東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで、骨格運動と筋活動の3次元データを可視化

東京大学は3月3日、複数のカメラで撮影したビデオ映像から人体のポーズをコンピューター上に3次元再構成し、運動解析、筋活動解析の後、ただちにデータベース化して可視化するまでを完全自動化するサービスを開発したと発表した。スポーツ、介護、医療など幅広い分野での運動データの利用が可能になるという。アバターやロボットの全身運動のデータ取得にも使えるとしている。

同研究は、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 社会連携講座「ヒューマンモーション・データサイエンス」の中村仁彦上席研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 池上洋介助教、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター HERNANDEZ Cesar特任研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 櫻井彬光氏ら研究グループによるもの。人の体のデジタルツイン(コンピューター上に再現された「双子」)を作成しデータベース化するためのビデオ映像入力から筋活動出力までの工程を、完全自動化することに成功した。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

カメラ4台を用いたモーションキャプチャーの様子

研究グループはこれまでに、モーションキャプチャーで得られた骨格の運動から関節に働く力や筋活動を推定する技術、骨格モデルを対象者の体型に合わせる骨格スケーリング、複数カメラで撮影した映像から骨格運動を3次元に再構成し筋活動解析を行う技術などを開発してきた。また、モーションキャプチャーにおいては、体にマーカーを装着することなく行える効率的な方法も編み出している。

今回の研究では、映像入力から筋活動の出力までを支える一連のアルゴリズムを統合し、全体の計算をパッケージ化してAmazon Web Services(AWS)上に実装することに成功した。また、計算を完了しデータベースに記録されたデータは直後から検索が可能になり、可視化システムによりグラフ表示も行えるようになる。さらに、ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで運動を3D表示することも可能となった。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

グラフ化された運動解析データ

以前は、計算段階で人手による例外処理を必要とするなど、生産性に限界があったため、特定のアスリートに限った運動解析しか行えなかったが、この全自動化されたシステムを用いれば、多くの人の運動解析が可能となる。研究グループは、「青少年スポーツ選手、競技スポーツの選手からスポーツ愛好家、リハビリや健康ために運動を行う高齢者まで、広い世代の多くの方々に運動解析や筋活動解析を使ってもらえるようになった」と話す。今後は「チーム競技のデジタイズとチームプレイの解析、計算の効率化・高速化、スポーツ・データサイエンティストの養成」などの研究に取り組み、東大発スタートアップでの商用実施を目指すとのことだ。

ゲームエンジン開発Unityが数々の大作映画を手がけた視覚効果のWeta Digitalを約1850億円で巨額買収

ゲームエンジンの開発で知られるUnity(ユニティ)は、Peter Jackson(ピーター・ジャクソン)氏が共同設立した有名な視覚効果会社のWeta Digital(ウェタ・デジタル)を、16億2500万ドル(約1850億円)もの巨額で買収すると発表した。

その名前を知らなくても、Weta Digitalの作品を見たことがある人は多いだろう。「ロード・オブ・ザ・リング」から「アバター」や「シャン・チー/テン・リングスの伝説」など「ぜひ映画館で見るべきだ」といわれるような映画では、Weta DigitalがVFXで大きな役割を果たしている可能性が高い。

これまでWeta Digitalは、視覚効果を生み出すアーティストのチームであると同時に、アーティストが使用するツールの多くを開発するエンジニアのチームでもあった。Unityが買収するのは、これらのツールとエンジニアチームであり、その一方で視覚効果のアーティストチームは、独自の新しい組織に分割される予定だ。

今回の買収により、Weta Digitalの275人以上のエンジニアが、Unityに加わることになる。VFXアーティストは、ピーター・ジャクソン氏が引き続き過半数を所有する新会社「Weta FX」にスピンアウトする。両社は今後も協力関係を続けていく予定で、Unityはこの先、Weta FXが「メディア・エンタテインメント分野における最大の顧客」の1つになると見ているという。

その一方でUnityは、Weta Digitalの数多くの自社製ツールの開発を引き継ぐ予定だ。例えば「City Builder」(「キングコング」などの映画で破壊された巨大な3D都市をプロシージャルに生成する)「Manuka」(最終バージョンですべてが非常にリアルに見えるようにするために役立つ物理シミュレーションを行うカスタムレンダラー)「Gazebo」(より高速なリアルタイムレンダラーで、アーティストが時間のかかる最終レンダリングの前にシーンを正確にプレビューするために使用される)、そして他にも、キャラクターを動かすためのリギング、顔のアニメーションやレンダリング、モーションキャプチャーの処理、髪の毛 / 毛皮 / 煙 / 何千年も前に放棄された都市の景観に生え茂る植物などをシミュレートするためにチームが構築した独自の技術のすべてだ。

Wetaの「City Builder」ツール(画像クレジット:Unity/Weta Digital)

なぜWetaなのか?UnityのSVPであるMarc Whitten(マーク・ウィッテン)氏に電話して、彼の考えを聞いてみた。

「10年前を思い出してみてください」と、彼はいう。「これは2Dの話ですが、どれだけの写真が撮影されていたか。きっと膨大な数でしょう。しかし、それから10年後……今はさらに驚異的に増えています。3Dも同じようなものではないかと私は思います」。

「ただし、1つ違いがあります」と、彼は続けた。「10年前の私でも、写真を撮ることはできると思っていました。今、2Dで同じように写真を撮ることができます。しかし、実際にはそれは10年前と大きく異なります。なぜなら、私がiPhoneのシャッターボタンを押すたびに、iPhoneは私を(写真家に)変身させるために、おそらく500万行の超高度なコードを実行しているからです。しかし、3Dでは、現在、個人的に何かをモデリングすることはほとんどできません。これからの10年で私たちがやるべきことは、同じアプローチを取ることです。つまり、この信じられないほど深い技術を、簡単に使えるようにすることです」。

言い換えれば、つまり、Unityは3Dでの構築をより簡単にする必要性が高まっていると考えており、それはWetaが過去数十年を費やして追求してきたことなのだ。

この買収契約の一環として、UnityはWeta Digitalが長年にわたって構築してきた膨大なデジタル資産のカタログも取得することになる。それは、都市や自動車、人々の3Dモデルから、雨の中で火から出る煙の仕組みを決定するアルゴリズムや、動物の群れが木々の間をどのように移動するかのシミュレーションまで、1つ1つ挙げれば切りがないほど膨大だ。これらのすべてが、潜在的にはUnityの製品に組み込まれ、クリエイターがそれを基に制作できるようになる可能性があるというわけだ。もっとも、ウィッテン氏は「明確に認められるIP」は含まれないので、次に開発するゲームに(ロード・オブ・ザ・リングの)Gollum(ゴラム)をドラッグ&ドロップできるようにはならないだろうと指摘している。

これ以前にUnityが行った最大の買収は、2021年の8月にParsec(パーセク)を3億2000万ドル(約365億円)で買収したことだった。当時、ウィッテン氏はこの買収がUnityのより大きなクラウドへの野望の一環であることを示唆していたが、今回の買収にも同じことが言えるだろう。

「(Weta Digitalの)ツールは……まさにこのパイプラインです」と、ウィッテン氏は述べている。「それぞれのツールは個々に強力ですが、このパイプラインに沿って連携すると、すべてが実にうまく機能します。あるツールで変更を加えれば、他のツールで照明や合成を行ったときに、それが正しい形で現れます。複数の人が本当に簡単に一緒に作業できます」。

「その先に私たちが考えているのは」と、同氏は続けた。「アーティストがMaya(マヤ)やHoudini(フーディニ)、Unityの中で作業をするときに、これらのクラウド機能が直接接続できるようにすることです」。

「このパイプラインをクラウドで利用可能にして、どこにいてもすぐに接続できるようにすることが重要であると、私たちは考えています」。

Unityによれば、この買収は2021年の第4四半期中に完了する見込みだという。Weta DigitalのCEOを務めているPrem Akkaraju(プレム・アッカラジュー)氏は、新たに設立されるWeta FXのCEOとして留任し、CTOのJoe Marks(ジョー・マークス)氏は、Weta DigitalのCTOとしてUnityに移籍する予定だ。

画像クレジット:Unity/Weta Digital/20th Century Fox

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クアルコムが新たなAR開発プラットフォームを発表、ハンドトラッキング技術のClay AIR買収も

Qualcomm(クアルコム)は米国時間11月9日、頭部装着型AR(拡張現実)体験を構築するための新しい開発者プラットフォーム「Snapdragon Spaces XR Developer Platform(スナップドラゴン・スペーシズXRディベロッパー・プラットフォーム)」の提供を開始した。このプラットフォームでサポートされているハードウェアは、現在のところ、Lenovo(レノボ)のスマートグラス「ThinkReality A3(シンクリアリティA3)」(Motorola[モトローラ]のスマートフォンと組み合わせて使用する)のみだが、2022年前半にはOppo(オッポ)やXiaomi(シャオミ)製のハードウェアにも拡大する予定だ。

Qualcommは、このソフトウェアエコシステムを構築するために、Epic Games(エピック・ゲームズ)の「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」、Niantic(ナイアンティック)の「Lightship(ライトシップ)」プラットフォーム、Unity(ユニティ)、Viacom CBS(バイアコムCBS)など、幅広いパートナーを揃えた。Deutsche Telekom(ドイツテレコム)とT-Mobile U.S.(TモバイルUS)もQualcommと提携し、hubraum(フブラウム)プログラムを通じて、Snapdragon Spacesを利用するスタートアップ企業を支援する。

画像クレジット:Qualcomm

現在のところ、このプログラムにアクセスできるのは、ごく一部の開発者に限られる。現在参加しているのは、Felix & Paul Studios(フェリックス&ポール・スタジオ)、holo|one(ホロ・ワン)、Overlay(オーバーレイ)、Scope AR(スコープAR)、TRIPP(トリップ)、Tiny Rebel Games(タイニー・レベル・ゲームズ)、NZXR、forwARdgame(ファワードゲーム)、Resolution Games(レゾリューション・ゲームズ)、TriggerGlobal(トリガーグローバル)など。一般提供は2022年の春に開始される予定だ。

また、Qualcommは同日、ハンドトラッキングとジェスチャー認識ソリューションのために「HINS SASおよびその完全子会社であるClay AIR, Inc.(クレイ・エア)のチームと一部の技術資産」を買収したと発表した。これは2019年のWikitude(ウィキチュード)買収に加え、同社のARへの取り組みを飛躍させるためのもう1つの動きだ。

「私たちが、スマートフォン向けのVIO(visual-inertial odometry、視覚・慣性を使った自己位置推定)のようなアルゴリズムで、拡張現実を検討する研究開発プログラムを始めたのは、2007年にまで遡ります」と、Qualcommのバイスプレジデント兼XR担当GMであるHugo Swart(ヒューゴ・スワート)氏は、今回の発表に先立つプレスブリーフィングで述べている。「2010年代にはODGのようなデバイスも可能にしてきました。2014年に仮想現実や拡張現実に特化した新しいチップを開発しましたが、私たちは長期的な視点で取り組んでいます。目指す場所にはまだ達していないことが、私たちにはわかっています。没入型と拡張型の両方の体験を可能にするARグラスという至高の目標を実現するには、まだまだ投資が必要です」。

画像クレジット:Qualcomm

今回発表されたプラットフォームは、ローカルアンカーとパーシステンス、ハンドトラッキング、オブジェクト認識およびトラッキング、平面検出、オクルージョン空間マッピング、メッシュ化などの機能をサポートすることができる。

Qualcommはこのプラットフォームで、開発者がARエクスペリエンスを構築する際の障壁を低くしたいと考えている。開発者は基本的なARアプリケーションを迅速に構築するためのドキュメント、サンプルコード、チュートリアル、追加ツールを利用できるようになる。このエコシステム構築を希望する企業をさらに支援するために、QualcommはPathfinder(パスファインダー)と呼ばれる追加プログラムも開設する。このプログラムでは、ソフトウェアツールやハードウェア開発キットへの早期アクセス、プロジェクトへの追加資金、Qualcommとの共同マーケティングやプロモーションなどが提供される。

画像クレジット:Qualcomm

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Unityがクロスプラットフォーム・マルチプレイヤーゲーム開発をシンプルにする「Unity Gaming Services」ベータ提供開始

モバイル、タブレット、PC、コンソール、AR・VRデバイス向けに2Dおよび3Dコンテンツを開発するプラットフォームであるUnityは、バックエンド、マネタイズ、ユーザー獲得、プレイヤーエンゲージメントなど、ゲームクリエイターが必要とするすべての機能を提供する新しいプラットフォーム「Unity Gaming Services」ベータ版の提供を開始した。この新バージョンでは、「Roblox(ロブロックス)」「Genshin Impact(原神)」「Fortnite(フォートナイト)」などのヒットタイトルを含む成長分野である、クロスプラットフォームのマルチプレイヤーゲームを、開発者がより簡単にローンチできるようにすると同社は約束している。

新しいプラットフォームは全世界で利用可能で、100社以上の開発者がこのプラットフォームを利用していると、Unityのオペレートソリューション担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーのIngrid Lestiyo(イングリッド・レスティヨ)氏はTechCrunchに語った。

新しいツールには、プラットフォームのリリースプロセスを経ることなく、ゲームロジックをUnityのバックエンドサービスと同期させることができるなど、あらゆる規模のライブゲームを構築するために開発者が必要とするものが含まれている。提供されるツールの中には、プレイヤーの接続、ロビーの作成、オンラインプレイヤーのマッチング、ゲーム内でのボイスやチャットの有効化など、マルチプレイヤーゲームプレイを可能にするものが含まれている。

「これはシンプルです。当社のソリューションは、クロスプラットフォームのマルチプレイヤーゲームを作る最速の方法であり、マルチプレイヤーゲームをライブ配信するには、Unityエディタを使ってクリックするだけです」とレスティヨ氏はTechCrunchに語った。「また、どんな規模のチームでも、ニーズに合わせて製品を簡単に組み合わせ使用することができます。当社の製品は相互運用が可能なので、開発者とプレイヤーの両方にとってより良い体験となるでしょう」。

また、開発者は、ゲームのパフォーマンスの概要を把握し、実用的なインサイトを1カ所で確認できるようになる。また、アプリ内課金や広告、ユーザー獲得に役立つツールを使って、ゲームの収益化と成長を図ることができる。

レスティヨ氏はこう語った。「どんなに複雑なツールやコンテンツであっても、ゲームのパフォーマンスを単一の接続されたインターフェイスでモニターできるようになりました」。

Unity Game Servicesは、ベータ期間中はすべての開発者に無料で公開されており、開発者はスケールアップした場合のみ料金を支払う。Android、iOS、Linux、Mac、Windowsに対応している。コンソールサポートは今のところ招待制となっているが、近日中に利用可能になる予定だとレスティヨ氏は述べている。

レスティヨ氏はパートナーシップの可能性については現段階ではコメントを控えたが、あらゆる規模のチームやスタジオに新しいUnity Gaming Servicesプラットフォームを試してもらいたいと語った。

同氏はこうも述べている。「当社のミッションは、デベロッパーの成功を支援することです。今日、開発者は、クロスプラットフォームのマルチプレイヤーゲームに対するプレイヤーの需要の高まりを満たす必要があると同時に、膨大なクラウドネットワーキングの専門知識を必要とし、ゲームデザインそのものをはるかに超える技術的および運用上の課題を提示する、ますます複雑な新しいリアリティーを管理しています。そのようなクロスプラットフォーム・マルチプレイヤーゲームに関するニーズが高まっている中、Unity Gaming Serviceは、開発者がより多くのマルチプレイヤーゲームをローンチするための参入障壁を軽減し、業界の規模とプレイできるタイトル数を拡大します」。

Unityは、2021年6月時点で34億人以上の月間アクティブユーザー(MAU)がいると主張している。

画像クレジット:Unity

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

Diver-Xが寝ながら使う据え置き型VRデバイスHalfDiveの開発発表、3000万円の資金調達も

人が基底状態にいながらにして(つまり布団の中で寝ながら)最大限の行動、体験ができるような世界を目指すというDiver-X(ダイバーエックス)は9月13日、寝ながらの使用に最適化したVRデバイス「HalfDive」(ハーフダイブ)を発表した。2021年11月6日から、クラウドファンディングKickstarterでの支援者募集を行う予定。価格はベーシックモデル(8万円程度)、フルセット(12万円程度)、可変焦点機能対応モデル(40万円程度)を想定している。ハンドコントローラーは9月末にYouTubeで情報公開予定。また同時に、DEEPCOREを引受先とし、シードラウンドにおいて第三者割当増資による3000万円の資金調達実施も発表した。

現在普及しているVRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)は、そのほとんどが装着して動き回ることが想定されているため、小型化・軽量化に重点が置かれている。それに対してHalfDiveは、寝ながら使うことに最適化した据え置き型なので、小型軽量のための性能上の制約を受けない。

主な特徴は次のとおり。

最大134度の視野角と映像美を実現する可変焦点機能(最上位モデル)に対応する独自光学系

フレネルレンズを使用した通常のVR HMDとは異なり、10枚の非球面レンズを組み合わせることで、フレアや映像の歪みをなくし、最大134度の視野角と鮮明な映像を両立。最上位モデルには可変焦点機能も搭載される。

球状の筐体を活かした没入型サウンドシステム

頭全体を覆う球状の筐体に合計4つのスピーカーを配置し、没入感のあるサウンドを提供。

多数の感覚フィードバック

2基のファンによる風フィードバックにより、顔に風を感じさせることで没入感の高いVR体験を提供する。送風で装着者の快適性を保つこともできる。

またワイヤーを用いた力覚フィードバックにより、VR空間内で物に触れる感覚、剣で切った感覚、摩擦感などを表現する。

エキサイターを用いた振動フィードバックでは、モンスターの足音、銃声、環境音などの振動を伝える。

足コントローラーおよびエミュレーションシステムでは、左右の足首の傾きでアバターの動作をエミュレート。寝ていても立っているときと同じ動作表現が行える。

モジュラーおよびオープンソース設計

据え置き型なので、感覚フィードバックモジュール、無線通信モジュールなどの拡張モジュールによる増設が可能。筐体側面には拡張モジュールを接続するためのRJ45端子とねじ穴が存在する。

モジュールの設計や通信プログラムはオープンソース化する予定なので、サードパーティーやユーザーが独自のモジュールを開発できる。これにより「より質の高いVR体験の実現に向けたエコシステムの構築」を目指す。

「布団に入ったまま学校に行きたい、仕事を終わらせたい。誰しも一度は考えた事があると思います」とDiver-Xは話す。さらに「完全据え置き型という時代に逆行した、寝ながらに最適化しているからこその長所を最大限に生かし、これまで小型化軽量化のトレードオフの中で切り捨てられきた多くの機能やインターフェイスを実装し、新たな体験を生み出す」という。

だが、単に楽をするための機器ではなく、想定されるユースケースには医療や介護のための利用法も含まれている。寝たきりの人が社会活動できる機会が広がる可能性がある。

Diver-Xは、慶応義塾大学在学中の迫田大翔氏とコロンビア大学在学中の浅野啓氏が2021年3月に共同創業したスタートアップ。「布団の中に居ながらにして学校にいるのと同等の体験、職場にいるのと同等の生産ができるようになれば、人類のQOLは大きく向上するはず」と彼らは言う。「そこで得られる価値、体験が同じであるならば、人はよりモチベーションが低くとも実行できる手段をとるはずであり、必要なモチベーションが低ければ低いほどより多くの物事に対して働きかけられるようになると仮定するならば、寝ながらという人間にとっての基底状態は、もっとも行動に適した状態である」とのことだ。

仕様

    • 自由度:4.5dof
    • 光学系:合計10枚の非球面レンズを用いた独自の光学系(可変焦点機能に対応)
    • 最大視野角:水平約134度
    • 解像度:片目1600×1440px 両目3200×1440px
    • リフレッシュレート:90Hz以上
    • ダイアル式物理IPD調節:58~82mm
    • オーディオ:4つのスピーカーを用いた没入型サウンドシステム
    • マイク:単一指向性コンデンサマイク
    • コントローラー:両手・足コントローラー
    • トラッキング:LightHouse対応・足コントローラーよるアバター動作エミュレーションシステム
    • カメラ:キーボードオーバーレイシステム
    • インターフェース:DisplayPort 1.2、USB 2.0/3.0、3.5mmオーディオジャック、12V電源、RJ45(I2C:モジュール接続)
    • プラットフォーム:SteamVR完全対応(OpenVR・OpenXR)
    • SDK:Unity(VRchat専用機能あり)、Unreal Engine

ユニティとアールティが「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」を開発、10月より無料公開予定

ユニティとアールティが「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」を開発、10月より無料公開予定リアルタイム3Dプラットフォーム「Unity」を展開するユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、ロボット分野の技術開発と高度人材育成を行うアールティは9月9日、ロボット入門者向け教材「UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編」を開発したと発表した。「Unity」上でROS(ロボット・オペレーティングシステム)対応ロボットの操作性を高めることを目的としたもの。ユニティの産業向けサイトUnity for Industryにおいて、2021年10月上旬に無料公開する予定。

この教材では、UnityからROS対応ロボットへの指令の出し方や、ロボットに搭載された各種センサーの値やロボットの状態の可視化の方法などが学べ、ロボット操作用のUI開発の足がかりになる。入門用としてわかりやすい解説を行うために、アールティが培ってきたエンジニア教育教材や研修のノウハウなどが活かされているとのことだ。学習後は、Unity Asset Storeなどで公開されているアセットを使って、オリジナルのUI制作にも活用できるという。

教材中のシミュレーションでは、アールティが開発し製造・販売しているRaspberry Pi搭載の左右独立二輪方式小型移動プラットフォームロボット「Raspberry Pi Mouse」のデータが使われている。将来は、この実機の操作が行える教材も公開される予定。

Unityは、ゲームなどのリアルタイム3Dコンテンツの開発運用に広く使われているが、製造業やロボット産業でも活用されている。ロボット開発のためのシミュレーションでは、リアルな周辺環境やロボットの動きが求められるが、Unityは、そうしたリアリティある環境が特徴となっている。

同社は、これまでにもUnity Robotics Hubを通じて、ROSとUnityを接続するための各種のパッケージやサンプルをオープンソースソフトウェアとして提供することで、ロボット開発の効率化に取り組んできたという。

今回この教材を通して、「ハードウェアになじみの薄かったソフトウェアエンジニアにはハードウェアを身近に感じてもらえることを、ハードウェアエンジニアにはUnityによる可視化やUIの広がりを体験し、より使いやすいインターフェイスをロボットに装備できるようになることを期待しています」とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは話している。

UnityとROSで学ぶ移動ロボット入門 UI作成編は、一般公開に先立ち、2021年9月16日に東京都墨田区で開催されるROS開発者会議「ROSCon JP 2021」のアールティ出展ブースにおいて、開発画面の一部が公開される予定(チケット販売は終了)。

広島市立大学発スタートアップ「Movere」がVR用歩行装置「Crus-TypeC-DK1」開発者向け評価版を販売開始

広島市立大学発スタートアップ「Movere」がVR用歩行装置「Crus-TypeC-DK1」開発者向け評価版を販売開始VR用揺動装置・歩行装置を製造販売する広島市立大学発スタートアップMovere(モヴェーレ)は9月2日、「これまでにない新しいタイプ」のVR用歩行装置「Crus-TypeC-DK1」開発者向け評価版の販売を開始した(歩行感覚呈示装置および呈示方法、日本国特許第6795190号、国際特許出願中)。価格は9万9800円(税込・送料込)。Movereの販売サイト注文できる

同装置は、固定した荷重センサーに大腿部を押し当てるだけというシンプルな構造で、特別な靴やハーネスを装着する必要がない。センサーが大腿部から歩行動作を感知すると、それに合わせて歩行アニメーションが表示され、ユーザーは足にかかる抵抗とともに、実際に歩いているかのように錯覚するという。

机と大腿部の間にクッションを挟み、目と閉じて足をクッションに押し当てながら足踏みをすると、歩いているのに近い感覚が得られるとMovereは話している。簡単に実験できるので、試してみるといい。そこから発想を得て、この装置が開発された。荷重センサーは、体の傾け具合や足の動きから歩行動作や歩行速度を推定する。これに映像を連動させることで、歩行感覚の錯覚を与える。大がかりな装置ではないため、消費電力は0.2W程度と低く、従来式の床が動いたり足を滑らせる装置のような違和感がないとのこと。

キーエミュレーションが可能な専用ソフトウェア、ソフトウェア開発キットを用意

専用の常駐ソフトウェア(Windows 10版)を使うことで、体の傾け具合、左右の足の上がり具合、進行方向などをリアルタイムで推定し、キーボードやマウスの操作に対応させること(キーエミュレーション)ができる。キーの割り当てはカスタマイズできるので、既存VRソフトウェアの操作をこの装置で行うことが可能になる。前進・横移動が可能なWASDモードや、前進・旋回が可能なモードなどに切り替えられるそうだ。

またソフトウェア開発キットも準備中で、Unreal Engine 4やUnity用のプラグイン、シンプルプログラムをまとめたキットが順次ダウンロード可能になるという。これにより、VRゲームなどのアバターの動作に対応させることができる。

机などに固定できるほか、別売の専用スタンドを2種類用意

本体は重量が4.2kg。机などに固定できるほか、別売の専用スタンドも用意されている。土台の直径が60cm、高さが2cmごとに5段階で調整できる(地面から大腿部までの高さが488〜588mm)のSサイズと、土台直径が75cm、高さが10段階調整できる(地面から大腿部までの高さが588〜788mm)のLサイズの2種類。スタンドカバーは、透明、若草(半透明)、スカイブルー、レッドが選べる。

Crus-TypeCは本体を机に取り付け可能。取り付け可能な最大板厚42mm

別売の専用スタンド2種類も用意されている

販売価格(税込・送料込)

  • Crus-TypeC-DK1(開発者向け評価版)本体セット:9万9800円
  • Crus-TypeC-DK1専用スタンドSサイズ:3万9800円。地面から大腿部までの高さ488~588mm程度。土台直径600mm・重量9.5kg
  • Crus-TypeC-DK1専用スタンドLサイズ:4万9800円。大腿部高さ588~788mm程度。土台直径750mm・重量13.5kg

この装置は、東京ゲームショウ2021に出展予定。

ゲームエンジンUnityがリモートデスクトップ技術のParsecを同社史上最大約353億円で買収

人気の2D/3Dエンジン「Unity(ユニティ)」を開発しているUnity Technologies(ユニティ・テクノロジーズ)は米国時間8月10日、同社史上最大の買収計画を発表した。開発者やクリエイター向けのリモートデスクトップツールを開発しているParsec(パーセク)を、Unityが現金3億2000万ドル(約353億円)で買収するという。

Parsecは、妥協のないリモートデスクトップアクセスを実現する技術で長年知られてきた会社だ。同社のアプリケーションはクリエイター向けにチューニングされており、高解像度のディスプレイを複数台使用していても問題なく動作する。作業中のアートワークを圧縮することなく共同作業者にストリーミングすることができ、感圧式ドローイングタブレットのような優れた入力デバイスとも互換性が高い。

2016年に誕生したParsecは、当初はゲーマーが強力なPCから、他者の(一般的にはそれほど強力ではない)デバイスにゲームをストリーミングすることに焦点を当てていた。しかしその低遅延、高解像度ディスプレイのサポート、さまざまな入力デバイスとの互換性といった、ゲームプレイヤーにとっての利点は、ゲームメーカーにとっても同じように有用であることが後にわかった。クリエイティブな業界における多くのユーザーが、Parsecを利用してワークステーションに映像を送っていることに気づいた同社は、クリエイティブなチームのためのプランや機能の提供を開始した。新型コロナウイルスの影響により、オフィスを離れて自宅で作業するチームが増えるようになると、Parsecの使用率は一気に高まった

「私たちは、クリエイターがどこでも仕事できることが、ますます必要になると考えています」と、UnityのMarc Whitten(マーク・ウィッテン)上級副社長は、今週初めの電話インタビューで語った。「彼らは、距離的に分散したグループで仕事をしたり、時にはオフィスで、時には自宅で仕事をするような、ハイブリッドな環境に身を置くことになるでしょう」。

「そうすると、クリエイターはどこにいても、自分の持っている画面で必要なパワーにアクセスできることを求めるようになると思うのです」と、ウィッテン氏は続けた。「Parsecは、その分野において大きな革新を成し遂げてきたすばらしい企業の1つです」。

ウィッテン氏は、これがUnityにとって、クラウドにより深く取り組む動きの始まりであることも示唆した。「Parsecは、私たちが会社として持っているクラウドに向けた広範な野心の、すばらしい基礎ブロックとなることがおわかりいただけると思います」と、同氏はいう。「この点に関しては、今後も多くのことを期待していただいて構いません」。

Crunchbaseによると、買収前のParsecの資金総額は3300万ドル(約36億5000万円)。直近の資金調達は、2020年12月にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導した2500万ドル(約27億6000万円)のシリーズBラウンドだった

ウィッテン氏によると、Parsecの既存ユーザーにとっては何も変わらない予定だというが、サブスクリプションや価格が変更になる可能性については、まだコメントできないとのことだった。

なお、Parsecの無料サービスが廃止されることを心配しているユーザーのために、同社は「Parsecの無料アプリについて何かを変更する予定はない」とツイートしている。

ああ、それからもう1つ。私たちはゲームを取り巻くコミュニティを愛しています。Parsecの無料アプリについては、今後も変更の予定はありません。プロフェッショナルなクリエイターのみなさんには、次のすばらしい格闘ゲームを作る喜びを、ゲームをプレイする喜びと同じくらい感じていただきたいと、私たちは願っています。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:UnityParsec買収リモートデスクトップゲームエンジン

画像クレジット:Parsec

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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マジックアイは、企業や学校の研究者など3Dセンシングに興味のある人を対象に、小型・高速・高精度・低遅延・省電力を特徴とする独自特許技術の3Dセンサー方式「インバーティブル・ライト技術」(ILT)を手軽に評価できる入門モデル「ILT開発キット」(DK-ILT001)を7月15日から世界同時発売すると発表した。希望小売価格は100ドル(約1万1000円)。予定販売数は5000台。スイッチサイエンスから販売予定。

縦横44×24ミリ、高さ16ミリというコンパクトなハードウェアと専用ファームウェアからなるILT開発キットは、Raspberry Pi(別売)と組み合わせることで、動きの速い立体も高精度に測距して3Dポイントクラウド(3D点群)化できる。


「ILT開発キット」(DK-ILT001)仕様は次のとおり。

「ILT開発キット」(DK-ILT001)仕様

  • プロジェクター発光到達距離:1500mm
  • 推奨測距距離:150〜800mm(測定精度±3¥%)
  • 高精度測距距離:150〜500mm(測定精度±1.5¥%)
  • 測距有効視野角(FOV):約55度×約43度(マジックアイ開発環境による)
  • 測距速度:約120fps(マジックアイ開発環境による)
  • 動作環境:Raspberry Pi Zero W/3B/3B+/4(専用ファームウェアを準備)
  • レーザークラス:クラス1IEC60825-1(2007)、FDA:2110463-000)
  • 電源電圧:3.3V(電源はRaspberry Piのカメラコネクターより供給)
  • 消費電力:0.6W(平均)
  • 形状:W44×D24×H16mm
  • 質量:16g

開発環境

  • Raspberry Pi Zero W/3B/3B+/4(専用ファームウェアを準備)
  • 対応OS:Ubuntu 20.04、Windows 10
  • 対応言語:C++、Python
  • 対応ミドルウェア:OpenCV、PCL(Point Cloud Library)、Open3D、ROS、Unity(計画中のものを含む)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Windows 10(製品・サービス)Ubuntu(製品・サービス)OpenCV(製品・サービス)Open3D(製品・サービス)コンピュータービジョン(用語)C++(製品・サービス)スイッチサイエンス(企業)Python(製品・サービス)PCL / Point Cloud Library(製品・サービス)マジックアイ(企業)Unity(企業・サービス)Raspberry Pi(組織・製品)ROS(製品・サービス)日本(国・地域)

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

ブランドのGucci が、VRChat などのアバター向け「デジタルスニーカー」を発売しました。価格は2プラットフォーム向けデジタルモデルとAR試着・共有機能の解禁、アーティスト壁紙等がセットで1400円程度。

Gucci 公式アプリに新設されたインタラクティブなスニーカー売り場「Gucci Sneaker Garage」から購入することで、ソーシャルVRプラットフォームの VRChat と、ソーシャルゲームプラットフォームの ROBLOX向けデジタルモデル「Gucci Virtual 25」を入手できます。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

公式アプリ内の Gucci Sneaker Garage は、グッチの実在のスニーカーをブラウズしてAR試着したり、そのまま購入できるスニーカー売り場。

「ジェネレーター」で自分だけの仮想スニーカーデザインを試して共有したり、アーティストのコラボレーション作品を鑑賞したり、デザインストーリーを学ぶこともできます。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

「Gucci Virtual 25」は、GUCCI Sneaker Garage からアプリ内購入できる「デジタルスニーカー」。

「Gucci Virtual 25スペシャルパッケージ」を購入するとAR試着写真をシェアできるほか、VRChat と Roblox で使えるアバターアイテム、アーティスト壁紙が入手できます。

価格は iOSの App Store では1480円。Google Playでは1320円。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

VRChat 向けには、一般的に3Dアクセサリとして売っている仮想アイテムと同様、Unity 用アセットファイルとしてダウンロード配布します。VRChat SDK や Unity など、本来は開発者向けのツールを使って追加する手順が必要です。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

「Gucci Virtual 25」は、スニーカーのAR試着・販売アプリ Wanna Kicks でも購入可能。iOSアプリ内購入で1100円と若干安くなっていますが、こちらはバーチャル試着してSNSでシェアできるだけで、アバターアイテムは含まれません。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

GUCCI Sneaker Garage 内の「ジェネレーター」は、グッチの用意したパーツやカラーを組み合わせ、仮想のカスタムスニーカーをデザインする機能。ソーシャルメディアでシェアしたり、アプリ上で人気投票もできますが、こちらでデザインしたスニーカーをアバターアイテムとして購入できるわけではありません

今回「Gucci 発のデジタルアイテム」として販売しているのは、あくまでデジタル限定の「Gucci Virtual 25」のみ。グッチの実物スニーカーは価格10万円前後からですが、そちらを買ってもバーチャル版はついてきません。

VRアバターアイテムや仮想コレクションアイテムの市場が広がり、複製防止などの技術が普及したころには、実在のブランドアイテムを購入すると仮想バージョンも付属するようになってほしいものです。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

Pokemon GO

なおGucciのアバターアイテムといえば、The North Face x GucciコラボアイテムをポケモンGOのゲーム内で配布していました。こちらは無料。

本来は世界100か所の特別なポケストップを訪問することで入手できる誘導策でしたが、コロナ禍で全プレーヤー向け無料配布になっています。

ポケモンGO、The North Face x Gucci コラボ着せ替えアイテムを全員コード配布。特別なポケストップ訪問不要

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:仮想現実 / VR(用語)Gucci(企業・製品)ファッション(用語)VRChat(企業・サービス)Unity(企業・サービス)

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

ブランドのGucci が、VRChat などのアバター向け「デジタルスニーカー」を発売しました。価格は2プラットフォーム向けデジタルモデルとAR試着・共有機能の解禁、アーティスト壁紙等がセットで1400円程度。

Gucci 公式アプリに新設されたインタラクティブなスニーカー売り場「Gucci Sneaker Garage」から購入することで、ソーシャルVRプラットフォームの VRChat と、ソーシャルゲームプラットフォームの ROBLOX向けデジタルモデル「Gucci Virtual 25」を入手できます。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

公式アプリ内の Gucci Sneaker Garage は、グッチの実在のスニーカーをブラウズしてAR試着したり、そのまま購入できるスニーカー売り場。

「ジェネレーター」で自分だけの仮想スニーカーデザインを試して共有したり、アーティストのコラボレーション作品を鑑賞したり、デザインストーリーを学ぶこともできます。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

「Gucci Virtual 25」は、GUCCI Sneaker Garage からアプリ内購入できる「デジタルスニーカー」。

「Gucci Virtual 25スペシャルパッケージ」を購入するとAR試着写真をシェアできるほか、VRChat と Roblox で使えるアバターアイテム、アーティスト壁紙が入手できます。

価格は iOSの App Store では1480円。Google Playでは1320円。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

VRChat 向けには、一般的に3Dアクセサリとして売っている仮想アイテムと同様、Unity 用アセットファイルとしてダウンロード配布します。VRChat SDK や Unity など、本来は開発者向けのツールを使って追加する手順が必要です。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

「Gucci Virtual 25」は、スニーカーのAR試着・販売アプリ Wanna Kicks でも購入可能。iOSアプリ内購入で1100円と若干安くなっていますが、こちらはバーチャル試着してSNSでシェアできるだけで、アバターアイテムは含まれません。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

GUCCI

GUCCI Sneaker Garage 内の「ジェネレーター」は、グッチの用意したパーツやカラーを組み合わせ、仮想のカスタムスニーカーをデザインする機能。ソーシャルメディアでシェアしたり、アプリ上で人気投票もできますが、こちらでデザインしたスニーカーをアバターアイテムとして購入できるわけではありません

今回「Gucci 発のデジタルアイテム」として販売しているのは、あくまでデジタル限定の「Gucci Virtual 25」のみ。グッチの実物スニーカーは価格10万円前後からですが、そちらを買ってもバーチャル版はついてきません。

VRアバターアイテムや仮想コレクションアイテムの市場が広がり、複製防止などの技術が普及したころには、実在のブランドアイテムを購入すると仮想バージョンも付属するようになってほしいものです。

グッチがVRChatアバター向けスニーカー「GUCCI Virtual 25」発売、デジタル限定モデル

Pokemon GO

なおGucciのアバターアイテムといえば、The North Face x GucciコラボアイテムをポケモンGOのゲーム内で配布していました。こちらは無料。

本来は世界100か所の特別なポケストップを訪問することで入手できる誘導策でしたが、コロナ禍で全プレーヤー向け無料配布になっています。

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IPO達成のUnity、ゲーム業界を越えた事業拡大を目指す同社の素顔とは

著者紹介:Eric Peckham(エリック・ペックハム)氏はMonetizing Media(マネタイジング・メディア)のニュースレターおよびポッドキャストの制作者で、TechCrunchの元メディアコラムニスト。

Unity Software Inc.(ユニティ・ソフトウェア、以下「ユニティ」)は、S-1上場申請書の提出を終え、ニューヨーク証券取引所に上場した。創業16年になるこのテック企業は、ゲーム業界では知らない者はいないほど有名だが、ゲーム業界以外ではほとんど知られていない。将来、インタラクティブな3Dメディアが、エンタテイメントや消費者向けアプリケーションだけでなく、オフィスや製造業ワークフローにまで広く利用される時代が来る。人類を待つそのような未来において基盤プラットフォームになることをもくろむユニティは、ゲーム業界を超えて業務拡大を図るべく、これまで数億ドル(約数百億円)の資金を注ぎ込んできた。

ユニティによるS-1上場申請書の提出に関する報道の大半は、同社の事業内容を正しく伝えていない。ユニティは誤解されやすい会社だ。まず、(ゲーム)開発者を除くほとんどの人は、ゲームエンジンとは一体何なのかを知らない。また、ユニティには数多くの収益源があることもあまり知られていない。さらに、ユニティと、しばしば競合企業として比較されるEpic Games(エピック・ゲームズ)がビジネス面で競合している領域はごく一部にすぎない。

筆者は昨年、サンフランシスコとコペンハーゲンにいるユニティの経営陣20人以上にインタビューし、業界内の多数の専門家たちにも話を聞いて、同社の創設と現在の高い人気を獲得するまでの経緯を探る詳細な記事を書いた。ユニティの最新の実態について紹介する2回シリーズの第1部となる本記事では、ユニティの事業内容、市場での地位、同社がR&Dの対象として重視している分野、そしてゲーム業界以外でも広く採用されているゲームエンジンが世界を席巻しつつある事実について説明してみたい。

第2部では、ユニティの財務状況を分析するとともに、同社がS-1上場申請書で自社をどのように位置付けて高い評価を獲得したのかを説明し、株価が強気で推移した場合の見通しと、弱気で推移した場合の見通しの両方について考える。

ゲーム業界の住人でユニティをよく知っている人は、今回の同社のS-1上場申請を見て、驚いた点がいくつかあったと思う。Asset Store(アセット・ストア)は上場には程遠い小さな事業だったのでは、と思ったかもしれない。しかし、ユニティは実は、インディーゲーム開発者向けのセルフサービスプラットフォームというよりは、むしろエンタープライズソフトウェア企業といったほうが正しく、広告配信ソリューションが収益の大部分を占めている。

ゲームエンジンとは

ユニティはもともと、ゲームエンジン開発会社だ。ゲームエンジンとはいわば、ゲーム用のAdobe Photoshop(アドビ・フォトショップ)のようなもので、写真ではなく、ゲームの編集とインタラクティブ3Dコンテンツの作成に使用される。ユーザーはデジタルアセットを(大抵はAutodeskのMayaから)インポートし、各アセットの動作、キャラクター間の相互作用、物理特性、照明や、完全インタラクティブゲームを作成するためのその他さまざまな要素をガイドするロジックを追加する。クリエーターは、最終製品を、ユニティがサポートしている20のプラットフォーム(Apple iOS、Google Android、XboxとPlaystation、Oculus Quest、Microsoft HoloLensなど)のうち1つ以上にエクスポートできる。

この分野では、ユニティは、Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)やZynga(ジンガ)などのゲームスタジオやパブリッシャーよりも、むしろAdobe(アドビ)やAutodesk(オートデスク)に近いといえる。

ユニティの事業内容

2014年にJohn Riccitiello(ジョン・リッチティエッロ)氏が共同創業者のDavid Helgason(デイビット・ヘルガソン)氏からCEOの職を引き継いて以来、ユニティはゲームエンジン以外の領域にも業務を拡大し、制作ソリューション(コンテンツ制作用ツール)と運用ソリューション(コンテンツの管理および収益化ツール)の2部門からなる組織編成となった。

制作ソリューション部門(2020年上半期の収益の29%を占める)

  • Unityプラットフォーム:フリーミアムサブスクリプションモデルで運用されるコアゲームエンジン。個人、小規模チーム、学生は無償で利用できるが、有名ゲームスタジオや他業界の企業は有料(料金は、Unity Plus、Unity Pro、およびUnity Enterpriseプレミアムの各プランによって異なる)。
  • エンジン拡張機能:特定の業界およびユースケース向けコアエンジンのツールや拡張機能のポートフォリオは増え続けている。例えば、VR開発用のMARS、BIMアセットと一緒に使用する建築/建設向けのReflect、CADデータインポート用のPixyz、映画バーチャルプロダクション用のCinemachine、アート自動生成用のArtEngineなどがある。
  • プロフェッショナルサービス:ユニティのエンジンやその他の製品を使用している企業ユーザー向けの、ハンズオンの専門コンサルティングサービス。ユニティは4月にFinger Food Studios(フィンガー・フード・スタジオ)を5500万ドル(約57億5000万円)で買収してコンサルティング業務の拡張を図っている。バンクーバーに拠点を置く社員数200人のフィンガー・フード・スタジオは、Unityを使う企業クライアント向けのインタラクティブメディアプロジェクトを構築している。

上記の3つの製品カテゴリの他に、ユニティは、S-1で別のコンテンツ制作サービス一式を「Strategic Partnerships & Other(戦略的パートナーシップなど)」として報告している(収益の9%を占める)。

  • 戦略的パートナーシップ:大手テック企業は、自社のソフトウェアおよびハードウェアとUnityを統合させ、その状態を維持するために、各種料金体系(定額、収益共有、ロイヤルティ)に従ってユニティに料金を支払っている。Unityは最も人気のあるゲーム構築プラットフォームであるため、例えば、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)にとっては、それぞれOculus(オキュラス)やPlay Store(プレイストア)がUnity互換であることが極めて重要となる。
  • Unityアセットストア:アーティストや開発者が、自分のコンテンツで使う、不気味な森などのデジタルアセットや、キャラクターの関節の動きをガイドする物理特性マテリアルなどを売買するユニティのマーケットプレイス。これにより、すべての要素をゼロから設計およびコーディングせずに済む。広く利用されているが、大手のゲームスタジオは、アセットストアのアセットをゲームのアイデアのプロトタイピング目的にのみ使用することが多い。

運用ソリューション部門(2020年上半期の収益の62%を占める)

  • 広告:2014年のApplifier(アプリファイアー)の買収により、ユニティは、モバイルゲーム用のゲーム内広告ネットワークを立ち上げた。このネットワークは、ユニファイド・オークション(ゲームが潜在的な広告主の中から最高入札額を獲得できるようにする売買同時入札オークション)により著しい発展を遂げた。ユニティは現在、世界最大のモバイル広告ネットワークの1つであり、月あたり230億件の広告を配信している。また、ユニティは、広告を出す、アプリ内課金を促す、何もせずに各プレーヤーの生涯価値を最大化する、といった方法の中から最適なものをリアルタイムで査定できる動的な収益化ツールも持っている。開発者はUnity IAP機能を使用してアプリ内課金(IAP)を管理できる。しかし、現時点でユニティはIAP収益の一部を徴収することはしていない。
  • ライブサービス:ゲーム開発者が、ユーザーの獲得、プレーヤーのマッチメイキング、サーバーホスティング、バグの特定などを容易に管理および最適化できるようにするためのクラウドベースソリューションのポートフォリオ。このポートフォリオは主に、Multiplay(クラウドゲームサーバーのホスティングとマッチメイキング)、Vivox(ゲームのプレーヤー同士の音声およびテキストチャットを行うためのクラウドホステッドシステム)、deltaDNA(キャンペーンプレーヤーをセグメント化してエンゲージメント、収益化、リテンションを向上)といった企業を買収することで拡充されてきた。また、AIモデルをトレーニングしてリアルワールドをバーチャルで再生する(またはゲームにバグがないかテストする)Unity Simulateも用意されている。ライブサービス製品は、従量課金制で、契約後一定の使用量に達するまでは無料で利用できる。

Unityと、Unrealなど他ゲームエンジンとの比較

ユニティは、もう1つの主流ゲームエンジンUnreal(アンリアル)の開発元であるエピック・ゲームズとよく比較される。以下に、この2社を特徴づける製品とサービスの概要を示す。ゲームエンジンの切り替えには大きなコストが伴う。というのは、開発者は通常、特定のエンジンに特化して使い続けるため、エンジンを切り替えて習熟するのに数か月はかかる可能性があるからだ。ただし、プロジェクトによって使うエンジンを変更する開発チームもある。既存のゲーム(または他のプロジェクト)を新しいゲームエンジンに移行するのは、広範なリビルドを必要とする大変な作業になる。

エピック・ゲームズ

エピック・ゲームズは、ゲーム開発、Epic Gamesストア、Unreal Engineの3つの主要事業を展開している。エピックゲームズの中核事業は自社ゲームの開発であり、2019年の同社の収益42億ドル(約4400億円)の大半は自社ゲーム(主にFortnite(フォートナイト))の販売によるものだ。Epic Gamesストアは一般ゲーマーがゲームを購入およびダウンロードできる消費者向けマーケットプレイスである。エピック・ゲームズは、Epic Gamesストアでの売上の12.5%をゲーム開発者から手数料として徴収する。

この2つの事業分野で、ユニティとエピック・ゲームズは競合していない。ユニティのIPOに関する報道の大半は、現在繰り広げられているエピック・ゲームズとApple(アップル)間の激しい争いがユニティに絶好の機会を与えたという切り口になっているが、これは見当違いだ。裁判所命令では、アップルが徴収しているフォートナイトのアプリ内課金の30%に相当する手数料を回避しようと試みたエピック・ゲームズに対する報復措置として、Unrealエンジンで開発されたiOSアプリをアップルがApp Storeから排除した行為に対し、排除の差し止めが言い渡された。しかし、ユニティは自社のアプリをApp Storeには一切登録しておらず、ゲーム用の消費者向けストアも持っていない。ユニティのゲームエンジンはiOS用またはAndroid用ゲームの開発者にとってすでにデフォルトの選択肢となっており、彼らにとって既存のゲームのエンジンを切り替えるのは現実的ではない。そのため、エピック・ゲームズがアップルと係争中だからといって、それがユニティにとって新しい市場参入機会となることはないのである。

ここで、UnityとUnrealのエンジンを比較してみよう。

誕生:Unrealは、1998年リリースのゲームUnreal用にエピック・ゲームズが開発した独自エンジンで、他のPCやコンソールスタジオにライセンス供与され人気が高まったことから、エピック社はゲームエンジンを自社の事業として展開することになった。Unityは、当時ゲーム不足のニッチ市場だったMacのゲームを構築するインディー開発者向けのエンジンとして登場し、コアゲーム業界では場違いと思われるような新興市場分野(小規模インディーゲームスタジオ、モバイル開発者、AR/VRゲームなど)に事業を拡大していった。

プログラミング言語:UnrealエンジンはC++プログラミング言語を基本としている。Unity(C#プログラミング言語が必須)に比べて広範なプログラミングが必要となるが、より自由なカスタマイズが可能で、その結果、高パフォーマンスを実現できる。

主要市場:Unrealエンジンは、PCおよびコンソールゲームの開発者たちの間で高い人気を誇っている。基本的には、プロフェッショナルによる大規模な高パフォーマンスプロジェクト志向のゲームエンジンだ。とはいえ、最近は、ARおよびVRの分野でも確固とした地位を築いており、フォートナイトの成功で、コンソール・PC対応ゲームをモバイル端末にも移植できることを証明した。Unityエンジンは、今やゲーム業界最大(かつ最速で成長している)セグメントであるモバイルゲーム市場を席巻している。モバイル市場におけるUnityのシェアは50%を超えており、この市場においてUnrealは一般的な代替エンジンにはなっていない。Unityは、ARおよびVRコンテンツでも60%を超える最大の市場シェアを維持している。

オーサリングの容易さ:どちらのエンジンもまったくの初心者にとっては簡単ではないが、基本的なコーディング能力があり、時間をとっていろいろと試し、チュートリアルも観た人であれば操作はかなり分かりやすい。Unityエンジンは、多額の予算を持つ大手スタジオに過度に集中してしまったゲーム開発を民主化するというミッションのもと、リリース当初から使いやすさを優先しており、オーサリングの容易さを引き続き研究開発の主要テーマに据えている。Unityエンジンが教育環境や、気楽なモバイルゲームを開発している個人または少人数のチームで広く採用されているのもそのせいだ。Unityエンジンでは、エンジンのソースコードを見ることはできるが、編集はできない(編集するにはエンタープライズ向けサブスクリプション料金を支払う必要がある)。おかげで開発者が重大なミスを犯すことはないが、その分、カスタマイズが制限される。Unrealエンジンは、Unityエンジンに比べて劇的に複雑というわけではないが、全体的にUnityよりも多くのコーディングと技術スキルが必要とされる。Unrealエンジンのコードはオープンソースなのでカスタマイズに制限はない。UnrealにはビジュアルなスクリプティングツールBlueprintが備わっているため、一部の開発作業がコードなしで行える。このツールは、複雑で高パフォーマンスなゲームを開発するためのノーコードソリューションではないものの(そのようなソリューションは存在しない)、デザイナーたちに高く評価されており、広く利用されている。ユニティも最近、無料の独自ビジュアルスクリプティングソリューションBoltをリリースした。

料金体系:Unityはフリーミアムサブスクリプションモデルで運用されており、他の製品ポートフォリオも持っているが、Unrealは、ゲームの売上の5%を徴収する収益共有方式で運営されている。両社ともゲーム業界以外の企業との料金設定については別途交渉としており、その内容については公開していない。

独自エンジン

大手ゲーム会社、とりわけPCおよびコンソール対応のゲームを開発している会社は、依然として独自の自社開発ゲームエンジンを使用していることが多い。しかし、独自エンジンを維持するのは大規模かつ継続的な投資となるため、こうした大手ゲーム会社の多くがUnrealまたはUnityのエンジンに切り替えて、より多くのリソースをコンテンツ作成に振り向け、各エンジンに習熟している大規模な人材プールを活用しようとしている。

その他のエンジン

他にも注目すべきゲームエンジンとして、Cocos2D(Chukong Technologies(チューコン・テクノロジー)が開発したオープンソースフレームワークで、中国、日本、韓国のモバイル開発者に強く支持されている)、Crytek(クライテック)のCryEngine(高い視覚的精度を備えた一人称シューティングゲームで人気)、Amazon(アマゾン)のLumberyard(ランバーヤード、CryEngineのソースから構築されたエンジンで、あまり広くは使用されておらず、筆者が話を聞いた開発者や経営幹部からはあまり高く評価されていない)などがある。

YoYo Games(ヨーヨー・ゲームズ)のGameMaker StudioやScirra(シッラ)のConstructはどちらも、プログラミングスキルのないアマチュアのゲーム開発者が簡単な2Dゲームを構築するのによく使用しているエンジンだ(Constructは特に、HTML5ゲームに使用されることが多い)。これらのエンジンのユーザーは、スキルが向上するとUnityまたはUnrealエンジンに乗り換えることが多い。

市場にはニッチなゲームエンジンが今でも多数存在している。各スタジオでそうしたエンジンが必要とされているからだ。また、自社のゲームが商業的に成功しなかった場合や、同じようなゲームを開発しているスタジオが存在するニッチ市場で適切なエンジンが不足している場合には、自社開発のエンジンをライセンス供与することがよくある。とはいえ、業界標準となっているUnityとUnrealという堅牢なエンジンと競合するのは極めて厳しく、ニッチなエンジンを使用する開発者を探し出すのも難しくなっている。

UGCプラットフォーム

例えばRoblox(あるいはManticoreのCoreやフェイスブックのHorizonなどの新規参入組)等、ゲームを制作およびプレイするためのユーザー生成コンテンツ(UGC)プラットフォームは、少なくともしばらくの間はUnityと競合しない。というのは、こうしたプラットフォームは閉じられたエコシステム内でゲームを作成するために極度に単純化されたプラットフォームであり、収益化の機会も本当に限られているからだ。UnityからこうしたUGCプラットフォームに移行するゲーム開発者たちがいるとすれば、それはUnityの無料枠を使用しているゲームマニアくらいだろう。

筆者は、UGCベースのゲームプラットフォームは、次のソーシャルメディアパラダイムの中心として、ゲーム中心型の仮想世界の中にしっかりと根を下ろすだろうという内容の記事をいろいろなところで書いてきた。しかし、ゲーム世界全体の成長とゲームの多様性を考えると、こうしたUGCプラットフォームは、ユニティのエンジンや広告ネットワークまたはクラウド製品を使っている従来型のスタジオの強力なライバルとなることなく、高い人気を維持できるだろう。

ユニティの技術革新における重要プロジェクト

DOTS

この3年間、ユニティは「データ指向テクノロジースタック(DOTS)」の開発を進めており、エンジンを構成する各モジュールを徐々にDOTS対応に変更している。

UnityのエンジンはC#言語で書かれたコードを中心に構成されている。C#は、C++よりも記述の抽象度が少し高いプログラミング言語であるため、学習も容易で時間の節約になる。ただ、このシンプルさには、メモリーを直接操作できないため命令をカスタマイズする自由度が低いという犠牲が伴う。一方、Unrealエンジンの標準であるC++言語は、自由にカスタマイズして高いパフォーマンスを実現できるが、その分、コーディング量もかなり多くなり、技術的なスキルも必要となる。

DOTSはこうしたトレードオフを解消するだけでなく、パフォーマンスの大幅な向上も実現しようとする取り組みだ。今日使用されている人気の高いプログラミング言語の多くは、「オブジェクト指向」言語である。オブジェクト指向のパラダイムでは、モノの特性をグループ化する。例えば、「人間」というタイプのモノには体重と身長が関連付けられるという具合だ。このほうが、人間が問題を考えて解く方法としては簡単だ。Unityは、C#のコードに注釈を付けられる機能を活用して、オブジェクト指向のコードを「データ指向」のコード(コンピューターの動作方法に合わせて最適化されたコード。上記の例でいえば、すべての身長とすべての体重をそれぞれまとめて扱うといった具合)に再コンパイルする方法を理解するための独自のブレイクスルーを達成したという。これにより、低レベル言語が1と0で構成された命令をCPUに伝えるリクエストの処理速度が桁違いに向上する。

これだけ効率が上がると、最先端のグラフィックを使ったかなり複雑なゲームやシミュレーションをGPU対応デバイスで高速実行できる。その一方で、もっとシンプルなゲームではファイルサイズを非常に小さくできるため、廉価モデルのスマートフォン、あるいはスマート冷蔵庫の液晶画面で動作するメッセンジャーアプリ内でも実行できるようになる。

UnityはDOTSをエンジンの各コンポーネントに順次組み込んでいるため、ユーザーはプロジェクトの各コンポーネントでDOTSを使用するかどうかを選択できる。同社のMegacityデモ(下の動画)では、すべての高層アパートのビルに備え付けられたエアコン室外機の回転するファンから、プレーヤーの動きに反応する空飛ぶ車まで、何万というアセットで構成されるSF都市が、DOTSによるリアルタイム・レンダリングで生成されている。

グラフィック

最前線のグラフィックテクノロジーとしては、ゲームやその他のインタラクティブコンテンツを、高速レンダリングで現実と見まがうほどリアルに描画するレイトレーシング(さまざまな表面に光が反射する実際の動作を模倣した照明効果)がある。こうした超リアルな描画はコンテキストによっては今でも実現可能だが、それには極めて高いCPU処理能力が必要となる。このような高度なグラフィック機能の用途として最初に浮かぶのは、映画など、リアルタイムでは描画されないコンテンツだ。以下は、UnityとUnrealそれぞれのレイトレーシング機能を使って作成されたBMWのデモビデオだ。デジタルバージョンだが、実際の車を撮影した動画とほとんど見分けがつかない。


レイトレーシングやその他の最先端のグラフィック機能を実現するため、ユニティは、2018年にHigh Definition Render Pipeline(HDレンダーパイプライン)をリリースした。これにより、GPUデバイス向けのより強力なグラフィックレンダリングが可能となり、コンソールやPCゲームおよび産業シミュレーションなど、ゲーム以外の用途でも高いビジュアルフィデリティを実現できる。(一方、同社のUniversal Render Pipeline(ユニバーサルレンダーパイプライン)は、モバイル端末などのローエンドハードウェア向けコンテンツを最適化する)。

次世代オーサリング

ユニティの研究開発チームは、ARまたはVRのヘッドセットが普及している現状を踏まえ、次世代のオーサリングツールに注力している。それを支えているのが「非技術系のユーザーでもユニティのツールのみを使い、ハンドジェスチャーや音声コマンドで3Dコンテンツを開発できるようになる未来を実現する」という同社のビジョンだ。ユニティは2016年に、このプロジェクトの初期コンセプトを示す動画を公開している(これは筆者が昨年、サンフランシスコのユニティ本社で見たデモ動画に似ている)。

ゲームエンジンが世界を席巻する

UnityとUnrealの両エンジンはすでにゲーム以外の領域でも使用されているため、「ゲームエンジン」という用語自体、広く利用されている現状を正しく表す言葉ではない。両社のエンジンはインタラクティブな3Dエンジンであり、事実上、想像できるあらゆるタイプのデジタルコンテンツに使われている。コアエンジンの用途は、映画のバーチャルプロダクション、自律走行車のトレーニングシミュレーション、自動車販売サイトでの車両のコンフィグレーター、インタラクティブなビルレンダリングなど多岐にわたる。

UnityとUnrealのエンジンは長い間、ゲーム以外の領域でさまざまな用途に利用されてきた。両社はこの5年間、自社のエンジンの用途を他業種に拡大することを最優先課題として事業を展開している。主なターゲットは、(1)建築、エンジニアリング、工事関連、(2)自動車および重工業、(3)映画業界の中企業および大企業だ。

映画やテレビコマーシャルの分野では、ゲームエンジンがバーチャルプロダクションに利用されている。アニメーションやリアルワールドのスキャンなどが(ビデオゲームと同じように)バーチャル環境としてセットアップされ、そこでは、仮想キャラクターとカメラビューを即座に変更できる。人間の俳優はバーチャル環境を背景に撮影され画面に映し出される。ディレクターとVFX制作チームは、最高のシーンが撮れるまで背景や時刻をリアルタイムで自由に変更できる。

Unityエンジンの商業利用は広範囲に及ぶ。CAD、BIM、その他の形式でアセットをインポートできる上、世界全体を構築しリアルタイムで変更をシミュレートできるからだ。エンタテイメント分野以外の主な利用分野として次の4つがある。

  1. デザインとプランニング:自社製品のインタラクティブ3Dモデルを世界中のオフィスから同時に(VR、AR、または画面で)操作し、材質、価格設定などの各コンポーネントにメタデータを添付できる。香港国際空港では、Unityエンジンを使用して、IoTデータに接続された各ターミナルのデジタルツインを作成し、乗客の移動やメンテナンス関連の問題などをリアルタイムで各ターミナルに通知できるようにしている。
  2. トレーニング、セールス、マーケティング:インタラクティブ3Dコンテンツを使用して、スタッフや顧客が以下を実行できるようにする。(a)工業製品の写真のようにリアルなレンダリング、(b)危険の多い製造現場に備えるためのVRトレーニング、(c)カスタムのデザインをリアルタイムで実行できるオンラインの自動車コンフィグレーター、(d)プロジェクト内のすべてのアセットにメタデータを設定し、操作に反応したり、ライトを変更したりできる、新しいオフィススペースの設計プラン。
  3. シミュレーション:リアルワールド環境をバーチャルで再現して(サンフランシスコの自律走行車の例など)、機械学習アルゴリズム用のトレーニングデータを生成し、各バッチで何千というインスタンスを実行する。グーグル傘下のDeepMind(ディープマインド)もUnity Simulationの顧客だ。また、ユニティとLGは、自律走行車向けのシミュレーションモジュールの開発で提携している。
  4. マンマシンインターフェイス(インタラクティブ画面):車載情報システム用のインタラクティブディスプレイやAR用ヘッドアップディスプレイを制作。2018年にユニティが電気自動車スタートアップBytonとコラボレーションを実施した際に紹介された

ゲーム業界を越えて事業を拡大するユニティの野心は最終的に、日常生活のあらゆる場面に関連してくる。フェイスブックのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは、2015年にユニティ買収の意向を示した内部メモで、「VRとARは、モバイル後の次世代の主要コンピューティングプラットフォームとなるだろう」と書いている。Unityは現在、VR/ARコンテンツの開発と各種オペレーティングシステムおよびデバイスへの配信の主要プラットフォームとして確固たる地位を築いている。ザッカーバーグ氏は、Unityを「アバター/コンテンツのマーケットプレイスおよびアプリ配信ストア」などのミックスドリアリティ(複合現実)エコシステムで「重要プラットフォームサービス」を構築するための自然なプラットフォームと考えていたようだ。

ミックスドリアリティがメインのデジタル媒体となる時代へと向かう中、Unityがあらゆるミックスドリアリティアプリケーションを構築するための主要プラットフォームとしての地位を保ち続けるなら、ユニティは世界で最も重要なテック企業の1つとして注目を浴びることになる。業種を越えてあらゆる企業がアプリケーション構築の際に同社のエンジンの利用を検討するだろう。そうなれば、TAM(獲得可能な最大の市場規模)と収益化の潜在的能力は現在よりもはるかに高くなる。その利用範囲は、ザッカーバーグ氏の言うとおり、各種アプリに共通する消費者向け機能(認証、アプリ配信、決済など)にまで拡大する可能性がある。現に、その広告製品は利用範囲が拡張され、Unityで構築されたアプリ内のAR広告にまで利用されるようになっている。これが定着すれば、ユニティはAR時代で最大の広告ネットワークとなるだろう。

しかし、こうした壮大な構想の実現にはいくつもの課題をクリアする必要がある。第一に、ゲーム業界を越えた同社の事業拡大は、十分なトラクション(推進力を得るために十分な数の顧客数)を獲得するにはまだ時期尚早であり、顧客は一般にコンサルティングによる十分なサポートを必要とする。過去数年のユニティ関連の記事を読めば分かるが、取り上げられているゲーム業界以外の使用事例はどの記事でもほとんど同じであることに気づくだろう。つまり、大企業での導入事例はまだまだ少ないということだ。ユニティの知名度はまだ低く、そのエンジンでできることの市場での認知度を高めようとしている段階だ。同社の価値の将来性を示す証拠はいくらでもあるが、市場への浸透度はまだ不足している。

第ニに、「モバイル後の次世代の主要コンピューティングプラットフォーム」としてのAR時代の到来は優に10年は先の話だ。その間、既存の、そしてこれから出現するテック大手企業が、AR技術のさまざまな側面、オーサリング、サービススタックなどでその地位を高めてくるだろう。アップル、フェイスブック、グーグル、マイクロソフトは今でこそユニティと協力関係にあるが、いずれARにフォーカスした自社製エンジンでユニティと競合関係になる可能性がある(これら大手4社のいずれかがユニティ買収の動きに出れば、4社間でのユニティの中立的地位が失われることになるため、他社もほぼ間違いなく買収に名乗りを上げるだろう)。

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カテゴリー:ゲーム / eSports

タグ:Unity ゲームエンジン

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(翻訳:Dragonfly)