラチツキー)さん「How the biggest consumer apps got their first 1,000 users」の記事を直接許可を頂き翻訳しました。レニーさんのコンテンツをもっと読みたい方はぜひ彼のメルマガにご登録ください!Lennyさんの「マーケットプレイスの作り方」の翻訳もしていますので、そちらも気になった方はご一読ください!

C向けサービスがいかにして最初の1000人を獲得するかしっかりまとまってる記事は意外とありませんでした。レニーさんの記事は、実際に創業者のヒアリングを行い、過去インタビューを遡り、Twitterで質問したりした事実に基づく濃密なレポートです。UberやTikTok、Tinder、最近話題のSuperhumanなどの著名スタートアップの学びをシェアしたいと思います。

サマリー

  1. C向けの初期グロースは7つの戦略に分けられる
  2. Product HuntやPinterestは複数使ったが、ほとんどのスタートアップは1つの戦略で成長する。3つ以上使って成功した事例は今のところ見てない
  3. 一番人気な戦略はオンラインでもオフラインでも直接ユーザーに行くこと。スケールしないことをやろう
  4. 戦略を実行するために、ターゲット層を狭く定義づけることが大事
  5. 最初の1000人の獲得と1万人までの獲得方法は変わる

初期ユーザー獲得戦略は以下の7つの戦略となる。

  1. オフラインで直接ユーザーと会う
  2. オンラインで直接ユーザーと会う
  3. 友達を招待する
  4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること
  5. インフルエンサーを活用
  6. PR・メディアを活用
  7. コミュニティを作る

1. オフラインで直接ユーザーと会う

Key Question
初期ターゲットユーザーは誰で、どのオフラインの場所で集まっている?

■大学キャンパス
Tinder:創業メンバーのWhitney WolfeとJustin Mateenは南カリフォルニア大学で走り回ってフラタニティとソロリティでTinderを紹介してた。ほかの独身の人とつながれる、そして自分に興味があるかを知りたいニーズに合わせられたのでバイラルになった(Jeff Morris Jr.氏)。

DoorDash:初期バージョンはpaloaltodelivery.comと言うサイトでパロアルトのレストランメニューにPDFが載っていただけ。社長のTonyとDoorDashチームはチラシを印刷してスタンフォード大学でバラまいた。6ドルのデリバリーフィーで需要があるかを知りたかった。単純にPDFメニューのサイトとチラシで始まっただけ(Micah Moreau氏)。

■スタートアップのオフィス、駅や交通ハブ
Lyft:周りのスタートアップの各社にドアノックをして、無料でカップケーキやドーナッツと一緒にLyftの無料クーポンを渡していた(Emily Castor氏とBenjamin Lauzier氏)。
Uber:Streetチームをかなり使った。SF内の各Caltrain(カルトレイン、郊外向けの通勤列車)駅に行ってリファラルコードをばらまいていた。元CEOのTravisさん自身がTwitter本社に行ってリファラルコードを従業員にばらまいていたと。これが後ほどUberのグローバルアンバサダープログラムとなった(Andrew Chen氏)。

■ショッピングモール
Snapchat:CEOのEvanは一人ひとりに見せ始めて、使い方を教えたり、なぜ面白いかを説明した。アプリのダウンロードまで彼が代わりにやってあげていた。ユーザー獲得のために何でもやった。ショッピングモールに行ってSnapchatのチラシもばらまいてた。ショッピングモールで「消える写真を送ってみたいか?」と聞いて、よく断られてた(Billy Gallagher氏、How to Turn Down a Billion Dollars, The Snapchat Storyより)。

■近所のHOA(Home Owner Association、管理組合)
Nextdoor:当時は創業チームは近所のSNSのコンセプトを受けれて検証してくれる場所を探さないと意味がないとわかっていた。どの場所を選ぶかが重要だった。その場所はLorelei(ローレライ)だった。小さく親密なコミュニティであり、カリフォルニア州で最も古い管理組合がある場所だった。すでにコミュニティ内でコミュニケーションの取り合いをする方法があったのでNextdoorに合うと思った。管理組合の上層部に連絡したら話を聞いてくれた(Sarah Leary氏)。

■クラフトフェア
Etsy:米国中に開催されているクラフトフェアに行くことにした。そこで売り手を探しに行った。売り手は買い手をどうやってサイトに誘導させるのをわかっていたので、売り手を囲い込むのが大事だった(Thales Teixeria氏)。

■アップルストア
Pinterest:正直、かなりヤケクソなことをやってた。家の帰り道のアップルストアに入って置いてあったパソコンをPinterestページを表示するようにした。そしてその後にちょっと後ろのほうに行って「へーこのPinterestと言うサイトはバズっているんだなー」と他の人が聞こえるように言ってました(Ben Silbermann氏)。

2. オンラインで直接ユーザーと会う

Key Question
初期ターゲットユーザーは誰で、オンラインのどこで集まっている?

■Hacker News
Dropbox:CEOのDrewは簡単なプロダクトのデモ動画を2007年4月にHacker Newsに投稿した。そのタイトルは「My YC app: Dropbox – Throw away your USB drive」(僕のYCアプリDropbox:USBドライブを捨てよう)。その動画で初期ユーザーを集めた(John Popel氏)。

■アプリストア
TikTok(Musical.ly):当時はアプリストアに秘策があった。アプリ名をすごく長くできた。そしてアプリストアの検索エンジンはキーワードよりアプリ名にウェイトをかけるのを知ってた。なので、アプリ名を「make awesome music videos with all kinds of effects for Instagram, Facebook, Messenger」にしたら検索からの流入が入ってきた(Alex Zhu氏)。

ProductHunt:初期3000人はProductHunt初日とその1日、2日後で獲得できた。3000人から2万人ユーザーは初期ユーザーが入っている組織のエヴァンジェリストを探し、1対1の関係性を作った。そして2万人以降はPMのシステム(同僚を紹介するたびに5ドルのクレジット、50ドルぶんまで)で獲得(Shahed Khan氏)。

■既存のオンラインコミュニティ
Netflix:ユーザーとつながるためにCorey Bridgesをユーザー獲得するために採用した。彼はライターとしての才能があった。Coreyが気づいたのはDVDオーナーはネットのウェブフォーラムなどで集まっていたこと。そのコミュニティに入り込もうとした。CoreyはNetflix従業員とは名乗らず、映画好きな人として会話に参加したり、友達を作った。そこで、徐々にコミュニティ内のモデレーターや一番リスペクトされてたユーザーにNetflixと言う素晴らしいサイトを宣伝し始めた。ローンチ前から大きく種まきをしてくれてた(Marc Randolph氏、That Will Never Workより)。

Buffer:最初の9カ月はゲストブログ(自社ではないブログ)に書き続けただけで10万人を獲得できた。徐々に上がった感じだった。9カ月間で約150件投稿した。まったく流入しなかったものもあったし、徐々にしか改善されなかった。最適な投稿頻度を見つけるまで時間がかかった(Leo Widrich氏)。

3. 友達を招待する

Key Question
自分の友達は初期ターゲット層に当てはまるか?当てはまっていれば、サービスに招待したか?

Yelp:初期ユーザーは自分たちのネットワーク(ほぼ元PayPal同僚)を招待して獲得した。自分たちのネットワークに周りの友達を招待するようにお願いした。スタートアップを経験したメンバーが多かったので、お互い助け合うことに慣れてたのでいろいろ招待してくれた。そこだけで1000人ぐらいまで行った。一人のリファラルネットワークを侮らないことが大事で、招待させるインセンティブや方法を考えるのが大事(Russel Simmons氏)。

Lyft:ウェイトリスト制度を始める前には友達へメールにて招待状を送っていた(Emily Castor Warren氏)。

Facebook:Thefacebook.comは2004年2月4日にローンチした。普通の寮で過ごす夜だった。Mark Zuckerbergがサイトを完成させた時に数名の友達に共有した。その友達が学生寮「Kirkland House」に住んでいる300人が入っているオンラインメールリストに送ることをお勧めした。十数名が入って、その時にはすでにほかの寮にサイトの話が回ってた。夜の終わりには部屋にいた人たち全員が登録したユーザー数をひたすら見ていた。24時間以内で1200〜1500人が登録してくれた(Dustin Moskovitz氏、New Yorkerより)

Quora:Quoraは2010年1月にローンチした時のユーザーは主にAdam D’AngeloとCharlie Cheeverの高校・大学時代の友達が集まっていた。そのおかげで初期Quoraの情報を見ると、Cheeverが育ったペンシルベニア州のピッツバーグでのおいしいレストランなどの情報が多かった。サイトに他の人を招待できる機能を入れてユーザーを増やした(Wiredより)。

LinkedIn:LinkedInのCEOであるReid Hoffmanはプロダクトの初期は成功した友達やつながりに入ってもらった。憧れられるブランドを作るには初期ユーザーの質が重要だと理解してた。成功している会社や人ほど常に次の採用する人材を探しているので、成功した人たちを初期から入れてなければ会社は成功しなかった(Keith Rabois氏)。

Slack:ほかの会社で働いている友達に頼み込んで試してもらってフィードバックをもらった。最初の6社から10社はこう言うかたちで獲得した(Stewart Butterfield氏)。

Pinterest:アプリをローンチした時に友達全員にメールした。最初は誰もサービスの良さを理解しなかったが、ある小さいグループだけ使い続けてくれた。それはアーリーアダプターっぽくなく、一緒に育った友達や知り合いだった。彼らは人生の一環として使ってくれて、家や食べ物写真を上げてくれた(Ben Silbermann氏)。

4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること</h2.

Key Question
・ユーザー生成コンテンツ「UGC」に頼るプロダクト?初期コミュニティはキュレーション型にすることを検討するべき
・強い企業価値があるか?その場合はウェイトリストを検討するべき
・ソーシャルなプロダクトか?その場合は既存ユーザーに新規ユーザーの招待させるように検討するべき

■初期コミュニティを制限、キュレーション
Clubhouse:プライベートテストフライトを見てると面白い(Todd Goldberg氏)。

  • キュレーション(クオリティー担保)
  • 制限・招待制(FOMO: Fear of Missing Out)
  • 早い改善とアップデート(アプリストアのレビュープロセスが必要ない)
  • 初期ユーザーは信頼できるネットワークからのリファラル

Instagram:プロトタイプと検証をしてたときにTwitterフォロワーが多い人に渡したのがよかった。しかもそれはある一定のコミュニティでのフォロワー数が重要だった。そのコミュニティはデザイナー、オンラインウェブデザインのコミュニティだった。我々がフォーカスしている写真やビジュアル要素がこのコミュニティに最もアピールすると思った。彼らがTwitterで共有してくれたおかげで、ほかの人たちは「これはいつローンチして、いつ使えるのか?」と聞き始めて、そのタイミングでローンチした(Kevin Systrom氏)。

Pinterest:最初は招待制のコミュニティだった。初期ユーザーはSilbermannが呼びかけたデザインブロガーだった。呼びかけた人たちにはユニークなアイデアとクリエイティブな人たちにしか招待するなと教えた。そうやって2012年まで招待ベースで伸び続けた(Entrepreneurより)。

■事前登録、ウェイトリスト
Mailbox:iPhone用のメール管理アプリのMailboxがリリースされた時にすでに70万人のユーザーがウェイトリストに登録していた。これはMailboxのサーバーに異常なる負担を与えないためと、需要をより増やすマーケティング戦略だ(Darrell Etherington氏)。

Superhuman:初年度は開発している最中にLP(ランディングページ)を公開した。Squarespaceで作った最小限のダメなLPを2時間だけかけて作り上げた。LPにはメールアドレスしか入れられないようにした。そしてメールアドレスを入れた際には2つの質問が自動送信された(Rahul Vohra氏)。

  1. どのメールブラウザーを使っている?
  2. メールの不満は何?

Robinhood:リリースした際には初期サイトがバズるとはまったく思ってなかった。そのためシンプルなコピーを入れて、登録するためのボタンを押して、メールアドレスを入力してもらってウェイトリストにジョインできるようにした。そしてウェイトリストの何人中、何番目かを表示するようにした。プレスを出すその前の金曜日の夜にウェイトリストの準備をしていた。その次の日の土曜日にGoogle Analyticsを開くと600人ぐらいの同時アクセスユーザー数を見かけた。何が起こったかを見たらほとんどのユーザーはHacker Newsから来ていた。Hacker Newsを見たら3番目にRobinhoodについて投稿されてた(Business Insiderより)。

■既存ユーザーからの招待制
Spotify:2008年にSpotifyがベータ版をローンチ。正式ローンチまでは招待制オンリーで進めていた。Spotifyの初期成長はこの招待制度が鍵だった。Spotifyのグロースをコントロールできたのと、よりバイラルな要素をサービスに与えた。ユーザーは最初に5人の友達に招待できるようにしてた(TNWより)。

5. インフルエンサーの活用

Key Question
ターケット層のインフルエンサーは誰で、どうやって自分のプロダクトについて話してもらえるか?

Twitter:以下図が初期ローンチのグラフだ。最初にインターネットでTwitterについてメンションがあったのは7月13日のEvan Williamのブログだったが、その前日に登録が結構入ってたのがわかる。そしてOm Malikの投稿で次の日には250人が登録。まだ600人ぐらいしかいなかったときだった。Evanの人気度とOmの推薦をもとに最初にバズるような状況を作れた(Pete Warden氏)。

Product Hunt:インフルエンサーを見つけた時に私かNathanが個人的にメールを送って、プレスでProduct Huntに言及していたPandoDailyやFast Companyの記事にリンクして我々のストーリーを説明した。マニュアルなプロセスだったが、いい寄稿者を採用するのにいい方法でよりフィードバックをもらえやすい状況を作っていた(Ryan Hoover氏)。

Instagram:創業者は初期ユーザーを慎重に選んでいた。良い写真家、特に高いTwitterフォロワー数のデザイナーを選んでた。その初期ユーザーが最初のトーン、良質なコンテンツを出した最初のInstagramをプロモーションするインフルエンサーキャンペーンと言えるだろう。Jack DorseyはInstagramの一番の営業マンだった。最初は彼の投資が(Instagramの前身のサービスである)Burbnではないアプリに行くことに対してショックだったが、すぐにInstagramをBurbn以上に好きになった。そしてInstagramが2010年10月6日にローンチした時に、Jack Dorseyが共有してくれたおかげですぐにバズった。アップルのアプリストアのカメラアプリの中でいちばんになった(Sarah Frier氏、No Filter: The Inside Story of Instagramより)。

6. PR・メディアの活用

Key Question
プレスやメディアにピッチできる新しく、面白く、そしてユニークなストーリーとは?

Superhuman:プレスをうまく使うのは時代精神的な瞬間に入り込むこと。我々の場合はMailboxがシャットダウンする時だった。私はかなり読まれたM&Aの生き残り方についての記事を書いたが、それはMailboxのシャットダウンと合わせて書いたもの。投稿はMediumで出したが、qz.comにも転載された。時代精神的な瞬間に入り込めた。その記事を書くのに3日間それだけに集中したのと、あと1日記事をいろんな人に共有するのに時間をかけたので、合計4日間フルフルかかった。でもその4日間で5000人の登録が入ってきた(Rahul Vohra氏)。

Product Hunt:FastCompany記事のようにゲスト投稿をテックメディアで書いて認知を得た。初期はプレス・メディアで登録を伸ばすのに効果的だった。TechCrunchを読む人はProduct Huntを見る人と同一だった。さらにProduct Huntでローンチしたいいプロダクトを知り合いの記者に情報を流すようにした。記者の興味に合わせてプロダクトを送り、それについて記事を書いてもらってProduct Huntにリンクしてもらった。しかもそれによってよりクリエイターやアーリーステージの会社に認知を与えてた(Ryan Hoover氏)。

Airbnb:ターニングポイントはコロラド州デンバーで行われた2008年の民主党全国委員会(DNC)だった。Airbnb創業メンバーはイベントのキャパの4倍以上の人が参加すると知っていて、その影響で部屋のレンタルの需要が高まると知ってた。部屋を譲ってもらうのは簡単だったが、知名度がなかったのでその部屋に宿泊してもらうことが難しかった。

それを解決するためにまずは小さいオーディエンスを持っているブロガーに当たった。直感に反するかもしれないが、小さいブロガーがAirbnbについて投稿することによって大きめのメディアが取り上げる必要があると感じた。それがどんどん加速して、最終的には全米に放映するNBCやCBSがAirbnbの創業者をインタビューしていた。

DNCはAirbnbにとってよかったが、結局1週間しか続かなかった。創業者がイベントからのインパクトを最大限に広げられないかとキッチンで座ってたときに、シリアルを売って黒字化するアイデアを思いついた。2人ともデザイナーで名門ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの卒業生だった。嘘のシリアルの「Obama O’s, the Cereal of Change」と「Cap’n McCain’s, a Maverick in Every Box」を考えた。箱のアートは彼ら自身で考え、カリフォルニア大学バークレー校の生徒にお願いして安く箱を印刷してもらった。箱はフラットな長方形で印刷されたので、1つひとつ形を切り取って手作りした。
創業メンバーはいろんなテックブロガーに箱を送り、それについて記事を書いてもらった。その後に一箱40ドルで売った。Obama O’sが売れすぎて、Cap’n McCainを無償でつけるようになった(Pandoより)。

Slack:ベータ版をベータ版と呼ばなかったのは、そうするとサービスがあまりよくないと思われるからだった。チームの過去の経験を活用してプレス戦略を行った。それでSlackを使うリクエストが遅れるようにした。初日に8000人、2週間後に1万5000人まで上がった。ローンチ時のメディアの力は強い(Stewart Butterfield氏)。

Instagram:PR会社を使わずに直接プレスにコンタクトした。これは正しい戦略だったとKevin Systromが語る。いいプロダクトと熱い創業者からピッチするといい記事となる。プロダクトを好きになりそうな人に関しては躊躇なく連絡した。それがうまくいった。New York Timesとかに連絡する意味がないといろんな人から言われたが、NYTは話すだけではなく、直接会いにきてくれた。そして2010年10月にローンチした同日にプレスが出て、サーバーへの負担がハンパなかった(TNWより)。

7. ローンチ前にコミュニティを作る

Key Question
あとあと活用できるコミュニティを今作れるか?

Product Hunt:Linkydinkと言うメルマガツールを使ってメルマガとしてスタートした。Product Huntを開発している間にMVP版に貢献してくれる人たちやプロダクト関連の人にモックを共有してフィードバックをもらってた。これは顧客開発のためだけではなく、共有してた人たちにプロダクトに貢献してプロダクトの一部として感じてもらうようにしていた(実際に貢献してくれてた)。その5日後、MVPが完成した。Product HuntのURLをサポーターたちにメールして、周りに共有しないようにお願いした。サポーターたちは自分たちが開発に貢献した感情を抱いてたので、プロダクトにすぐに愛着が生まれた。それで最初の30人を獲得した。週の終わりには100人集まったので、公開できると思った(Ryan Hoover氏)。

Stack Overflow:創業メンバーのJoel SpolskyとJeff Atwoodは過去の経歴のおかげで大きなフォロワーコミュニティを持っていた。お互いのコミュニティに対してプライベートベータ版に招待した。コンテンツが最初からないと微妙に見えるので、招待する前に創業メンバー自らコンテンツを作っていた(Jon氏)。

おさらい

最初の1000人を獲得するには、以下7つの戦略が使われた。

  1. オフラインで直接ユーザーと会う
  2. オンラインで直接ユーザーと会う
  3. 友達を招待する
  4. 取り残されることへの恐れ(FOMO)を作ること
  5. インフルエンサーの活用
  6. PR・メディアの活用
  7. コミュニティを作る

どの戦略にフォーカスするべきか決めるために自分に聞くべき質問は以下のとおり。

  1. 初期ターゲットユーザーは誰で、どのオフラインの場所で集まっている?
  2. 初期ターゲットユーザーは誰で、オンラインのどこで集まっている?
  3. 自分の友達は初期ターゲット層に当てはまるか?当てはまっていれば、サービスに招待したか?
  4. ユーザー生成コンテンツ「UGC」に頼るプロダクト?初期コミュニティはキュレーション型にすることを検討するべき
  5. 強い企業価値があるか?その場合はウェイトリストを検討するべき
  6. ソーシャルなプロダクトか?その場合は既存ユーザーに新規ユーザーの招待させるように検討するべき
  7. ターケット層のインフルエンサーは誰で、どうやって自分のプロダクトについて話してもらえるか?
  8. プレスや¥メディアにピッチできる新しく、面白く、ユニークなストーリーとは?
  9. あとあと活用できるコミュニティを今作れるか?

【Instagram、TikTok編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その2)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

この記事では、InstagramとTikTokの活用事例をチェックしていく。TwitterとSnapchatの最新事情についてはこちらの記事、注目の次世代SNSについてはこちらの記事を参照してほしい。

YouTubeの売上をも超えるInstagram

いまやInstagramは、どのプラットフォームよりも人気かもしれない。Instagramの2019年の売上は200億ドルだったとのこと(YouTubeの150億ドル越え)。Facebookの全体の25%以上の売上。Instagramの買収に10億ドル払ったFacebookからすると、18日に1倍の投資額が入ってくるレベルだ。

「インスタ映え」と言うコンセプトも一般化され、Instagramを起点として多くのビジネス、インフルエンサーが立ち上がった。ここではその中でも、新しいInstagramの使い方、お勧めの活用方法をまとめてみた。

活用事例1:インスタ小説
ニューヨーク公共図書館が絶妙なSNSプロモーションを出した。不思議の国のアリスなどのクラシックなストーリーをInstagram Storiesで公開。この「インスタ小説」の使い方は素晴らしい!

まずインスタ小説のローンチする動画もめっちゃいい。明確にメッセージングを伝えている。

こちらが不思議の国のアリスのインスタ小説をプロモーションする動画。テキストだけでもキャラクターの紹介、ストーリー内の話をちょい出しするやり方が素晴らしい。

インスタ小説の素晴らしい点は、

  • カバーのアートとアニメーションがいい
  • Thumb here(ここに親指を置く)ボタンで動画スピードを調整可能
  • Thumb hereのアイコンがページごとに進化する
  • アニメーションが入ったページがあるので飽きない

しかもInstagram Storiesで小説を読むのが難しいと思われる人のためにチュートリアルの動画まで準備している。さらにニューヨーク公共図書館のIG Stories Highlightsでアーカイブされるので、いつでも読み返せる。

活用事例2:Instagram Storiesフィルター
去年末から米国では大人気になったInstagram Storiesでのフィルター。

自分は何の、ディズニー、ポケモン、セレブ、動物、。ヒップホップアーティストなのかなどをランダムで出してくれるフィルターで、そのリアクション動画を撮れるようになっている。このフィルターによって新しいInstagramスターも生まれている。フィルター自体が見つけにくいので、Google(グーグル)で「Instagram filter」の検索する人が増えている。

実際にフランス人のClément Quennesson(クレメント・ケネソン)さんが作ったフィルターが2020年1月2日から1月10日までに100万回以上使われた。彼女は「Which Baby Animal」「Which Hip Hop Artist」「Which Sea Creature」などのフィルター作ったそうだ。Which Hip Hop Artistフィルターは4日間で3500万インプレッションがある。

クレメントさんはInstagramからボットだと思われ、一瞬アカウントがバンされたこともあった。バズった後に数社のブランドから連絡が来て、フィルターを作ってくれと依頼が来ている。このようにInstagramでのセルフィー文化をうまく取り入れてその上にバズりそうなフィルターなどを作ることによってブランド認知の向上にもつなげられる。

事例3:テキスト・プレゼンの新しい共有方法?
Instagramで写真や画像ではなくエッセイを投稿する動きも出てきている。今後、エッセイやパワーポイントなどのスライドをシェアする動きが増えるかもしれない。

1年を振り返るSpotify Wrappedもプレゼン風フォーマットをInstagram Storiesに落とし込んだもの。四季別で聞いたアーティストに分けてくれたり、誰を一番聞いてたかを簡単にまとめてくれる。

既にSpotify Wrappedが人気だったが、Spotifyの素晴らしいところはそれをInstagram Stories用のサイズに自動調整してシェアできるように設定しているところ。

こちらが2013年のSpotify Wrappedだ。

引用:Jack ApplebyのTwitter投稿から

事例4:映画予告のプロモーション
Instagram Storiesで映画や番組をうまくプロモーションする事例。まず「The Gentlemen」(日本では2020年秋公開予定)の映画トレーラーをInstagram広告用にフォーマットしたもの。俳優の映像からはじめるのがうまくて面白く、なおかつ早いカットを使い、メディアからのコメントもうまく使っている。

ディズニーは自社IP(知的財産)を使って見事にDisney+番組のプロモーションをした。ザ・シンプソンズが、マーベル系、スターウォーズ風、ディズニー風のパロディーをした映像をまとめて個々のIGTV動画として出した。

事例5:1年間のまとめ
食品宅配のPostmates(ポストメイツ)は2019年の振り返りインフォグラフィックをInstagramで公開。数字の切り出し方や見せ方がユーモアで、うまくプロモーションできている事例。一番おかしい数字を出してバズらせるのはいいプロモーションだ。

事例6:マイクロインフルエンサーの活用
スターウォーズがInstagram用にイラストレーターを採用して新しい映画公開のためにさまざまなオフィシャルポスターを作ってもらった。クリエイティブのクオリティーがすごい!

この作品は、有名なクリエイティブスタジオのPosterPosse(ポスターポッセ)とコラボした作品。さまざまアーティストをコンテンツクリエイターとして活用しているのは正しい戦略だ。12月のスターウォーズのInstagramアカウントで2番目にいいねされた投稿はアートポスター投稿(53万いいね)だった。唯一勝ったのはBaby Yodaのコンセプトアート投稿だけだ。

これにより、各アーティストは自分のチャネルでも投稿できた。自分のアカウントで投稿できることによって各アーティストのフォロワーにもプロモーションできる。これでうまくクリエイターをマイクロインフルエンサーに変えている。

https://twitter.com/tmiyatake1/status/1207542502078574593https://twitter.com/tmiyatake1/status/1207542502078574593

過去には、「Pacific Rim: Uprising」(パシフィック・リム:アップライジング)の公開時でも似ているプロモーションをしていた。ストリートアーティストをうまく活用するのは今後流行りそうだ。

このまま成長し続けるか?「TikTok」

Bytedance(バイトダンス)はどのSNSよりも早く10億MAUを突破。TikTokはインフルエンサーが主流になってから初めて流行しだしたSNSだ。ただ、その成長は本当なのか、それとも作られたものなのか?

10年前のYouTube、新しいVineとして有名になっているが実際は広告で伸びている。2018年だけで10億ドルの広告費を使い、Snap、Facebook、Instagramでのプロモーションをかなりやっていた。実際に2018年に一番Snap上で広告出したのはTikTokだった。さらに、米国ではMusica.lyを8億ドルで買収によりさらに成長し、最近はSnap、Twitter、Quoraにも買収の興味を持っているらしい。

もともとZ世代のプラットフォームとして知られていたが、ミレニアル世代もTikTokにハマり始めている。しかし、面白いのはミレニアル世代ですらTikTokコンテンツが何故人気なのかがわからない子が多いこと。ただ、実際にみんなTikTokに入り込んでいるのは明らかなので、今後もかなり成長は期待できる。

最近だとFacebookも危機感を感じているのか、Facebook Messengerの広告をTikTok内に出している。

TikTokでウケるコンテンツとは?

おもしろ系やダンス、ふざけた動画、メイク動画などが伸びるが、ほかだと政治や医療系の教育動画も増えている。Z世代はTikTokは単純に遊ぶ場だけではなく、学べる場としても考えている。

ブランドとしてTikTok上でコンテンツを出す際にはかなり慎重にやるべきだ。米国のTikTokユーザーは広告っぽいコンテンツを見た瞬間スキップするので、周りのTikTokコンテンツっぽいものを出さなければいけない。NBA、Chipotle、Washington Postなどはかなりうまくプラットフォームに合わせたコンテンツを出せている。

そしてインフルエンサーを使う際にも気を付けなければいけない。TikTokの強調的ポイントは知名度とは関係なくコンテンツが広がること。コンテンツが面白ければ面白いほど広がる傾向にある。なのでフォロワーが多い人だからバズる確信はまったくない。そのインフルエンサーとうまく、その人にあったコンテンツを作るのが大事。そのため、商品紹介とかの場合は30日間そのプロダクトを使い続けてもらってからインフルエンサーキャンペーンをやるべき、そして一発ではなく何回にも渡ってやるべき。

ただ、まだTikTokインフルエンサーを活用している企業が少ないため、かなりいいチャンスだと思っている。特にコスメ系の会社とかであれば低いCACでキャンペーンを実施した実績も過去にある。

TikTokはまだ新しいので、どんどん新しい活用法が出てくる中で、幾つか面白かった事例をまとめた。

活用事例1:誰もが知りたい非日常体験レポート
Makall Lauren(マカル・ローレン)さんはディズニーのインターンプログラムに参加した際に、あることに気づいた。それはインターンの内部情報をみんなが知りたいこと。マカル氏の最初のディズニー動画がバズったときに、過去のTikTok動画をすべてアーカイブしてディズニーに特化することを決めた。

引用:Makall LaurenさんのTikTokページ

マカルさんのプロフィールに行くと、すぐに何のコンテンツを提供するかがわかる。このような1つの目的があることが重要。彼女のプロフィールを見ると、ディズニーで働いていて、ディズニーについて語るチャネルとなっている。ディズニー好きな人だと、フォローする判断はすぐにできる。

引用:Makall LaurenさんのTikTokページ

彼女の特技は圧倒的な歌唱能力。インターンとしてディズニーの内部ストーリーを語るのだけではなく、それを歌に変えることができるのが素晴らしい。これはまさにTikTokに合ったスキルセット。歌えるかの証拠はこちらの動画で、すでに500万以上の再生回数となっている。

実際に彼女のフォロワー数の成長を見ると、

  • 初期ディズニー動画(2020年1月21日):900人
  • 歌える証拠動画(2020年1月24日):4.5万人
  • フォロー感謝動画1(2020年1月28日):15万人
  • フォロー感謝動画2(2020年2月5日):20万人
  • 現在:34万人超

歌える証拠動画のテキストの使い方がうまい。動画内にオーバーレイで「ディズニーで仕事している動画が人気になった」と入れるだけで、歌える証拠動画を見た後に次に視聴者がマカル氏のページを見てほかの動画をチェックするように誘導している。インターンのストーリーと歌声のフックを作った。

Makall LaurenさんのTikTokページ

Makall LaurenさんのTikTokページ

そして何回も見れらるコンテンツテンプレートを見つけた。引越日などの何かのイベントや瞬間とそのテーマに沿ったディズニーの曲、例えば「アナと雪の女王」の「生まれてはじめて」などをうまくつなげる。

通常のTikTokクリエイターはコンテンツのトレンドに沿って新しい動画を作る。米国だとダンスや曲のカバーをしている。ただ本当のクリエイティブの人たちは新しい、ユニークな体験をオファーする。TikTokでは次の動画を見たがる、「続きは次の動画で」などのいわゆる「クリフハンガー」をよくやる。マカル氏はそれが自然とできている。各投稿は彼女のインターンとしての生活を表しているので、何が起こるのかがみんな気になるのだ。

事例2:シェアしやすい動画のダウンロード機能
ほとんどのSNSプラットフォームがエコシステム内の動画や写真をダウンロードするのを難しくしている中、TikTokは簡単にして、なおかつTikTokロゴとクリエイター名をウォーターマークを自動にして共有しやすくしている。

事例3:TikTokからの新しいソーシャルコマース
去年話題になった「OK Boomer」だが、流行のきっかけは1本のTikTok動画。ミレニアル世代やZ世代はピーターパンみたいに大人になりたくないと批判しているおじさんに対して「OK Boomer」とコメントを返した動画。

@linzrinzz

mom can you pick me up the old art teacher is going at it again #foryoupage #genz #foryou

♬ original sound – old_school_is_not_so_bad

古い世代の考え方は世界で通用しておらず、逆に多大なる問題を作り上げたとすごく簡単にまとめている。環境問題の責任を負うのは若手世代なのに、環境問題を信じない大人がいる。「世界が変わっている中、我々のやり方で世界を救ってみせる」というメッセージ性もある。

OK Boomerがコメントやミームで流行っている中、マネタイズする人たちも出ている。19歳のShannon O’Connor(シャノン・オコナー)さんがOK BoomerのTシャツをTikTokでシェアしたところ、すぐに100万円以上のオーダーが入ってきた。

引用:Official page for @toasterpancakes ok boomer shirtsから

事例4:チャレンジ文化
過去だとIce Bucket Challengeな(アイス・バケツ・チャレンジ)どバズったチャレンジは多いが、TikTokはそのコンセプトをスケールさせた気がする。ダンスチャレンジとかではよく見るが、それ以外の方法も多くの企業が考えている。中でも人気だったのはChipotleのLidFlipチャレンジだ。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
The Era of Participatory Social(Medium)
The Sound of Silence(Posthaven)
Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)

登録者数1.5億人のアバターアプリZEPETOはSnowから独立して中国を意識する

1年半前にZ世代ユーザーの間で流行した韓国のアプリZEPETO(ゼペット)を覚えている人もいるだろう。自撮り画像をアニメーションするアバターに変換して、コンピュータが作り出したバーチャルなアイテムに囲まれた世界で楽しく遊ぶというアプリだが、その流れは維持されているようだ。ZEPETOの登録ユーザーは1億5000万人に上るが、先日同社がTechCrunchに話したところによると、月ごとのアクティブユーザー数のほうが、そのアプリの性能をよく示しているという。その数は1000万人前後で推移している。

いまのところ、中国がZEPETOの最大の市場だ。中国では、親しみを込めた子どもの呼称「崽崽」(ザイザイ)という名で知られている。「崽崽は、総合的なエコシステムへの発展を志向しつつ、中国全体に強固なコンテンツを提供したいと考えています」とCEOの金大旭(キム・デウク)氏は言う。

このアプリには、その由緒正しい家柄の恩恵も受けているようだ。これは自撮りアプリのSnow(スノー)を開発した同名の企業から生まれ、その親会社はアジアのメッセージアプリの巨人LINE(ライン)を保有するNaver(ネイバー)だ。だが同社は、今月Snowから独立してNaver Z(ネイバーゼット)という子会社になった。

人々がそれに代わる新しいトレンドへと移行していく中で、人気の写真編集ツールがフェードアウトするという話は珍しくない。その理由は、新しいアプリがより魅力的な視覚効果機能を備えているか、マーケティングの妙技によって多くの人たちを魅了するかのどちらか、あるいはその両方だ。そのため、気軽に使えて便利な機能を提供することが目的のアプリは、まだ順調なうちに、ユーザーを逃がさない方法か、強力に関与して収益化を図る方法に、よくよく知恵を絞る必要がある。ZEPETOが行ったのは、その両方と言える。

自分自身とそのZEPETOキャラクターがダンスするユーザーの抖音(中国版TikTok)動画のスクリーンショット

このアプリには、特別なネットワーク機能がある。ユーザーは自分のアバターを使って匿名でバーチャル世界に暮らすことができる。「ザ・シムズ」みたいな感じだ。難題は、もちろん、人々にまた遊びたいと思わせる大きなネットワークを構築することだ。

ZEPETOでは、一連のミニゲームでも遊べる。ZEPETOのグローバルビジネス責任者であるRudy Lee(リウディー・リー)氏は、大人気の「どうぶつの森」で人々が楽しんでいるような平和な冒険と表現している。

別の見方をすると、この事業はバーチャル・アイテムがよく売れるまでに成熟している。事実、この部門の業界リーダーであるTencent(テンセント)でも、ユーザーの仮想プロフィールと仮想空間を装飾するアイテムの売り上げが収益の大半を占めていたことがあるが、それは韓国のインターネットのパイオニアであるうCyworld(サイワールド)がビジネスモデル化したものだ。TencentがWeChat(ウィーチャット)を開発し、記録的な売り上げのビデオゲームを運営して世界的な評価を得る前のことだ。

ZEPETOは、現在のところ、6億個のバーチャルアイテムを販売して1000万ドル(約10億600万円)の収益を得ている。同社は、先日、第三者のアーティストが服やアクセサリーのバーチャル・アイテムを製作して販売できるクリエイティブなマーケットプレイスを立ち上げ、この事業をステップアップさせた。ZEPETO Studio(ゼペット・スタジオ)と呼ばれるこのストアは、オープン最初の月でおよそ70万ドル(約7400万円)の売り上げを記録した。有名ブランドのアドオンも数多くある。これは写真エフェクトのアプリでは一般的な戦略だが、ナイキのバーチャル・アパレルを自慢することもできる。

「私たちは、ディズニーやナイキといった国際的なブランドや、BTSのようなセレブと提携しています。さらにエキサイティングな提携をZaiZai Studioに呼び込み続け、クリエイターたちによりよいサービスを提供できるようにします」とリー氏は、中国でのスタジオ機能が5月中旬にサービスを開始する予定に関連させて話していた。

ZEPETOでブランド展開するナイキのアパレルブランド

十分に大勢の人たちがZEPETOを使い続けたなら、第三者のストアはデザイナーにとっても儲かる商売になる可能性がある。ZEPETOには6万人のアーティストが登録しているが、もっとも多く稼いだ人の最初の月の売り上げは9000ドル(約96万円)ほどにもなった。

だが、ユーザー数が増えるにつれ、ZEPETOはそのマーケットプレイスが、みんなのものであり続けるよう気を付けなければならなくなる。同社は内部にモデレーション・チームを組織し、「バーチャル衣服に書かれる政治的メッセージ、ヘイトスピーチ、差別的メッセージなど」を排除しているとリー氏は言う。そのルールは、とくに中国での展開を意識したもので、情報の流れが厳しく統制されている中国に適応するためのものだ。

また、便利なツールとして生き残る方法としては、他のアプリの成功に便乗することを決めた。以前、我々は、VSCO(ビスコ)のライバルである写真編集アプリPicsArt(ピクスアート)が、TikTokに影響されたステッカーに対応することで生き残った話を書いたが、ZEPETOもそこに注目している。今、多くのユーザーが、アバターのアニメーション動画を、TikTokの中国国内向けバージョン抖音(ドウイン)でシェアし始めているとリー氏は話してくれた。

画像クレジット: Zepeto via Weibo

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(翻訳:金井哲夫)

TikTokが20億回ダウンロードを突破、15億ダウンロードから5か月後で達成

世界で最も評価額の高いスタートアップの1つであるByteDance(バイトダンス)によって開発された、幅広い人気を誇る動画共有アプリのTikTokは、新型コロナウイルス(COVID-19)大流行の中で自分自身を楽しませる方法を探す人々が増えているために、米国からの懸念にもかかわらず急速に成長を続けている。

モバイルアプリの動向調査会社Sensor Towerが4月29日に発表したニュースによれば、国際版アプリTikTokと中国語バージョンのDouyinのダウンロード数が、Google(グーグル)のPlay StoreとApple(アップル)のApp Storeの合計で20億回を上回った。

TikTokは、Facebookの看板アプリであるWhatsApp、Instagram、Messengerに続いて、2014年1月1日以降にダウンロード20億回を突破した最初のアプリだとSensor Towerの担当者はTechCrunchに伝えた(Sensor Towerがアプリの分析を開始したのがその日だ)。¥

Androidの開発元であるGoogleのGmailやYouTubeといったアプリは合計50億ダウンロードを突破しているが、それらはほとんどのAndroidスマートフォンやタブレットにプリインストールされた状態で出荷されている。

15億ダウンロードを超えてから、5か月後に達成されたTikTokの20億ダウンロードは、アプリの成長を評価するための重要な指標だ。

先の3月31日までの四半期で、TikTokは3億1500万回ダウンロードされた。これはすべてのアプリを通して四半期におけるダウンロード回数の新記録であり、以前2018年第4四半期に自らが達成した最高記録の2億570万回を超えている。Sensor TowerはTechCrunchに対して、ダウンロード数で2番目に人気のあるアプリであるFacebookのWhatsAppの、今年の第1四半期のダウンロード数は、約2億5000万回だったと告げた。

アプリの人気が高まるにつれ、収益も増加している。ユーザーはこれまでにTikTokに約4億5670万ドル(約487億円)を費やしており、これは5か月前の1億7500万ドル(約187億円)から増加している。この売上の多く(約72.3%)は中国内で発生したものだ。米国のユーザーはアプリに約8650万ドル(約92億2000万円)を費やしており、売上観点から見るとTikTokにとって米国は2番目に重要な市場となっている。

Sensor TowerのストラテジストであるCraig Chapple(クレイグ・チャップル)氏は、2017年に中国国外で開始され「大規模なユーザー獲得キャンペーン」を行ったTikTokほど、組織だって行われたダウンロード作戦はないと語った。しかし彼は、ダウンロード数急増の理由の一部は、新型コロナウイルスの発生によるものだと語っている、これによってこれまでにないほど多くの人びとが、新しいアプリを探すようになっているからだ。

Sensor Towerによれば、TikTokの最大の国際市場であるインドに、アプリのダウンロード数の30.3%が集中している。このアプリは、世界第2位のインターネット市場であるインドで6億1100万回ダウンロードされているのだ。

プラットフォームの観点から見ると、TikTokのダウンロードの75.5%はGoogle Playストアを介して行われている。しかし、売上の大部分はアップルのエコシステムのユーザーからのものだ。4億5600万ドル(約487億円)のうちの4億3530万ドル(約464億円)ぶんとなる。

TikTokの親会社でバイトダンスは、2年前に企業価値750億ドル(約7兆9870億円)と評価された。Bank of China、Bank of America、Barclays Bank、Citigroup、Goldman Sachs、JP Morgan Chase、UBS、ソフトバンクグループ、General Atlantic、Sequoia Capital Chinaなどもその投資家として名を連ねている。

原文へ

(翻訳:sako)

TikTokと逆行するショートムービーサービスQuibiを失敗へと導く4つの理由

2020年の現在、完全に非社交的なビデオアプリを構築しようと試みるには、大胆な自信、または無謀とも言える傲慢さが必要だ。17億5000万ドル(約1900億円)ものハリウッド資金をかけた、モバイル専用の6〜10分間の短いテレビ番組配信サービスを提供するQuibi(クイビィ)の目論みがどちらの部類に入るのかは不明だ。Quibiはアプリを人気にするためのトレンドや戦略を全て見事に無視している。同社は(平均レベルである)コンテンツ力と(必要額に足りていない)マーケティング費用だけで成功を収めることができると信じているようだ。

Quibiが大多数のスタートアップとは極端に違うことをしている事実は認める。製品と市場の適合性を考慮して似たようなものばかりを生み出す代わりに、大金をかけて洗練されたアプリを開発し、豪華なコンテンツをひそかに購入して堂々たる市場参入を目指したわけだ。

しかし、インターネットがすべてのエンターテイメントメディアに浸透する以前の、テレビが黄金時代だったころのコンセプトを引きずってしまったために、Quibiの大胆なビジネス戦略はその効力を失ってしまった。同社の製品は共有できない上に自由度が限定的で、軽快さに欠け、扱いにくく、不親切なのである。ソーシャルネットワークの要素を微塵も取り入れないQuibiのアプリは、まるでリアリティショーを宇宙から眺めているように冷たく孤独なものになっている。

Coming to Quibi

そう言った意味で、QuibiはダイナミックなTikTokの真逆と言える。TikTokは大勢に人気のコンテンツでユーザーを引きつけ、さらにそれを友人にシェアさせるという仕組みになっている。それが功を奏しTikTokはこれまでに約20億件のダウンロードを達成している。一方Quibiは、記念すべき市場参入の当日、わずか30万件しか達成できなかったのである。

Quibiが犯した過ちの概要と、TikTokの成功要因、この新ストリーミングアプリの今後の行方を下記に紹介する。

ハリウッドとユーザーのずれ

Quibiは出来損ないのケーブルテレビ番組のような感じなのだ。わけのわからないリアリティショーや脚本ドラマ、ニュースの要約などが混在している。2000年代半ばの昼時のMTVを想像してほしい。必見の番組など存在せず、「ゲーム・オブ・スローンズ」や「マンダロリアン」がやっているわけでもない。作り込み感はYouTube上のものよりは優れているものの、番組のコンセプトは実にずさんであり、目新しさはすぐに薄れてしまうだろう。

少額訴訟の裁判官になりきるクリッシー・テイゲン。メイクオーバー番組で必ずある「すごい! 信じられない!」といったセリフの飛び出す喜びの瞬間をさらに各エピソードに付き4倍ほど大袈裟に仕上げたお涙ちょうだいものの「Thanks A Million」。極め付けは、目隠しをしたシェフの前で食べ物を爆破させ、シェフがその食べ物が何だったのかを推測すると言う料理番組だ……。

放送作家が思いつきで考えたような作品ばかりなのだ。同社の番組は、VRゲームのデモ動画程度のものや、見込みユーザーのニーズを考慮することなく趣味で作ったアプリを彷彿とさせる。共同創業者のジェフリー・カッツェンバーグ氏は「ライオン・キング」や「シュレック」を手掛けた経験を持つが、同アプリのコンテンツは、ヒューレット・パッカード・エンタープライズの元CEOでQuibiの現CEOであるメグ・ホイットマンがゴーサインを出したんだなと感じさせるようなものばかりなのである。

メグ・ホイットマン

QuibiのCEOメグ・ホイットマン

タッチスクリーンのインターフェース用に構築されているにもかかわらず、今のところ型破りでインタラクティブなコンテンツはほとんどなく、6〜10分の枠内でクリエイター達が何か特別なものを生み出しているようにも見えない。各番組はやたらと詰め込まれたテレビ番組のような感じで、かつコマーシャル休憩で途切れたかのような終わり方をする。アプリを最初に使い始める段階で、好きな番組やジャンルをたずねるプロセスも搭載していない。作品数が増えるにつれて、見たい番組をすぐにを見つけることが困難になるだろう。

TikTokは真逆のアプローチを取り入れている。ハリウッドが一方的に考えるユーザーの好みを配信するのではなく、TikTokのコンテンツはユーザーから直接広がっていくのだ。ユーザー自身が面白いと感じ、友人も同じく興味を示してくれるだろうと思うものを録画する。その結果、制作費ゼロか低予算で、一般のティーネイジャーもインフルエンサーも何百万ものいいねを獲得できるような動画を作成するのである。その上ミレニアル世代やX世代以上の人々も夢中になり、彼らも同様に仲間同士で動画を作りあっている。ユーザーが閲覧しているものをアルゴリズムが常にモニターしているため、ユーザーの好みを即座に把握しておすすめの動画を推奨できる仕組みだ。

TikTokはインタラクティブなのだ。各クリップのオーディオを借りて、さまざまな層やサブカルチャー向けにミームをパーソナライズし、リミックスを作成できる。また、同アプリのスター達はデジタルネイティブであるため、ファン層と常にコミュニケーションを取り、好みに合わせてコンテンツを調整する能力を持ち合わせている。ここでは誰もがお気に入りを見つけることができ、どんなニッチなものでも存在価値があるのだ。

TikTok

TikTokのスクリーンショット

ソリューション:QuibiはDisney ChannelのYouTube世代向けネットワーク、Brat TVを参考にすべきである。若いソーシャルメディアスター達が、独自のプレミアム番組の中で小学校での生活を演じるというもので、既存のファン層のために制作されたコンテンツだ。

【情報開示】Bratの共同創設者であるダレン・ラックスマンは筆者の従兄弟である。

クリッシー・テイゲンの裁判番組にしても、20歳程若いスターを活用して、例えばTikTokの天才的スターチャーリー・ダメリオやチェイス・ハドソンにQuibiのコンテンツのコンセプト化を任せれば、彼らが大勢のファンを連れてきてくれることだろう。スマートフォンの対話性を活用したファン投票のゲーム番組や「Choose Your Own Adventure」(きみならどうする?)のコンセプトを強化したようなものにするべきだ。昼時間帯のテレビ番組のような作品を作らないクリエイターを見つけてQuibiを差別化するとともに、ユーザーがアプリをダウンロードする際に何を見たいかを尋ねたらいいのだ。

スクリーンショットが獲れない

これは率直に言ってふざけている。Quibiのスクリーンショットを撮ると真っ黒の画面として写し出されるのだ。これではミームが作れない。Quibi作品のシーンをジョークのネタにできなければ、どこにもシェアされずNetflixのタイガーキングのようにその時代の文化を反映する象徴的存在になることもできない。NetflixやDisney+などのモバイルストリーミングアプリもスクリーンショットをブロックしているのだが、ウェブ版を使用すればスナップしてシェアすることが可能だ。プロデューサーからコンテンツのライセンスを取得するという協定を構築し、コンテンツが出回ることを阻止したのはQuibiの犯した大きな過失である。

Quibi vs TikTok

一方TikTokでは、アプリの透かしは付くもののデフォルトで動画をダウンロードして好きな場所で共有できるようになっている。これこそがTikTokの傑出した成長の起爆剤だ。TwitterやInstagramで共有され、閲覧者は同アプリへと誘導されるのである。その結果、TikTok動画を集めたものがYouTubeに誕生し、流行のジョークやダンスの人気を拡大し長引かせるリミックス文化が生まれているのだ。

解決策は、Quibiがスクリーンショットを許容すること。ネタバレや著作権侵害のリスクはほとんどない。協定で禁止されているのであれば、ダウンロードして共有できる事前承認済みの各エピソードのスクリーンショットやビデオクリップや予告編を提供するべきだ。アプリ内のプレスキットのようなものと考えたら良い。ミームを作成するための完璧なスクリーンショットをとる事が許可されなくても、こうすれば少なくとも他のソーシャルネットワークで番組のネタを話題にすることができる。

のろのろしたペース

モバイル上で人々は、より面白いものを求めて、常にスワイプをし続ける。指先をチャンネルの変換ボタンに置いたままテレビを見ているようなものだ。最近の映画の予告編が、最も重要なシーンが早送りされたようなコラージュ映像から始まるパターンが多いという事実に気付いたことはあるだろうか。ところがQuibiは、「猟奇島」や「サヴァイヴ」のようなゆったりとした構成のドラマで宣伝するのが好みのようで筆者は退屈して早送りする羽目になった。自宅のソファでさえその状況だ。忙しい外出先で空いた1〜2分を埋めるのにスローペースのコンテンツは必要なく、ユーザーは代わりにInstagramやTikTokを開くことになるだろう。

ホーム画面をスクロール中に番組を通過した際、トレーラーや最初のエピソードが自動再生されることもない。Quibiでは番組の抜粋を再生する前に、静止したインタータイトルが2秒間表示されるのだ。これでは新しい番組を探すのが余計に煩わしくなる。

TikTokは即時性に優れている。クリエイターたちは、動画がつまらなければユーザーが一瞬にして次へとスワイプしてしまうことを心得ている。笑顔や衣装、大胆なキャプションやクレイジーな状況を用いて、最初の1秒でユーザーの心をつかむのだ。これによりユーザーの側でも自分の興味のないものをすぐに判断して簡単に却下できる上、TikTokのアルゴリズムにはユーザーの好みに関するデータが蓄積される。たった30秒のコンテンツでも、この上ない喜びを得る事ができる。TikTokと比べるとQuibiのうたう「Quick Bites」は人手の足りないレストランのように感じるのである。

ソリューション:番組のプレビューでユーザーを引きつけられるよう、クリエイターを教育すべきである。Quibiのホームページで番組カードをタップするとすぐに番組そのものが再生される仕組みのため、ティーザーを最初のエピソードに組み込む必要がある。または、埋め込みの専用のショーページや、多くの人がホーム画面で操作するプレビューカードなど、トレーラーを表示するためのボタンが必要だ。そうしなければ、いつまでたってもユーザーはどのQuibiの番組が自分の好みかを知る事ができない上、今後何を表示して欲しいかを伝える事ができない。

アンチソーシャルなビデオ

Quibiはセカンドスクリーンの可能性を全て無視している。スクリーンショットを禁止しているため話題性を呼ぶことが難しく、その上アプリ内で話し合ったり広めたりできるような組み込みのコメントやメッセージ機能も存在しない。Twitterにエピソードのリンクを貼っても、プレビューボックスに番組名が表示されることもない。また、番組独自のソーシャルアカウントもないため、ユーザーに視聴を促すような機会もない。

自分が見ているものを友達にフォローしてもらったり、自分のおすすめを表示したりするような機能はどこにもない。人気番組のランキングも、タイムスタンプ付きのライブストリーム式のアノテーションも存在しない。スマートフォンの周りに群がらない限り友人と一緒に視聴することができないTVアプリの欠点を補うための、共同視聴の同期機能さえもない。

Quibiは宣伝広告だけで充分だと思っているようだ。何らかのコンテストで勝者がカメオ出演的なメッセージを受け取ったり、お気に入りのスターとチャットできたりするようなことも可能だろう。Snapchatの「Cameos」機能のようなディープフェイクスタイルで、ユーザーの顔を俳優の頭に入れ替えてシーンを共有するようなことも可能なはずだ。ユーザーが出演者に質問を投げかけられる、アプリ内の円卓会議のようなものも主催できたはずだろう。まるで「Web 2.0」が起きなかったかのようだ。

一方でTikTokは考えられる限り全てのソーシャル機能を駆使している。すべての動画をフォロー、いいね、コメント、メッセージ、ライブ、デュエット、リミックス、ダウンロード、共有できる。人気の課題に参加するようユーザーを促し、またユーザーがTikTokに戻ろうと思っていない場合でも、前述のソーシャル機能からの通知が届いたり、透かし入りのクリップが他のネットワークに現れたりする。同アプリのすべては、コンテンツが大衆文化の中心に置かれるよう設計されているのだ。

TikTok Duets and Challenges

解決策としては、Quibiは我々がモバイルで視聴しているからといって動画が単独の体験であるわけではないことを理解する必要がある。最初に、ソーシャルコンテンツの検出オプションを追加してどの友達が視聴しているのかをわかるようにしたり、人気番組のランキングを表示したりするべきだ。新エピソードがどんどん配信されるような番組は特に、その番組について誰かと話せる方が楽しいに決まっている。

最終的には、アプリ内のセカンドスクリーン機能を搭載するべきだ。コメントをシェアできる場を作り、各エピソードの最後のクレジットが流れている間に人々がそのコメントを読めるようにして、皆がユーザー同士のコミュニティーにいるような感覚をもたらすのだ。

Quibiの今後の可能性

Quibiが残念である最も大きな理由は、従来通りの方法で制作されたプレミアムコンテンツとスマートフォンにおける我々の新たな使用方法を上手く融合させることにより、同アプリが斬新なものになり得る可能性が大いにあるという点だ。しかし今のところ、全ての番組が2つの幅で撮影されているためいつでも横長モードと縦長モードに切り替えることができるという点以外は、ケーブルTVのチャンネルが雑然と詰め込まれ縮小されたものにすぎない。

INDIA MEDIA TIKTOK

2020年2月14日、ハイデラバードの自宅のテラスでTikTok動画を作成するため携帯電話のカメラの前で演じる若者たち(撮影:NOAH SEELAM / Getty Images、AFP)

Quibiの数少ない長所を伸ばすとすれば、Ryan Vinnicombe(ライアン・ビニコム、別名InternetRyan)が言うとおり、毎日リリースされる新エピソードによるコンテンツの連載化を用いて待ち遠しさを高めるという点だ。従来のストリーミングサービスを介したビンジウォッチでは、緊張感やファンの推測が構築される前に見終えてしまうし、後から見始めたとしても番組がまだ人気のうちに追いついてしまう。次のエピソードを1週間ではなく1日しか待たなくていいという特徴は、Quibiにとって目玉機能になる可能性があるだろう。

TikTokの課題は、連載によって待ち遠しさを生み出すことができていない点だ。1つのビデオの中でギャグや辻褄の合わない発言が展開され、視聴者はそれを理解できることを期待して待つ。しかしクリエイターは数分間の動画を作成し、それをいくつかのパーツに分割することでフォロワーを巻き込み、フォロワーは次の展開を視聴するためにサブスクライブすることになる。ところがTikTokは常にタイムスタンプを表示したり、以前の動画をホーム画面に表示したりするわけではないため、パート2を見つけるのは非常に面倒な場合が多い。またクリエイターがそれをリンクする良い方法もない。TikTokは、Quibiのマルチエピソードコンテンツから学ぶ点があるだろう。

Quibi App Chart

しかし現在のQuibiは、すでにウェブ上に存在する無料のものや、Netflixにて有料で提供されているサービスをミニチュア化して機能を低下させたバージョンとしか感じられない。広告付きは月額4.99ドル(約540円)、広告なしは7.99ドル(約860円)のQuibi。必見の番組や、斬新でインタラクティブな体験、思い出を作るようなソーシャル体験を提供せずにこの価格をチャージするのは法外と言えるだろう。

Quibi が成功したと言えるのは、どれだけ人々が90日間の無料トライアルをキャンセルし忘れるかを検証した点かもしれない(実際にキャンセルをし忘れる人は非常に多い)。うっかりしたサブスクライバーと熱狂的なセレブファンがもたらした初日の30万回というダウンロード数が、Quibiが今後より多くの現金を調達するのに十分な牽引力をもたらし、生き残りのために製品を社会に適合させ、フォーマットを活用するようクリエイターを教育するのに十分な期間を与えた、と楽観的にとらえる事もできる。

しかし、App Storeでのランキングは急速に下落しており、Sensor Towerによると開始当日の月曜日の総合4位から昨日には21位へ落ち込み、合計ダウンロード数はわずか83万件とのことだ。魅力的なコンテンツがなくバイラル性がなければ、今後話題になる可能性は低い。人気番組のプロデューサーらはひっそりと立ち去るか適当な仕事をし、その結果人々はよそでショートビデオを楽しむと言うことになりそうだ。

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(翻訳: Dragonfly)

TikTokが新型コロナ救済基金に270億円拠出、135億円ぶんの広告クレジットも提供

ショートビデオアプリのTikTokは4月9日、新型コロナウイルス(COVID-19)対応の最前線で働く人、教育者、そして新型コロナウイルスの影響を受けている地域のコミュニティのサポートに2億5000万ドル(約270億円)超を拠出し、公衆衛生機関やビジネス再構築を図る事業所向けに1億2500万ドル(約135億円)分の広告クレジットを提供すると発表した。こうした資金の一部はCDC(米疾病予防センター)やWHO(世界保健機関)のような主要な衛生機関に向けられる一方、残りは個人や中小企業のサポートにあてられる。

2億5000万ドルの方は、TikTokヘルスヒーロー救済基金、TikTokコミュニティ救済基金、そしてTikTokクリエイティブラーニング基金の3つに活用される。

この中ではヘルスヒーロー救済基金向けが最も大きく、1億5000万ドル(約163億円)が医療従事者や物資の確保、ヘルスケアワーカーの救済に充てられる。このうちの1500万ドル(約16億円)が地方自治体を通じて膨れ上がっている新型コロナ対応スタッフをサポートするためのCDC基金に向けられる。そして1000万ドル(約11億円)がWHOのCOVID-19連帯基金向けだ。

加えて、中国インターネット大企業ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは、同社の従業員マッチングプログラムで赤十字社やDirect Reliefのような非営利組織を手伝うと述べた。

TikTokはまた、マスクや個人保護備品をインドやインドネシア、イタリア、韓国、米国の病院に届けるためにさまざまなパートナーと協力しているとも話した。例えば、TikTokは今月始めにインドの最前線で働く医師やスタッフを守るために医療用防護スーツ40万着とマスク20万枚を寄贈したと発表した。

一方、TikTokコミュニティ救済基金はCOVID-19の影響を受けている脆弱なコミュニティに照準を当てている。

この取り組みでは、ミュージシャンやアーティスト、看護師、教育者、家族などを含むTikTokユーザーコミュニティの人々を支えている地元の組織に4000万ドル(約43億円)を現金で提供する。すでにAfter-School All-Starsへの300万ドル(約3億円)の寄付に使われた。After-School All-Starsはこれまで学校の給食に頼っていた家族に食料を提供している。そして、暮らしが滅茶苦茶になったアーティストやソングライター、音楽のプロをサポートするMusiCaresに200万ドル(約2億円)が提供された。

TikTokコミュニティ救済基金の一部として、TikTokは1000万ドル(約10億円)の寄付をコミュニティとマッチングする。

3つめのTikTokクリエイティブラーニング基金は、教育者や専門家、遠隔授業に取り組んでいる非営利組織に5000万ドル(約54億円)を提供する。TikTokは自らをクリエイティブリモート学習の場にするようだが、まだ詳細は明らかにされていない。

基金以外の部分では、TikTokは公衆衛生機関や零細企業に広告クレジットを提供する。

NGOや信頼できるヘルス関連団体、地元当局に2500万ドル(約27億円)分の「フィード内」広告スペースを提供し、重要なメッセージを何百万という人々と共有できるようにする。GoogleFacebookTwitterを含む他のテック大企業もそれぞれのプラットフォームで同様の取り組みを展開している。

TikTokはまた、WHOやIFRC(国際赤十字赤新月社連盟)などの代表、科学教育者Bill Nye(ビル・ナイ)が公衆衛生や科学について語るライブストリームを流すなど、他の方法でも教育情報を広める取り組みをしていると述べた。それからTikTok内にCOVID-19 Resources Page on TikTok’s Safety Centerという専用セクションも設けた。加えて、#HappyAtHomeといったキャンペーンのクリエイターとも提携した。#HappyAtHomeは金曜日の米国東部標準時間午後8時/太平洋時間午後5時(日本時間土曜日朝10時)にストリーミングしていて、ウィークデーに他のテーマでもストリームする計画だ。

またTikTokは、今後事業を立て直す中小企業向けに1億ドルぶん(約108億円)の広告クレジットを提供する。事業再開は公衆衛生当局の判断にかかっているため、この取り組みはまだ始まっていない、と同社は説明した。

「皆にとって困難な時だと理解している」とTikTokの会長 Alex Zhu(アレックス・ジュ)氏は声明文に書いている。「この困難な時に立ち向かっている世界中の企業、政府、NGO、そして一般の人々と共に、できる限りの支援を行うことを約束する。共に取り組むことで、危機を耐え、より良いコミュニティをつくり、そして我々が望んでいる世界が以前にも増して共通の目的で団結できるようになる」とジュ氏は述べた。

画像クレジット: Anatoliy Sizov / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

シュワルツェネッガー氏の慈善団体にTikTokが3.3億円を寄付、新型コロナの影響による子供の食事支援のため

中国メディア企業のBytedance(バイトダンス)傘下でソーシャルメディア大手のTikTokは、慈善団体のAfter-School All-Stars(ASAS)に300万ドル(約3億3000万円)を寄付すると発表した。この団体は俳優でカリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツェネッガー氏が創立したもので、この寄付金で新型コロナウイルス(COVID-19)の影響から公立学校が休校になり食事が難しくなっている家庭を支援する。

TikTokは米国時間3月19日に発表した声明で「ASASの支部がある米国60都市の家庭に、フードのバウチャーと、地元の食料品店で食料やその他の必需品の購入に使えるギフトカードを提供する」と述べた。

TikTok U.S.のゼネラルマネジャーを務めるVanessa Pappas(バネッサ・パパス)氏は、声明で「誰もが不安定な時期を過ごしていて、地域とグローバルの両方のコミュニティにおいて助けを必要としている人たちのために協力することがこれまでになく重要だ。ASASに対するこの支援は、より多くの学生が安全に食事の支援を受けられるようにするためのものだ。これだけで現在の状況による影響を緩和することはできないが、我々は社会的距離をとる必要性、仕事、登校できない子供のケアの間で不安を抱える保護者に安心してもらえるよう願っている」とコメントした。

ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、ニューアーク、サンフランシスコ、シアトル、ワシントンなど、感染拡大で大きな影響を受けている都市の支部に、支援が提供される。この取り組みには、Food Land、Giant、Kroger、Publix、Ralphs、Safeway、Target、Walmartなどの企業が協力する。

TikTokは、食事の支援をさらに増やせるように、TikTokの従業員がASASに寄付をすると最大100万ドル(約1億1000万円)のマッチングギフトを提供することも発表している。

シュワルツェネッガー氏は「重大な局面においては早急な支援が不可欠で、最も弱い立場にある人々を助ける新しい方法を皆が考える必要がある。ASASのプログラムは休校に伴い休止しているが、我々は年間10万世帯への支援を続ける。私がASASを創立した1992年から常に、目標は支援を最も必要としている家族をサポートすることだった。TikTokの寄付により、支援を必要とする家庭に対して食料品やそのためのギフトカードを安全に提供する事業に優先して取り組めるようになり、深く感謝している」と述べている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

米政府職員の仕事用携帯でTikTok使用を禁止する法案を上院議員が提出

米上院議員のJosh Hawley (ジョッシュ・ホーリー、共和党・ミズーリ選出)氏とRick Scott(リック・スコット、共和党・フロリダ選出)氏は、3月12日に政府のデバイスでの人気バイラルビデオアプリTikTok使用をさらに制限する法案を提出した。

この法案は、米政府が職員に貸与しているデバイスの安全を確保するためにTikTokの使用を禁止するという、すでに導入されているガイダンスを拡大するものだ。中国で開発されたテックソフトウェアやデバイス、部品を使用しているプロダクトが中国政府の監視下に置かれているのではという懸念から、そうしたものの使用制限を模索する米議員による最新の動きとなる。

アジアを拠点とするソーシャルアプリはグローバル展開において苦戦しているが、TikTokはあっという間に全世界で10億人ものユーザーを獲得し、FacebookやYouTubeといった米国の名だたるソーシャルメディアと同じくらいお馴染みの存在になった。TikTokは北京拠点のテックスタートアップByteDanceが所有している。

ByteDanceの成長は緩やかになってきているようだが、TikTokの広がりに対してホーリー氏のような対中国強硬論者の間では警戒が強まっている。同氏は、TikTokが中国政府にデータ共有を強制されるかもしれない、と警告している。法案提出を説明するリリースの中で、スコット氏はTikTokを「我々のネットワークへのリスクであり、国家安全への脅威」と形容した。

「多くの政府機関がすでに、TikTokは米国にとって大きなセキュリティリスクであり、政府のデバイスで使用すべきではない、と認識している」とホーリー氏は説明する。

この法案提出と時期を同じくして、トランプ政権は米国内で使用される中国のテクノロジーを抑制しようと、政府機関が外国製のドローンの購入を禁止する大統領令草案を準備している。

 

関連記事:米国が外国製ドローンの政府使用を禁止へ

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(翻訳:Mizoguchi

TikTokの運営のByteDance日本法人が経団連入り

スマートフォン向け短編動画のプラットフォーム「TikTok」(ティックトック)を運営するByteDance(バイトダンス)の日本法人(ByteDance株式会社)は3月12日、2月3日付けで日本経済団体連合会(経団連)に入会したことを明らかにした。

ByteDanceは中国のネット企業で、TikTokのほか、AIを活用したニュースサービスである「今日头条」(今日頭條、Toutiao)を運営している。2017年11月に米国で人気のソーシャルメディアプラットフォームだった「musical.ly」を買収し、現在はTikTokとサービス統合している。

日本法人では、TikTokのほか、2019年10月に、コミュニケーション、スケジュール管理、オンラインドキュメント、クラウドスペース、アプリセンターなどのツールをまとめた統合型オフィスコラボレーションツールの「Lark」をリリース。

関連記事:TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに、Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

同社は経団連に入会した目的として、Society 5.0 for SDGsの実現への貢献、日本の社会課題の解決への寄与、日本経済活性化に向けた活動への参画の3つを掲げている。今後TikTokがメインユーザーの若年層はもちろん、日本の文化にどのように浸透していくのか注目したい。

RedditのCEOがTikTokは基本的にパラサイト的と批判

TikTokは今や最もホットなソーシャルメディアのひとつだが、米国のニュースメディアであるRedditのCEOはこの人気アプリに厳しい言葉を投じ、米国時間2月26日に開催されたあるイベントで「基本的にパラサイト(寄生虫)的だ」と評した。

RedditのCEOで共同創業者のSteve Huffman(スティーブ・ハフマン)氏が、Facebookで公共政策を担当したElliot Schrage(エリオット・シュレージ)氏と同じく元Facebookのプロダクト担当副社長だったSam Lessin(サム・レッシン)氏とのパネルディスカッションに登場したときのことだ。TikTokの機能のイノベーションに関する短い会話の中でハフマン氏は、シリコンバレーのスタートアップはこのアプリから何かを学ぶべきだという説に強く反発した。

彼は「今言ったことを後で後悔するかもしれないけど、彼らのような考え方はできないね。あのアプリは基本的にとてもパラサイト的に見える。つねにリッスンしているし、あのフィンガープリンティング技術は恐ろしい。あんなアプリを自分のスマートフォンにインストールする気には、なれないよ」と語った。そして、「ほかの人たちにも強く言っている。あんなスパイウェアをインストールしてはいけないよ、って」と付け加えた。

ハフマン氏が登壇した、Lightspeed Venture PartnersとLessinのVC企業であるSlow Ventures主催の「Social 2030」カンファレンスには、シリコンバレーの投資家や起業家たちがたくさん集まった。そのテーマは、次の10年間、すなわち2030年代のソーシャルアプリのトレンドを探ることだった。

同氏のコメントは、TikTokがユーザーのアクションを追跡するやり方に対する批判だった。このソーシャルメディアアプリはカンファレンスの至るところで話題になったが、レッシン氏が「あのアプリには注目すべきイノベーションがたくさんある」と言ったのに対し、ハフマン氏はTikTokを厳しく批判した少数派の一人だった。

TechCrunchは今、TikTokの開発元であるByteDanceにコメントを求めている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TikTokが子供のアプリ使用を制限する新ペアレンタルコントロールを導入

TikTokは2月19日、「ファミリー・セーフティ・モード」という新ペアレンタルコントロールの導入を発表した。これは親がティーンエイジャーの子どものTikTokモバイルアプリの使用に制限を設けることが可能にするためのもの。スクリーンタイム管理のコントロール、ダイレクトメッセージの制限、不適切なコンテンツの表示を制限するモードなどを備える。

TikTokによると、ファミリー・セーフティ・モードを利用できるようにしたい親は最初にアプリで自分のアカウントを作らなければならない。このアカウントは子供のアカウントにリンクされる。利用可能な状態になったら、親は子どもが毎日TikTokアプリに費やすことのできる時間や、ダイレクトメッセージを送受信できる相手の制限や排除、不適切なコンテンツの表示を制限するモードなどをコントロールできるようになる。

はっきりさせておくと、これらの機能はすでにユーザー本人が自分のために利用することができる。新ファミリー・セーフティ・モードは単に親や保護者がティーンエイジャーのスイッチをオンにしたりオフにしたりといった設定をできるようにするものだ。親が関与しないところで子どもが変更することはできない。

TikTokがどのようなスクリーニングプロセスを採用しているのか説明がないため、制限モードがどれくらいうまく機能するのかははっきりしない。ただ、TikTokほどのスケールで展開されているアプリの場合、大部分は不適切なビデオにフラッグを立てるユーザーに頼っていることが考えられる。また制限モードはユーザーエクスペリエンスをコントロールする単純な手段とはならないことを親は認識すべきだろう。

新ペアレンタルコントロールは実際にはユーザーが自分のために使用できるコントロールのサブセットにすぎない。例を挙げると、ユーザーはアカウントをプライベートにしたり、コメントやデュエットの可否をオフにしたりすることができる。

ただ、ペアレンタルコントロールはTikTokアプリの常習性や届いたコンテンツ、親がモニターできないプライベートメッセージに対する親が持つ最大の懸念にいくらか応えるものだ。

今回の導入は、政府当局によるTikTokへの監視の目が厳しくなっていることを受けての動きだ。TikTokは北京拠点のByteDanceが展開している。

2019年に米連邦取引委員会は、米国の児童プライバシー法COPPAに違反したとしてMusical.ly(ByteDanceに買収されたアプリ)に570万ドル(約6億3000万円)の罰金を科した。また英国でTikTokは、子どものデータ保護をめぐってGDPRに違反した疑いで情報コミッショナーオフィス(ICO)の調査を受けている。

この新ペアレンタルコントロールはまず英国で今日から利用できる。これは偶然ではない。今後数週間のうちに他のマーケットでも展開するとTikTokは話したが、どこで展開するのか具体的に示さなかった。

しかしペアレンタルコントロールは欧州の法律を念頭にデザインされている。米国ではTikTokは若いユーザー向けの年齢証明を導入しているが、親向けのコントロールはない。

ファミリー・セーフティ・モードの立ち上げに加え、TikTokは端末使用時に休憩をはさむようユーザーに勧告するためにスクリーンタイム管理についてのセーフティビデオ制作でクリエイターと提携した。ビデオはTikTop Tipsビデオ集に加えられ、本日から英国で閲覧できるようになる。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

「TikTokの可能性を信じて全張りする」TikTok特化のMCN、Nateeがアカツキなどから資金調達

左からアカツキ「Heart Driven Fund 」パートナーの石倉壱彦氏、Natee取締役COOの朝戸太將氏、同代表取締役の小島領剣氏、「Heart Driven Fund」ヴァイスプレジデントの熊谷祐二氏

スマートフォンやSNSを含むインターネットの普及によって「個人が作成したコンテンツ」の存在感が増してきた。ユーチューバーを筆頭に影響力を持つ個人が次々と台頭してくるのに伴い、彼ら彼女らの活躍を支えるMCN(マルチチャンネルネットワーク)も複数のプレイヤーが登場し、しのぎを削っている。

国内のMCNと言えば2017年に東証マザーズへ上場したUUUMがその代表格だけれど、今回紹介するNateeは「TikTok」に特化したMCN。つまりTikTokの領域においてUUUMのようなポジションを確立しようとしている。

そのNateeは2月5日、アカツキをはじめとする複数の投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。同社では2019年5月にシードラウンドで複数の投資家より約1800万円、同年10月にプレシリーズAラウンドでアカツキより約5000万円を調達済み。デットも含めると累計で約7500万円を調達している。

同社に出資している投資家リストは以下の通りだ。

  • アカツキ(同社の投資プロジェクトであるHeart Driven Fundから)
  • East Ventures
  • 野口圭登氏
  • 森本千賀子氏
  • JJコンビ
  • 匿名の投資家複数人

中国版のTikTokから刺激を受けてTikTok特化のMCNに

NateeはビズリーチでエンジニアとしてスタンバイやHRMOSに携わっていた小島領剣氏(代表取締役)とリクルートキャリア出身の朝戸太將氏(取締役COO)が2018年11月に創業したスタートアップだ。

ファウンダーの経歴だけ見るとHRTechの事業をやっていそうな気もしてくるけれど、彼らが選んだのはグローバルで急速に成長を遂げているショートムービーアプリのTikTokだった。

「中国版のTikTok(Douyin)を見た時にこれはやばいなと。検索による能動的なインターネットが終わって、レコメンドによる自動的なインターネットの時代が来た。まさにテレビの世界がモバイルでもようやく実現されたんだなと感じた。レコメンドエンジンの優秀さや(開発元の)ByteDanceの技術力も含めて、YouTubeやInstagramに並ぶようなサービスになると大きな可能性を感じた」(小島氏)

Nateeのミッションは「人類をタレントに!」。「自己表現をしながらありのまま生きる人たちを増やしたい。その人たちがもっと稼げるような環境を作りたい」(小島氏)という思いから、TikTokにフォーカスしたMCNという道を選択した。

ちなみに小島氏は学生時代に教育領域で一度起業を経験。当時から同じようなテーマを掲げていたため、ドメインや手段こそ大きく異なるものの、やりたいこと自体は以前から変わっていないそうだ。

現在Nateeでは数十万人のフォロワーを抱える人気TikTokerを含め、約120名のタレントを抱えている。年齢層は10代から30代まで幅広く、ジャンルも美容やスポーツ、お笑いなど様々。中にはトイプードルもいて、所属タレントのフォロワー総数は1500万人近くに上る。

特にNateeが重視してきたのが「しっかりと売れる人を育てること」(小島氏)。知っている人も多いとは思うけれど、現在日本で提供されているTikTokと中国のDouyinでは機能が異なり、中国版でのみ搭載されているものがいくつかある。たとえばECやライブ配信の仕組みがそうだ。

小島氏が重要視するのがTikTok上でモノを売れるEC機能。現在TikTokのMCNではフォロワー数を基にした純広告が主なマネタイズ方法になっているが、今後クライアントが「それが本当に効果に結びついているのか」をよりシビアに追求するようになれば、純広告だけでは思うような収益をあげられない可能性もある。

それもあって、ゆくゆくはTikTokにEC機能などが入ってくることも見越して、しっかりと活用できるようなタレントを今の段階から育てているのだという。

創業から1年ほどが経過し徐々に基盤が整ってきたため、昨年の秋頃からは広告営業もスタート。まだまだ規模は大きくないものの、すでに複数のナショナルクライアントとも取引がある。また1月にはTikTokの公認MCNとして契約を締結した。

徹底的なテックドリブン武器に成長

Nateeの特徴の1つは「徹底的なテックドリブン」であることだ。小島氏がエンジニアということもあり、初期から自社でタレントのアサインツールや動画アクセス解析ツールなどを内製。これを用いて有望なタレントをいち早くスカウトしたり、制作したコンテンツの分析やチューニングに力を入れたりしながら着実に事業を伸ばしてきた。

TikTokのMCN自体は国内でも複数のプレイヤーが存在するが、エンタメ業界がアナログな要素が多い業界でもあるため、テクノロジーに秀でた企業は少ない。企画やキャスティングに強みを持つMCN(事務所)が多い中で、クリエイティブ制作や広告・アカウント運用、効果測定までをワンストップでできるのがNateeの強みになっている。

「インフルエンサーをキャスティングして何らかの投稿をした場合、『再生回数はこのぐらいでした』で終わってしまいがち。自分たちはたとえば背景の色やテロップの色を変えたらどうなるのか、といったように細かい改善と分析を繰り返しながら、データを基にクリエイティブの勝ちパターンを探っていくような取り組みを続けている」(小島氏)

現在は案件管理などのオペレーションを効率化・自動化する社内ツールも開発中だ。MCNは案件やタレントの数が増えるに伴ってオペレーションコストも増加しやすい構造だが、Nateeではそこにテクノロジーを取り入れることで、より効率的に運営できる体制を作ろうとしている。

外からは見えづらいが、中ではゴリゴリとテックを活用している点が同社の面白いポイントの1つかもしれない。

TikTok×MCNで確固たるポジションの確立目指す

2018年11月の創業から1年強、TikTokに特化したMCNとして事業を拡大してきたNatee。2020年1月にはTikTokの公認MCNになった

今回実施した資金調達は主に組織体制の強化が目的。広告営業やタレントマネージャーを中心にメンバーを増員しながらクライアントとのタイアップに力を入れるほか、上述した社内ツールの開発などを進める。規模が大きくなってきたこともあり、コンプライアンス面の教育も含めて良質なタレントの育成にも一層力を入れる方針だ。

中長期的には日本のタレントやIPがグローバルでも活躍できるようにするのが1つの目標。すでに半年ほど実験的に中国チームを動かしているそうで、一部のコンテンツを中国語に翻訳してDouyin上で配信する試みも始めた。数年後には海外の売り上げ比率を全体の50%ほどまで高めたいという。

MCNは一定のブランドを築ければネットワーク効果が働き、有望な人材が次々と集まってくる可能性も高い。そういう意味では1社だけが勝ち残る訳ではないものの「Winner takes allになりやすい市場」(小島氏)であり、NateeとしてはしばらくTikTok1本に絞って勝負をしていくつもりだ。

「現状ではTikTokはマネタイズが難しいプラットフォームであり、YouTubeなどと繋げて運用している企業も多い。ただ自分たちはその可能性を信じて、TikTokに全張りする。MCNは人が人を呼ぶモデルであり、『あの人がNateeに所属しているから』という理由でタレントが集まる事例が徐々に生まれてきた。市場を取り切るなら今年が勝負だと思っているので、TikTokと心中する気持ちでチャレンジしていきたい」(小島氏)

リップシンクのDubsmashが驚異のカムバック、月10億ビューでショートビデオの2位に

リップシンクアプリのDubsmashは瀕死の状態だった。2015年に今は亡きVineと同様、クチコミでいっとき盛り上がったものの、ユーザー数の減少が続いた。

リップシンクはカラオケの逆で、楽曲や映画の1シーンなどを素材として、その音声に合わせて自分の口パクのショートビデオを撮るというものだ。問題は当時Dubsmashには作成したリップシンクビデオを投稿する場所がないという点だった。単にリップシンクのビデオを作るだけのツールでありInstagramのようなソーシャルプラットフォームではなかった。

そこで2017年にDubsmashの3人の経営陣は会社を根本的にリストラすることを決めた。Lowercase Capital、Index Ventures、Raineから得た1540万ドル(約16億7150万円)の資金で再出発し、本拠もドイツのベルリンからニューヨークのブルックリンに移した。これは主たるユーザーの環境に少しでも近づこうとしたためだという。実はDubsmashを愛用していたのはアメリカのアフリカ系ティーンエージャーだった。当時人気が急上昇し始めたインディーのヒップホップの音声にセルフィービデオをダビングしてあたかも自分が歌っているような雰囲気を楽しんでいた。

Dubsmashはベンチャー資金によって新たに15人のチームを組織し、プログラミングに1年かけてDubsmashの新バージョンを開発した。こちらはTwitterのようにユーザーのフォローが可能で、現在人気になっているコンテンツを知るためのトレンドや発見といったタブも用意されていた。これは最大のライバルであったMusicallyの人気が上昇し、中国のByteDanceが買収に踏み切った時期だった。Dubsmashにはチャット機能はあったが、ARフィルターやトランジションの編集機能がなかった。しかしDubsmashは複数のトラックをリミックスするという他のサービスにない重要な機能があった。

Dubsmashの共同創業者でCEOのJonas Druppel(ジョナス・ドルペル)氏は私の取材に対して「ベルリンにいては十分なユーザーアクセスが得られなかった。(リストラとブルックリンへの移転は)リスクが大きい決断だったが、ライバルの動向、マーケットの規模を考えると他に方法がなかった」と述べた。

一度不振に陥ったソーシャルアプリが復活する例はほとんどない。復活を遂げたと賞賛されるSnapchatの場合も、1億9100万人のユーザーのうちわずか500万人を失っただけだった。

Dubsmash(未公開テスト版)

ところがDubsmashの場合は最大のライバルが救世主になるという巡り合わせとなった。2018年8月にByteDanceがMusicallyを買収してTikTokに統合、ショートビデオのプラットフォームを目指した。こうしたショートビデオには、それまでSnapchatやInstagramにアップされていた身の回りの日常を撮って友達と共有するようなビデオに比べて、ずっと凝っており、あらかじめ脚本を用意し、練習を重ねたダンスや演技を見せる作品が多くなった。このショートビデオ・ブームによって新しいDubsmashにもガリバー旅行記の小人国の軍隊のように巨人を打ち負かすチャンスが生まれた。もちろんこれには密かに実施されたベンチャー資金ラウンドの成功も追い風となった。

その結果、Dubsmashは月間ビュー10億回という人気サービスにカムバックした。

Dubsmashはリストラで新しい会社、新しいアプリを作ってカムバックに成功した

Dubsmashの共同創業者でプレジデントの Suchit Dash(スチット・ダシュ)氏は私のインタビューに答えて。「コンシューマー向けアプリの競争はきわめて激しいので我々が成し遂げたようなカムバックはまず起きない。一度不振に陥ればそのまま忘れられてしまうのが普通だ。我々は会社をドイツから米国に移し、まったく新しいメンバーによる開発チームを組織し、ゼロから新しいプロダクトを作って公開した。いわば第2の人生だ」と述べた。

App Annieのデータによれば、Dubsmashは今や米国のショートビデオ市場におけるインストール数の27%を占め、TikTokの59%に次ぐ2位だ。米市場におけるアクティブユーザー数で言えば、TikTok以外のユーザーの73%がDubsmashだという。Trillerが23%、Fireworkが3.6%でFacebookのLassoは恥ずかしいことに0%だ。月間ダウンロード数ではTrillerは昨年10月にDubsmashを抜いたが、アクティブユーザー数ではDubsmashが3倍ある。しかもDubsmashは1日当たりのアクティブユーザー数の30%が自らコンテンツを製作している。


Dubsmashの驚くべきカムバックを支えたのはこの高率のコンテンツ製作率だった。もちろん2019年の春に行われた(発表されなかった)ラウンドで既存投資家から675万ドル(約7億3251万円)を集めるのに成功したことも役立っている。TikTokではトップユーザーがスーパースター化し、その他大勢のロングテールユーザーはおそれをなして投稿を止めヒットしているビデオを受動的に眺める傾向が強まったのに対して、Dubsmashは多くのユーザーが気軽にカメラの前に立ってショートビデオを撮って投稿を続けた。

今のところDubsmashはまだマネタイズを開始していないが、将来はサービス自身だけでなくトップの投稿ユーザーも十分な収入を得られるようにしたいと考えている。おそらく広告売上のシェア、サブスクリプションや投げ銭、グッズの販売、オフラインでのフェスティバルの組織などといった手法が用いられるだろう。カメラの進歩、ネットワークの高速化などによりモバイルビデオの視聴は巨大化しているため、視聴回数で2位というのは決して悪くない地位だ。

やや皮肉な点だが、TikTokではないことにも重要なメリットがある。セミプロのクリエーター、セレブのインフルエンサーを大量にかかえるTiktokの環境を嫌うユーザーも多いからだ。そういうユーザーはDubsmashのトレンドや発見のページを好む。トレンドではTiktokに比べてクオリティは低くてもホットな新曲やダンスのクリップを使ったコンテンツが多数投稿されており、初心者ユーザーものびのびと投稿ができる雰囲気だ。

【略】

TikTokのガイドラインによれば、Dubsmashのようなライバルのウォーターマークが入ったクリップを使った投稿はランクを下げると書かれている。

TikTokは親会社のByteDance(バイトダンス)の潤沢な資金を使ってFacebookのようなライバルからユーザーを奪うために猛烈に広告を打っている。ダッシュ氏によれば、「Dubsmashはインフルエンサー・マーケティングだろうとストレートな広告だろうと、ユーザー獲得のために1ドルたりと使ったことがない」という。それでいてアメリカでTikTokの半分から3分の1に上るインストール数を達成しているのは印象的だ。

ティーンエージャーにとってショートビデオの魅力が圧倒的に高いうえに好みも多様であるため、このマーケットには複数のアプリが存在できることをDubsmashは実証したといえるだろう。現にInstagramはTikTokクローンのReelsをリリースし、Vineの共同創業者のDom Hofman(ドム・ホフマン)氏がVineの後継となるByteをスタートさせたところだ。ショートビデオ市場の現状を要約すると次のようになる。

  • TikTok:やや長めで品質の高いダンス、歌、コメディ、またそれらの組み合わせ
  • Dubsmash:長さは中程度、素材はダンスなどミュージックビデオ中心でアフリカ系など多様なユーザー
  • Byte:非常に短いジョーク、コメディー中心でVineのスターユーザーが多数
  • Triller:中程度の長さで、ライフブログ的、ハリウッドセレブが目立つ
  • Instagram Reels:国際的インフルエンサー多数でメインストリームのオーディエンスが対象

時間がたてばこうしたサービスはさらに少数に集約される可能性はある。TikTokやInstagramといった巨大プレイヤーが有望なサービスを買収するというのは多いにあり得る。しかし多数のプレイヤーは多様性と創造性を確保するためには有利だ。異なるツール、異なるオーディエンスは異なるタイプのビデオを生むことができる。いずれにせよこうしたショートビデオサービスは今後のポップカルチャーを代表し人々の耳目を集める大砲のような存在になるだろう。

ショートビデオの重要性に関しては、InstagramとTiktokを比較してショートビデオを軽視するのは大きな間違いであることを指摘した私の記事もお読みいただきたい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

InstagramがついにTikTokに敗北を認める

Instagramには10億人のユーザーがいるというのに、ショートビデオのIGTVアプリをダウンロードしたのは2018年6月のリリース以来、18カ月で700万人だった。これはTiktokの80分の1のインストール数だ。

InstagramのメインアプリからIGTVの利用を促す目ざわりなオレンジ色のボタンが消えたのはこの結果に敗北を認めたからだろう。TikTokは同じ期間に世界で11億5000万のユーザーを獲得している。Sensor Towerのデータによると米国だけでTikTokでは8050万ダウンロードがあったのにIGTVはわずか110万件だった。

たしかにTikTokはインストールを促す広告に巨額の費用を注ぎ込んでいる。しかし将来はどうなるにせよ、Instagramが長尺縦型ビデオというプラットフォームで成功を収められなかったことも確かだ。

要するにInstagramのユーザーはIGTVのような長いビデオを見る別アプリを必要としなかった。IGTVの機能はInstagramのメインアプリに組み込まれ、フィードに冒頭が流れ、タブから探索することもできた。ストーリーズやユーザープロフィールからも表示できた。それでも多くのユーザーにとってIGTVはInstagram本体のようなホームにするほどの魅力がなかった。

もうひとつ問題だったのはInstagramのクリエイターがIGTVにアップしたビデオを直接に収益化する方法がなかったことだ。 YouTubeやFacebook Watchのように広告収入の分配を受けることも Facebook、Twitch、Patreonのようにサブスクリプションや投げ銭を得る方法もサポートされなかった。

Facebook、Instagramからの唯一の財政的サポートといえば、一部のセレブの場合だとビデオの製作コストの一部が償還される程度だった。しかもBloombergのLucas Shaw(ルーカス・ショー)氏、Sarah Frier(サラ・フリヤー)氏によれば.こうした特権を得るにはコンテンツは政治的、社会的問題や公職の選挙に関する話題を含むことが許されないという。

【略】

Instagramのホームのトップからボタンが消えたので、今後はIGTVは「Explore」(発見)タブから開くことになる。またIGTVにビデオをアップしても十分な数のビューが得られていない。トップ20タイトルでさえ再生は20万回以下だ。Instagramでフォロワーが1000万人もいるトップクリエーターのBabyArielでさえ、IGTVには20本しか投稿しておらず、50万以上のビューを得たのは1本に過ぎない。

【略】

IGTVがスタートしたときは、 縦位置の長尺ビデオがよくわからない理由で熱狂的にもてはやされていたが、問題はこのフォーマットの優れたコンテンツがほとんど上がってこないことだった。複数の被写体を収めるような長尺ビデオは横位置が適しており、縦位置ビデオというのは自画撮りや何かをとっさに撮ったる場合がほとんどだった。

ところがInstagramの共同創業者のKevin Systrom(ケビン・シストロム)氏は2018年にIGTVを私に説明して「モバイルオンリーのフルスクリーン縦型ビデオは私が最も誇りに思うサービスだ。このフォーマットはここ以外どこにも存在しない」と語った

残念ながら縦型オンリーというビデオフォーマットはもはやInstagramにも存在しない。2019年5月にIGTVは縦位置のみというイデオロギーを捨てて横位置のビデオも受け入れるようになった。

【略】

IGTVは中途半端で使い勝手もよくなかった。それでもSnapchatやTikTokが存在しない世界だったらそれなりに需要はあったかもしれない。

しかしInstagramが直面したのは非常に厳しい競争の存在する世界で、短編ビデオならジェフリー・カッツェンバーグのQuibiがモバイルビデオの視聴者を集めようとしている。プラットフォームを提供すればあとはひとりでにコンテンツが集まってくるというような楽な環境ではない。

Instagramは視聴者が望むコンテンツを吟味し、クリエーターをもっと積極的に支援しなければならない。特にクリエイターが活動を続けられるような収入を確保できる道を提供するのが重要だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

モバイル・ショートビデオのTikTokは2019年に急成長するも収益化に苦闘中

Sensor Towerのレポートによれば、ダウンロード数でも収入でもTikTokは2019年のモバイルアプリの星だった。中国のByteDanceのアプリであるため最近米政府の規制が厳しさを増し、米海軍では使用が禁止されるなどしているが、 現在までのダウンロード数は16.5億回、しかもその44%が2019年に集中している。 つまり昨年1年だけで、7億3800万以上のアプリがインストールされている。

問題は収益性で、TikTokでは各種の実験を繰り返しているがまだ十分な利益を上げていない。もちろん2019年には収入の伸びも著しく1億7690万ドルを得ている。これはそれまでの全収入、2億4760万ドルの71%にあたる額だ。ApptopiaのレポートはTikTokの四半期収入は5000万ドルに上ると報じていた

2019年のTikTokのダウンロード数は2018年から13%アップして6億5500万回となった。2019年の第4四半期はクリスマス休暇を含んだ期間だったこともあり、TikTokとして過去最高の時期となり、2億1900万回のダウンロードがあった。これはそれまでの最高記録だった2018年の第4四半期に比べて6%のアップだった。Sensor Towerのデータによれば、昨年TikTokはゲーム以外のアプリの世界ランキングで、App StoreとGoogle Playの双方でWhatsAppに次ぐ2位となった。

しかしTechCrunchでも紹介したHowever, App Anniieの「モバイルの現状」レポートによれば、Facebook Messenger、 Facebook本体、WhatsAppに次ぐ4位となっており、Sensor Towerの順位とは一致しない。

順位はともあれ、TikTokのダウンロード数が2019年に大きく伸びたことは間違いない。これは主としてインドで人気を得たことが大きい。Tiktokは今年には入ってインドで短期間だが禁止されたが、同市場はTiktokの総ダウンロード、3億2300万回の44%を占める大市場となっている。同時いこれは2018年の27%増だ。.

TikTokの母国、中国では収入の大半はiOSユーザーからのもので、2019年には1億2290万ドルだった。これは収入の69%を占めており、米国のユーザーからの収入である3600万ドルの3倍以上だった。3位の英国の支出は420万ドルにとどまった。

ただしこうした数字も Facebookの660億ドル以上という年間収入に比べるとごく小さい。またTwitterのように小型のネットワークと見られるサービスでも数十億ドルの収入がある。ただし公平にいえば、TikTokはまだビジネスモデルの実験段階にあるスタートアップだ。2019年にTikTokyは, フィード中にネイティブビデオ広告を表示したり、 ハッシュタグ・キャンペーンを行ったりしている。またソーシャルな投げ銭システムにも手を染めている。.

しかし今のところこのチップシステムで、意味のある収入を得ているのはごく少数のクリエーターに過ぎない。 TikTokがYouTubeに追いつくためには優秀なクリエーターにとって魅力のあるサービスになる必要があるのでクリエーターの収入を確保するのは重要な課題だ。

収益化ではTikTokが問題を抱えている理由は、Facebookなどの先行ソーシャル・ネットワークと比べてTikTokにはユーザーの個人データの蓄積が乏しい点が大きい。広告主は、趣味、過去の行動、デモグラフィーなどのデータから適切なターゲティングができず、Tiktokの広告メディアとしての価値をアップすることを妨げている。そこでブランドはTikTokの保持するデータに頼らず、TikTokで人気のあるインフルエンサーと直接提携して広告を配信するなどの手段を取っている。

TikTokは黒字化の達成に至っていないが、ユーザーエンゲージメントでは優秀な成績を挙げている。App Annieのデータによれば、利用時間は2019年に対前年比210%の伸びを示し、トータルで680億時間となっている。TikTokがモバイルユーザーの注目を集めていることは間違いないが、問題はこの注目をいかに収益に結びつけるかだ。

TechCrunchはこの点についてTikTokにコメントを求めたが、回答は「我々は統計を外部に発表していない」と確認するものだった。というわけでTikTokの現状についてはサードパーティーの推定に頼るしかないようだ。

画像:Anatoliy Sizov / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

InstagramがTikTok対抗のためBoomerangに新エフェクトを加える

TikTokはそのクリエイティブなエフェクトから、無数のミームフォーマットを生み出し、フィルタ加工されたビデオ投稿の王座を巡ってInstagramに挑戦している。Boomerang(ブーメラン)フィルターのリリースから5年近くが経って、Instagramの繰り返しビデオループ作成機能は、ようやく編集オプションを大幅に更新した。

世界中のユーザーは、いまやSlowMo(スローモーション)、Echo(ブラー)、およびDuo(高速リワインド)といった特殊効果をBoomerangに追加したり、長さをトリミングしたりできるようになった。これは、このモバイルで最も人気のあるビデオクリエーション作成ツールにとって、これまでで最大のアップグレードだ。

このエフェクトは、Instagramの面白さを保ち続けるために役立つだろう。何年も使われてきたBoomerangは、いまや多くのユーザーにとって、ストーリーの中で最初の1回をみてスキップしてしまうものになってしまっていた。なぜならそれはとても単調だからだ。新しいビジュアル効果は、人々の注意をさらに数秒間引きつけ、新しいフォーマットのコメディ作成を可能にするだろう。Instagramは、多くの特殊効果を備えて独自のミームフォーマットを生み出したTikTokと競合しようとしているため、これはとても重要だ。

本日から、Instagramのユーザーの方々は、新しいSloMo、Echo、DuoといったBoomerangモードを、Instagram上で共有できるようになります」とFacebookの広報担当者はTechCrunchに語った。「Instagramカメラは、自分を表現し、自分のやっていること、考えていること、感じていることを友人たちと簡単に共有する方法を提供します。Boomerangは最も愛されているカメラフォーマットの1つです。Boomerangを使用して、日常の瞬間を楽しくて予想できないものに変える、クリエイティブな方法を拡大できることを嬉しく思っています」。

新しいBoomerangツールを見つけるには、Instagramで右にスワイプしてストーリーコンポーザーを開き、シャッターセレクターの下で左にスワイプする。Boomerangを撮影した後、画面上部の無限大記号ボタンは、代替エフェクトとビデオトリマーを表示する。モバイル研究者のJane Manchun Wong(ジェーン・マンチュン・ウォン)氏 は、2019年にInstagramの中に新しいBoomerangフィルターとトリマーのプロトタイプを発見していた。

通常、Boomerangは1秒間のサイレントビデオをキャプチャし、それを順方向および逆方向に3回再生して、ビデオとして共有またはダウンロードできる6秒間のループを作成する。以下に紹介するのは、追加できる新しいエフェクトと、Instagramが声明で私に説明した方法だ。

  • SlowMo:Boomerangsの速度を半分にして、各方向に1秒ではなく2秒間再生するようにする。「細かいところがわかるように、Boomerangを遅くします」
  • Echo:モーションブラーエフェクトを追加して、動きのあるものの後ろに半透明の軌跡を表示することで。酔っ払ったりよろけているような効果をみせる。「二重視効果を生み出します」。
  • Duo:ガタガタ動くデジタル化された映像で、クリップを冒頭へと素早く巻き戻す。「Boomerangの速度を上げ下げし、テクスチャー効果を追加します」。
  • Trimming:iPhoneのカメラロールまたはInstagramフィードビデオコンポーザーと同様の操作で、Boomerangを切り取る。「Boomerangの開始時点と終了時点を編集し、長さを変更します」。

こうしたエフェクトは完全なオリジナルというわけではない。Snapchatは、2015年にBoomerangが初めてローンチされてから数日後に、スローモーションと早送りのビデオエフェクトを提供している。一方TikTokも、いくつかのモーションブラーフィルターとピクセル化されたトランジションを提供している。しかしこうしたエフェクトは、InstagramのようにBoomerangsの中だけに限定されているわけではなく、通常のビデオに適用可能であるため、エフェクトを使用してテイク間のカットを隠したり、人々の声で遊んだりできるクリエイティブな柔軟性がある。

TikTokは、これらのツールを用いて、多数の独創的なミームを獲得した。ユーザーは、Echo風の機能を使用して自分自身とハイタッチし、アクション満載の瞬間や大きな音をDuoスタイルのガタガタしたカットで強調し、無限クローンエフェクトで背後にドッペルゲンガーの軍隊を並べることができる。Instagramストーリーズは、その代わりに拡張現実フェイスフィルターとレイアウトなどの、より高機能なツールに焦点を合わせている。

TikTokスクリーンショット

うまくいけば、Instagramの新しい編集機能は、主要なストーリーとビデオ制作者に利用されるようになるだろう。ストーリーの冒頭が退屈だとユーザーはすぐにスキップしてしまうので、動画のトリミング機能は特に有用だろう。

Instagramはこれまで、ソーシャルビデオの世界で長年にわたって支配的な地位を占めてきた。しかし、Snapchatがついに再成長を始め、TikTokも世界的現象になりつつあるため、Instagramはその優位性を維持するためにもう一度戦わなければならない。そろそろ10歳を迎えるのにあたり、もしユーザーに魅力的なコンテンツを素早く作成する手段を与えられないならば、時代遅れのものとなるリスクがある。

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(翻訳:sako)