デザイントークンやアセットを自動的に収集、保存、配布することでVIの統一を支援する「Specify」

Figma(フィグマ)とGitHub(ギットハブ)の共通言語を作るスタートアップ、Specify(スペシファイ)をご紹介しよう。Specifyは、あなたのデザイントークンとアセットのためのセントラルリポジトリとAPIとして機能する。言い換えれば、デザイナーは標準的なFigmaファイルを更新することができ、変更はGitHubリポジトリに反映される。

このスタートアップは、Eurazeoが主導する400万ユーロ(約5億1600万円)のシードラウンドを調達した。BpifranceのDigital Ventureファンド、360 Capital、Seedcampも同ラウンドに参加した。EurazeoのClément Vouillon(クレマン・ヴイヨン)氏やeFounderのDidier Forest(ディディエ・フォレスト)氏など、ビジネスエンジェルも出資している。

組織がデザインに本腰を入れ始めると、ボタン、アイコン、フォント、ロゴ、色など、統一したスタイルでデザインシステムを作りたくなるものだ。例えばログインページは、Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Gmail、Pinterest(ピンタレスト)ではそれぞれまったく異なる印象を与える。

とはいうものの、デザイナーと開発者の双方がこれを手作業で行っていることが多いのが現状だ。デザイナーはConfluenceやNotionでデザイントークンやアセットを使ってドキュメントページを作成する。そして開発者は、手作業でドキュメントをチェックし、最新のエレメントを使用しているかどうか確認しなければならない。

画像クレジット:Specify

Specifyは、デザイントークンやアセットを保存するセントラルリポジトリとして機能する。ユーザーはまず、1つまたは複数のソースと1つまたは複数のデスティネーションでSpecifyを接続する。

例えばSpecifyを使い、Figmaファイルから情報やデータを直接取得することが可能だ。そしてデザイナーはFigmaで何かを更新することができ、その変更はSpecifyのリポジトリに反映される。Specifyは単一の真実のソースとして機能するわけだ。

だが、変更はアプリケーション内でより速く反映されることもある。何かが更新されると、Specifyは自動的にGitHub上でプルリクエストを作成することができ、コマンドラインインターフェイスもある。開発者はワンクリックで変更を受け入れることができる。このようにして、色、ロゴ、フォントなどが、手動で作業することなく更新される。

Specifyは、自社製品の対象をFigmaとGitHubに限定するつもりはないようだ。この先、Dropbox(ドロップボックス)やGoogleドライブなど、さらに多くのデータソースを導入する予定だ。そしてNotionなど、より多くのアップデート先に対応する予定もあるという。特に、1つのデザイン変更を複数の更新先にプッシュできる機能があれば便利だろう。

製品ビジョンは明確だ。Specifyは、デザインチームを一元化する接着剤になりたいと考えている。「当社のアプローチは、Segment(セグメント)とよく似ていますが、デザインのための製品だと考えています」と、共同創業者兼CEOのValentin Chrétien(ヴァランタン・クレティアン)氏は筆者に語った。

画像クレジット:Specify

画像クレジット:Balázs Kétyi / Unsplash (Image has been modified)

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

【コラム】知られざるデザインの事実とユーザーエクスペリエンスの偏りに対処する方法

最近とある巨大テック企業と話をする機会があった。彼らが知りたがっていたのは、彼らが手がける人間中心設計は、エクスペリエンスの偏りを防ぐことができるかどうかというものだった。簡単にいうとその答えは、おそらくノーである。

エクスペリエンスの偏りといっても、何も私たち自身の認知的な偏りのことではない。デジタルインターフォースのレイヤー(デザイン、コンテンツなど)における偏りのことを指しているのだ。人々が接しているほとんどのアプリやサイトは、制作したチームの認識や能力に基づいて設計されているか、ごく数人の価値の高いユーザーのために設計されている。もしユーザーがデザインにおける慣習を知らなかったり、デジタルへの理解が足りなかったり、技術的なアクセスがなかったりすると、そのエクスペリエンスは彼らにとって不利なものになると言えるだろう。

解決策としては、多様なユーザーのニーズに合わせ、デザインやエクスペリエンスを複数バージョン作るという考え方にシフトするというのがある。

前述のテック企業の話に戻ると、共感できるデザインへの投資はどんな企業にとっても不可欠だが、デザイン機能を立ち上げ運営してきた者として、ここで知られざる事実をいくつか打ち明けておく必要があるだろう。

まず第一に、UXチームやデザインチームは、戦略やビジネス部門から非常に限定されたターゲットユーザーを指示されることが多く、エクスペリエンスの偏りはすでにそこから始まっている。事業があるユーザーを優先しなければ、デザインチームはそのユーザーのためにエクスペリエンスを作る許可も予算も得られない。つまり、企業が人間中心設計を追求したり、デザイン思考を採用したりしていたとしても、多くの場合は商業的な利益に基づいてユーザープロファイルを繰り返し作成しているだけで、文化、人種、年齢、収入レベル、能力、言語などの多様性の定義からは程遠いものとなっている。

知られざる事実の2つ目に、人間中心設計ではUX、サービス、インターフェースのすべてを人間が設計することを前提としていることが挙げられる。エクスペリエンスの偏りを解決するために、ユーザーのあらゆるニーズに基づいてカスタマイズされたバリエーションを作成する必要がある場合、特にデザインチーム内の多様性が豊かでない場合には手作りのUIモデルというだけでは十分でない。ユーザーのニーズに基づいた多様なエクスペリエンスを優先させるには、デザインプロセスを根本的に変えるか、デジタルエクスペリエンスの構築に機械学習や自動化を活用するかのどちらかが必要であり、これらはどちらもエクスペリエンスの公平性へのシフトのためにはとても重要なことである。

エクスペリエンスの偏りを診断し、対処する方法

エクスペリエンスの偏りに対処するには、どこに問題があるかを診断する方法を理解するところから始まる。下記の質問は、デジタルエクスペリエンスのどこに問題が存在するかを理解するためにはとても有用な質問だ。

コンテンツと言語:このコンテンツは個人にとってわかりやすいものか?

アプリケーションには、技術面で特別な理解を必要としたり、企業や業界に特化した専門用語を使ったり、専門知識を前提としたりするものが多い。

金融機関や保険会社のウェブサイトでは、閲覧者が用語や業界、名称を理解していることが前提となっている。代理店や銀行員が事細かに教えてくれる時代でないのなら、デジタルエクスペリエンスがそれに代わって説明してくれるべきではないだろうか。

UIの複雑さ:自分の能力に基づいたインターフェースになっていないか?

障がいがあっても支援技術を使って操作ができるだろうか。またはUIの使用方法を学ぶ必要があるか。1ユーザーがインターフェイスを操作するために必要とする力量は、その人の能力や状況に応じて大きく異なる場合がある。

例えば高齢者向けのデザインでは、視覚的効果が控えめで文字の多いものが優先される傾向にあり、逆に若者は色分けや現在のデザイン規則を好む傾向にある。新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン用ウェブサイトでは、操作方法や予約方法を理解するのに皆苦労したのではないだろうか。また、各銀行のウェブサイトは同じような情報でも操作方法が大きく異なっている。かつて、スタートアップ企業のUIは非常にシンプルなものだったが、機能が追加されるにつれベテランユーザーにとってさえも複雑になってきている。Instagramの過去5年間での変化がその良い例である。

エコシステムの複雑さ:複数のエクスペリエンスをシームレスに操作する責任をユーザーに負わせていないか?

私たちのデジタルライフは単一のサイトやアプリを中心としているわけではなく、オンラインで行うことすべてにおいてあらゆるツールを使用している。ほとんどのデジタルビジネスやプロダクトチームは、ユーザーを自分たちの庭に閉じ込めておきたいと考えており、ユーザーが達成しようとしていることに基づいて、ユーザーが必要とするかもしれない他のツールを考慮してくれることなどほとんどない。

病気になれば、保険、病院、医師、銀行との連携が必要になるだろう。大学の新入生の場合は学校のさまざまなシステムに加えて、ベンダー、住宅、銀行、その他の関連組織と連携しなければならない。このように、ユーザーがエコシステムの中でさまざまなエクスペリエンスをつなぎ合わせる際に困難に直面しても、結局のところユーザーの自己責任となってしまうのである。

受け継がれるバイアス:コンテンツを生成するシステム、別の目的のために作られたデザインパターン、エクスペリエンスをパーソナライズするための機械学習を使用している場合。

このような場合、これらのアプローチがユーザーにとって正しいエクスペリエンスを生み出しているかどうかをどのようにして確認しているだろうか?コンテンツ、UI、コードを他のシステムから活用する場合、それらのツールに組み込まれたバイアスを引き継いでしまうことになる。例えば、現在利用可能なAIコンテンツやコピー生成ツールはいくつも存在するが、自身のウェブサイトのためにこれらのシステムからコピーを生成した場合、そのバイアスをエクスペリエンスに取り込んでしまうことになる。

よりインクルーシブで公平なエクスペリエンスエコシステムの構築を始めるには、新しいデザインと組織的なプロセスが必要だ。よりカスタマイズされたデジタルエクスペリエンスの生成を支援するAIツールは、今後数年間でフロントエンドデザインやコンテンツへの新しいアプローチにおいて大きな役割を果たしてくれることだろう。しかし、どんな組織でも今すぐ実行できる5つのステップがある。

デジタルエクイティをDEIアジェンダの一部とするということ:多くの組織がダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの目標を掲げているものの、それらが顧客向けのデジタル製品に反映されることはほとんどない。筆者は大企業でデザインチームを率いたり、デジタルスタートアップで働いたりした経験があるが、問題はどこでも同じで、組織全体の多様なユーザーに対して明確な説明責任を果たしていないということなのである。

大企業でも中小企業でも、各部門が影響力の強さやどちらが顧客に近いかを競い合っている。デジタルエクスペリエンスや製品の出発点は、ビジネスレベルで多様なユーザーを定義し、優先順位をつけるところから始まるが、上級職レベルでデジタルとエクスペリエンスの公平性の定義を作成することが義務付けられているのなら、各部門はそれらの目標にどのように貢献できるかを定義すれば良い。

デザインチームやプロダクトチームは、経営陣や資金面でのサポートがなければインパクトを与えることができないため、経営幹部レベルはこの優先順位を確保するという責任を負う必要がある。

デザインチームと開発チームの多様性を優先すること:これについてはこれまでにも多くの記事が書かれてきたが、多様な視点を持たないチームというのは、自分たちの恵まれた経歴や能力だけに基づいたエクスペリエンスを生み出してしまうということを強調しておく必要がある。

さらに、多様なユーザーに向けたデザイン製作を経験したことのある人材を採用することが不可欠であるということも付け加えておきたい。デザイナーや開発者のグループを改善するため、採用プロセスをどのように変えているのか。多様な人材を確保するためにどういった企業と提携しているか。DEI目標は採用用紙上のチェックボックスに過ぎず、すでに思い描いていたデザイナーを採用していないだろうか。使用しているエージェントは明確かつ積極的なダイバーシティプログラムを持っているか。そして、彼らはインクルーシブデザインにどの程度精通しているか。

Googleの取り組みには模範的なものがいくつかある。人材パイプラインにおける代表性を向上させるための取り組みとして、機械学習コースへの資金提供を白人の多い教育機関からより包括的な学校に移し、TensorFlowコースへのアクセスを無料にし、またBIPOC(黒人、先住民、有色人種)にあたる開発者にはGoogle I/Oなどのイベントへの無料チケットを送付している。

何を、誰にテストするかを再定義する:ユーザーテストが実施される場合、収益性の高いユーザー層や特に重要なユーザー層に限定してテストが実施されることがあまりにも多い。しかし、お年寄りやデスクトップコンピュータをまったく使用しない若いユーザーに対してそのサイトはどのように機能するだろうか?

エクスペリエンスにおける公平性と平等性の重要な側面として、複数のエクスペリエンスを開発し、テストすることが挙げられる。ほとんどの場合、デザインチームは1種類のデザインをテストして、ユーザーからのフィードバックに基づいて微調整を行っている(テストを行ってさえいない場合もかなり多い)。手間はかかるものの、高齢者やモバイルしか持っていないユーザー、異なる文化的背景を持つユーザーなどのニーズを考慮したデザインバリエーションを作ることで、デザインをデジタルエクイティの目標に結びつけることができるのである。

「1つのデザインをすべてのユーザーに」届けるのではなく「複数バージョンのエクスペリエンスを立ち上げる」ということにデザイン目標を変更する:通常、最も重要なユーザーのニーズに基づいて、あらゆるエクスペリエンスを単一バージョンに絞り込むというのがデジタルデザインや製品開発の常識である。アプリやサイトのバージョンを1つではなく、多様なユーザーに合わせて複数バージョンを用意するというのは、多くのデザイン組織のリソース確保や製作の方法に反するものである。

しかし、エクスペリエンスの公平性をもたらすためにはこの転換が不可欠だ。簡単な自問をしてみると良い。そのサイト / 製品 / アプリには、高齢者向けのシンプルで大きな文字のバリエーションが用意されているだろうか?低所得世帯向けのデザインに関しては、デスクトップに切り替えて作業する人と同様に、モバイルのみ使用のユーザーでも難なく作業を完了できるだろうか?

これは、単にレスポンシブバージョンのウェブサイトを用意したり、バリエーションをテストして最適なデザインを見つけたりすることに留まらない。デザインチームは、優先されるべき多様なユーザーや十分なサービスを受けていないユーザーに直接結びつくような、複数の視点を持ったエクスペリエンスを提供するという目標を持つべきなのである。

自動化を導入し、ユーザーグループごとにコンテンツやコピーのバリエーションを作成する:デザインのバリエーションを揃えたり、幅広いユーザーでテストしたりしていたとしても、コンテンツやUIのコピーは後回しにされているということがよくある。特に組織の規模が大きくなるにつれてコンテンツが専門用語で溢れ、洗練されすぎて意味をなさなくなることがある。

既存の言葉(例えばマーケティングコピー)からコピーを取ってアプリに載せた場合、そのツールが何のためにあるのか、どうやって使うのかなどの、人々の理解を制限してしまっていないだろうか。エクスペリエンスの偏りに対するソリューションが、個々のニーズに基づいたフロントエンドデザインのバリエーションを用意することであるならば、それを劇的に加速させるスマートな方法の1つは、どこに自動化を適用すべきかを理解することである。

私たちは今、UIやコンテンツの制作方法を根本的に変えてしまうであろう新たなAIツールが、静かな爆発のように広がり続けている時代にいる。ここ1年でオンラインに登場したコピー駆動型のAIツールの量を見てみると良い。こういったツールはコンテンツ制作者が広告やブログ記事をより速く書けるようにすることを主な目的としているが、大規模なブランド内でこのようなツールをカスタム展開し、ユーザーのデータを取得してUIのコピーやコンテンツをその場で動的に生成するということも容易に想像ができる。例えば、年配のユーザーには専門用語を使わないテキストによるサービスや商品の説明が展開され、Z世代のユーザーには画像を多用したコピーが表示されるという具合だ。

ノーコードのプラットフォームでも同様のことが可能である。WebFlowからThunkableまで、すべてが動的に生成されるUIの可能性を持ち備えている。Canvaのデザインは物足りなく感じるかもしれないが、すでに何千もの企業がデザイナーを雇う代わりに、ビジュアルコンテンツ作成のため、Canvaを利用している。

多くの企業がAdobe Experience Cloudを利用しているが、その中に埋もれているエクスペリエンスの自動化機能を蔑ろにしていないだろうか。デザインの役割は最終的に、カスタムメイドのエクスペリエンスを手作りすることから、動的に生成されるUIのキュレーションへと変化していくことだろう。過去20年間にアニメーション映画が遂げた進化が良い例である。

機械学習とAIがもたらすデザインバリエーションの未来

上記のステップは、組織がエクスペリエンスの偏りに対処し、現在のテクノロジーを使って変えていくための方法を示したものである。しかし、エクスペリエンスの偏りに対処する未来が、デザインやコンテンツのバリエーション作成に根ざしているとすれば、AIツールがかなり重要な役割を果たすようになる。すでにJarvis.aiやCopy.aiなどのAI駆動型コンテンツツールの波が押し寄せており、またFigmaやAdobe XDなどのプラットフォームに組み込まれた自動化ツールも存在する。

フロントエンドデザインやコンテンツを動的に生成できるAIや機械学習の技術は、多くの点でまだ初期段階にあるものの、今後の展開を物語る興味深い事例があるため以下に紹介したい。

1つ目は、Googleが2021年初めに発表したAndroid端末向けのデザインシステムのMaterial Youである。このシステムではユーザーが高度なカスタマイズを施すことができ、また高度なアクセシビリティも内蔵している。ユーザーは色やフォント、レイアウトなどを自由にカスタマイズでき、自在にコントロールすることができるが、機械学習の機能により、場所や時間帯などユーザーの変数に応じてデザインが変化するようになっている。

パーソナライゼーションは、ユーザーが自分でカスタマイズできるようにするためのものと説明されているが、Material Youの詳細を見てみるとデザインレイヤーにおける自動化と多くの可能性が交差していることが分かる。

人々がAIを体験する際のデザイン原則やインタラクションについて、これまで各企業が取り組んできたことも忘れてはいけない。例えばMicrosoftのHuman-AI eXperienceプログラムでは、AI主導のエクスペリエンスを構築する際に使用できる、インタラクションの原則とデザインパターンのコアセットを、人間とAI間のインタラクションの失敗を予測して解決策を設計するためのプレイブックとともに提供している。

これらの例は、インタラクションやデザインがAIによって生成されることを前提とした未来の指標となるものであり、これが現実の世界でどのように機能していくかについてはまだ実例がほとんどない。重要なのは、偏りを減らすためにはフロントエンドデザインのバリエーションとパーソナライゼーションを根本的に増やすというところまで、事を進化させる必要があるということであり、またこれはAIとデザインが交差するところで生まれつつあるトレンドを物語っている。

こうしたテクノロジーと新たなデザイン手法が融合すれば、企業にとってはユーザーのためのデザインのあり方を根本的に変えるチャンスになるだろう。エクスペリエンスの偏りという課題に今目を向けなければ、フロントエンド自動化の新時代が到来したときには、その問題に対処するチャンスがなくなってしまうだろう。

編集部注:本稿の執筆者Howard Pyle(ハワード・パイル)氏は、デジタルエクスペリエンスに公平性を持たせることを目的とした非営利団体ExperienceFutures.orgの創設者であり、これまでにMetLifeやIBMでブランドサイドのデザインイニシアチブを主導してきた。

画像クレジット:naqiewei / Getty Images

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(文:Howard Pyle、翻訳:Dragonfly)

UXチームのためのDesignOps(デザイン運用)プラットフォームを目指すzeroheight

ウェブサイトやアプリの高品質なUXは、企業が成功する上で、あった方が良いといったものではもはやなく、なくてはならないものになっている。だが、UXチームの影響力を拡大することは容易ではない。近年、UXチームはDesignOps(デザイン運用)プラットフォームと呼ばれるものに注目している。

このたび、UXチームにとって重要なDesignOpsプラットフォームとなることを目指し、そのスケールアップのための資金を調達したスタートアップが登場した。

zeroheight(ゼロハイト)は、Tribe CapitalがリードするシリーズAラウンドで1000万ドル(約11億円)を調達した。ラウンドには、Adobe、Y Combinator、FundersClub、Expaの他、エンジェル投資家からTom Preston-Werner(トム・プレストン・ワーナー)氏(GitHubの共同創業者)、Bradley Horowitz(ブラッドレー・ホロウィッツ)氏(GoogleのVP Product)、Irene Au(アイリーン・オー)氏(GoogleでUXデザインを開発・運営)、Nick Caldwell(ニック・キャルドウェル)氏(TwitterのVP Engineering)などが参加した。

ロンドンを拠点とするzeroheightは、今後、サンフランシスコ・ベイエリアにも進出し、チーム全体を拡大する。これまでは、UXにおける文書化に注力してきたが、今後はデザインと開発のギャップを解消するなど、他の分野にも取り組む。

共同創業者のJerome de Lafargue(ジェローム・ド・ラファーグ)氏は次のように述べた。「zeroheightがUXにもたらすのは、GitHubのようなDevOpsプラットフォームがコードの開発とリリースに果たしている役割と同じです。UXコンポーネントを文書化・管理するための中心的な場所を提供し、デザインAPIと組み合わせることで、チームはデザインの受け渡し段階を完全に省略し、UXの提供プロセスを高速化できます」。

同社はUXチームのスケーリング問題に対処していると同氏は語る。「UXチームがここ数年で劇的に成長したことにより問題が発生しました。ほとんどの企業にとって、競争に勝つためにUXが非常に重要になっているからです。そのため、集中化や再利用可能なコンポーネントが必要となり、チームがリリースを続けても効率性や品質を落とさずに済むようになりました」。

zeroheightの1300社を超える顧客の中には、AdobeやUnited Airlines(ユナイテッド航空)などのフォーチュン500企業も含まれている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:DesignOpsUXzeroheight資金調達ロンドンデザイン

画像クレジット:zeroheight team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

【レビュー】アップルのiPad Pro 2021は今回もすばらしい、だが……

これまでに複数の場所に住んだことがあるなら、新しいアパートや家に引っ越したときの感覚を知っていると思う。その部屋や空間が可能性に満ちあふれた真っ白なキャンバスのように感じられるのだ。だが大抵の十分なお金を持っていない場合には、結局その場所を古い家具で埋め尽くしてしまうことが多い。

私は何年にもわたって、このような経験を何度もしてきた。実家を出てから、私が手に入れた家具はすべて、安物を買ったり、リサイクルしたり、誰かにもらったりしたものだった。時代もスタイルもごちゃまぜだったが、私が手に入れたときには十分使えていた。結婚して引っ越しをしてからも、同じ家具をたくさん持ち歩いていた。

しかしそのうちに、多くのものに違和感を感じるようになって、それらを譲り渡し、自分たちの家庭を表現するような、そして自分たちの心に響くようなものを注意深く買ったり作ったりするようになった。しかし、表面の凹んだダッチモダンのコーヒーテーブルのように、一風変わったものもまだ持っている。それを見ると、20代の頃のカラオケパーティー後のベタベタしたカクテルの散乱や、30代の頃の子どものおやつ(これもやはりベタベタだが)を思い出す。

それが今のiPadなのだ。これは、毎年おそろしい勢いで働き続けている、Appleのエンジニアリングチームとハードウェアチームによる美しく新しいモニュメントだ。だがそこには、まだ使えはするものの、古さを感じさせるiPadOSソフトウェアが詰めこまれているのだ。そしてそれらは日に日に場違いな感じを増している。

この記事は、もちろんAppleが現在出荷している、現在注文すると手に入る製品について書いている。しかし、Appleの世界開発者会議(WWDC)がわずか2週間強後に迫っている現在、私は基本的にこのiPad Proを、もう一度新たな視点でレビューしたいと考えている。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

皮肉なことだが、このモデルの最大のハードウェアアップグレードの1つに対する反応は、私の中では比較的控え目なものとなる。M1チップは本当にすばらしいものだ。ベンチマークテストでは、M1 MacBook Pro(M1マックブックプロ)と同等の性能を発揮しており、この意味でもAppleのラインナップは、パワーよりも大きさとユースケースの違いと考えることができる。しかし、率直に言って、たとえ2020年のモデルでも、私がテストしたほとんどすべてのアプリケーションや、私の日常的なワークフローのすべてにおいて、同じくらい速かったと感じている。

確かに新製品は超高性能で、最新のシリコンを搭載しているが、アップグレードしてもすぐには違いがわからないだろう。これはある意味、意図的なものだ。2021年4月、AppleのJohn Ternus(ジョン・テルヌス)氏とGreg Joswiak(グレッグ・ジョスウィアック)氏に、iPad Proについてインタビューした際に、彼らは新しい統一されたプロセッサー戦略と極めて優れたディスプレイは、開発者が活用することを期待して余裕を持たせているのだと語っていた。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

新しいiPad Proのカメラはとてもすばらしく、前面と背面の両方が非常に使いやすくなっている。特に新しい前面カメラは、解像度の向上と新しい広角光学系の恩恵を受けている。この広角のおかげで、iPad Proを使ったビデオ通話がよりリラックスして行えるようになった。

これに加えて、Appleの新しいML(機械学習)駆動機能であるCenter Stage(センターステージ)が、ユーザーの頭と肩を捉えて自動的に中央に配置し、カメラの視界内で、ユーザーが体を傾けたり、立ったり、さらには部屋の中を移動したりしても、スムーズでまあまあなレベルのパンとズームでユーザーを追いかけ続ける。この機能は、機械学習フレームワークを使って、カメラフレーム内の人物のシルエットを検出し、フレーム内での移動に合わせてそのビューに「カメラムーブ」を適用するというものだ。他で見られるような自動ズーム機能とは異なり、Center Stageでは、あたかもバーチャルカメラの操作者が、適切なフレーミングを手助けしてくれているように感じられる。これは実に巧妙で、非常にうまくできており、iPad Proの使い勝手を向上させる今回の最大のポイントの1つとなっている。

画像クレジット:Matthew Panzarino

そしてまた、ご想像のように、この機能はiPad Proのカメラ配置の問題を大幅に軽減してくれる。カメラは、垂直方向に置かれたiPad Proの「上部中央」に置かれているので、キーボードを使う水平方向の配置ではカメラは「中央左」にあることになる。このため、iPadのビデオ通話にはぎこちなさがつきまとっていた。まあCenter Stageを使っても、これらの問題を完全に取り除くことはできず、手の置き場所が問題になることもあるが、より使いやすくするための大きな役割は果たしている。新しいAPIは、この機能をすべてのビデオ通話アプリで利用できるようにしている。また、Zoom(ズーム)アプリの利用中にビデオ通話を空白にすることなくマルチペイン設定が使用できるように、マルチタスクが若干改善されている。

Appleの「Pro Display XDR」で外付けのThunderbolt(サンダーボルト)接続をテストしたところ、問題なく動作した。この2つのディスプレイは非常に近い能力を持っているので、スケーリングは別として、色補正のためにXDRディスプレイを使うパイプラインで作業するプロにとって、この機能は非常に便利なものになるだろう。だがiPad Proがミラーモードにしか対応していないというソフトウェア上の制限は残念ながらまだそのままで、ほとんどの状況でこの機能の使い勝手を少し疑わしいものとしている。

画面について言えば、ミニLEDを採用したLiquid Retina XDRディスプレイは、これまでモバイルコンピューターに搭載されたディスプレイの中で、おそらく最も優れたものだ。とにかくすばらしい。日常的に使用する輝度も平均で最大600ニト(カンデラ平方メートル)と良好だが、動画や写真などのフルスクリーンのHDRコンテンツでは、平均で1000ニト、ピーク時には1600ニトまでディスプレイを明るくすることができる。これはとても「明るい」。昼光下におけるHDRコンテンツの視聴が大幅に改善されている。さらに、120Hz ProMotion(プロモーション)機能などの標準的な機能もすべて搭載されている。

1万個のミニLEDをディスプレイに搭載することで、黒の定位がより正確になり(それらを完全にオフにすることができるため)、過度の反射(ブルーム)も少なくなった(ただし極端なテストを行うとまだ表示される)。また、画面の端から端までの輝度の均一性が格段に向上し、画面上のコンテンツの斜め方向からのビューが改善された。すべての面で優れている。間違いなくディスプレイのすばらしい標準だ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleの新しいMagic Keyboard(マジックキーボード)は、基本的には従来のものと同じだが、新たにホワイトが加わった。またうれしいことに、これまでのMagic Keyboardが、新しいiPad Proモデルでもまったく問題なく動作したことを報告したい。2つのデバイスの寸法が同じではないため、古いキーボードが完全にフィットしない可能性があることをAppleが発言したために、ちょっとした騒ぎがあった。だが基本的にはまったく同じフィット感で、機能も同じなので安心して欲しい。両者の違いに気がつくのは、ケースを閉じて、開いている方の端をとても注意深く見たときに、ケースの縁とiPad Proの端の間のクリアランスが約1mm短くなっていることがわかったとき位だ。Appleは、ともかく過剰なほどの情報開示をしておいた方が良いと考えたのだろう、しかし実際には問題はない。

特にシルバーモデルのiPad Proとの組み合わせでは、ホワイトカラーの見栄えは素晴らしく、白いアンテナウィンドウがアクセントになっている。とても「2001年宇宙の旅」的だ(キューブリック監督のiPadは黒だったが)。しかし、私はこの製品がすぐに傷つき汚れていくことが予想できる。箱に「color may transfer」(色落ちすることがあります)という注意書きがあるが、私もそうだろうと思う。私のデモ機には、まだ目立った汚れはついていないが、それも時間の問題だと思う。

キーボードの全体的な使用感はこれまで同様に素晴らしく、とても快適なタイピングができる。またiPad Proの購入を計画する際には、このキーボードが必要不可欠であることを考慮に入れて価格を考慮すべきだ。

さて、あまり輝いていないコインの裏側が、老朽化したiPadのソフトウェアだ。それらは2020年にiPad Proのレビューを書いたときと同じようなままだが、その時点での私の結論は要するに「慣れることはできるが、もっと良くできたはずだ」だった。それが1年前のことだ。この2年半の間、iPad Proを唯一のポータブルマシンとして使用してきた私には、ソフトウェア機能の大きな飛躍をずっと待ち続けているのだという資格がある。

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iPadのソフトウェアには、とてもシンプルな願いがある。ハードウェア側が見せてくれるようなエネルギーの躍動感や、ピークパフォーマンスのための純粋な能力を感じたいのだ。

AppleのiPad Proのハードウェアは、まるで身体3つ分リードしている絶好調のアスリートのようなパフォーマンスを見せてくれる。M1チップとミニLEDディスプレイは得難いものたちだ。これほどの優れたものが1つのデバイスに詰め込まれていることには感動する。

だが残念ながらソフトウェアがその能力を活かすことができないので、このiPad Proはまるで同じ古い家具を備えた完成した家のように感じられるのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleは、2021年版iPad Proのハードウェアについては、文句なしにすばらしい仕事をしたが、ソフトウェアについてはレベルアップが必要だ。1年の大半をiPad Proを使って過ごしている「パワー」ユーザーとして、私はその場しのぎの解決法や動きの癖には慣れている。しかしここで、必要とされているのはiPadのパラダイムにじっくりと時間をかけて取り組むことだ。現在のペインスタイルのインターフェイスは、非常に高速で流れるような作業方法として推奨できる点が多いのだが、最後までの連続性が存在していない。「これが新しい仕事のやり方だ、このやり方を学ぶべきだ」という熱意が感じられないのだ。

現在のiPad Proのソフトウェアの多くが、あまりにも「アフォーダンス(表現)の谷」にはまり込んでいる。そこでは、いまでもユーザーが、あたかもタッチファーストの仕事のやり方を習得する能力がないかのように扱われている。むしろ、そうしたアフォーダンスのやり方が逆に進歩の妨げになっているのに。

これは、iOS 7時代の頃に行われた「アニメーションを減らす」アフォーダンスを思い起こさせる。かつてAppleがiOSを刷新したとき、新しいペインベースのインターフェイスをタップしているときに何が起こっているのかをユーザーに明確に伝えるために、アニメーションを大幅に増やし過ぎたことがある。ハードウェア的には「遅い」ということはなかったが、彼らが入れたアニメーションのアフォーダンスが凝りすぎていて、遅く感じられたのだ。それらのアニメーションをオフにすると、瞬時にインターフェイスが軽快になり、使いやすくなった。

Appleは最終的に、人びとがより高度なタッチユーザーになる準備ができているのかもしれないと認めることで、これらのアニメーションを抑制した。

これが現在のiPad Proの置かれている状況で、最も腹立たしいのはそのハードウェアとソフトウェアの格差なのだ。iPad Proはこれまでに製造された中で最も優れたコンピューティングハードウェアの1つであり、現在見せているもの以上の能力を持っていることを私たちは知っている。Appleはソフトウェアに関して常に編集者的な視点を持っており、私はその点は評価している。しかし現在、iPad Proに関しては、その姿勢があまりにも保守的であるように感じられる。

だからこそ、私は固唾を飲んでWWDCを待っているのだ。ハードウェア側でこれだけの成果を上げているのだから、iPadのソフトウェア側でもAppleが真に次のステップに進む時期が来ていると考えるべきなのではないだろうか。もしそれが本当に起こり、iPadの次の仕事に対するAppleのビジョンがしっかり見えてきたら、私はまた新しい視点で議論したい。

画像クレジット:Matthew Panzarino

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPadiPad OSApple M1レビューUI / UX

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

AWSのリソースとそれに関する支出の管理を楽にするVantage

AWSのリソースとそれに関する支出の管理を容易にする新しいサービスVantageが、米国時間1月12日にステルスを脱した。このサービスはユーザーに、AWSの複雑なコンソールに代わるものを与え、AWSの標準的なサービスであるEC2のインスタンス、S3のバケット、VPCs、ECS、そしてFargate、およびRoute 53のホストゾーンといったほとんどすべてをサポートしている

創業者のBen Schaechter(ベン・シェークター)氏はこれまでAWSとDigital Oceanで働き、それ以前はCrunchbaseにいた。しかし、DigitalOceanは彼に個人や小企業向けの開発者体験を構築する方法を示した一方で、基礎となるサービスやハードウェアは単にハイパークラウドほど堅牢ではなかったという。一方、AWSは、デベロッパーがクラウドに望むもののすべて、あるいはそれ以上のものがあるが、ユーザー体験には不満が多かった。

画像クレジット:Vantage

「そこで考えたのは、DigitalOceanのユーザー体験を3つのパブリッククラウドプロバイダー、AWSとGCPとAzureに適用したらどうなるか、ということです。まずAWSから始めようと決めたのは、その体験が最もラフなもので、市場において最大のプレイヤーだからでした。また、GCPやAzureに取るかかる前にAWSを始めたほうが、価値も大きいと考えました」とシェークター氏はいう。

Vantageが重視するのは、デベロッパー体験と費用の透明性だ。シェークター氏によると、一部のユーザーはVantageのことを「AWSのためのMint(予算管理アプリ)」と呼ぶ。ユーザーは最初、自分のAWSサービスのリードパーミッションをVantageに与える。するとVantageは自動的に、ユーザーのアカウントにあるすべてのものをプロファイルする。そのリストは1時間おきにリフレッシュされるが、ユーザーがマニュアルでリフレッシュしてもよい。

現在、自分がどのAWSサービスを実際に利用しているのかが正確にわからないこともよくあるため、それだけでも便利な機能だ。シェークター氏によると「それが最も人気のあるユースケースです。何にいくら払っていて、何を得ているのか把握することができます」。

Vantageの中核的な機能は、いわゆる「ビュー」だ。どのリソースを使っているかを一望できる。おもしろいのは、ビューをユーザーがカスタマイズできる点で、たとえばどこそこのリージョンでどんなアプリケーションのためにどんなリソースを使っているかを確認することもできる。それにはLambdaやストレージのバケット、独自のサブネット、CodePipelineなどが含まれているかもしれない。

費用追跡に関して、現在のところVantageでは特定時点での費用がわかるだけだが、今後は履歴上に現われるトレンドを見たり、クラウドの支出のビューをユーザーがカスタマイズできるようになるといった機能を提供していきたいという。

同社は現在、自己資本のみで動いているが、シェークター氏によると、資金の調達よりもユーザーがお金を払ってくれて売上があることが先決だという。現在は無料プランと、機能の多い有料の「プロプラン」と「ビジネスプラン」が用意されている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa