半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

Eason Lam / Reuters

ウクライナ侵攻をめぐる米バイデン政権の制裁実施を受けて、半導体製造大手のTSMCとインテルおよびAMDの3社がロシアへの販売を停止したと報じられています。

すでにApple PayやGoogle Payといった米国拠点のデジタルウォレットは、現地の主要銀行口座と紐付けられているものに関しては機能を停止しています。今回の措置は、米国の対ロシア制裁が半導体メーカー、とりわけTSMCにまで広げられたかっこうです。

米The Washington Postによると、TSMCはロシアへの直接販売と、ロシアに製品を供給しているサードパーティへの販売を両方とも停止したとのことです。TSMCが制裁条件を完全に遵守するために調査している間、販売を止めたとの匿名情報筋の話も伝えられています。

またTSMC公式にも「発表された新しい輸出管理規則を遵守することに全力で取り組んでいる」との声明が出されています。

TSMCはiPhone用のAシリーズチップやiPad/Mac用のMシリーズチップ製造で知られています。その一方でロシアで設計され、ロシア軍や治安機関で使われている ELBRUSブランドのチップも製造しているため、その販売停止はとても重要といえます。

TSMCのほか、インテルやAMDなどもロシアに半導体の販売を停止しているとのことです。SIA(米国半導体協会/インテルやAMDも参加)はWashington Post紙に「ウクライナで展開されている深く憂慮すべき出来事を受けて」すべての会員が規則を「完全に遵守することを約束する」と述べています。

またSIA会長のジョン・ニューファー氏は「ロシアへの新ルール(輸出管理規則)の影響は大きいかもしれない」ものの「ロシアは半導体の重要な直接消費者ではなく、世界のチップ購入の0.1%未満にすぎない」とも指摘しています。半導体製造メーカーにとっては大した痛手にならない一方で、ロシア軍の動きや兵站を制約するものとして、しっかりと守られることになりそうです。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

半導体産業は台湾にとって「切り札」にも「アキレス腱」にもなる

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年10月上旬の4日間にわたって、約150機の中国軍用機が台湾の領空を侵犯し、台湾と米国からの批判を招いた。このように台湾海峡で緊張が高まる中、台湾の祭英文総統は米国軍は台湾兵士と台湾国内で軍事演習を行っていると発表した。これに対し中国の外務省は、台湾の独立を支援すれば軍事衝突をもたらすだけだと警告した。10月末、米国国務長官Antony Blinken(アントニー・J・ブリンケン)氏が中国外相Wang Yi(王毅)と会見して、台湾地域での現状変更の動きを控えるよう要請したまさにその日に、さらに8機の中国軍用機(うち6機はJ-16戦闘機)が台湾の領空を侵犯した。

1979年、米国は、中華民国(台湾)が中国本土、つまり中華人民共和国の一部であることを承認した。このときから中台関係の変遷が始まり、現在の状態に至る。中国は長期にわたって台湾併合を望んでおり(中国は台湾をならずもの国家と考えている)、軍事侵攻によって強制併合する可能性を決して除外していないが、米国が台湾を軍事的に防衛するかどうかについて戦略的にあいまいな態度をとってきたため、台湾併合を阻止されてきた形になっている。そして近年、台湾が半導体産業で重要な役割を果たすようになってきたため、状況はさらに複雑化の度を増している。

世界の半導体産業における台湾の重要性

台北本拠の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、台湾の半導体受託製造業者は、2020年時点で、世界のファウンドリ市場の63%のシェアを獲得しているという。詳細を見ると、世界最大の受託チップ製造業者Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)だけで世界のファウンドリ市場の54%のシェアを確保している。さらに最近のデータによると、Fab 14B P7で停電が発生し製造がストップしたにもかかわらず、TSMCは依然として、2021年の第2四半期で世界のファウンドリ市場の約53%を占めている。

台湾のファウンドリ(TSMCを含む)はほとんどのチップを製造しているが、それに加えて、携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵されている世界最先端のチップも製造している。実際、TSMCは世界の最先端チップの92%を製造しており、台湾の半導体業界は間違いなく世界で最も重要視されている。

そして、当然、米国と中国の両国も台湾製の半導体に依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されているコンピューターチップ、Xilinx(ザイリンクス)などの米国兵器サプライヤ向けの高性能チップ、DoD(国防総省)承認の軍用チップなども製造している。米軍が台湾製のチップにどの程度依存しているのかは不明だが、米国政府がTSMCに対して米国軍用チップの製造工場を米国本土に移転するよう圧力をかけていることからも台湾製チップの重要さの程度が窺える。

米国の各種産業も台湾製半導体に依存している。iPhone 12、MacBook Air、MacBook Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノプロセッサチップを提供しているのはTSMC一社のみだと考えられている。iPhone 13やiPad miniなどのAppleの最新ガジェット内蔵のA15 BionicチップもTSMC製だ。TSMCの顧客はもちろんAppleだけではない。Qualcomm(クアルコム)、NVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intel(インテル)といった米国の大手企業もTSMCの顧客だ。

中国も外国製チップに依存しており、2020年現在、約3000億ドル(約34兆円)相当を輸入している。当然、台湾は最大の輸入元だ。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく努力を重ねているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだまだ先の話だ。中国の最先端半導体メーカーSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7ナノ製造プロセスのテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3ナノ製造プロセスまで進んでいる。

このため、中国の企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。例えば中国の先進テック企業Huawei(ファーウェイ)は、2020年現在、TSMCの2番目の大手顧客であり、5ナノと7ナノのプロセッサの大半をTSMCに依存している考えられている。具体的な数字を挙げると、ファーウェイはTSMCの2021年の総収益の12%を占めている。

軍事衝突という形をとらない戦い

2022年前半に起こったことを見るだけで、半導体業界がいかに脆弱かが分かる。比較的落ち着いていた時期でも、停電の影響もあって、TSMCは世界シェアを1.6%失い、継続中の半導体不足に拍車をかけることになった。地政学的な要因による半導体生産量の低下ははるかに大きなものになるだろう。

最悪のシナリオはいうまでもなく、台湾海峡での軍事衝突だ。軍事衝突が起これば、半導体チップのサプライチェーンは完全に分断されてしまう。だが、他にも考えられるシナリオはある。台湾はよく分かっているが、中国に大量にチップを輸出することで、台湾の経済成長は促進されるものの、中国の技術発展も支援していることになる。台湾が、例えば米国との自由貿易協定に署名するなどして、中国への輸出依存度を減らすべく具体的な対策を講じるなら、中国への半導体チップの輸出を打ち切ってしまう可能性がある。

これは中国にとっては耐えられないシナリオだ。考えてみて欲しい。TSMCがトランプ政権の厳しい対中禁輸措置に応えてファーウェイからの新規注文を拒絶して以来、ファーウェイは5ナノ製造プロセスを使用したハイエンドのKirin 9000チップセットの製造を停止せざるを得なくなった。こうしてハイエンドチップが不足すると、ファーウェイはまもなく、5G対応のスマートフォンの製造を継続できなくなるだろう、とある社員はいう

台湾製のチップがまったく入ってこなくなると、中国のテック産業全体の継続的な成長に疑問が生じることになる。そうなると、中国は激怒するだけでなく、国内の安定も脅かされるため、中国政府に台湾武力侵攻の強い動機を与えることになるだろう。

逆に、米国に台湾製チップが入ってこなくなるシナリオも考えられる。「平和的な併合」のシナリオ(武力侵攻なしで台湾が中国に統合されるシナリオ)が実現すれば、台湾のファウンドリは中国政府の支配下に入ることになり、米国にとって戦略的な問題が生じる。中国政府はファウンドリに対してチップの輸出を禁止したり、輸出量を制限するよう要請できる。そうなると、米国は、米軍の最先端の軍事機器のモバイル化に必要なチップが手に入らなくなる。

TSMCが米国企業に対するチップの輸出を停止または制限すると、米国企業は現在のファーウェイのような状況に陥る可能性が高い(中国では「使用できるチップがない」という意味の「无芯可用」という新しいフレーズが登場している)。米国が台湾に侵攻して中国と台湾を再分割する可能性は低いものの、報復として制裁措置を課すなどの対抗手段を検討するかもしれない。そうなれば米中間の緊張がさらに高まることになる。

いうまでもなく、こうしたシナリオが現実化すればグローバルなサプライチェーンは分断され、全世界に深刻な状況を招くことになる。

台湾の半導体産業は国を守る盾か、それともアキレス腱か

台湾は間違いなく、半導体業界における支配的な地位と、それが米国と中国に対する影響力を与えている現在の状況を享受しているが、米中両国は現状に大いに不満を抱いており、両国とも自国に有利な状況になるようさまざまな手段を講じている。たとえば米国は、米国内にチップ製造工場を建設するようTSMCに要請している。一方中国は、TSMCから100人以上のベテラン技術者やマネージャーを引き抜いて、最先端のチップ製造を自国で行うという目標に向けて取り組みを強化している。

これは台湾の将来にとって決して好ましいことではない。台湾が海外での半導体生産量を増やすと、台湾に対する国際的な注目は弱まるかもしれない。が、同時に米国が台湾を軍事的に保護する動機も弱まってしまう。サプライチェーンが広域に分散するほど、中国が台湾を軍事力で併合するための主要な障害が軽減されることにもなる。台湾にとってこれは、難しいが、存続に関わる問題だ。

こうした不確実な要因はあるものの、台湾の地位は少なくとも短期的には安泰のようだ。米中両国の競争相手の製造プロセスはまだ数年は遅れている状態であるし、彼らが追いついてきたとしても、工場は稼働するまでに数年の計画と投資が必要になることはよく知られている。現状に何らかの変化がない限り、米中両国とも、少なくとも短期的には、台湾製チップなしでやっていけるとは考えられない。今確実に言えることは、米中両国は、対台湾戦略において、従来にも増して台湾の半導体産業の役割を考慮する必要があるということだ。

編集部注:本稿の執筆者Ciel Qi(シエル・チー)氏は、Rhodium Groupの中国プラクティスのリサーチアシスタントで、ジョージタウン大学のセキュリティ研究プログラム(テクノロジーとセキュリティ専攻)の修士課程に在籍している。また、ハーバード大学神学部で宗教、倫理、政治学の修士号を取得している。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Image

原文へ

(文:Ciel Qi、翻訳:Dragonfly)

台湾TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズが熊本半導体工場設立を正式発表、22/28nmプロセス採用

ソニーのボードコンピューター「Spresense」向けに税別9980円のIoT/エッジAI開発用「ELTRESアドオンIoT開発キット」が提供開始
TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズが熊本半導体工場設立を正式発表、22/28nmプロセス採用

FILE PHOTO: A man sits in front of the logo of Taiwan Semiconductor Manufacturing Co Ltd (TSMC) during an investors’ conference in Taipei


半導体大手のTSMC(台湾セミコンダクター)が、熊本県への半導体工場新設を正式発表しました。

発表によると、TSMCは22〜28nmプロセスを皮切りとした半導体の製造受託サービスを提供する子会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing」(JASM)を設立し、熊本県に新工場を建設。このJASMにソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が5億ドル(約570億円)を出資し、SSSが20%未満の株式を取得する少数株主となります。

同工場の建設開始は2022年を予定し、2024年末までの生産開始を目指します。約1500人の先端技術に通じた人材の雇用を創出し、月間生産能力は4万5000枚(300mmウェーハ)を見込んでいます。

当初の設備投資額は約70億ドル(約8000億円)となる見込みで、日本政府から強力な支援を受ける前提で検討しているとのこと。

(Source:TSMCソニーセミコンダクタソリューションズEngadget日本版より転載)

アップルとインテルが台湾TSMCの3nm製造プロセスを使ったチップ設計をテスト中と報じられる

2022年のiPad Proプロセッサが最先端の3nmプロセスで製造される可能性が報じられる

TSMC

アップルが早ければ2022年にiPad Pro向けチップに3nmプロセス製造技術を採用する一方で、iPhone 14(2022年モデルの仮称)用のA16(仮)チップは4nmで製造される可能性があるとの噂が伝えられています。

日経新聞の英字メディアNikkei Asia(以下「日経」)報道によれば、アップルとインテルは台湾TSMCの持つ最新世代の製造技術を採用する初の企業となり、両社とも3nm製造プロセスを使ったチップ設計をテストしているとのことです。

さらに日経は、アップルの3nmチップはiPadに搭載される可能性が高いと伝えています。そうした最先端プロセッサを廉価モデルに投入するとは考えにくく、最新版ではMacと同じM1チップを搭載したProモデル向けになると思われます。

その一方でiPhone 14向けのA16にはスケジュールの都合(おそらく製造の歩留まりやリードタイムのため)から、現世代のA14 Bionic(5nm)と3nmの中間にあたる4nmチップが採用される見込みとの趣旨が述べられています。

iPhone 14向けチップが4nmプロセス製造になる見通しは、調査会社TrendForceも伝えていたことです。かたや2021年のiPhone 13(仮)向けチップについては、台湾DigiTimesが5nmプロセスを改良した「N5P」ですでに量産開始したと報じていました

半導体における製造プロセスとは、回路線幅のこと。おおむね10nm、7nm、5nmと数字が小さくなるほど同じサイズのチップに含まれるトランジスタ数が多くなり、性能とエネルギー効率の両方が高まる傾向があります

TSMCの公表したロードマップ表によれば、3nm技術は5nmよりも演算性能を10%〜15%向上できる一方で、消費電力を25%〜30%削減できるとのこと。その一方で、iPhone 13向けA15(仮)に使われると思しき5nm+(N5P)は前世代の5nmプロセスより演算性能が5%、消費電力が10%減るとされています。

以上はあくまでも一般論であり、アップルが独自設計したチップがその数値通りに進化するとは限りませんが、おおよその目安にはなりそうです。

M1チップ搭載iPad Proが発表された当時は「ついにiPadとMacのプロセッサが同じになった」と話題を呼びましたが、ゆくゆくはiPad ProがMacの性能を超えていく展開もありうるのかもしれません。

(Source:Nikkei Asia。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

関連記事
インテルのノートPC向けCPU市場シェアがAppleシリコンの影響で大きく落ち込む可能性、AMDはシェア堅持か
Intelが薄型軽量ノートPC向け第11世代Core新SKU2種と同社初の5Gモデム発表、バーチャルCOMPUTEX 2021で
半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も
米国政府の支援でTSMCがアリゾナに約1.3兆円規模の先進的半導体工場を建設
【インタビュー】アップル幹部がM1搭載の2021年版iPad Proに寄せる思い、Macとの統合と新しい統合プロセッサー戦略
台湾の水不足でわかるテックへの気候変動の脅威

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Intel / インテル(企業)iPad(製品・サービス)TSMC / 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(企業)日本(国・地域)

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

Nikada via Getty Images

昨今、あらゆる業界を悩ませていると言っても過言ではない半導体製造の不足。ここ最近は製造側の取り組みにも関わらず悪化の一途を辿っているといった状況ですが、リードタイム(発注から納品までの時間)が17週間にも及ぶことから、この問題では比較的影響の少なかったアップル製品にも、ついに影響が出る可能性があると報じられています。

この動向を報じているのは、米国Bloomberg。同誌の報道によると、サスケハナ・ファイナンシャル・グループはチップ製造の遅延(リードタイム)が3月時点での16週から4月では17週に延びており「ユーザーが供給の確保に必死になっていることを示している」と分析しているとのことです。

これは同誌が2017年にデータを追跡し始めて以来最も長い待ち時間であり、記事ではこれを称して「危険水域」と表現されています。

なお、さらに小規模な企業の場合はもっと影響が大きく、待ち時間が52週間を超えるほどの大問題になっており、製品の再設計や優先順位の変更さえも余儀なくされているとのこと。実際に最近は、日米の自動車メーカーにおいて一部のハイテク機能を省いて需要に応えているとの報道もありました

現状でのアップルは半導体メーカーにとっては最上級とも呼べる顧客である点や、ティム・クックCEOがサプライチェーンの構築や物流に長けた達人であるため、これまでは部品の供給不足に大きく悩まされたといった話はほとんどありませんでした。

しかし先日の第2四半期決算説明会では、幹部ら自らが今後MacやiPadが品薄になる見込みと警告していたほどです

特にアップルにとって重大と思われるのが、iPhoneのAシリーズチップやMacおよびiPad Pro用のM1チップを製造しているTSMCがある台湾が、目下危機的状況に置かれていることです。

台湾は新型コロナウイルス感染が再び拡大していることに加えて、雨期にほとんど雨が降らなかったために節水対策を強化するとも発表されており、こちらもチップ生産に影響するとの懸念もあります。

もっともTSMC側は今のところ「この措置が当社の事業に影響を与えるとは考えていない」との声明を出しています。

こうしたチップ不足が、今年のMacやiPadの生産や入手しやすさにどの程度の影響を与えるかはまだ不明です。またサスケハナは、リードタイムが長くなったことで各企業が在庫の積み増しや二重発注をするなど「悪い行動」に拍車をかけたようだも推測しています。

もしも今回のチップ不足が解消されても、その後の混乱は長引くのかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

関連記事
Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議
半導体チップ不足によりGMがさら多くの工場を操業停止に
台湾の水不足でわかるテックへの気候変動の脅威
米国政府の支援でTSMCがアリゾナに約1.3兆円規模の先進的半導体工場を建設
米政府が先進的半導体工場の国内建設に向けインテルやTSMCと協議か

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:サプライチェーン(用語)TSMC / 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(企業)半導体(用語)台湾(国・地域)

台湾の水不足でわかるテックへの気候変動の脅威

前代未聞の干ばつに直面している台湾のチップメーカーへの給水能力について台湾政府が週末に出した声明は、気候変動がテック産業の基盤にとって直接の脅威であることをはっきりと示している。

Bloombergが報じたように、台湾の蔡英文総統は現地時間3月7日、56年の歴史で最悪の干ばつに直面している市民や事業所への給水能力についてFacebookに投稿した

総統は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)のような企業による半導体製造を停止させないだけの十分な貯水量は確保される、と述べた。

チップはテック産業の基礎であり、チップ製造の混乱は世界経済に悲惨な結果をもたらす可能性がある。チップ供給の逼迫はすでにGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーの生産停止を招き、チップ製造施設の稼働は限界に近づいている。

バイデン政権は、米国各地で製造プラント停止を引き起こしている現在も続くチップ不足を解決するために2021年2月に大統領令を出した際に、米国が半導体製造供給を強化する必要があると強調した。

「台湾の水不足、そして半導体への影響はあらゆるテクノロジー投資家、創業者、全ベンチャーエコシステムへの警鐘です。はっきりとした複雑性理論であり、産業マーケットで広く急速に展開されているスケーラブルでデータを活用しているソリューションはコース修正で唯一の望みであることを示しています」とエネルギー専門の投資会社Blue Bear Capitalのパートナー、Vaughn Blake(ヴォーン・ブレイク)氏は書いた。

台湾の水危機と半導体産業への大きな影響は目新しいものではない。そうした問題は2016年のハーバードビジネススクールのケーススタディ分析でも取り上げられた。そしてTSMCはすでに水の消費を解決するために取り組んでいる。

TSMCは2016年には水の浄化とリサイクルの改善に取り組んでいた。これは1日あたり200万〜900万ガロンの水を消費する産業にとっては必要不可欠だ(Intelだけで2015年に90億ガロンの水を使用した)。ハーバードのケーススタディによると、少なくともTSMCの製造施設の一部は90%という率で工業廃水リサイクルをなんとか達成した。

しかしムーアの法則によってそのサイズは小さくなり、製造工程におけるさらなる正確さとより少ない不純物に対する需要が増えるにつれ、製造施設での水使用は増えている。次世代チップはおそらく1.5倍の水を消費し、これは、増加分を埋め合わせるためにリサイクル改善が必要とされることを意味する。

スタートアップはコストを下げ、ますますエネルギー集約的になっている排水リサイクルと脱塩のパフォーマンスを改善する方策を探す必要がある。

一部の企業はそうした方策を実践している。量子ベースの水処理テクノロジーを開発したと主張している英国のBlue Bosonのような企業もある。同社の主張はサイエンスフィクションのように聞こえるが、同社ウェブサイトは世界で最も優れた研究だとうたっている。同じく英国企業である漏れ検知のFidoは水が浪費されている可能性がある箇所を追跡する。そしてPontic TechnologyとMicronicは水と液体の減菌システムを開発している米国企業だ。

浄水のスタートアップNumixは工業生産の要である重金属を排除することを目的としている。そしてロサンゼルスのDivining Labsは水使用のためにより多くのリソースを集めるため、雨水流出を予測・管理を向上させるのに人工知能を使っている。

「『その人の給料が理解していないことに基づくとき、その人に何かを理解させるのは難しい』とUpton Sinclair(アプトン・シンクレア)氏はいう」とブレイク氏は述べている。「さて、そこにいるすべての創業者と投資家のみなさん、当分の間、すべてのテクノロジーは気候対策のもののようだが、技術がまったくないということにならないように」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:TSMC台湾災害気候変動半導体

画像クレジット:Usis / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi