VCたちはどれだけ稼いでいるか

ベンチャーキャピタルは不透明な業界と思われているので、われわれの多くが、平均的なVCの年収などを知らなくても当然だ。

しかし、ベンチャー企業の報酬に関するJ. Thelander Consultingの調査報告書を見ると、やはりVCたちは大金を稼いでいる。

では、どれだけ? そう、VCたち204名のうち(男172女32)、平均的なゼネラルパートナー(GP)の今年の予想年収は63万4000ドルだ。この中には2017年の業績に対するボーナスも含まれる。

VC企業の規模によって、平均年収に差がある。たとえば運用資産残高(AUM)が2億5000万ドル未満のVC企業のVCたちは、それより大きなVC企業のVCよりも年収が低い。

[VCたちの2018年平均総報酬]

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VC企業でランクのトップにいるGPたちは、報酬パッケージも最大だ。彼らの年額ボーナスの平均は、アソシエイトパートナーやエントリーレベルの投資家たちの平均基本給より大きい。

この調査は、Sequoias, NEAs, Kleiner Perkinsといった、AUM 数十億ドルクラスの世界的VC企業を調べていない。しかし上の結果を外挿すれば、彼らはもっと稼いでいるだろう。

注記: 実際の年収は、上記にVC企業の運用益の分け前、いわゆるcarried interestを加えた額である。

〔訳注: VCといえば個人のVC、VC firmといえばVC企業のこと。〕

[あるミーティングでVCたちの真実を垣間見た](未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

エンタープライズバージョンコントロールのAssemblaがMacOS用のSubversionクライアントCornerstoneを買収

今や、バージョンコントロールシステムといえばgitだけ、と思われるぐらいその人気は高いが、しかし主にエンタープライズ界隈では、gitと競合するSubversionやMercurialもかなりの数のユーザーを抱えている。そこでSubversionを使って企業にバージョンコントロールサービスを提供しているAssemblaが今日(米国時間1/18)、MacOS用のSubversionクライアントとして人気の高いCornerstoneの買収を発表したのも意外ではない。

Assemblaは、Cornerstoneとそれを作ったZennawareを買収した。Zennawareが最初にCornerstoneをローンチしたのは2008年で、今後はAssemblaがこのクライアントの販売と開発を継続する。数か月後にはバージョン4.0をリリースする予定だ。買収の財務的詳細は、公表されていない。

AssemblaのCEO Paul Lynchはこう声明している: “われわれはCornerstoneの未来に投資している。現状維持を願うのではなく、われわれがこれまでSubversionとAssemblaのWebアプリケーションに対して行ってきた重要な改良を、今すでに優れたソフトウェアであるCornerstoneのデスクトップアプリケーションに適用したい。それにより、ユーザーのリポジトリとデータまわりの対話とワークフローを、さらに良くしていきたい”。

Assembla自身は、2016年にScaleworksに買収されたScaleworksはVCとプライベート・エクイティのハイブリッドのような企業で、それ自身では成長の限界に達しているような企業に投資、ないし買収をして、その能力と価値を次のレベルへと高め、それにより投資企業としてのリターンを得ている。Scaleworksに買収される前のAssemblaも、成長が横ばい状態になっていた。そして買収後は、エンタープライズへの新たなフォーカスによって売上が倍増し、今回Cornerstoneを買収したのも、さらにその成長カーブを先へ伸ばしていくためだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

2014年のスタートアップ投資額、6年ぶりに1000億円超え―JVRが調査報告

リーマン・ショックの2008年以降下降線をたどっていた未公開ベンチャー企業の資金調達状況が2014年には大きく改善して、資金調達額は前年比1.58倍の1154億円となった。6年ぶりの1000億円超えとなる。2006年から継続して調査を続けているJVR(ジャパンベンチャーリサーチ)がまとめた数字だ。

1社あたりの調達額7250万円は前年比185%

1社あたりの資金調達額も中央値が7250万円と前年の4000万円から1.8倍と増えている。資金調達を行った企業の数は減少しているものの、1件あたりの金額が増えている。TechCrunch Japanでも日々お伝えしている調達額が増えていることは感じているが、この調査でも資金調達額の大型化が浮き彫りとなっている形だ。ただし、TechCrunchが主にIT関連のニュースをお伝えしているのに対して、JVRの調査にはヘルスケア、バイオ、医療、環境、エネルギー分野も含まれる。業種別の傾向としては、IT関連の企業数が増加傾向にあり、2014年は49%となっている。また、インターネットを利用したビジネスモデルを持つ企業の調達件数は2006年以来、ほぼ一貫して増加傾向にあり、2014年にその割合は80.5%となっている。

シード・アーリーからシリーズA、Bへ重心が移動

また資金調達を行った企業の設立年数を見てみると、設立1年未満の社数割合が減少する一方で、1年以上の割合が増加。1年以上5年未満が35%を占めるようになっている。調達額の大型化と合わせて、この傾向の背景には、2011年、12年に生まれたシード、アーリー対象のアクセラレーターの卒業組がシリーズAやBといった調達に成功する例が増えていることがある。以下のグラフは、それを顕著に示している。レポートでは「米国での一般的な調達額として、シリーズAで2億円、シリーズBで5億円、そしてシリーズCで10億円と言われているが、日本も同様の規模に近づいてきている」としている。

10億円以上の調達は7社→16社→25社と増加

資金調達の大型化により、10億円以上資金を調達した企業は前年比1.56 倍の25社だった。2012年に7社、2013年は16社だった。以下に資金調達ランキングの上位50社の一覧を画像で掲載する(クリックで拡大)。

以下の表は投資総額によるVCのランキングだ。投資金額のVCのランキングで上位31社中CVCが6社、外資VC7社と、CVCと外資VCが健闘しているのも目を引く。

優先株も実はすでに半数以上の63%で利用

かつて日本では優先株の利用はほとんどないと言われてきたが、ここ3、4年で一気に増えているようだ。JVRのレポートによれば、会社設立から上場までの資金調達で優先株を利用した企業数は2001年以降で1年当たり2、3社程度だった。これが今回VC9社の情報開示を受けて調査した結果、対象調査企業となった2014年に資金調達を行った127社のうち優先株の利用は59社で46.5%。この比率は、株式の種類が不明の企業を除外した場合には63%となる(調査に協力したVCは、ジャフコ、産業革新機構、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グロービス・キャピタル、東京大学エッジキャピタル、DBJキャピタル、サンブリッジグローバルベンチャーズ、グローバル・ブレイン)。ある独立系VCのキャピタリストによれば、今や投資案件は「ほぼ全て優先株」といい、エンジェル投資やレイターをのぞけば、優先株の利用はもはやVC業界でデファクトではないかと話している。背景には、もともと投資家が引き受けるリスクが創業者に比べて大きかった面が優先株によって緩和されて、より大胆にリスクを取って投資しやすくなることがあるという。特に残余財産の分配権が重要で、事業立ち上げに失敗した場合に投資を回収しやすくなるなどのメリットがある。

このほか、今回のJVRのレポートで目を引くのは海外比率だ。創業メンバーから日本のスタートアップとみなされるものの法人登記を海外で行っている「海外企業」の割合が8%となり、大阪(近畿)の6%を抜いてしまっている。より大きなマーケットを目指す海外志向が1つの傾向として数値に出ている形と言えそうだ。


ベンチャーキャピタリストは楽じゃない―最悪の敵は他のベンチャーキャピタリスト

ベンチャーキャピタリスト(VC)というのは魅力的な職業に思える。給料は良く、役得も多い。優秀な起業家に会えるし、最新のテクノロジーに触れられる。サンドヒルロードの優雅なオフィスで仕事をし、毎晩フォーシーズンズホテル高級なバーで飲むこともできる。

それではベンチャーキャピタリストという仕事の難しい部分は何だろう?

「ベンチャーキャピタリストの仕事で最悪な点は何?」 というスレッドがQAサイトのQuoraに立っていて、これが興味深い。Mark SusterEthan KurzweilAndrew Parkerなどの大物が回答しているが、私は匿名希望のVCのちょっと風変わりな回答が気に入った。回答者は大手ベンチャーキャピタルで10年間ゼネラル・パートナーを務めているという。

回答者によると、一番難しいのはなんといっても他のVCと渡り合うことだというのだ。他のVCというのは他のベンチャーキャピタルのVCも自社内の他のVCも含む。

内部のパートナー間での駆け引きというのはたとえば「明日の会議で、オレの案件に賛成投票してくれたらお前の案件に賛成してやる」というたぐいのものだ。こういうことをやっているとファンドは平均的な成績しか挙げられない。平均的な成績というのは大金を失うという意味だ。

大手ファンドには大勢のパートナーがいる。その中でゼネラル・パートナーを長年務めるにはそうとうの悪人性が必要とされる。つまり権力を握るために政治的駆け引きをする意思があり、その能力に優れていなければならない。

もちろんすべてのゼネラル・パートナーがそうだというのではない。たいへん立派なゼネラル・パートナーもいる。しかしGPの3分の2はとんでもなく巨大なエゴの持ち主だ。

また匿名氏は「何も役に立つことをしないのにどうしても引退しようとしない上級パートナーも厄介ものだ」と言う。

多くの試練をくぐり抜けて無事にスタートアップの取締役に就任できたとしよう。そこからがまた大変だ。会社に複数のベンチャーキャピタルが投資しており、取締役会に複数のVCが就任したとしよう。彼らはそれぞれ異なる思惑と異なるエゴを持っている。彼らは会社にとって最良のことを考えるのではなく、代表しているベンチャーキャピタルにとって最良のことを考える。

問題はこれで終わりではない。次にはこのファンドに投資しているリミテッド・パートナーを相手にしなければならない。匿名VCによればLPたちは「われわれのエコシステム中で頭がもっとも遅れている連中」だそうだ。彼らは今頃になって「ソーシャルメディアに投資するファンドを作ろう」などと言い出す。投資対象のことなどまるきり理解していないし、理解しようという気もない。

匿名VCはさらにVCというのは「本質的にチームではなく個人プレーで、孤独な仕事だ。一人で出張し、一人で会議の記録を取り、一人でコンピュータに向かうことが多い」という。投資先が期待どおりに成功しなかった場合の苦しさも訴えている。もっとも私に言わせれば、VC連中はテクノロジー業界で勝ち馬を選ぶことで年収50万ドルから200万ドルを得ているのだから、失敗したからといって同情するのは難しい。

しかしこの匿名VCは誰なのか? もし本人の言っていることが事実なら候補者の範囲はかなり狭まる。多数のパートナー、有限責任パートナーを抱える大型ベンチャーキャピタルで10年間ゼネラル・パートナーを務め、他の上級パートナーと権力闘争を繰り返し、かなりの年齢になっているという人物に心当たりは? 

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* 私がいちばん気に入った回答はVCと結婚しているKristine Lauriaからのものだ。「VCの仕事で最悪なのは離婚の危険性が高いこと。なにしろめったに妻のもとに帰ってこない」のだそうだ。これは痛い。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+