地図と連携したモバイルCRMで“訪問営業”を最適化、セールステックのUPWARDが5.5億円調達

フィールドセールス領域に特化したモバイルCRM「UPWARD」を開発するUPWARDは3月13日、DBJキャピタル、三菱UFJキャピタル、DNX Ventures、日本ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額で5.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

UPWARDにとっては2018年5月にDNX Ventures(当時はDraper Nexus Venture Partners)や日本ベンチャーキャピタルなどから3億円を調達して以来の、シリーズEラウンドでの資金調達となる。今後はプロダクトの改良やマーケティングへの投資に加えて、新サービスとなるパーソナルアシスタント機能の開発にも力を入れていく計画だ。

マップを見るだけで顧客情報や営業状況がわかるモバイルCRM

UPWARDはフィールドセールス担当者の訪問営業活動を支援するCRMだ。特徴は地図とCRMが組み合わさっていること。Salesforce連携することで同サービスに登録している顧客情報とUPWARD上から入力した営業情報を合わせてマップ上に可視化する。

訪問状況や重要度に応じて顧客を色分けして表示する機能(たとえば担当者と会えたら赤色、商談が発生したら黄色に変えるなど)を使えば、地図を見るだけで営業状況を把握することが可能。一定期間訪問していない顧客を自動でアラート表示する仕組みもあり、これらの機能によって過去の営業活動を踏まえた上で「今優先してフォローすべき顧客」を簡単に割り出せる。

結果的に営業の質の向上を見込めるほか、最適な訪問ルートを自動作成する機能を用いることで1日の訪問量を最大化したり、そもそも訪問計画の作成にかかっていた時間を削減したりする効果もある。

”データドリブンな訪問営業”を実現するためには、そもそも日々の営業活動をしっかりと記録していくことが不可欠だが、UPWARD代表取締役社長CEOの金木竜介氏によると多くの企業にとってそれが1つのネックになってきたという。

「企業としては顧客データベース自体はあるものの、現場の担当者によるラストワンマイルの訪問情報が会社に入ってきていないことを課題に感じている。つまり日々の顧客接点情報が会社の資産になっておらず、属人的な営業活動になってしまっている」(金木氏)

UPWARDの場合は各営業パーソンが簡単に記録を残せるような仕組みを構築。位置情報を基にスマホからワンタップでチェックインする機能や音声入力など、移動時間やちょっとした空き時間を使ってスマホだけでデータエントリーできるようにした。

リアルタイムに各メンバーの訪問履歴が収集されていくことで、全体の訪問計画を最適化することにも繋がる。金木氏の話では従来でもトップセールスと言われるような一部のセールスパーソンは個人的にデータを記録して営業活動をしていたようだが、それをチーム全員で実行できている企業はまだまだ多くはない。

特に大企業などフィールドセールスを担当するメンバーが多いような企業ではオペレーションで苦しんでいるところも多かったそう。現在UPWARDは約300社に導入されているが、メインは製造業などをはじめとしたエンタープライズの顧客だ。

たとえば訪問内容の共有によってナレッジの浸透や営業効率がアップしたことで導入1年で売上実績が5.5倍になったダイハツ工業の事例をはじめ、実際に売上増加や業務効率化に大きく貢献できた事例も積み上がってきているとのこと。最近ではPayPayの加盟店開拓における訪問営業でもUPWARDが使われたという。

新サービスとして「パーソナルセールスアシスタント」機能を予定

今回の資金調達はUPWARDをさらに使いやすくするための機能拡張に向けた人材採用とマーケティングへの投資が主な目的。機能改善や連携CRMの拡充(現在はSalesforceのみ)なども随時行っていくほか、4月にベータ版ローンチを予定している新サービス「AGENT」の開発にも力を入れていく。

UPWARDではAGENTを「パーソナルセールスアシスタント」と表現しているが、このサービスでは大きく2つの観点から各セールス担当者を今まで以上に支援する。

1つはデータエントリーの自動化。モバイルGPSを軸にセンサー情報なども用いて、担当者がスマホを持ってさえいればCRM上に顧客訪問日時やこれまでの訪問回数などが自動で入力される仕組みを作る。

そしてもう1つがデータを基にした営業アプローチ方法の提案(インサイトの提供)だ。すでに接点のある顧客への営業についてはCRMの情報を参照して「最適な訪問タイミング」や「次の訪問先」をレコメンドしたり、自動で訪問計画に組み込むことで営業活動における漏れをなくす。新規顧客の開拓においては過去の営業データを基に「上手くいく可能性の高い見込み顧客」を発掘し、提案するような機能も計画しているようだ。

「フィールドセールスにおけるラストワンマイルのパーソナライズを加速させていく。ここ数年、顧客からは個別最適化したCRMが求められてると感じている。『CRM3.0』という言葉を使われることもあるが、プラットフォームに蓄積してきたデータをどのようにフロントエンドで、現場で使いこなせるような形で提供していくか。CRMの活用部分がより重視されるようになってきた。自分たちはフィールドセールスという領域において、そこを追求していきたい」(金木氏)

フィールドセールス向けCRMを提供するUPWARDが約3億円調達

クラウドCRMサービスを提供するUPWARDは5月15日、Draper Nexus Venture PartnersSalesforce Ventures日本ベンチャーキャピタルアーキタイプベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、総額約3億円を調達したと発表した。

UPWARDは、CRMと位置情報を連携したフィールドセールス向けのクラウドサービスだ。従来のフィールドセールスでは、CRMにある情報をもとに準備をし、そこに書かれた住所に訪問するというのが一般的。一方、CRMと位置情報を組み合わせたUPWARDでは、例えば自社製品の資料請求を行った企業のオフィスがたまたま営業員の近くにあれば、ツールが自動的に「訪問すべき」というリコメンドを行う。

UPWARDはスマホアプリなので、急な案件でも出先からCRM情報を確認することもできる。営業計画の立案や効果的な訪問ルートの計算などもツール上で行うことが可能だ。活動報告や、実際の活動履歴をもとに自動でレポートを作成する機能もあるので、フィールドセールスに関わる作業を一括して行うことができる。

UPWARDの設立は2002年で、サービスは2011年からリリース。現在の導入社数は約200社だ。導入企業で多いのは、クルマや機械など単価が高い製品を扱う企業で、かつルート営業を行う企業なのだという。同社は今回調達した資金を利用して、フィールドセールスで必要となる入力作業をAIで自動化する機能などを開発する予定だ。

CRMと地図を統合して「サラリーマン巡回」最適化―、UPWARDが2億円を調達

自社プロダクトの資料ダウンロードが起こった瞬間に、その資料を閲覧している企業担当者のすぐ近くにいる営業マンに「○○ビル5階に訪問してご説明すべき」とスマホの地図で示せたら良くないだろうか?

最近横浜から東京・日本橋へオフィスを移転するとともに社名も変更したUPWARDがやっているのは、まさにこのCRMと位置情報の統合だ。マーケティング・オートメーションツールやCRMといったツールには、今のところ地図・位置情報を扱うレイヤーが欠けている。

2002年創業で受託中心の開発会社だった「オークニー」は社名を「UPWARD」へ変更し、改めて自社プロダクトで勝負する。受託開発中心だった横浜時代に区切りを付け、Draper Nexus Venture Partners日本ベンチャーキャピタル(NVCC)から総額2億円の資金調達を行ったことを今日発表した。

UPWARDはCRMと地図・位置情報の連携で実現したフィールドセールス向けのクラウドサービス。ツールとしては、iOSアプリがあるほかモバイルブラウザで動くHTML5版がある(次期プロダクトではReact Nativeの採用を検討しているそうだ)。すでに大手メーカーやサービス業を中心に、約140社でUPWARDは導入されている。グリコ、ダスキン、アサンテなどが顧客企業の例だ。直近での導入事例としても大手機械メーカーに全国で約1600人いるフィールドセールスマンが利用する行動支援サービスとして採用された。この機械メーカーでは一人の営業マンの担当エリアが大きいためUPWARDの採用は効率化のメリットが大きいという。

UPWARDの金木竜介CEOは、「都内で動く人のナビゲーションが提供されてない。いまは住所で検索して地図を見てるだけ。それで訪問している」と現状の非効率を指摘する。UPWARDではエリアごとの集計営業計画の立案効率的な訪問ルートの計算といったことができる。移動時間も考慮して直帰の設定も可能だ。「顧客とのアポ設定やターゲットリストの絞り込みは時間がかかっていて、これをマネージャーがやってたりするのが現状です。ここをオートメーション化していく」(金木CEO)。UPWARDは、もともとオークニーの受託時代から主にオープンソースを使ったサーバーサイドの地図情報システムに取り組んでいて「ある区画の顧客情報だけを引っ張ってくる」というような処理が得意という。


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UPWARDは2011年から動作しているプロダクトで、2013年にはセールスフォースと資本提携して3000万円の投資を受けた。その後、シリーズAでみずほキャピタルから3000万円、2014年のシリーズBでサイバーエージェント・ベンチャーズSMBCから8000万円、2016年に入って4月と6月にDraper NexusとNVCCからそれぞれ1.5億円、5000万円の合計2億円を調達した形だ。ピーク時30人だったときよりも社員数は12人と減ったが「筋肉質となった」と金木CEO。受託開発から急速な成長を目指すスタートアップへの脱皮には、変化に伴う「成長痛」もあったようだが、CRMへの位置情報レイヤーの統合は興味深い領域。セールスフォースから出資を受けていることもあるし、日本市場にとどまらず、新社名どおりUPWARDが上向きにスケールできるか注目だ。