ノーコードの没入型ゲーム制作プラットフォーム「Yahaha Studios」が2022年ローンチに先駆けて約57.3億円調達

Roblox(ロブロックス)をはじめ、Overwolf(オーバーウルフ)などのようなユーザー生成ゲーミング体験の成功は、ゲームを作るコンセプトを大衆化し、それをメインストリームに導いた。そして今、Unity(ユニティ)、Microsoft(マイクロソフト)、EA(エレクトロニック・アーツ)のベテランたちが立ち上げたスタートアップが、クリエイターに没入型ゲーム制作の場を提供する新しいプラットフォームと、同じ考えを持つ人々のための関連コミュニティの構築に向けて、2022年中のローンチの準備を進めている。これに先立ち、同社は5000万ドル(約57億3000万円)の資金調達を明らかにしている。

フィンランドのエスポーに本拠を置き、研究開発の拠点を上海に構えるYahaha Studios(ヤハハ・スタジオ)は、まだ商用プロダクトをローンチしていない。しかしそれは、ノーコードの「ゲームのためのメタバース」として何を構築しているかを表している。そこでは人々がコミュニティに集まり、仮想と現実世界の要素を組み合わせたゲームを構築し、プレイすることができる。

同社が調達した5000万ドルは、明確にいうと新たな資金調達ではない。この資金は、約2年前になる2020年の6カ月間に、3回のラウンドを経て集められた。

同社によると、5Y Capital(五源資本)が「ラウンド1」を、HillHouse(高瓴)が「ラウンド2」を、Coatue(コーチュー)が「ラウンド3」を主導した。初期の投資家はその後のラウンドにも参加しており、ZhenFund(真格基金)、Bertelsmann Asia Investments(贝塔斯曼亚洲投资基金 )、Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)、Xiaomi(シャオミ、小米科技)などが出資者に名を連ねている。TechCrunchが確認したところによると、Yahahaの評価額は3億ドル(約344億円)から5億ドル(約573億円)の範囲になる(「数億ドル(数百億円)」というのがTechCrunchが取材したときに使われたフレーズである)。

Yahaha Studiosのローンチはさらに数カ月先になるかもしれないが、その一方で、少数の初期ユーザーグループ(約220人)によるDiscord(ディスコード)コミュニティを粛々と運営してきた。プロダクトのアルファ版は2022年の第2四半期にローンチされることを同社は筆者に伝えている。広報担当者によると、これ以上の資金調達は予定していない。

「メタバース」という言葉はすぐに過度に使われるようになった。多くの企業が、拡張現実と仮想現実の技術を組み合わせて、まったく新しい種類のデジタル体験、ゲーミングやその他を作り出すことを約束し、この漠然とした空間への道を切り開いていると主張する。Yahahaはいくつかの理由から、群衆とは一線を画し、早くから投資家の注目を集めていたようである。

第1に同社の創業者たち、CEOのChris Zhu(クリス・ジュー)氏、COOのPengfei Zhang(ホウヒ・チャン)氏、CTOのHao Min(ハオ・ミン)氏の存在がある。3人はともにクロスプラットフォームゲームエンジンのUnityでエンジニアとして働いており、長年の経験を有している。

チャン氏はこの15年間フィンランドに住んでおり、そこで同社はスタートしているが、それはYahahaがエスポーを拠点とする唯一の理由ではない。Supercell(スーパーセル)のような企業もヘルシンキ郊外を起源としており、この地域には、チームを作り新しいゲーミングイノベーションを活用していく強力なエコシステムが備わっている。

YahahaのプラットフォームはUnityとのパートナーシップで構築されていることを同社は明らかにしている。その連携によって、より多数のクリエイターが参加し、より豊富なクロスプラットフォームゲームプレイ、コミュニティが生まれることになる。

第2に、Yahah自体の根底にあるコンセプトは、現在テック業界で人気のある2つのテーマ、ユーザー生成コンテンツとノーコード開発にフォーカスしている。UGCはこの数十年の間、オンラインエンターテインメントの一部として人気を博してきたが、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)のようなプラットフォームは「クリエイター」、すなわち自らが生成したコンテンツを中心に巨大なオーディエンスとビジネスを構築する人々への新たなフォーカスを生み出している。

Twitch(トゥイッチ)やDiscordなどのプラットフォームはゲームプレイヤーからセレブを作り出したが、クリエイターが実際のゲームを中心に巨大なコミュニティを構築するのを容易にするようなプラットフォームは、まだあまり存在しない(Robloxは部分的にこれに対処しているが、ソーシャルプラットフォームのようには感じられない)。これがYahahaが目指しているものであり、うまく機能すれば、非常に興味深いものにつながる可能性がある。

一方、プラットフォームを「ノーコード」のフレームワーク上に構築することは、より多くの人々がYahahaを利用する可能性を高めるのに役立つであろう。ノーコードのアプリケーションの多くはエンタープライズITの分野に置かれていたが(例えばCRMと会計ソフトの統合の容易な構築)、消費者向けのサービス、特にクリエイターコミュニティにサービスを提供するためのものが増えてきていることは興味深い。

「5000万ドルの投資の達成は、私たちにとって極めてエキサイティングなことです」とCEOのクリス・ジュー氏は声明で述べている。「メタバースが成長し続ける中、Yahaha Studiosは次世代エンターテインメントの先駆けとなる重要な役割を担っています。世界中のユーザーを仮想エンターテインメントでつなぐことで、Yahahaはゲーム開発者とゲーマーの双方に、独自のクリエイティブでソーシャルな体験を提供します。Yahahaを通じて私たちは、実績のある開発者から、初めてゲームを制作する開発者に至るまで、あらゆるレベルのクリエイターに力を与えます。誰もが仮想世界でクリエイターになることができるのです。私たちは2022年に本格的にローンチし、チームを成長させ、コンテンツ制作の未来に向けたビジョンの第一段階を実現できることを、心から楽しみにしています」。

画像クレジット:Yahaha Studios

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

クリエイターがゲーム内でアイテム作成、共有、収益化できるプラットフォームのOverwolfが約85億円調達

クリエイターがゲーム内でアイテムを作り、共有し、収益化できるプラットフォームを提供するOverwolf(オーバーウルフ)は、Andreessen Horowitz(a16z)がリードしたシリーズDで7500万ドル(約85億円)を調達した。既存投資家であるGriffin Gaming Partners、Insight Partners、Intel Capital、Liberty Technology Venture Capital、Markerなども参加した。調達した資金は、OverwolfのCurseForge Coreに投入される。CurseForge Coreは、ゲームスタジオ、IPオーナー、ゲーム内クリエイターがゲーム内にユーザー生成コンテンツを構築することを可能にするソリューションだ。

「ゴールド」やゲーム内MODが売買されていた世界は、大きく変化している。今やプレイヤーは、ゲーム内で体験を構築して共有できることに魅力を感じており、クリエイターとゲームオーナー向けにまったく新しい分野が生まれている。

テルアビブを拠点とするOverwolfは、Andreessen Horowitz、Atreides Management、Griffin Gaming Partners、Insight、Marker、Intel Capital、Liberty Technology Venture Capital、Market、Ubisoftなどの投資家から、これまでに1億5000万ドル(約171億円)超を調達している。

CurseForge Coreはホワイトレーベルのソリューションで、パブリッシャーが既存および新規のゲームにModを簡単に統合することを可能にする。

Overwolfは、技術的なソリューションであると同時に、ゲーム開発者に対してコンテンツのモデレーション、IP、その他さまざまな側面をカバーするフルサービスのUGCプラットフォームを提供している。

Overwolfの共同創業者でCEOのUri Marchand(ウーリ・マルシャン)氏は「情熱的なコミュニティの実行速度と圧倒的な創造性には、単一のゲームスタジオでは太刀打ちできません。主要なゲームスタジオが、コミュニティの創造に抵抗するのではなく、これらのクリエイターがコミュニティやスタジオ自体にもたらす価値を受け入れ始めているという認識の変化が見られます」と話す。

Overwolfによると、約8万7000人のインゲームクリエーターを擁し、毎月2000万人超のゲーマーがOverwolfの製品を利用しているとのことだ。Overwolfは、2020年の約3倍となる2900万ドル(約33億円)をゲーム内クリエイターに支払うと予想している。また、ゲーム内アプリのクリエイターやMODの作者、さらにはMODを新作品に統合することを計画しているゲームスタジオを支援するため、5000万ドル(約57億円)の基金「Overwolf Creators Fund」を立ち上げている。

a16zのパートナー、Jonathan Lai(ジョナサン・ライ)氏は、次のように語る。「TikTok、YouTube、Instagramなど、今日の最大のソーシャルプラットフォームは、友人や家族、コミュニティのためにコンテンツを生成するクリエイターによって大きく支えられています。ゲームがソーシャルネットワークに進化していく中で、クリエイターやユーザー生成コンテンツも同様に重要な役割を果たすでしょう。Overwolfのプラットフォームは、堅牢な開発エンジン、配信用のアプリストア、クリエイターが作品から生計を立てるための収益化ツールを備えているため、どんなプレイヤーでもお気に入りのゲームの共同制作者になることができます」。

筆者は電話でマルシャン氏に、Overwolfがメタバース形式の環境を提案するための「建築用ブロック」のようなものになる可能性があるかどうか尋ねた。

「ゲーム間で一貫した体験ということであれば、IPの所有者と一致した方法でそのようなものを作り、ギャップを埋めることができるかもしれません」と同氏は答えた。

「それは剣かもしれないし、物語かもしれないし、さまざまなものの可能性があります。人々が会話したり、体験を切り替えたり、所有権を生み出したりできることとは別に、メタバースの大きな部分を占めるのは創造であり、当社は創造の要素に焦点を当てている会社です」と付け加えた。

Overwolfの競合他社には、最近2600万ドル(約29億円)の資金調達を行ったMod.ioがある。

画像クレジット:Overwolf / Overwolf leadership team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi