渦中のTwitter―では買うのは誰だろう?

2016-06-28-getty-twitter-tc-001

Twitterはトラブルの渦中にある。

MicrosoftはLinkedInを買収するという道を選んだ。その巨額さだけからもこの取引は、ソーシャル・ネットワークという大市場に参入するために次の大型買収を行うのはテクノロジー界の巨人のうちの誰で、買収対象はどこになるのかという議論を再燃させた。

ハゲタカがTwitterの頭上を舞い始めたのは1年以上前からだ。しかしTwitterは売却が近いという専門家の推測を全力ではねつけてきた

成長は頭打ちとはいえ、Twitterには広告収入もあるし、貴重なタイム情報を大量に掲載している。Twitterにおけるいちばん価値のある情報はパワーユーザーから来る。政治家、ジャーナリスト、著作家、学者、セレブが作るコンテンツは大量のトラフィックをTwitterにもたらしている。一方、Twitterの訪問者の大半はユーザーではない。Twitterが非ユーザーのビジネス的価値を高めるには、訪問回数、滞在時間を大きく増やす必要がある。

残念ながらさまざまな努力にもかかわらずTwitterの株価のパフォーマンスは絶望的だ。Twitterは全社的なリストラを行ったが、信頼を回復するには至らなかった。この間、いろいろな理由で株式市場を退出するテクノロジー企業の数は参入する企業の数を上回っている。

シリコンバレーではデジャヴの話題だが、SNSの次の大型売却候補はTwitterではないのかと考えざるをえない。ウォールストリートのゴシップ(これまで不気味はほど的中してきた)によれば、Twitterは売却される、それもどうあっても2017年中に売却されるということだ。

「ジャック・ドーシーが今年中にはかばかしい結果を出せないなら、 Twitterは売りに出される。ドーシーが問題を解決したとしても、それだけ売り物としての魅力が増す」とAxiom Capital ManagementのVictor Anthonyは述べている。

そういう事情を念頭に求婚者の顔ぶれを眺めてみよう。

以下の顔ぶれは、ウォールストリートのTwitter専門家、Monness, Crespi, Hardt & Co.のJames CakmakとAxiom Capital ManagementのVictor Anthonyの分析にもとづいて絞りこんだものだ。

Google (AlphabetグループのT?) — 可能性は十分

Pros: GoogleはすでにTwitterを検索に取り込んでいる。ツイートはGoogle検索に現れるし、最近TwitterはGoogleと提携してし広告を売ろうとしている。Google は2回もソーシャルメディアに進出を試み、2回とも失敗している。最近の例はGoogle+だ。Twitter買収はGoogleをソーシャルメディアの本流に戻す力となるだろう。Googleの売り上げはほとんどが広告収入だ。Twitterは極めて大規模なリアルタイム情報を持っており、Googleだけでなく、Microsoftその他もTwitterの全タイムラインであるfirehoseを利用している。GoogleがTwitterを買収すれば、データの流れをさらに強くコントロールできるようになるだろう。特にアクセスを制御する能力はGoogleにとって大きい。

Cons: Googleの巨大なサイズを考えると、何よりも反トラスト法訴訟を警戒する必要がある。Fortuneによれば、そういう可能性は薄いというのだが、連邦政府がTwitter買収をブロックするかもしれない。Googleの存在理由はインターネット上の情報を利用可能な形に整理することであり、ツイートのインデックス化も行わている。ただしGoogleはTwitterのインデックス化を急いでいない。 TwitteもデータをGoogleと共有するという提携の可能性を否定している。

プライベート・ファンド(Twitterキャピタル・グループ?) — あり得る

Pros: 事業を買収して価値を高めるのはプライベート・エクイティーがもっとも得意とする分野だ。Twitterは新たな経営陣を得てさらなるリストラを進め体質を改善することができる。広告収入の成長が再び軌道に乗れば、有利な条件で再上場が可能だろう。そのためには各種の体質改善と同時にTwitterのメンバー数よりもオーディエンスの伸びを確保することが重要になる。

Cons: Twitterはプライベート・ファンド向きの買い物ではないかもしれない。Twitterは構造的に赤字体質であり、ファンドによる買収は営業収入を増大させようとする過剰な圧力を生む可能性があるとAnthonyは指摘している。

Microsoft (SoftTweet?) — あり得る

Pros: MicrosoftはLinkedInの買収でデータの入手に貪欲であることを証明した。もちろんTwitterはリアルタイム情報の世界最大の宝庫だ。GoogleがTwitterを欲しがるはずだという理由のほとんどがMicrosoftにも当てはまる(Microsoftも2011年に独自のソーシャルメディアを試みている)。

Cons: MicrosoftはLinkedInの処理で手一杯のはずだ。またソーシャルメディアに興味があるとはいえ、やはりターゲットはビジネス分野とかんがえられる。

テレコム各社(AT&Tweet?) — あり得る

Pros: テレコムがTwitterを傘下に収めることは広告分野での強力なブースターとなる。Anthonyはテレコムがコンテンツ企業を飲み込んだことは前例があると付け加えた。VerizonがAOLを買収したのはその一例だ [情報開示:AOLは当TechCrunchの親会社]。 VerizonとAT&TはYahooの買収をめぐって競争している。またVerizonは最近、ウェブTVの計画を明らかにした。同時にTwitterはリアルタイムのコンテツ・プラットフォームの性格を強めている。

Cons: 有力テレコム・キャリヤはすでに膨大なユーザー・ベースを持っている。TwitterのユーザーはAT&TやVerizonがターゲットする一般ユーザー層とはやや異なる。

Facebook(Birdbook?) — あり得る

Pros: TwitterはFacebookのポートフォリオと親和性が高い。InstagramとMessengerでも実証されたが、この2つは重なり合わず、それぞれ独自に機能している。Twitterもおそらく同様だろう。

Cons: FacebookはTwitterの魅力的な機能、トレンドのトピックやハッシュタグなどをほとんどすべてコピー済みだ。

Amazon (Amazon Live?) — 可能性は低い

Pros: AmazonはTwitterを自社のメディア配信プラットフォームに組み込むことができる。またAmazonCart in 2014 はeコマースやソーシャルメディアと通販を統合するのに適したツールだ。

Cons: Amazonは小売、ロジスティクス、AWSを本質とする企業だとはっきり自己規定している。他の大きな分野への進出あり得るが、現在のところその徴候を見いだせない。

Apple (Dr. DreのTwitter?) — 可能性は低い

Pros: TwitterはすでにiOS、MacOSに組み込まれている。Twitterを買収すればAppleにはさまざまなビジネス分野が開けると同時に、同社は腐るほどキャッシュを持っている。

Cons: 買収によって本当にAppleの利益が増大するようなプラットフォーム上のつながりがない。私はAppleはTwitterを買収してSiriと一体化しメジャー・アプデートを図ることによってAmazon
Echoの有力な対抗馬に仕立てることができると提案したかもしれない。 残念ながらAppleはその方向を2016年のWWDCでSiriKit APIという形で発表してしまった。2013年にAppleのデータを利用してアプリの推薦プロセスを改善できるはずだと指摘されたことがあった。なるほどAppleはTwitterのアナリティクス・エンジンのTopsyを買収したが、その後閉鎖されている。

News Corp. (@Murdoch?) — 可能性は低い

Pros: MySpaceよりTwitterの方がニュースに特化しているのでNews Corp.にフィットするはずだという議論があった。なにかのイベントを企画するときわれわれはTwitterを頼りにするし、2016年の予備選の最中に何度Twitterが引用されるのを聞いたか数えきれないほどだ。

Cons: News Corp.はソーシャルメディア事業に参入しようとしてMySpaceを買収し、ほどなく手放した過去がある。MySpaceの評価額はNews Corp.が保有している間に94%も失われた。またCakmakは「News Corp.のようなメディアが買収し場合、Twitterのユーザーの大半はオープンさ、自由さが脅かされると考えるだろう」と指摘した。

画像:: Gustav Dejert/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+