太陽光とレーザーの力で羽ばたく昆虫ロボットRoboFlyは電力供給の無線化に成功

飛ぶものを作ろうと思うと、いろんなトレードオフを克服しなければならない。大きければ燃料や電池を多く積めるが、しかし図体が大きすぎると必要な揚力が得られないかもしれない。小さければ必要な揚力も小さいが、小さすぎて必要な大きさの電池を詰めないかもしれない。昆虫サイズのドローンも、この問題に悩まされてきたが、しかしここでご紹介するRoboFlyは、レーザーの力で空に飛び立つ。

虫のように小さい空飛ぶロボットは前にもあったが、しかしRoboBeeなどのそれらは、ワイヤーをつけて電力を供給する必要があった。今の電池はどれも虫用には大きすぎる/重すぎるので、これまでのデモは、‘もっと大きくすれば…電池を積めれば…自力で飛べる’というものばかりだった。

でも、外部からワイヤーを使わずに電気を供給できたら、どうだろう? ワシントン大学のRoboFlyは、それに挑戦した。RoboBeeの精神を受け継いだ同機は、搭載した太陽電池セルとレーザーから動力を得る。

“重さを増やさずにRoboFlyに大量のパワーを素早く送るには、それがもっとも効率的な方法だった”、とペーパーの共著者Shyam Gollakotaが述べている。彼が電力効率をいちばん気にするのも当然だった。彼と仲間は先月、ビデオを従来より99%少ない電力で送信する方法を公開したばかりだ。

レーザーには、ロボットの翼を駆動するのに十分以上のパワーがある。正しい電圧に調節する回路があり、状況に応じてマイクロコントローラがパワーを翼に送る。こんなぐあいだ:

“ロボットの翼が素早く前へ羽ばたくために、一連のパルスを早い間隔で送り、その頂上近くになったらパルスを遅くする。それからまた逆方向に羽ばたいて別の方向へ行く”、とペーパーの主著者Johannes Jamesが説明している。

現状ではこのロボットは、とにかく離陸して、ごくわずかに飛行し、そして着陸するだけだ。でも昆虫ロボットをワイヤレス送電で飛ばせる概念実証としては、十分だ。次のステップは、オンボードのテレメトリー(遠隔測定)を改良して、自分をコントロールさせること。また、レーザーに操縦性を持たせて本物の虫を追わせ、その方向に向けて継続的にパワーを放射できるようにしなければならない。

チームは来週オーストラリアのブリスベンで行われるInternational Conference on Robotics and Automationで、RoboFlyをプレゼンする。

画像クレジット: Mark Stone/University of Washington

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

“interscatter” は、無線信号をリサイクルする技術

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「スマート」コンタクトレンズや、永久脳内インプラントのようなものを考えるとき、問題になるのは電源だ。データの収集、処理、特に伝送のためにはエネルギーが必要だ。しかし、最後の一つは問題でなくなるかもしれない ― “interscatter communication” という技術のおかげで。

スマートフォンのように大きなバッテリーを持つデバイスにとって、2~3メートル先に届く無線信号を送ることは、エネルギー的にさほど高価ではない。

しかし、ごく小さな、特に体内で使うことを目的とするデバイスでは、電源が深刻な問題になる。バッテリーは小さく、ノートパソコンのようにペースメーカーを取り出して充電することはできない。だから、エネルギー消費を減らすものは何であれ、次世代スマート埋め込みデバイスにとって歓迎だ。

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そこで、ワシントン大学電子工学専攻の大学院生3人は、無線信号を〈生成〉すること自体を不要にする技法を開発した。代わりにinterscatter を使うことで、デバイスは受信した信号を集めて再配信することができる。

しくみはこうだ。あるデバイス例えばイヤホンが、データを持たない特別な「単音」をBluetooth周波数で発信する。interscatterデバイスはこの信号を受信し、アンテナで反射させる ― ただしその前に極くわずかな操作を加えて空白信号をWiFi信号に変える。この改変された信号(実際には一種の歪められた反射)は、通常のWiFiデータと同じように、スマートフォンやノートパソコンで受信できる。

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すごいだろう? 何よりもいいのは、受信した電波をわずかに改変るためにしか電力が必要ないことで、自分でWiFi信号を生成するより〈1万倍〉効率がよく、Bluetoothより1000倍効率がよい。

それだけ消費電力を抑えることができれば、様々なインプラントデバイスに可能性が開かれる。しかし、もちろん可能性はそれだけではない。チームはinterscatterをクレジットカードに仕込んで信号をリサイクルすることによって、支払いシステムと相互に通信できるプロトタイプを作成した。

プロジェクトの次期ステップの一つは、このテクノロジーをさらに小さくすることだ。現在はかさばるFPGAボードで作られているが、設計が確定すれば、通常の集積回路基板に載るはずだ。なお、標準的な信号を使っているため相手のデバイスはApple WatchからSamsung Galaxyスマホでも何でもよい。

このinterscatterに関する論文を書いたのは、Vikram Iyer、Vamsi Talla、Bryce Kellogg、および担当教授のShymmath GollakotaとJoshua Smithで、8月22日にブラジルで開催されるSIGCOMMカンファレンスで発表される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

この検索エンジンは、自分の顔を検索結果と交換する

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ウェーブのかかった長い髪の自分を想像したことはあるだろうか。きっと素適だろう。しかし、大枚をはたいてサロンに行ったり、Photoshopに何時間も費やすことなくいろんな髪型を試すにはどうすればいいだろうか。必要なのは自撮り写真とDreambitだけ。顔を交換できる検索エンジンだ。

システムはあなたの顔写真を分析して顔だけをうまく切り取る方法を見つける。次に、検索ワード ― 例えばカーリーヘア ― と一致する画像を検索し、あなたにあった位置に顔のある写真を探す。

ターゲットの画像に対しても同様のプロセスで顔マスクし、あなたの顔で置き換えれば出来あがり! カーリーヘアのあなたを何度でも何度でも試せる。ちょっと「マルコビッチの穴」のシーンを思い出させる。ただし相手の顔や状況によってはいくらでも薄気味悪くなる。その点ケリー・ラッセルはどんなヘアスタイルでも美しく見えることが下の図からわかる。

Diagram showing the process by which faces are detected, masked, and replaced.

The process by which faces are detected, masked, and replaced.

交換するのはヘアスタイルに限らない。映画でも場所でも絵画でも、交換できる位置に顔があれば置き換えてくれる。顎ひげのある人等、縁を見つけくい顔はうまくいかないことがあるので、ラスプーチンやガンダルフと入れ替わることはできないかもしれない。

Dreambitを作ったのは、ワシントン大学でコンピュータビジョンを研究するIra Kemelmacher-Shlizermanだ(彼女は顔認識拡張現実でも興味ある研究をしている)。そしてこのシステムは楽しく遊ぶためだけではなく、もっと本格的な応用の可能性も持っている。

Kemelmacher-Shlizermanは自動エイジ・プログレッションという過去の写真から現在の顔を合成するシステムも作っている。これは行方不明者の捜索に役だつ。

「行方不明の子供たちは、髪を染めたりスタイルを変えることが多く、顔だけのエイジ・プログレッションでは十分ではない」と大学のニュースリリースで彼女は語った。「これは行方不明者の容姿が時間と共にどう変わるかを想像する第一ステップだ」。

Kemelmacher-ShlizermanはTechCrunch宛のメールで、ソフトウェアはまだまだベータ段階でFBIが使うようなものではないと言っている。

Dreambitとその背後で動くプロセスについては来週SIGGRAPHで発表されるが、彼女の論文、“Transfiguring Portraits”は今すぐ読むことができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AR/VR課程の一学期をまるまるHololensのデモアプリ開発に投じたワシントン大学、その評価は肯定的

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Microsoftのあのおもしろい混成現実(mixed-reality)*プラットホームHololensは、誰もが気軽に試せる状態からはほど遠いが、でもワシントン大学のコンピューター科学の学生は、思う存分遊ぶことができた。〔*: mixed-reality, ARとVRを両方実現できること。〕

とくにそれは、同大のCSE 481Vクラスの学生だ。このコースは、“仮想現実と拡張現実について多くを学び、最新の技術やソフトウェアを熟知し、そして10週間かけてアプリケーションを構築する”、と説明されている。

こんなやり方のコースは、少なくとも同大では初めてだ。国内のVR/AR選手たち、MicrosoftやOculus、Valve/HTCなどからの全面的な賛助もあり、36名の学生が、Hololensの開発チームや、主要なヘッドセットのすべてにアクセスした。Hololensは25台提供されたが、一箇所にこれだけ集まるのも珍しい。OculusのチーフサイエンティストMichael Abrashや著作家のNeal Stephensonなどの客員講師の話も聞かなければならない。Stephensonの“Snow Crash”は、コースの必読書だ。

いまどきの大学は、学生が進んで入学したくなるための、こんなおもしろそうな仕掛けが重要なのだ。

One of the projects had users flying a virtual paper airplane through AR waypoints.

このプロジェクトでは中間点(通過点)がARで表示され、そこに仮想(VR)の紙飛行機を飛ばす。

このクラスのインストラクターの一人Steve Seitzは語る: “昨年、VR/ARクラスの話をHololensの連中に話したら、たいへん前向きの関心を持ってくれた。36人のクラスでまったく新しいデバイスやその開発プラットホームを使うのは、最初ためらったけど、開発環境がとても良くできていることに、感銘を受けた。経験のまったくない学生でも、すぐに使えるし、わずか数週間でけっこう上出来のアプリケーションを作れる”。

どれだけ上出来か、それはコースのWebページで確認できるし、開発過程を記した週刊のブログ記事もある。たとえばARクッキングや、お絵かきアプリケーション、部屋をスキャンする過程のゲーム化など、ほかのアプリケーションで使えそうなアイデアやコンセプトも少なくない。

クラスは、その総仕上げとして大学のキャンパスで公開デモデーを行った。一般人だけでなく、Microsoft ResearchのCVP Peter Leeのような重要人物も見に来た。

それが学生にとって大きな機会だったのはもちろんだが、この分野の企業にとっても実り多いテストの場だ。若い人たちはこの技術に、どのように対しているのか? どんな困難にぶつかったか? どんなツールを望んでいるか? こういうのは、企業側の思惑、下心というより、むしろ学生とのコラボレーションから得られる体験だ。

“Hololensのチームにとってこれは、焦点の絞られた教育的なセッティングでプラットホームを評価でき、初期的なフィードバックを得られる貴重な機会だった”、とSeitzは書いている。チームは、学生たちへの技術的サポートや教育訓練も提供した。

Seitzと、他のインストラクターの一人Ira Kemelmacher-Shlizermanは、来年もまたこのクラスをやりたい、と考えている。ワシントン大学はMicrosoftにとって便利な場所にあるが、同大はこの地域の研究のためのハブでもある。これまで、有名なHITLabで、VRやAR関連のアイデアを数多く開拓してきた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))