レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働し伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行開始

レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働で伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行を開始

ITや情報デザインを手がける「総合ソリューション企業」TRIART(トライアート)とトヨタ自動車九州は6月9日、トヨタ九州宮田工場のレクサス製造ラインにおいて、「熟練工が感覚的に発見するような超微細な不良を、人とAIとの協働で未然に検出」する不良予兆感知システムの試行を開始すると発表した。

今回の取り組みは、鋼板のプレス加工によりパネルを作る際に、ごくわずかな形状のズレや鋼板の伸長度の差を、プレス機内部に設置したサーモカメラの画像から検出するというもの。成型後のヒビ割れやその他の不具合を招きかねないこうした不良の発見は、これまで熟練工の感覚と経験に依存してきた。

TRIARTは、同社が開発し実績を積んできた、画像データを基にした感性情報処理技術「コンポジットAI『4CAS』」を使い、サーモカメラの画像からパネルの基準形状となるマスター画像を生成して、生産されたパネルとマスター画像との差異を算出することで、5秒に1枚作り出されるすべてのパネルの評価を行えるようにした。これにより、「どのような事例が現れると次に不良が発生するか」という法則性が得られ、「熟練工の精度」での不良予兆感知が可能になるという。

このシステムの最大の特徴は、「画像を生成するタスクをAIの学習のみに依存せず、途中で作業員が大まかな形状指定を行い、再びAIの演算に戻す」というフローだ。AIで全自動化するのではなく、作業員の技能や人の判断のほうが優れている場面では、人の力を活用してAIが補完という考えだ。こうしたフローをデザインすることが「多くの課題解決を迅速化させる」と同社は信じている。

TRIARTのコンポジットAI「4CAS」は、前後の文脈から画像や音声などの情報の意図を読み取る人の脳と同じように、複数のAIの相互作用、相互制御によって対象データの中から意味や性質の「まとまり」を抽出し、高精度の結果を得るというユニークなシステム。コンポジットは「複合」を意味し、4CADSは「認識と知覚のための」という意味を持つ。

トヨタと共同開発した今回のシステムは、コンポジットAI「4CAS」のAIプロセスをブラックボックス化しない構成を活かし、「製造業というフィジカルな現場で人とAIが台頭に協働する好例」だという。

この試行は、トヨタ九州宮田工場で行われる。ここはレクサスの製造拠点であり、各工程に世界トップレベルの熟練工が揃っている(アメリカの調査会社J.D.パワーの2016年「日本自動車初期品質調査」で1位など)。「今回のような新しい生産技術が熟練工にさらなる技能とセンスを磨く余力を作り出し、より魅力的な製品をご提供する糧となることを期待しています」とTRIARTは話している。

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カテゴリー:人工知能・AI
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