安曇野FINISHドローン誕生か、エアロネクストとVAIOが量産化に向けてタッグ

エアロネクストは3月12日、VAIOと産業用ドローンの量産化について共同で事業化を検討することを発表した。

エアロネクストは2017年4月設立のスタートアップ。ドローン重心制御技術「4DGravity」を保有しており、従来はソフトウェア中心だったドローン本体の姿勢維持をハードウェアレベルで実現することで、より安定したドローンの飛行を可能としている。

VAIOは、ソニーが販売していた「VAIO」ブランドのPCの製造・販売を一部の技術者を含めて2014年に引き継いだ企業。同社が製造するVAIOの各モデルは、長野県安曇野市の工場で綿密な最終チェックが実施される、いわゆる「安曇野FINISH」モデルとして出荷される。現在同社の主力事業は、法人向けPCの販売と電子機器の受託生産(EMS)だ(Engadget日本語版参考記事:VAIOの里で見た謎の安曇野フィニッシュと億単位のテスト環境にVAIOの真髄を見た)。

今回の提携についてエアロネクストからは以下の回答が得られた。

TechCrunch(TC):VAIOとの提携は先日の小橋工業との提携と同様のものなのでしょうか?
エアロネクスト:小橋工業と同様に重要な提携先となります。4D Gravityは産業ドローンの標準技術だと考えていますので、今後もさまざまなドローンメーカーでの採用・搭載を予定しています。

TC:PC製造とEMSを得意とするVAIOを組む理由を教えてください。
エアロネクスト:これまでのEMS事業においてロボットに加え、IoT関連の製造に対しても意欲的に取り組んでいらっしゃるということが最大の理由です。また、PC事業・EMS事業それぞれにおいて豊富な経験と実績を有するVAIOと組むことで、より安定した飛行を実現できる産業ドローンの開発に取り組めると考えています。

TC:安曇野工場は「安曇野FINISH」でおなじみですが、御社のドローンも安曇野FINISHとなるのでしょうか。
エアロネクスト:それも一つの可能性ですが、現時点では未定です。さまざまな選択肢の中からベストな生産体制の決定がされる予定です。

TC:具体的にはどのような用途で使う産業用ドローンを量産されるのでしょうか。
エアロネクスト:市場の立ち上がりと市場規模を見据えつつ、産業用途全般で検討していきますが、現時点では未定です。

TC:どのようなドローンサービスを事業化されるのでしょうか。
エアロネクスト:VAIOにはPCに加えて様々な電子機器、IoT製品の設計・製造の経験と、高品位・高品質なモノづくり、ブランド力があります。4D Gravityテクノロジーを使った新たな商品開発、用途別サービスの検討を共同で進める中で、シナジー効果が期待できるサービスを実用化する予定です。

TC:量産化のメド、事業化のメドを教えてください。
エアロネクスト:量産計画についてはこれからになります。決定次第、発表いたします。

TC:量産台数の目標を教えてください。
エアロネクスト:上記同様量産計画についてはこれからになります。決定次第、発表いたします。

エアロネクストは先日、岡山を拠点とする農耕機具メーカーである小橋工業との提携を発表したばかり。今回の提携は詳細をこれから詰めていくようだが、画期的なドローン技術を擁するエアロネクストと、製品の品質管理の定評のあるVAIOが組むことで、どのような産業用ドローンが生まれるの楽しみだ。

SonyはVAIOを売却してPC部門のない企業に生まれ変わる

Sonyはかつての勢いを失ったPC事業を売り放して、6月にはテレビ受像機事業を別会社として独立させる。同社のこの発表は、昨日の報道を確認している。それによると、VAIOブランドの買収を計画しているのは、企業再編支援専門の投資ファンドJapan Industrial Partners(日本産業パートナーズ)だ。金額などは公表されていないが、Nikkeiの記事によると500億円(4億9000万ドル)に近いという。

買収の完了は3月末で、Sonyは今会計年度内に全世界で5000名を解雇するが、一方新たに動き出すPC企業はSonyの社員を250~500名雇用して残存保証業務に当たらせる。Sonyもこの新会社の立ち上げに総資金の5%を出資する。

VAIOの売却は、今や意外ではない。SonyのPC事業はこのところ長年、ほかの事業ほどの業績をあげていない。2012年にKazuo Hirai(平井一夫)が社長兼CEOになったときに列挙した同社の経営基盤の中に、PCは含まれていなかった。そのときの彼によると、Sonyの未来はデジタル画像技術、ゲーム、そしてモバイルにある、と言われた。しかしこの三つのジャンルですら、スマートフォンのXperiaシリーズをはじめとして革新的な製品を次々と出すものの、その業績はライバルのSamsungやAndroidほどには伸びなかった。

Sonyは、200億円を投じてPCとテレビ受像機事業を構造改革し、4Kなどのハイエンド製品に注力する、とも言っている。それによりテレビは2015会計年度には再び黒字になる、と同社は期待している。

同社の利益は未だに安定しないが、それは競争の激化によるところが大きい。2013Q3の決算報告では、モバイル部門の売上の前年比増が報告されているが、それでも2013年全年全社の利益は1100億円(11億ドル)のマイナス、すなわち損失となり、期首予想の300億円から大きくかけ離れた。

PlayStation 4は年末年始商戦で400万台売れて好調だが、このゲーム機は利幅が薄いため、同社の利益に大きく貢献するのは製品のライフサイクルのずっと後期になると予想される。

Sonyはこの前の財務報告でPCの伸び悩みを報告したが、昨日(きのう)になるとVAIOに関してはいろいろなやり方を検討中である、という言い方になった。

しかし明らかに今のSonyに必要なのは迅速なアクションであり、もはやその検討ではない。1月末には、MoodyによるSonyの社債の格付けが、Baa3からBa1に落ちた(“信用リスク中程度”→“債務不履行の可能性あり”)。それは、今後の同社への投資は投機的な性格を帯びる(==リスクが大きい)、という意味だ。つまり今後のSonyは、借入れが困難になる。

VAIOの業績が好転しないのは、PC市場の全体的な落ち込みとパラレルだ。2013Q4に関するGartnerの前触れ的調査報告では、PCの売上は6.9%減の8260万台となっている。2013年は、PCとラップトップにとっての“底”になり、年間では前年比で10%減少した。2014年には、これほど激しい落ち込みはない、と予想されている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))