人工知能を使って不動産の成約価格を高精度で推定する「VALUE」——イタンジが新サービス

11717001_868003469947010_1205949794_n

「人工知能を使って○○をする」なんてスタートアップのニュースが増えているが、今度は人工知能を使って不動産の成約価格を推定するというサービスが登場した。仲介手数料無料のネット専業不動産仲介サービス「ヘヤジンプライム」を提供するイタンジは7月8日、人工知能を活用した不動産投資家向けサービス「VALUE」の提供を開始した。

VALUEでは、同社が開発した人工知能を用いて、REINS(不動産業者向けの物件情報データベース)に掲載されている物件の価格を解析し、相場価格から乖離した裁定取引(アービトラージ、利ざやで稼ぐこと)の可能性がある物件を抽出して、ユーザーに情報配信するサービス。転売益などを狙った国内外の不動産投資家をユーザーと想定している。利用料は月額5000円。

今後は不動産投資の分析ツールなども利用できる上位版サービスも提供する予定。また不動産仲介業者をターゲットにした広告での収益化も検討している。「不動産仲介業者は1人の顧客を連れてくるCPAが5万〜10万円かかっている。VALUEのユーザーを仲介会社に送客できれば価値は高い。今後はアジア圏の投資家もターゲットにしていきたい」(イタンジ代表取締役CEOの伊藤嘉盛氏)

伊藤氏は、不動産の価格設定について、「これまでは不動産業者の勘や経験——周辺、もしくは同様の条件の不動産価格、同じ物件の過去の数字など——をもとにざっくりとした数字を出していた」と語る。では正確な数字を出す場合にはどうしたかというと、「ヘドニック・アプローチ(マンション価格を専有面積や間取り、築年数などから回帰的に説明する方法)を用いていた。しかしその決定係数(回帰式の当てはまり具合、ざっくり言えば予測の精度)は0.8〜0.85(80〜85%の精度)。高いモノでも0.9(同様に90%)程度だった」(伊藤氏)のだそう。

これに対してVALUEでは人工知能でディープラーニング技術を用いて過去25年間の東京都内における不動産取引情報や金利、公示地価などを学習。その結果、決定係数は0.94、また実際の成約価格との誤差で見ると、±5%以内が35%、±10%以内が64%という高い予測精度を実現したという。ちなみに米国では不動産データベースサービスのZillowが2006年からサービスを提供しているが、同社でも誤差±5%となるのは30%程度だという。またこれ以上の精度に関しては「専有面積などに関わらず、何かしらの理由で相場価格より高い、もしくは低い価格でも売買される物件もある」(伊藤氏)ということで、高めるにも限界があるようだ。

最近では不動産仲介業社による物件の「囲い込み」の実情が報道されているが、「価格がブラックボックス化されており、売り手も正しい価格を理解していないために、最終的に値下げして売らざるを得ないケースもある」(伊藤氏)のだそう。こういった問題を解決するためにも正しい不動産価格を知ることは重要だという。VALUEはこの人工知能による価格推定の技術を用いた第1弾のサービスという扱い。同社では今後もこの価格推定技術をコアに「不動産×人工知能」のサービスを提供していくという。