コロナ禍で売上ゼロから評価額約8265億円へ、支出管理ツールに拡大したTripActionsの314億円増資にフィンテックが貢献

新型コロナウイルス感染症パンデミック以前のTripActions(トリップアクションズ)は、航空券、ホテル、レンタカーなど、企業の出張手配に関するさまざまな側面を経費の追跡と統合する機能で知られていた。

しかし、パロアルトを拠点とする同社は、パンデミックで大打撃を受けたスタートアップの1社となった。共同創業者でCEOのAriel Cohen(アリエル・コーエン)氏によると、世界的な危機のなか、同社の収益は0ドルにまで落ち込んだという。パンデミックにともなうビジネスの減速に直面し、2020年3月には約300人の従業員を解雇したことが話題になった。

パンデミックのわずか1カ月前に立ち上げたフィンテック経費精算プロダクト「TripActions Liquid」のスケジュールを早める決断をしたのはその時だった。パンデミックの影響でどこでもデジタル化が進み、企業の従業員は突如、支出に関する意思決定をオフィスの外からするようになり、多くの業者がデジタル決済を受け入れるようになった。

「出張費だけでなく、会社における従業員の経費の使い方をすべて管理したいという顧客のニーズに応える必要があると、すぐに気づきました」とコーエン氏はTechCrunchに語った。「私たちは、企業の従業員が分散し、出張費の代わりにホームオフィス機器やバーチャルソフトウェアを経費として計上していることを知っていました。そこで、従業員が申請できる経費の種類を増やしました」。

この転換が同社にとって賢い動きとなった。現地時間10月13日、シリーズFの「成長」ラウンドにおいて、バリュエーション72億5000万ドル(約8265億円)で2億7500万ドル(約314億円)を調達したと発表した。Greenoaksがリードしたこの資金調達には、Elad Gil、Base Partners、および「すべての主要な既存のファイナンシャルインベスター」が「力強く参加した」という。既存投資家には、Andreessen Horowitz(a16z)、Zeev Ventures、Lightspeed Venture Partners、Group 11などがいる。

TripActionsは、2021年初めに1億5500万ドル(約175億円)のシリーズEを約50億ドル(5700億円)のバリュエーションで完了した。今回のラウンドをもって、同社は2015年の創業以来、合計13億ドル(約1482億円)を調達したことになるが、そのうち約7億8000万ドル(約861億円)はパンデミックの間に確保したものだ。

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今回の資金調達が注目される理由はいくつかある。まず、同社が、主に「法人向け旅行」を扱うスタートアップから、より広範な支出管理会社へと拡大したことだ。これは、BREXやRampといった急成長中のフィンテック企業と同じカテゴリーに入ることを意味する。しかし、コーエン氏が考える最大の違いは、その2社が「出張とは関連性がなく」、中小企業に重点を置いているのに対し、TripActionsは大企業企業にフォーカスしていることだ。

「TripActionsが企業の旅行市場を破壊し続けているように、TripActions Liquidは従来の支出管理ソリューションに取って代わろうとしています」と同氏は話す。「グローバル規模で大企業向けに単一の統一された旅費交通費精算ソリューションを提供できる企業は他にありません」。

TripActionsは現在、Crate & Barrel、Wayfair、Pinterest、Lyft、Zoom、Toast、Amplitude、Ancestry、Box、Axios、SXSW、Glassdoor、SurveyMonkey、Lennar、Qualcommなど5000社以上の顧客を抱える。

画像クレジット:TripActions

コーエン氏は、売上高について明らかにしていないが、TripActionsの予約件数と売上高は、パンデミック前の水準を超えたという。また、管理下にある出張予算の総額は2倍以上、経費予算は同期間に1400%増加したと付け加えた。また、TripActions Liquidは過去6カ月間で、取引件数が500%以上、アクティブユーザー数が400%近く増加した。最近ではHeineken、Snowflake、Thomson Reuters、Adobeなどの顧客を獲得した。

2020年3月にレイオフを実施した際に約800人だった従業員は、現在は1500人となった。

同社は、新たな資本を主にフィンテックを活用した決済・経費管理ソリューションであるTripActions Liquidの開発強化に充て、よりグローバルに展開することを目指す。

また、最近買収したReed&Mackay(リード・アンド・マッケイ)への「より深い」投資も計画している。Reed&Mackayは、ハイエンドなサポート(TripActionsのVIPや旅費交通費を含む)を提供する代理店だ。また、TripActionsは、ビジネスの30%を占めるまでに成長したヨーロッパでのさらなる拡大も計画している。具体的には、2021年度中に英国、イスラエル、および欧州全域で150人以上の人員を増やす予定だ。

加えて「未来の働き方を目指す企業にとって必要不可欠なツール」となることを目指して、中核であるトラベルへの投資を継続する予定だ。特に、個人向け旅行予約サービスLemonade(レモネード)は、2021年度の予約件数が約10倍に増加したとコーエン氏は述べた。

「パンデミック後の経済状況の中で、企業はパワフルで合理的なトラベルソリューションを求めており、出張・経費業界では大きな変化が起きています」とGreenoaksの創業者でマネージングパートナーのNeil Mehta(ニール・メータ)氏は話す。「TripActionsは、世界の大企業の間で急速に普及しており、世界の旅行が回復する中で先頭に立つのにこれほど適した企業はありません」。

最近自らのファンドを立ち上げた投資家のElad Gil(エラッド・ギル)氏は、TripActionsを「巨大な市場の中のナンバーワン企業」と表現した。「TripActionsは順調に実績を重ねており、今後もそれは続きます」。

「企業の出張需要が回復し始めていますが、TripActionsはその機会を捉えるのに適した位置にいます」とギル氏はメールに書いた。「そして、Liquidのような新しいアドオンビジネスは、順調に拡大しています」。

同氏は、総じてTripActionsが「新型コロナに関連する旅行計画向けの賢い機能を含め、旅行体験をより良くする機能を数多く提供している」と考えている。

画像クレジット:Hamza Butt / Flickr (Image has been modified)

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

法人旅行の回復を受けTripActionsが約5191億円の評価額で約161億円を調達、コロナ禍から大逆転

米国時間1月21日、法人旅行の予約と管理を支援するソフトウェアツールを提供するTripActionsは、新たに1億5500万ドル(約161億円)の投資調達を発表した。

本ラウンドは以前からの投資家であるAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)氏、AdditionそしてColor Genomicsの共同創立者のElad Gil(エラッド・ギル)氏が共同で主導した。今回のシリーズEラウンドでは、TripActionsはポストマネー50億ドル(約5191億円)で評価されていると、同社の広報担当者はメールで述べた。

こうした評価の数字は通常、ほどほどにしか役立たないが、TripActionsの最新ラウンドの場合、普通よりも重みを持つ。

同社はレストランソフトウェアのユニコーンであるToastとともに、新型コロナウイルス(COVID-19)が一部カテゴリのスタートアップに与えた影響のポスターチャイルドのような存在になった。TechCrunchは2020年2月下旬に、Liquidと呼ばれるTripActions製品の、5億ドル(約519億円)の信用供与ローンチを取材した。その1カ月後の2020年3月下旬、TripActionsは旅行市場が凍結したことで数百人のスタッフを解雇した

2019年半ばに40億ドル(約4153億円)の評価額で2億5000万ドル(約260億円)を調達していた会社にとっては、劇的な運の下降だった。またTripActionsは、旅行市場が特に低迷していた2020年6月に「転換社債型IPOファイナンス」と呼ばれる方法で1億2500万ドル(約130億円)を追加調達している。

しかし今また、投資家は同社の運に賭けており、新たに9桁の資本を提供するだけでなく、さらに大きな評価額を与えている。

レイオフ後1年未満のアップラウンドは驚異的な回復であるため、TechCrunchは法人旅行市場、TripActionsの主要な収入源、大切な出張旅行の回復ペースについて、また新型コロナワクチン接種の開始にともない、企業の社員はどれだけ早く飛行機に戻ってくるのだろうかなどを同社に取材した。

同社の広報担当者によると、法人旅行市場は「今月の時点で20%のレベル」であり、「週単位で」3%から6%の間で回復しているという。この回復ペースが投資家たちに、TripActionsが以前の強さを取り戻すのは時間の問題であると確信させたのかもしれない。

TechCrunchはまたTripActionsに、多くの人が予期しているZoom対応のハイブリッドワークの世界で、今後の法人旅行市場はどのような姿をとっていくのか尋ねた。同社の広報担当者は「すぐに100%ではないかもしれないが」「これから1年以内には」75%にまで回復するだろうと「強く」信じていると述べた。

また、同広報担当者は、より分散された労働人口が実質的には法人旅行を後押しする可能性があると書いている。もしそれが証明されれば、TripActionsはパンデミックが起こらなかった場合よりも、ポストパンデミックの方が強い立場になる可能性がある。市場が一時的に消滅したときに多くの従業員をレイオフすることを余儀なくされたユニコーンにとって、そのような復帰はすばらしいどんでん返しとなるだろう。

ラウンドの話題に戻ると、TripActionsは新たな資金を商品開発への投資に使用する予定だ。同社はTechCrunchへのメールで、ソフトウェア統合を含むポイントを含め最近の機能リリースを強調し、今後も金融に特化したLiquidの開発に取り組み続けることをつけ加えた。

また「分散したチームがより簡単に対面で会うことができるように、出張サイドの機能を構築する」とも述べている。我々の多くが、完全に地理的に1カ所に集中している企業の時代は終わったと予想している中、今回の決定は理に適っている。

TechCrunchは、これまでにレイオフされたスタッフのうち、どのくらい再雇用されたのか、新しい資金は2020年に解雇された従業員の再雇用に使われるのかを尋ねた。返答があり次第、記事を更新する。

いずれにしても、パンデミック前の高値からコロナ禍の谷間を経て、新たに引き上げられた評価額と多額の資金を得た今日に至るまで、TripActionsの過去1年は、将来ケーススタディになることだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:TripActions旅行資金調達

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)