米司法省、AT&TとTime Warnerの合併阻止をあきらめず上訴

米司法省は、米連邦地裁が出したAT&TによるTime Warnerの買収を認める決定を不服として上訴した。

ドナルド・トランプが大統領選のキャンペーンを行なっていたとき、政権をとったらこの買収計画は阻止すると言っていたが、実際に司法省はこの買収が競争を阻害すると主張し、買収阻止を求めて提訴した。

しかしながら先月、米連邦地裁のRichard J. Leon 判事はこの買収計画を条件なしに進めることを認める決定を下した。 Leon 判事は判事席からこう述べた。「言い渡す。被告人の勝訴」。この判決により、買収はその週の後半に完了した。

実際、我々はその買収の結果を目のあたりにしつつある。Time Warner傘下のHBOについてのAT&Tの計画がここ数日間、報道のヘッドラインを飾っている。

今回の買収は、通信とメディアのさらなる統合を促す素地をつくったようだ。Comcastは、Foxの映画とテレビ事業の買収の件でDisneyに対抗している。(TechCrunchもこうした流れのごく一部に取り込まれている。というのも TechCrunchはVerizon傘下にある)。

「連邦地裁の判決は、事実に基づき、証拠が判然としていて、これ以上ないほど完全なものだった」とAT&Tの法務責任者David McAteeは声明で述べた。「敗訴側は望むなら上訴する権利を有するが、こうした環境下で司法省が実際に上訴を選択したことに驚いている。我々はワシントンの連邦裁判所で闘う準備はできている」。

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(翻訳:Mizoguchi)

連邦地裁、AT&TとTime Warnerの合併を承認――政府の差止決定を覆す

反トラスト法に基づいてAT&TとTime Warnerの合併を差し止めたアメリカ政府の決定を連邦地裁のRichard J. Leon判事は覆した。この数週間、こうした決定が下されると予想されていた。当初からこの合併に反対してきたトランプ政権には打撃となるはずだ。決定はニューヨーク証券取引所の取引終了後に発表された。時間外取引への影響は軽微だった。

独自のコンテンツ製作者の立場を確立しようとしてComcastは21st Century Fox(21世紀フォックス)の買収を狙っていた。今日の決定を受けて、Comcastは早ければ明日にも正式な買収提案に動くと予想されている。

2016年10月に AT&TはTime Warnerを854億ドル(純負債を含めて1080億ドル)で買収する計画を発表した。 これに対し、政府は3月に「競争を阻害し、消費者の選択を狭める」として合併を差し止める決定を行った。

今回の連邦地裁の決定が持つ意味は重要だ。AT&TとTime Warnerの合併という個別案件にとどまらずメディアの再編というさらに大きな問題に影響を及ぼすはずだ。

まず第一に、反トラスト法の目的は経済力が1社に過度に集することによってもたらされる不公正なビジネス慣行から消費者を保護することだ。こうした案件では常に合併の結果生じる会社の規模が問題にされる。しかし反トラスト法の目的は規模を制限することではない。垂直統合においては新たな企業が競争を阻害せず、むしろ消費者の選択を増やす場合が往々にしてみられる。

垂直統合というのは、異なった、ないし相補的な関係にあるビジネス分野の2社が合併するような場合だ。新会社が適切な利益を上げつつつ、消費者は同一あるいはより低い料金で以前より広い範囲のサービスを選択することでできる結果となることが珍しくない。もちろんだからといって垂直統合が無条件に承認されるわけではない。FTC(連邦取引委員会)は2000年以来22件の垂直統合を差し止めている。しかし概して水平統合よりも審査は厳しくない。

AT&T/Time Warnerの件は垂直統合の例と考えられる。AT&Tはキャリヤであり、コンテンツの配給者であるのに対してTime Warnerはコンテンツの製作者だ。しかし他の要素が問題を複雑化していた。

まずこの分野で活動するプレイヤーの数がきわめて少なく、それぞれが強い影響力を持つ世界的企業だ。AT&T自体、世界最大のテレコム企業であるし、傘下のDirecTVを通じてアメリカ最大の多チャンネル配信者でもある。一方Time WarnerはHBO、TBS、TNT、ワーナー・ブラザース・エンタテインメント、NBA、MLB、NCAA March Madness、 PGAなどのスポーツ試合を中継する有力メディア・コングロマリットだ。

そこで司法省は「AT&T-Time Warnerの合併が行われれば、新会社は競争相手に料金引き上げることを余儀なくさせ、競争力を失わせるために通信料金の引き上げを行うことができる」と主張した。政府はまたネット中立性を担保する規則が廃止されるため、たとえばAT&TはNetflixがTime Warnerのコンテンツを配信しない場合、通信料金を引き上げるのを防ぐことができないと論じた。

これに対してAT&TとTime Warner側は(事実巨大企業ではあるが)激しい競争にさらされており、ライバルとなる有力デジタル企業、FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)はすべてビデオ配信を最優先事項のひとつしていると反論した。CNNMoneyが報じたところによれば、AT&T-Time Warnerの弁護士、Daniel Petrocelliは「〔Time-Warneのような〕伝統的形態のメデイア企業はデジタル革命にすでに大きく遅れを取っている」と述べている。

CNNMoneyによれば、こうだ。

PetrocelliはLeon判事に「推算によればFAANG企業の時価総額合計は3兆ドルにもなる。これに対してAT&T-Time Warnerの合併後の時価総額は3000億ドルにしかならない。われわれは彼らの後ろを懸命に追いかけているところだ」と述べた。

一方、トランプ大統領は選挙キャンペーン中から合併に強く反対してきた。Time WarnerはCNNを所有しており、トランプ大統領が目のかたきにしているメディアだ。2016年の選挙戦の演説でトランプ候補は「私が大統領になればこの合併は断固阻止する」と述べ、メディア事業への政治の介入の懸念を高めていた。ただしトランプ大統領は反トラスト担当者にこの件で連絡は取っておらず、合併を承認しないという決定はホワイトハウスからの指示ではないという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


【以上】

司法省、AT&TのTime Warner買収にCNN売却を要求――Finacial Times他が報じる

AT&TによるTime Warnerの買収にあたって、まずCNNが売却されなければアメリカ司法省はこの買収に承認を与えないだろうとFinancial Times(FT)が報じた。昨年秋の大統領選挙の数週間前に、854億ドルに上る買収が合意されていた。

CNNを嫌うドナルド・トランプが大統領選に勝利したためこの取引の将来を危ぶむ声が上がっていた。FTの記事によれば、この予測が現実のものとなるかもしれない。

FTによれば、AT&TはCNN売却という条件に反発しており、法廷で争うという。

New York Timesによれば、AT&TがCNN(実際には親会社Turner Broadcasting)を売却しない場合、司法省はその代わりにAT&Tが所有するDirecTVを売却するよう求めるかもしれない。AT&TはDirecTVを2015年に買収している。

AT&TのCEO、John Stephensは水曜日に開催されたカンファレンスの席上でこの買収が実現する時期については「現在のところ不明確だ」と認めた。当初この買収は今年末までに完了する予定だった。

このカンファレンスの後に発表された声明で、AT&Tは「われわれがTime Warnerを買収することについてのアメリカ司法省との話し合いは継続している」と述べた。Stephensは「(司法省との話し合いの)内容を明かすことはできないが、買収が完了する時期については不明確だ」と述べた。

CNNは買収提案についてコメントすることを避けている。【略】

AT&TがCNNを買収できなかった場合、根強い噂は、CBSによる買収だ。今年初め、CBSのCEO、Les Moonvesは「CNN〔の買収は〕CBSを強化するだろう。しかし現在CNNは売りに出ていない。出たら検討するかもしれない」と述べている。

情報開示:TechCrunchはAT&Tと競争関係にあるVerizonが所有している。この記事の執筆者は以前CNNに勤務していたことがある。

画像: KENA BETANCUR/AFP/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Mark CubanがAT&TとTime Warnerの合併について「競争を促す」とコメント

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850億ドルを費やして実現したAT&TとTime Warnerの合併消費者の選択肢を狭めることになるという意見が多いなか、Mark Cubanがもつ見解はそれとは異なる。彼はTechCrunchとのインタビューのなかで、今回の合併は業界の「競争を促す」結果になるだろうとコメントしている。

自信もメディアの買収によって財を成したCubanは、この2つの企業が手を組んだことによって「デジタル・コンテンツを独占する」Facebook、Google、Amazonなどの巨大企業に対する挑戦者が生まれるかもしれないと考えている。現状、「At&TとTime Warnerはかなり遅れをとっている」。

HBOやCNNなどを所有するTime Warnerが追加的なリソースを手にすることで、Webコンテンツの開発を加速することができるとCubanは確信している。「アプリ重視型のコンテンツと競争するために、伝統的なコンテンツは変化していく必要がある」と彼は主張する。

[追記: CubanがかつてAT&Tの広告に出演していたことが気になった。彼によれば、すでにAT&Tとの契約は切れているとのこと]

また、今回の合併が規制当局からの承認を受けることを願っていると彼は話す。今回の買収はFacebookによるInstagramの買収やWhatsAppの買収に比べて「インパクトが少ない」のが理由だという(彼はWhatsAppの競合企業であるDustに出資している)。

Cubanの見解とは反対意見を持つ者もいる。バーニー・サンダースやドナルド・トランプをはじめ、多くの政治家はこの合併の合法性に疑問を感じている

ヒラリー・クリントン陣営も今回の合併について懐疑的な意見をもってはいるが、どちらかと言えば様子見の姿勢だ。この合併はが独占禁止法違反にあたるのか。結論は2017年まで持ち越しとなる。

実現せずに終わったメディア合併の話もある。ComcastとTime Warnerの合併計画は中止に、AT&TによるT-Mobileの買収交渉は決裂している。

だが、テレビ回線のプロバイダーがテレビコンテンツの買収に成功したのはこれが初めてではない。2011年にはComcastがNBC Universalを買収し、最近ではAT&TがDirec TVを手中に収めたことで、サービスプロバイダーとしての同社のビジネスを強化している。

情報開示:TechCrunchの親会社はAT&Tと競合関係にあるVerizonである。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

AT&TによるTime Warner買収交渉がいよいよ大詰めに

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米Wall Street Journal紙によれば、AT&TによるTime Warner買収の交渉がいよいよ大詰めを迎えたようだ。この買収が完了すれば、通信キャリアであるAT&Tが非常に高いコンテンツ製作能力をもつことになる。TechCrunchの親会社であるVerizonを含む他の通信キャリアたちもまた、ネットワークを届けるという役割だけでなく、コンテンツと顧客をつなげる役割を持とうとしている。

WSJが伝えたところによれば、今週末にも今回の交渉がまとまる見込みだ。ただし、それでもまだ最終決定というわけではなく、後になって交渉が決裂したり遅延される可能性は残っている。Time Warnerは子会社にTNT、CNN、TBS(Turner Broadcasting System)、HBOといった放送局を抱えており、同社の衛星放送やブロードバンド・サービスを支えてきたプレミアム・コンテンツの所有権のうちいくつかはAT&Tに渡ることになるだろう。

通信キャリアであるAT&TによるTime Warner買収は、アメリカ市場では特殊なことのように思われるかもしれない。しかし、その他の国々を見てみると通信キャリアやTVサービスのプロバイダーが顧客に届けるコンテンツも所有している例は多い。例えば、カナダの通信業者であるRogersやBellは国内のスポーツチームや放送局をもつだけでなく、HBOなどのアメリカの放送局が製作したコンテンツの放映権なども所有している。

もちろん、今回の買収案に対して消費者が特別な関心を持つことはないだろう。なぜなら、今回の買収が成立したとしても、それは通信キャリアが彼らのバーチャルなネットワーク配線を通して、誰に、何を、そしていくらで届けるかということに関してさらに大きな決定権を持つだけに過ぎないからだ。しかしながら、今回のような買収は通信キャリアにとっては重要なことだ。他の利益のあがるサービスに比べて彼らの通信事業が陳腐化してしまうのを避けるだけでなく、GoogleやFacebookが将来的に無料で提供する可能性のある通信事業だけでビジネスを続けるのはリスクであると考え、各通信キャリアは彼らが提供するサービスの多様化を図ろうとしているのだ。それらの理由に加え、インターネットへのアクセスが当たり前のものとなりつつある今、それに対する規制によってインターネット通信事業から得られるマージンが地に堕ちる可能性もある。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter