YCombinatorに客員パートナー制度―スタートアップをさらに密接に指導する

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Y CombinatorはプレジデントのSam Altmanの下でさまざまな実験を行ってきた。このアクセラレーターの最新の試みは臨時あるいは客員パートナー制度だ。このポジションに就いたパートナーはそれぞれ自分の経験、知識を活かし、YCの特定「クラス」(batch)専属となってアドバイスを与える。

臨時パートナーはYCが2011年に設けたパートタイム・パートナーと少し似ているが、こちらは更新可能な6ヶ月の任期で、多くのパートタイム・パートナーは任期を更新し続けている。

新制度の出発にあたって、YCは3人の客員パートナーを任命した。うち2人はYCの卒業生で、Aaron Epsteinと Gustaf Alströmerだ。もう一人はLyle Fong。

Epsteinはデジタル・コンテンツのマーケットプレイスであるCreative Marketを開発し、2010年にYCを卒業している。Creative Marketは、金額は公表されていないが、2014年にAutodeskに買収された

AlströmerはAirbnbのグロース・プロダクトの責任者だ。Airbnb以前にはコミュニケーション・アプリの企業、Voxerでグロース担当副社長を務めた。またHeysanの共同ファウンダーでもある。こちらはメッセージ・サービスで、YCの2007年のクラスを通じて生まれ、2009年にGood Technologyに買収されている(額は不明)。

一方、Fongはモバイルゲーム・スタジオのHobo Labsの共同ファウンダー、CEOだ。Fongはソーシャルメディアのソフトウェア開発企業、Lithium Technologiesのファウンダーでもある。ソーシャルメディア上の影響力を点数化するという点が賛否を呼んだサービス、Kloutを2014年に買収したことは一部で有名だ。.

シリコンバレーのマウンテンビューに本拠を置くYCは来年1月に冬学期のクラスをスタートさせる前に、YCは10数名のパートナー陣にさらに3人のパートタイム・パートナーを加える予定だ。Immand Akhund、Kevin Hale、Marcus Segalの3人のうち2人はやはりYC卒業生だ。

Akhundはモバイル広告のHeyzapのファウンダーで、2009年のYCのクラスに参加している。会社はRNTS Mediaに4500万ドルで売却された。Akhundは2007年にもYCのクラスに参加しており、この際にユーザーのオンライン上の身元を管理するClickpassを共同で創業している(この会社は翌年買収されているが、これは人材獲得目的の買収(aqcui-hire)の典型的な例だった)。

YCのネットワークではHaleはさらに有名だ。Haleはオンライ書式設定のスタートアップ、Wufooを携えて2006年にYCに参加している。2011年にSurveyMonkeyが同社を3500万ドルで買収した。その後HaleはYCのパートナーとして3年過ごしたが、新会社を設立するため来年からはパートタイム・パートナーとなる。

Segalの最近の職はZyngaのグローバル事業担当上級副社長だった。それ以前には 課金プラットフォーム、Vindicia( Amdocsが買収)の最高財務責任者、 またeMusicの最高執行責任者 (Universal Music Groupが買収)を務めたことがある。

われわれは昨夜、YCのパートナー、Michael Seibel とAdora Cheungにインタビューする機会があった。Seibelは最近YCのCEOへの任命が発表されたばかりだ (Sam Altmanは引き続きグループ・プレジデントとしてYC全体を代表する)。Cheungは昨年スタートアップのHomejoyを閉鎖し、現在はパートタイム・パートナーの世話を担当している。

YCネットワークにはクラスの卒業生を含めて多数のファウンダーや投資家がおり、きわめて強力なものとなっている。この中で「客員パートナー」制度をスタートさせてた意味についてCheungは「われわれはそれぞれのクラスにもっと多数のアドバイザーを『エンベッド』したいと考えている。これはその実験の一つだ」と説明した。客員パートナーは「クラスでのアドバイスにパートタイム・パートナーよりも多くくの時間を費やしてくれることになっている」という。

Seibelは以前、Justin.TVとSocialcam(Autodeskが6000万ドルで買収)のCEOを務めた。Seibelによれば、客員パートナーは多くの時間をYCでの活動にあてることを期待されているものの、YC全体における役割は「パートタイム・パートナーのようなものではない」という。また客員パートナーもパートタイム・パートナーも指導するスタートアップに投資する権利を何ら保証されているわけではないという。

YCはどのように客員パートナー、パートタイム・パートナー(あるいはどんな種類の職についても)を選任しているのかという質問に対して、Seibelは「公募しているわけではない」と述べるにとどまり、すぐに新メンバーの説明に戻った。

ところで、YCでは冬学期のクラスへの参加申し込みをまだ受付中だ。実はYCのクラスへの参加申し込みは常時可能だという。ぎりぎりになってからの応募も「(内容を審査している)ということだ。

〔日本版〕今日(11/18)のTechCrunch JapanのカンファレンスではY CombinatorのQasar Younis COOがキーノートに登壇する予定。西村編集長の記事ではY Combinatorについても詳しく解説されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+