GMが「米国とカナダのすべての舗装道路」で使用可能になる新ハンズフリー運転支援システムを2023年より導入

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、新しいハンズフリー運転支援システムを2023年に導入する予定だ。このシステムは、運転中に予想される状況の95%に対応でき、最終的には米国とカナダのすべての舗装道路で使用できるようになる。

GMは、米国時間10月6日から開催されている2日間の投資家向けイベントで、この新しい「Ultra Cruise(ウルトラクルーズ)」システムとそのいくつかの機能を発表した。ただし、GMはこのシステムの価格や使用料金、買い切り型になるのかそれともサブスクリプション制になるのかということは、明らかにしなかった。

GMは2017年に発表したハンズフリー運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」を導入した際と同じように、今度も慎重にゆっくりと展開していく戦略を採るようだ。つまり、この新しいシステムはまず、高級車ブランドのCadillac(キャデラック)の新型車にオプションとして導入され、後にChevrolet(シボレー)やGMCなど、他のブランドでも徐々に利用できるようになるということだ。

関連記事:GMがアップグレードした自動運転支援システムSuper Cruiseを2022年に6車種に搭載へ

また、先代のシステムに比べればはるかに少ないものの、当初は利用できる場所が制限されることになる。Ultra Cruise搭載車の発売時には、まずは米国およびカナダの200万マイル(約322万キロメートル)以上の道路で、ドライバーはこのシステムを使用できる。GMによれば、使用できる道路は最終的に340万マイル(約547万キロメートル)にまで拡大される予定だという。Super Cruiseの初期仕様とは異なり、Ultra Cruiseは高速道路だけでなく、市街地や住宅地の道路、地方の舗装された道路でも利用できるように設計されている。

ただし、Super Cruiseがなくなるわけではない。最近では車線変更の自動化や牽引時のサポートもできるようにアップグレードされたこのシステムは、今後もGMの各ブランドのクルマにオプションとして提供される。

Super CruiseとUltra Cruiseの比較

Super Cruiseは、LiDARによるマッピングデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサーを組み合わせて使用する他、運転者が注意を払っているかどうかを監視するドライバー・アテンション・システムが搭載されている。Tesla(テスラ)の「Autopilot(オートパイロット)」運転支援システムとは異なり、Super Cruiseのユーザーはハンドルに手を置いておく必要はない。しかし、目線はまっすぐ前方に向けていなければならない。

この点はUltra Cruiseも同様だ。GMの自動運転グループでチーフエンジニアを務めるJason Ditman(ジェイソン・ディットマン)氏は、記者に向けた説明の中で、Ultra Cruiseがいわゆるレベル2の自動運転システムとして設計されていることを何度も指摘した。その機能はSuper Cruiseよりも信頼性が高く、より多くの道路で利用できるようになるにしても、ドライバーが常に注意を払っている必要があることに変わりはない。

つまり、Ultra Cruiseは「完全な自動運転」が可能なレベル4のシステムではないということだ。レベル4システムとは、特定条件のもとであれば、人間の介入を一切必要とせず、すべての運転操作を自動で行うことができる機能レベルのことで、GMの子会社であるCruise(クルーズ)などの企業が、ロボットタクシーという形を通じて実用化に取り組んでいる。

Ultra Cruiseは、Super Cruiseシステムの能力をさらに高めるように設計されている。Ultra Cruiseでは、カメラ、レーダー、LiDARの組み合わせを通して、車両周辺の環境を正確に360度、3次元で統計的に把握し、重要なエリアには冗長性を確保している。ただしGMでは、マッピングよりもセンサー類に大きく頼っているという。

このような仕組みによって、Ultra Cruiseシステムは、信号機への反応、ナビゲーションルートへの追従、制限速度の維持・遵守、自動およびオンデマンドによる車線変更、左折・右折、物体の回避、住宅地のドライブウェイへの駐車などを自動で行える。

さらにUltra Cruiseでは、フロントガラスの裏側に組み込まれたLiDARも使用する。この次世代システムを作動させるのは、5nmの拡張性が高いコンピューター・アーキテクチャで、これはGMの「Ultifi(アルティファイ)」ソフトウェア・プラットフォームや、車両ハードウェア・アーキテクチャ「VIP(ビークル・インテリジェンス・プラットフォーム)」と連携して機能する。

GMは先週、Ultifiという新しいエンド・ツー・エンドのソフトウェア・プラットフォームを開発しており、2023年から生産が始まる新型車に搭載すると発表した。同社によれば、このソフトウェアは、ドライバーがサブスクリプションで提供される車載機能を利用したり、無線アップデートを使って新しいアプリケーションやサービスを導入することが可能になるなど、広範囲にわたるさまざまな機能を提供できるようになるという。このソフトウェア・プラットフォームは、車両のデータ処理能力を向上させるハードウェア・アーキテクチャであるVIPの上に組み込まれる。

関連記事:GMが新しいソフトウェアプラットフォーム「Ultifi」を2023年から生産される次世代車に搭載

Super Cruiseと同様に、Ultra Cruiseにも車内カメラを使ったドライバー監視システムは搭載されることになる。さらに、GMはドライバーが必要とする情報を提供する新しいHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を、Ultra Cruise搭載車に採用するとしており、これはドライバーが車両を操作する必要がある時にも使用される。その中心的な装備である「Ultra Cruise Dynamic Display(ウルトラ・クルーズ・ダイナミック・ディスプレイ)」について、GMではドライバーの視線の先に情報を直接表示できる「自由形式のディスプレイ」と表現している。

GMは、駐車時に車載センターディスプレイに表示できるUltra Cruiseアプリも開発している。このアプリは、ドライバーの統計情報、走行履歴などを見ることができるという。

画像クレジット:GM

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMが新しいソフトウェアプラットフォーム「Ultifi」を2023年から生産される次世代車に搭載

General Motors(ゼネラルモーターズ)は「Ultifi(アルティファイ)」と名付けられた新しいエンド・ツー・エンドのソフトウェアプラットフォームを、2023年から生産が始まる次世代車両の一部に搭載すると発表した。これにより、ドライバーがサブスクリプションで提供される車載機能を利用したり、無線アップデートを使って新しいアプリケーションやサービスを導入することが可能になるなど、広範囲にわたるさまざまな機能を提供できるようになると、同社の経営陣は述べている。

このソフトウェアプラットフォームによって、オーナーは車両の全体の機能やセンサーにまでアクセスできるようになる。例えば、後部座席に子どもがいることをカメラが検知すると、自動的にチャイルドロックが作動するように設定できる。また、ドライバーはUltifiを介して、ハンズフリー運転が可能なGMの先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」などのサブスクリプションサービスを利用することができる。

関連記事:GMがアップグレードした自動運転支援システムSuper Cruiseを2022年に6車種に搭載へ

「これは、当社のソフトウェア戦略における大きな次のステップです」と、GMのソフトウェア定義車両担当VPであるScott Miller(スコット・ミラー)氏は、プレスブリーフィングで語った。「今日の自動車はソフトウェアによってさまざまなことが可能になっています。Ultifiではソフトウェアによって自動車が定義されることになるでしょう」。

Ultifiの機能は、GMの「Vehicle Intelligence Platform(VIP、ビークル・インテリジェンス・プラットフォーム)」上に組み込まれる。VIPは、車両のデータ処理能力を向上させるハードウェア・アーキテクチャーで、これを採用したモデルではすでに無線によるソフトウェアアップデートが利用できるが、Ultifiでは車載モジュールが1つのプラットフォームに集約されるため、より迅速なアップデートが可能になるという。

Ultifiは、GMの一部のインフォテインメント・システムに搭載されている「Android Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)」OSとともに組み込まれることになる。なお、車載システムのOSとしての役目を担うAndroid Automotiveは、OS上で作動する副次的なインターフェイスである「Android Auto(アンドロイト・オート)」とは別物だ。UltifiとAndroid Automotiveの役割の違いは、機能と可用性にある。「Android Automotiveは、車内における機能の一部を提供するものです」と、ミラー氏は説明する。「Ultifiは、より全体に渡るアンブレラ戦略です」。

Androidと同様に、Ultifiも開発者向けのプラットフォームとして広く使われているLinux(リナックス)をベースにしている。GMがLinuxを選択した理由について、ミラー氏は「ある時点で、私たちは本当にこれをオープンにしたいと思っています」と述べ、将来的にはサードパーティの開発者が車内アプリを作成できるようにしたいと語った。

まだ開発中のUltifiは、2023年より展開を開始する予定であり、利用できるのはそれ以降に生産される車両に限られる。システムの要求する処理能力を車両が備えている必要があるからだ。ミラー氏によれば、スマートフォンに異なる購入プランが用意されているように、消費者は車両を購入するか、あるいはいくつか用意されるアクセスプランを購入するか、選べるようになるという。つまり、価格も購入プランもさまざまということだが、GMは具体的な内容を説明しなかった。また、同社はこの新しいプラットフォームがどのくらいの収益をもたらす見込みであるかということも明らかにしなかった。

今回のGMの発表は、大手自動車メーカーが新型車をこれまで以上にコネクテッドにするために行っている最新の動きの1つである。ゼネラルモーターズとFord(フォード)の両社は、ソフトウェアやサブスクリプションサービスによる収益機会について議論を重ねている。Ultifiはこれらの事業を構築するためのさらなるステップだ。

「私たちは自動車から離れようとしているわけではありません」と、ミラー氏はいう。「私たちは事業を拡大しているのです。他のアプリケーションのために、技術を拡張・活用する新しいビジネスラインの創出は、我々のコアの代わりになるものではなく、(コアに)追加されるものです」。

画像クレジット:GM

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)