ファンド組成に必要な文書のための無料テンプレートをVC Labが提供

昨今、資金豊富なスタートアップが少なくないのかもしれない。しかし、多くの企業はそうではないというだろう。ベンチャーキャピタルのためのアクセラレーターであるVC Labは、世界中に投資する投資家を生み出したいと考えている。

この目標達成の前に立ちはだかる初歩的なハードルは、新ファンド設立に必要となる標準的なペーパーワークだ。現状では、専門の弁護士が必要で、それにかかる時間は金額にして、ファンド設立ごとに10万ドル(約1140万円)以上かかることもある。

VC Labは無料で使えるテンプレートを提供している。プロセスを合理化して時間と費用を節約し、ファンドというガバナンス構造をより身近なものにすることを目的としている。

「VC Labでは、世界中のジェネラルパートナーがファンドを立ち上げています」と共同創業者のAdeo Ressi(アデオ・レシ)氏は説明する。「直近のコホートには中央アジア、アフリカ、その他想像できるあらゆる場所を含む62カ国のベンチャー投資家が参加しました」。

投資家はリーガルコストを最小限にしたい。

「ベンチャーキャピタルに入る新しいマネージャーは、変革への情熱を持っています。新しいファンドは非常に焦点を絞ったテーマを持っていることが多く、通常、規模も小さい。彼らは、自分たちが関わる企業を何としても成功させたいと考えます。小さな意思決定のたびに、200~400ページもの契約書は要りません。彼らが必要としているのは、無駄のない、軽い、使いやすい契約書なのです」。

VC LabがCornerstoneと呼ぶこのパッケージは、タームシート、出資契約、LPA(およびユーザーガイド)を含む33ページの短いものだ。似たようなファンド組成文書は、通常、数百ページにも及ぶ。

「ファンド組成文書はバカバカしいほど複雑であり、見直しが必要であるという認識が広まっています」と新パッケージの共同執筆者であるHans Kim(ハンス・キム)氏はいう。同氏はシリコンバレーで長年、スタートアップ専門の弁護士を務めた。「私のクライアントの中には、お金を稼いだら、その資金を投資に使いたいと考えている創業者がたくさんいます。個人で行うエンジェル投資よりも真剣に考えるようになると、ファンド組成の弁護士を紹介されます。ただし、料金を見ると考え直さざるを得ません」。

共同執筆者であるGora LLCのRich Gora(リッチ・ゴラ)氏によると、定義リストの簡素化、管理費に関するセクションの簡素化、リミテッドオペレーターモードのトリガーなどの改善がなされた。現行の文書は、米国でのファンド設立に関して詳細を定めるが、カナダ、オランダ、シンガポールなど、需要がある他国版も予定されている。

ゴラ氏は、さまざまな投資家と仕事をする機会があるファンド設立弁護士として、ビジネスに関わる人がビジネス上の問題を平易な言葉で解決できるようにすることが目的だという。双方が合意したい内容を話し合った後、同氏のような専門家に文書を持ち込めば最終化してもらえる。

「この10カ月の間に、私たちはあらゆる業界のLP契約を見て回りました。20行にもなるコンセプトを3行にまとめました。コンセプトはそのままに、弁護士独特の言葉を排除しました」。

レシ氏は、この新しい文書によって、導入するLPの数などにもよるが、リーガルコストを半分以上カットできると見積もる。また、ファンド組成の専門知識を持つ弁護士が不足しているとも指摘する。標準的な文書を提供することで、プロセスをスピードアップし、世界のベンチャーキャピタルのエコシステムをより早く発展させることができる。

VC Labは、世界的なスタートアップアクセラレーターであるFounder Institute内に設立され、すでにスタートアップのエコシステムにこの分野で貢献している。約9年前には、コンバーチブルノートから負債の要素を取り除いた、SAFEノートの先駆けとなるコンバーチブルエクイティという概念の開発を支援した。

「私たちは、すべてのボトルネックを取り除く必要があると考えています」とレシ氏はスタートアップ投資について話した。「そうすれば、世界中で新しいVCや新しいLPが爆発的に増え、このアセットクラスに参入してくるでしょう。世界のどこにいても、世界をより良くするためのアイデアを追求し、それを実現するために必要なリソースを見つけることができれば、人類にとって本当の意味でのポジティブな変化が生まれるでしょう。残念ながら、今はそうなっていません」。

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(文:Eric Eldon、翻訳:Nariko Mizoguchi

スタートアップ育成のFounder InstituteがVCを育てる無料トレーニングプログラムVC Labを開始

Founder Instituteは、これから新しいスタートアップを立ち上げる起業家を助けるだけでない。その新たな部門であるVC Labで1000の新しいベンチャーキャピタルファンドの立ち上げを促進したいという。

FIの共同創業者であるJonathan Greechan(ジョナサン・グリーチャン)氏はこれを「スタートアップのエコシステムに大きく欠けている部分をなくすためだ」と語っている。

「スタートアップの世界がもっと充実し、インパクトのあるエコシステムに円滑に資金が行き渡るようになったら、それは人間性にとって本当にポジティブなものになる」と彼はいう。

VC Labのセッションはすでに2回行っている。1回目は2020年春で、グリーチャン氏によるとそれはかろうじて通用するプロダクトのようなものだったという。夏から秋にかけてのもう1回のセッションはいわばベータテスト、そして次回の申込の締め切りは2021年2月15日に迫っている。

Greechanによると、以前の受講者からは48のファンドが生まれ、2021年第1四半期には計1億ドル(約105億円)の投資資金を調達する予定だという。

これらのファンドの多くがまだ原資調達の過程にあり、一般公開はできないが、彼によると1/3のファンドは米国社会で弱者と呼ばれているような人々がパートナーとなり、その半数以上が社会的インパクトのあるスタートアップの支援を狙っているという。その例としてグリーチャン氏が挙げるのは、アフリカのサハラ砂漠以南地区にスタートアップを育てようとするPacer Venturesだ。この300万ドル(約3億2000万円)のファンドは、VC Labが育てようとしているVCの好例だ。

「これらの新しいファンドマネージャーが抱える問題の多くは、新しい起業家が抱える問題とよく似ている。彼らは、事業として無事に離陸するまでの1つ1つのステップが、まだよくわかっていない」とグリーチャン氏はいう。

VC Labはまさに、VC志願者が踏むべきステップを教える。カリキュラムがあり、ウェビナーも利用する。オフィスはバーチャルで、Slackで会話をする。参加者は公徳課程のThe Mensarius Oathを受講して、「スタートアップとファンドは。人間性に貢献すべき」とか「不公平や悪徳に導く権力の濫用を避けよ」といった倫理項目も叩き込まれる。

受講は無料だが、専用オフィスは月額500ドル(約5万3000円)だ。Founders InstituteとVC Lab自身は、財政的にはファンドに参加しない。

ビジネスモデルについて尋ねるとグリーチャン氏は、「それは我々のビジネスの次の段階と見ていない。これまでVCとして、おもしろくてインパクトのある企業を作る人たちのコミュニティを育ててきたが、これからはそれと並んで、インパクトのある企業に投資する人々のコミュニティを作ろうとしている。チャリティのためではないが、長期的には卒業者の全員にとって何らかの利益があるはずだ」。

カテゴリー:VC / エンジェル
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画像クレジット:Iaremenko/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)