フォルクスワーゲンがファーウェイの自動運転部門を買収する方向で交渉中との報道

自動運転の分野で、2つの大企業の「結婚」が見られるかもしれない。Volkswagen(フォルクスワーゲン)がHuawei(ファーウェイ)の自動運転部門を数十億ユーロ(数千億円)で買収するためにHuaweiと交渉していると、ドイツの月刊ビジネス誌Manager Magazinが2月17日に報じた

HuaweiはTechCrunchの取材に対し、直ちにコメントすることはできないと述べた。VW Chinaもノーコメントとした。

合併の可能性は強力なものになる。Huaweiの自動運転部門は、通信機器とスマートフォンの巨人であるHuaweiが2019年に立ち上げたばかりの「スマート・ビークル・ソリューション」事業部門の下に位置する。smart car BUの設立は、Huaweiが自社で自動車を開発するのではないかとの多くの憶測を呼んだが、同社は製造計画を繰り返し否定し、代わりに「中国のBosch(ボッシュ)」に、つまり自動車ブランド向けの部品供給業者になりたいと述べた。

Huaweiは、少なくともこれまでのところ、この戦略を堅持しているようだ。深センに拠点を置く同社は2021年、中国の自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランドであるArcfoxの量産セダンにプリインストールされた自動運転ソリューションを展示した。Huaweiは、この電動セダンのチップセットと車載OSを供給した。

VWにとって、自動運転機能を持つテック企業は、明日の自動車を作るという野望を前進させるのに役立つかもしれない。実際、VWはFord(フォード)とVWが出資するピッツバーグ拠点のスタートアップArgo AI(アルゴAI)と提携している。2021年9月、この2社は共同開発の最初の製品である自動運転電動バンを発表した。

2020年時点で最大の市場である中国で、VWが同様の技術パートナーを探していたとしても、誰も驚かないだろう。中国の自動運転車企業の多くは、すでに自動車メーカーと深い関係を築いており、Baidu(バイドゥ)はGeely(ジーリー)とDidi(ディディ)はBYDとジョイントベンチャーを結成している。

今回の買収報道は、HuaweiのAVチームにとって微妙な時期でのものだ。同社の自動運転プロダクトの責任者だったSu Jing(スー・ジン)氏は、Tesla(テスラ)のAutopilotの致命的な事故が「人を殺す」と非難した後、1月にHuaweiを去った。この発言について、Huaweiは「不適切なコメント」とした。

退社後、スー氏の次の一手は多くの憶測を呼んだ。わかっているのは、スー氏がロボタクシーを嫌っていることだ。2021年のインタビューで、歯に衣を着せないこのエグゼクティブは「ロボタクシーを最終的な商業目標とする企業は絶望的です。ロボタクシーを提供できるのは、乗用車に取り組んでいる企業でしょう。そのマーケットは間違いなく私のものになります。まだそうなっていないだけです」。

Huaweiの自動運転事業の買収は、決して安くはないだろう。同社のスマートカー部門は、2021年に研究開発に総額10億ドル(約1150億円)を費やす計画だった。また、スタッフ5000人を誇る研究開発チームの構築を目指していて、そのうち2000人超が自動運転に専従している。ここで疑問がある。Huaweiはすでにスマート運転に多額の投資をしており、顧客も増えているなかで、なぜこの芽生えつつある事業を手放すのだろう。

画像クレジット:Arcfox Alpha S powered by Huawei

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォルクスワーゲンとボッシュが合弁会社を設立、欧州でのバッテリー生産を推進

Volkswagen(VW、フォルクスワーゲン)とBosch(ボッシュ)は、欧州にバッテリー機器のソリューションを提供するための合弁事業の検討に合意した。VWによれば、両社はバッテリーセルおよびバッテリーシステムメーカー向けに、統合されたバッテリー生産システムを提供することや、オンサイトでの生産力強化ならびにメンテナンスサポートを目指しているという。

この合弁事業は、VWが2030年までに6つのセル工場を建設するという目標を達成するのに役立つと期待されているが、欧州各地の他の工場にもサービスを提供する予定だ。両社は、合弁事業への投資額を明らかにしていない。

各自動車メーカーは今後数年間で何百万台もの電気自動車を出荷するという、これまで以上に野心的な目標を設定しており、パンデミック関連のサプライチェーン問題でさらに問題となっている海外からのバッテリー供給への依存を減らし、自己完結性を高めることに取り組んでいる。2021年には、自動車メーカーとセルサプライヤーとの間で、メーカー近隣にバッテリーセル生産施設を建設する合弁事業が相次いだが、VWは2019年にNorthvolt(ノースボルト)と合弁事業を立ち上げ、ドイツのザルツギッターに最初の生産施設を建設する計画をすで進めていた。

VWの取締役でバッテリー計画を担当しているThomas Schmall(トーマス・シュモール)氏は「欧州には、今後数年のうちに世界のバッテリー基地になることができるユニークなチャンスがあります」と声明の中で述べている。「新しいギガファクトリーの設備を含む、バッテリー生産のあらゆる面での需要が強く高まっています。VolkswagenとBoschは、数十億ユーロ(数千億円)規模のこの新しい産業を、欧州で発展・確立させる機会を探っていきます」。

Volkswagenはまた、競合他社にサービスを提供することで収益の多様化を図るという最近増えつつある自動車メーカーたちの流れにも乗っている。米国時間1月18日には、Ford(フォード)とADTが合弁事業を発表し、車種を問わず取り付け可能な盗難防止用の車両監視システムを提供することになった。

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シュモール氏は「バッテリー製造のバリューチェーンの垂直統合に積極的に取り組むことで、新たな利益を生み出すことができるでしょう」と付け加えた。「欧州製のe-mobility(電気モビリティ)のために、完全にローカライズされた欧州のサプライチェーンを確立することは、ビジネス史の中でも稀な機会となるでしょう」。

European Battery Alliance(欧州バッテリー連盟)は、韓国や中国の市場支配への依存を減らすためには、2020年代末までに世界の電池の3分の1を欧州で生産する必要があるとしているものの、現時点では、欧州の900GWh(ギガワット時)以下の生産能力を持つ電池工場は、2029年時点で世界の生産量の16%を占めるにとどまるとされている。

Tesla(テスラ)は、ベルリンのModel Y(モデルY)用の300ヘクタールの工場敷地の隣に、50GWhの生産能力を持つバッテリープラントを建設する計画を立てているが、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOが2021年11月か12月に生産を開始すると以前から約束していたにもかかわらず、工場とプラントの両方が、生産開始のために地域当局の承認を待っている状態だ。

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VWが計画しているザルツギッターのプラントの生産量は40GWhとなる予定だが、もしVWが生産の増強に成功し、合計6つの工場を建設できれば、合計で240GWhの生産量になるはずだ。

画像クレジット:The Volkswagen Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

フォルクスワーゲンがEV生産強化のために3社と新たな提携を締結

Volkswagen(フォルクスワーゲン)が、電気自動車のバッテリーに関わる3つの新しいパートナーシップを締結した。このドイツの自動車メーカーは、2040年までに乗用車、トラック、SUVの全車種をゼロエミッション(排ガスを一切出さない)車に移行させることを目指している。

現地時間12月8日に発表されたこの3つのパートナーシップの提携企業は、素材技術グループのUmicore(ユミコア)、バッテリースペシャリストの24M Technologies (24Mテクノロジーズ)、そしてドイツでリチウム採掘プロジェクトの開設を計画しているVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リソーシズ)だ。

フォルクスワーゲンとユミコアは合弁会社を起ち上げ、フォルクスワーゲンがドイツのザルツギッターに設立するバッテリーセル工場に、リチウムイオン電池の重要な構成要素である正極材を供給する。この合弁会社の初期生産能力は20ギガワット時だが、2030年までに160ギガワット時にまで拡大することを目指している。

さらにフォルクスワーゲンは、半固体の電極を持つバッテリーを開発している24Mテクノロジーズに出資すると発表した。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたこのバッテリー技術スタートアップ企業によれば、同社の半固体電池は、従来のリチウムイオン電池よりも製造工程を簡素化でき、コストも削減できるという。フォルクスワーゲンは出資額を明らかにしていない。

そしてバルカン・エナジー・リソーシズとのパートナーシップには、両社が「カーボンニュートラル」と表現するドイツ産リチウムの供給に関する拘束力のある契約が含まれている。

両社によると、このカーボンニュートラルなリチウムが得られるのは、バルカン社の塩水(塩湖かん水)からリチウムを採取する技術が、従来の塩湖かん水を蒸発させてリチウムを抽出する方法よりも環境に優しく、再生可能エネルギーを利用した工場で処理されるからだという。

バルカンは、2026年から5年間、フォルクスワーゲンに水酸化リチウムを供給する。

これら3つの提携は、フォルクスワーゲンが電気自動車に300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資する計画の一環だ。欧州だけでも、同社は2030年までに6つの巨大バッテリー工場の建設を予定しており、それらすべてを合計した生産能力は、240ギガワット時になる見込みだという。

バッテリーのサプライチェーンを確保するために迅速に動いている大手自動車メーカーは、フォルクスワーゲンだけではない。General Motors(ゼネラルモーターズ)は2021年12月初め、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と同じように合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極材を製造する新工場を北米に建設すると発表した。一方、Stellantis(ステランティス)は11月、バルカンと独自のリチウム供給契約を締結している。

これらの提携は、自動車メーカーの電動化計画が加速していることを示すだけでなく、世界的なバッテリーサプライチェーンを中国から離れたところで再構築することに貢献するという点でも注目される。

Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)の調べによると、現在はバッテリーの正極材と負極材の大部分が中国で製造されているという。また、現在計画されている200の大規模バッテリー工場のうち、約75%にあたる148の工場が中国に建設される予定であることもわかっている。

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ハイブリッド、EV、代替燃料の未来に対するランボルギーニのビジョン

自動車愛好家には、電気自動車を敬遠してきた歴史がある。電化やハイブリッド化を全面的に支持する人もいる一方で、依然としてガソリンにこだわりを持つ人もいる。Lamborghini(ランボルギーニ)のような、高尚で価格設定の高い領域では特にその傾向がある。

電動化とハイブリッドパワートレインの推進は、世界最大級のパワフルなガソリンエンジンを備えた印象的な特注車両を作ることで知られる自動車メーカーに、大きな課題を突きつけている。ランボルギーニの上層部からは、それに対する若干の抵抗感が感じ取れる。

ランボルギーニは2024年までにすべてのモデルをハイブリッドパワートレインに移行するとしている。すでにハイブリッドの限定モデルとしてSián FKP 37(シアンFKP 37)とCountach LPI 800-4(カウンタックLPI 800-4)を発表しているが、ハイブリッド化されたパワートレインを搭載した初の量産(つまり限定ではない)車両が来年までにリリースされるという。Ferrari(フェラーリ)、McLaren(マクラーレン)、Porsche(ポルシェ)などはハイブリッドパワートレイン搭載の量産車と限定車の両方を作り続けており、ランボルギーニはこの分野に参入する最後のスーパーカーメーカーの1社となる。

ランボルギーニは、同社の忠実な顧客の力を借りて、彼らの象徴的なスーパースポーツカーの未来を革新したいと考えている。

ランボルギーニの燃料の未来

「一方で、当社は極めてニッチな存在であり、CO2の方程式に占める割合はごくわずかです。しかし私たちは自分たちの役割を果たしたいと考えています」と、ランボルギーニの北米の新CEOであるAndrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏は、今後もリリースを予定しているガソリン駆動車として同社最後のモデルとなるHuracán(ウラカン)の1つ、Huracán STO(ウラカンSTO)のローンチイベントで語っていた。「ハイブリッド、電気、そして代替のパワートレインへのシフトは、私たちにパフォーマンスの再考を迫るものであり、電動化が長期的な方向性であるかは確信が持てません」。

「ハイブリッドや電動パワートレインを搭載した4番目のモデルをリリースするにしても、異なる種類の燃料を使用する内燃機関のソリューションを見つけるにしても、私たちは今後もさらに学びを進めていきます。エモーション(感情)と真のランボルギーニ体験という、共通の目標を実現する必要があるのです」とバルディ氏は語っている。

同氏は自社が採用する可能性のある燃料や技術の詳細については語らなかったが、ランボルギーニのCTOであるMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏からは、ランボルギーニの将来的な完全電動化を示唆する興味深い研究についての言及があった。

「ハイブリッドパワートレインは、私たちがイノベーションを起こせると確信している次のフロンティアです」とレッジャーニ氏は分けて語っている。「当社の存在意義は、独自のDNAを有していることにあります。私たちはエモーションをエンジニアリングしているのです。例えば、振動のような物理的な事象が感情の流れにどのようなインパクトを与えるかについて、ミラノ工科大学と共同で研究を行っています」。ICEエンジンの物理的効果がジャイロスコープとオーディオトラックによってシミュレートされる世界を見ることができる。

技術的には、サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニの工場は2015年以来カーボンニュートラルであるとバルディ氏はいう。しかし、従業員1800人のこの企業は、はるかに規模が大きく、炭素排出量の多いVW(フォルクスワーゲン)グループの一員である。自動車生産台数は少なく、イタリア政府が今後の内燃機関の規制からランボルギーニやフェラーリのような自動車メーカーを除外する動きを見せているにもかかわらず、ランボルギーニは代替燃料への移行を余儀なくされている。

バルディ氏によると、ランボルギーニは世界の自動車の1万1000台に1台を占めているが、トヨタやホンダのような巨大自動車メーカーと比べれば小さな数だ。「ハイブリッド化と電動化は、エモーションの未来を広げる機会をランボルギーニのオーナーに提供します。夢を手に入れるのです。大多数の顧客は、自分の成功を表現する車を求めています」とバルディ氏。それでもやはり、将来にわたって内燃エンジンを使い続けたいとランボルギーニの顧客がいくら望んだとしても、そうしたエンジンの時代は終わりに近づいている。

顧客との直接的なつながりの構築

ランボルギーニは一貫して、顧客のニーズに応えることをブランドの核に据えてきた。2025年のCO2排出量50%削減に向けた今後のモデルの方向性を見極めるために、忠実なオーナーたちからの協力を得ている。すでに完売したCountach LPI 800-4のペブルビーチでの最近のローンチは、ランボルギーニが顧客ベースを活用してハイブリッドパワートレイン搭載の高需要の新製品を生み出したことを物語る好例だ。

「関りを持つことなくただクルマを作るだけということはありません。顧客体験の全体を通して、顧客との絆を深めてきました」とバルディ氏は語る。「Countachで実施した特別プロジェクトは、会社と顧客の間の直接的な信頼を高めるものでした。1対1のミーティングを友人同士のように行い、Countachでの当社の取り組みを伝えることができました。エモーショナルな決断が生み出したこの車の構築は、優れたビジネスケースとなったのです」。

新型コロナウイルス感染症の発生とその結果としての旅行制限により、工場訪問は2020年の間にほぼ中止された。しかしランボルギーニは、2018年にUnicaというデジタルプラットフォームをローンチしており、オーナーが期待する特別な顧客コンタクトやサービスを提供することを可能にしている。アプリはスマートフォンにダウンロードでき、オーナーは専用のイベント、ローンチ、ソーシャルメディアへのアクセスを得る。サインアップするには、ランボルギーニのVINと所有権証明書の提出が必要だ。

このアプリは、結果的に会社と消費者間の直接販売の可能性を開いた。「直接販売は、私たちが探究する必要のある分野です。私たちは加速する時代の中にあり、顧客と直接的な関係を持ちたいと思っています。問題は、顧客との直接接触をどの程度拡大できるかです」とバルディ氏はいう。「車の価値が維持されるという感覚を確実にするためには、顧客との人間的な触れ合いが必要です。現在、車の待ち時間は平均で1年を超えています。待機時間はこれらの車を販売する時間であり、顧客との直接的なコンタクトがありますので、価値は維持されます」。

ランボルギーニの最新モデル、Huracán STOはストリートホモロゲーションレーシングカーだ。現在2022年まで売り切れの状態で、Unicaアプリと車両を介したコネクティビティが付属している。このシステムでは、ラップタイム、スロットルとブレーキのインプット、ハンドルアングルなどのドライビングセッション中のデータや、内蔵カメラが撮影したトラック上のラップの動画を記録し、アプリにアップロードすることが可能だ。ランボルギーニのオーナーにとっては一種のエリートソーシャルネットワークであり、より直接的につながる方法が会社にもたらされる。

「顧客はランボルギーニを体験するための適切なコンテキストを求めています」とバルディ氏。「スーパースポーツカー市場は拡大の一途を辿っています。このようなカーライフスタイルやモータースポーツにおける体験を提供し、人間的な触れ合いの幅を広げていくことができれば、顧客はブランドの範囲内に留まり続けるでしょう」。

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画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

アウディが最新電動SUV「Q4 e-tron」の米国導入を発表、約493万円から

Audi(アウディ)は、2025年までに30台以上の電気自動車およびプラグインハイブリッド車を市場に投入する計画の一環として、拡大するポートフォリオの中で4番目および5番目の電気自動車となる「Q4 e-tron(Q4イートロン)」および「Q4 Sportback e-tron(Q4スポーツバック・イートロン)」の米国導入を発表した。

2019年のジュネーブ国際モーターショーでコンセプトモデルとして初公開されたQ4 e-tronは、アウディの電動SUVではエントリーモデルにあたり、価格もそれを反映したものとなっている。米国では1095ドル(約12万円)の運送費を含め、4万4995ドル(約493万円)からと設定されている。注目すべきは、電気自動車のQ4が、ガソリンエンジンを搭載する同社のSUV「Q5」よりも、約1000ドル(約11万円)安いことだ(現時点で日本仕様・価格は未発表)。

米国で販売されるQ4 e-tronファミリーには、全部で3車種が用意されている。「Q4 50 e-tron quattro(Q4 50 イートロン・クワトロ)」と「Q4 Sportback 50 quattro(Q4スポーツバック 50 イートロン・クワトロ)」は、2基の非同期モーターを搭載する四輪駆動で、EPA(米国環境保護庁)による推定航続距離(一度の満充電で走行可能な距離)は、どちらも241マイル(約388キロメートル)となっている。

もう1台の「Q4 40 e-tron(Q4 40 イートロン)」は、非同期モーターを1基のみ搭載した後輪駆動車だ。そのEPA推定航続距離はまだ発表されていない。基本的にスペックは以下のようになっている。

画像クレジット:Audi/スクリーンショット

新型Q4は、2021年3月にTechCrunchでも紹介したように、その頑強そうな外観のパッケージにアウディの技術が詰め込まれたクルマになっている。特に、オプションとして用意されるAR対応フロントガラスは注目に値する。

大きめのコンパクトSUVに属するQ4は、オーバーハングが短く、ホイールベースは2764ミリメートル。そのため、外側からはコンパクトに見える。しかし内部には、全長1.83メートルの室内空間があり、大型SUVに匹敵する広さだ。Q4 40 e-tronとQ4 50 e-tronはオールシーズンタイヤを装着した19インチのホイールが標準装備となり、Q4 Sportback 50 quattroはより大径のオールシーズンタイヤ付き20インチホイールを標準で装備する。

重要な点は、Q4 e-tronがアウディの親会社であるVW(フォルクスワーゲン)のモジュラー・エレクトリック・ドライブ(MEB)と呼ばれる車両アーキテクチャを共有していること。この柔軟性の高いモジュラーシステムは、VWが2016年に初めて公開したもので、さまざまなEVモデルを効率的かつ費用対効果の高い方法で作るために開発された。

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画像クレジット:Audi

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォルクスワーゲンとArgo AIが初のID Buzz自動運転テスト車両を公開

小型商用車の開発と販売を手がける独立したVWブランド、Volkswagen Commercial Vehicles(フォルクスワーゲン・コマーシャル・ビークルズ)と、自動運転テクノロジー会社のArgo AI(アルゴAI)は米国時間9月5日、ID Buzz AD(自動運転)の初バージョンを公開した。

ミュンヘンで開かれるイベント、IAA MOBILITY 2021に先駆けて開催されたVWナイトイベントで、2社は共同開発した全電動自動運転のバンを今後4年間でテスト・商業展開する計画を明らかにした。計画している最初のテスト車両5台の1台であるプロトタイプの試験はすでに始まっていて、ミュンヘン近くのノイファーンにあるArgoの開発センターならびにミュンヘン空港近くにある同社の9ヘクタール(9万平方メートル)あるクローズドコースで続けられる。試験は、欧州の運転コンディション特有のさまざまな交通状況と、米国にあるArgoのテストトラックを想定して行われる。

「当社の5年にわたる開発と、大きく、複雑な米国の都市でのオペレーションから学んだことに基づいて作り上げており、MOIAとの自動運転商業ライドプールサービスの立ち上げ準備のためにミュンヘンの路上で間もなくテストを開始することを楽しみにしています」とArgo AIの創業者でCEOのBryan Salesky(ブライアン・セールスキー)氏は声明文で述べた。

モビリティソリューションで地方自治体や地域の公共交通事業者と協業しているVW Groupの子会社であるMOIAは、2025年に自動運転ライドプールシステムの一環としてハンブルグでID Buzzを商業展開する。ライドプールサービスは都心部の混雑を和らげるために自律システムのパワーを活用する。

自動運転専門の部門を別に設け、Argo AIの株式を獲得したVolkswagen Commercial Vehiclesはイベントで、自動運転システム経由のライドシェア(相乗り)が交通の流れの管理でいかに役立つかデモンストレーションしてみせた。

「LiDAR6台、レーダー11台、カメラ14台を車両のあちこちに備える環境認識システムは人間のドライバーが運転席からとらえることができる以上のものを把握できます」とVolkswagen Commercial Vehiclesの自動運転責任者、Christian Senger(クリスチャン・センガー)氏はイベントで述べた。

VWは2017年に、ファミリーキャンパーバンとして懐かしさを呼び起こすクラシックなマイクロバスに未来的な要素を加えたID Buzzをコンセプトカーとして発表した。Buzzのルーフの上に設置されているArgo独自のセンサーであるArgo LiDARなど、自動走行に必要なすべてのものを含んでいる最終プロダクトの外観は、アイコン的キャンパーとは少し異なる。Argo AIによると、同社のLiDARは1300フィート(400メートル)以上離れたところにある物体を検知できる。Argoは4年前にLiDAR企業のPrinceton Lightwaveを買収した。これによりArgoは、黒い車両など低反射率の物体をとらえて感知し、そして正確に認識することができるよう、最小の軽粒子である単一光子を感知できる特許取得済みのGeigerモードテクノロジーを備えた新しい高精度センサーを製造できるようになった。

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VWの声明文によると、Argo AIのシステム全体は、コンピューターが車両の周囲360度を見ることができるようにするセンサーとソフトウェアで構成され「歩行者や自転車、車両の動きを予測し、経験を積んだドライバーが運転するように車両が安全かつ自然に走行することができるよう、エンジン、ブレーキ、ハンドル操作システムに指令を送る」。

Argoの技術が人間輸送に今後使用される例は今回が初ではない。ArgoとFord(フォード)は2021年7月、今後5年間で少なくとも1000台の自動運転車両を配車サービスLyft(リフト)のネットワークを使ってマイアミやオースティンといった都市で展開する計画を発表した。また同月、カリフォルニア州公共事業委員会はArgoにドライバー付きAVパイロット許可証を発行し、Argoはカリフォルニア州の公道でテストできるようになった。VW GroupがArgo AIへの26億ドル(約2860万円)の投資を最終決定してからほぼ2年、Argo AIの直近のバリュエーションは75億ドル(約8240億円)となった。

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画像クレジット:Volkswagen Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、鉄ベースのバッテリーに関してこれまでで最も強気の発言をした。Tesla(テスラ)は、エネルギー貯蔵製品と一部のエントリーレベルのEVにおいて、旧来の安価なリン酸鉄リチウム(LFP)セルへの「長期的なシフト」を行っていると強調した。

テスラのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと思慮深く語り「これは実際に好ましいことです。世界には十分な量の鉄が存在していますから」と付け加えた。

マスク氏のコメントは、主に中国の自動車業界ですでに進行中の変化を反映するものだ。中国以外の地域でのバッテリー化学組成は大部分がニッケルベースで、具体的にはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)である。これらの比較的新しい化学組成は、エネルギー密度が高いことから自動車メーカーにとって魅力的なものとなっており、OEM(完成車メーカー)におけるバッテリーの航続距離の改良に貢献している。

マスク氏の強気の姿勢がEV業界全体に真の変化をもたらしつつあるとすれば、中国以外のバッテリーメーカーが追随できるかどうかが問われるところだ。

LFP方式への回帰を示唆しているのはマスク氏だけではない。Ford(フォード)のCEOであるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は2021年、一部の商用車にLFPバッテリーを採用すると発表した。一方、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のCEO、Herbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は、同社のバッテリーデーのプレゼンテーションで、VWのエントリーレベルEVの一部にLFPが使用されることを明らかにした。

エネルギー貯蔵の面では、マスク氏がコメントで言及した、Powerwall(パワーウォール)とMegapack(メガパック)でのLFPベースの化学組成の採用は、鉄ベースの処方を推進する他の定置型エネルギー貯蔵企業の潮流に沿うものとなっている。「定置型貯蔵業界は、より安価なLFPへの移行を志向しています」と、バッテリー調査会社Cairn Energy Research Advisorsを率いるSam Jaffe(サム・ジャッフェ)氏はTechCrunchに語った。

LFPバッテリーセルが魅力的な理由はいくつかある。まず、コバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存していない(主にコンゴ民主共和国から調達されているコバルトは、非人道的な採掘条件のためにさらなる精査の対象となっている)。また、ニッケルベースの化学組成に比べてエネルギー密度は低いものの、LFPバッテリーははるかに安価に製造できる。電気自動車への移行を促進したいと考えている向きにとって、これは朗報となる。EVの普及には、1台あたりのコストを下げることが重要な鍵となる可能性が高いからだ。

マスク氏は明らかに、テスラにおける鉄ベースの化学組成に大きな未来を見出しており、同氏のコメントは、LFPが再びスポットライトを浴びるのに効果的な役割を果たした。ただし、それがショーのスターであり続けている場所は1つ、中国である。

中国によるLFPの独占

「LFPは中国でしか生産されていないといっても過言ではありません」と、調査会社Benchmark Mineral Intelligenceで価格・データ評価の責任者を務めるCaspar Rawles(キャスパー・ローレス)氏は、最近のTechCrunchとのインタビューで説明している。

LFPバッテリー生産における中国の優位性の一部は、大学や研究機関のコンソーシアムによって管理されている一連の主要なLFP特許に関連している。このコンソーシアムは10年前、中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件に、ライセンス料を徴収しないことで合意した。

こうして、LFP市場は中国が独占する形となった。

中国のバッテリーメーカーは、LFPへの構造的シフトのポテンシャルから最大の恩恵を受ける可能性がある。具体的にはBYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代新能源科技)で、後者はすでに、中国で生産・販売されているテスラ車専用のLFPバッテリーを製造している。(一方、フォルクスワーゲンは中国のLFPメーカーGotion High-Tech[国軒高科]にかなりの出資をしている。)こうしたバッテリーメーカーの勢いはとどまる気配を見せていない。1月にCATLとShenzhen Dynanonic(深圳市徳方納米科技)は、中国の地方省の1つと、LFPカソード工場を2億8000万ドル(約307億円)の費用で3年をかけて建設する契約を結んだ。

業界アナリスト企業のRoskillによると、LFPの特許の存続期間の満了は2022年で、中国以外のバッテリーメーカーが生産の一部を鉄ベースの製品に移行し始める機は熟していることが予想されるという。しかし、LG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)など、韓国の大手企業との合弁事業が多い欧州や北米のバッテリー工場はいずれも、依然としてニッケルベースの化学組成にフォーカスしている。

「米国がLFPの強みを生かすには、北米の製造業が必要となるでしょう」とジャッフェ氏は説明する。「今日、米国でギガファクトリーを建設する人々は皆、高ニッケル化学製品の製造を計画しています。現地で製造されるLFPバッテリーに対するアンメットニーズが非常に高くなっています」。

ローレス氏は、特に特許の有効期限が失効した後、数年のうちに北米と欧州である程度のLFPキャパシティが確保されると予想している。ドイツではCATLも、他のバッテリーメーカーSVOLT(蜂巣能源科技)も動きを見せているが、どちらも中国企業であり、その他のアジア企業や欧米企業がLFP市場で競争できるかについては疑問が残る、と同氏は指摘した(Stellantis[ステランティス]は2025年以降のバッテリーサプライヤーの1つとしてSVOLTを選定している)。

エネルギー貯蔵に関して、ジャッフェ氏は「定置型貯蔵システムのほとんどが最終的にはLFP系になることは避けられない」と考えているという。

しかし、米国の国内製造業にとってすべてが失われるとは限らない。「地元でLFP製造を確立するための好材料として、サプライチェーンがシンプルであることが挙げられます。リチウム以外にも、鉄とリン酸という2つの安価な材料が(米国で)大量に生産されています」とジャッフェ氏は付け加えた。

結局のところ、これはバッテリーの化学的性質の問題ではない。より有望な点は、テスラを含む自動車メーカーの動向からすでに明らかになっている。鉄ベースのバッテリーは主にエントリーレベルの低価格車に使用され、ニッケルベースのセルはハイエンドの高性能車に使用される。多くの消費者は、300マイル(約483km)から350マイル(約563km)の走行距離を持つ車よりも、数千ドル(約数十万円)安い200マイル(約322km)から250マイル(約402km)の走行距離の車の方に満足するだろう。

自動車メーカーは、垂直製造や既存のバッテリー会社との合弁事業を通じて、バッテリー供給をコントロールする方向に動き始めている。このことは、北米と欧州におけるLFPキャパシティの拡大は可能性が高いだけでなく、必然的であることを意味している。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

Electrify Americaが電気自動車の市場投入増加に合わせ北米で充電ステーション倍増へ

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)が、ディーゼル車の排ガス不正問題に関する米国の規制当局との和解の一環として設立したElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ、EA)は、2025年末までに米国とカナダにおける電気自動車用急速充電ステーションの数を倍増すると発表した。

この取り組みが成功すれば、それまでに1800カ所の急速充電ステーション(充電器にして1万台)が設置・運用されることになる。その大部分(約1700ステーション)は米国に設置され、残りはカナダに設置される予定だ。これは、2021年末までに米国内に約800カ所の充電ステーションと約3500台の充電器を設置するというEAの計画に基づいている。7月13日現在、Electrify Americaは米国内に635カ所の充電ステーションを設置している。

この計画は、親会社であるVWグループが米国時間7月12日に発表した、北米、アジア、欧州における公共の充電インフラを増やすことの一環だ。この拡大で、150キロワットと350キロワットの充電器、つまり急速充電器の数を増やすことを目指す。VWとEAは、この新計画達成に向けどれだけ資金を費やすのかを明らかにしていない。しかし、EAの広報担当者は、20億ドル(約2200億円)を上回る金額を投じると認めた。これは以前同社が、2017年に始まる10年間のクリーンエネルギーインフラへの投資として約束した金額だ。

Electrify Americaの社長兼CEOであるGiovanni Palazzo(ジョバンニ・パラッツォ)氏の声明によると、北米での充電インフラを2倍にするという決定は、ほぼすべての自動車メーカーが電気自動車に関して見込む急速な成長が背景にある。

EV市場は、かつてはテスラや日産リーフ、GMのシボレー・ボルトEVなどが主役だった。現在、道路を走っている自動車の大半はガスやディーゼルエンジンを搭載しているが、フォード・マスタング・マッハE、ポルシェ・タイカンとクロスツーリスモシリーズ、ヒュンダイ・コナ・エレクトリック、ジャガー・Iペース、リヴィアンのR1TピックアップトラックとR1S SUV、VW ID. 4など、市場に登場した、あるいは登場しようとしている他のEVモデルが増えている。

Electrify Americaの当初の計画では、10年間で20億ドル以上(約2200億円)をクリーンエネルギーのインフラや教育に投資することになっていた。そのうち約8億ドル(約880億円)は、北米最大のEV市場であるカリフォルニア州に割り当てられた。今回の投資は、カリフォルニア州をはじめとする米国のEV地域での充電器増設に加え、ハワイ、ノースダコタ、サウスダコタ、ウェストバージニア、ワイオミング、バーモントなど新たな州への進出にも使われる。

また、中西部の高速道路にも充電器を設置し、国をまたいだ移動を促進する取り組みも行っている。子会社のElectrify Canadaは、サスカチュワン、マニトバ、ニューブランズウィック、ノバスコシア、プリンスエドワード島を含む9つの州にネットワークを拡大する。また、Electrify Canadaは、すでに進出しているブリティッシュ・コロンビア、アルバータ、オンタリオ、ケベックにもステーションを増やしていく。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Electrify America電気自動車充電ステーションアメリカVolkswagen

画像クレジット:Electrify America

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォルクスワーゲンがソフトウェアと自律走行を前面に打ち出した新ビジネス戦略を公表

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、今後数十年にわたって競争力を維持するために、ソフトウェア、サービスとしてのモビリティ、バッテリー技術を強化していく。同社をはじめとする自動車メーカーは、自動車の発明以来最大のパーソナルモビリティーの変化に備えようとしている。

中央ヨーロッパ時間7月13日に同社の戦略を説明したHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)CEOは、製造から収益ストリームに至るまで、あらゆる面での変革を強調した。フォルクスワーゲンのCFOであるArno Antlitz(アルノ・アントリーツ)氏は、従来の収益が内燃エンジン車の販売によるものであったとすれば、2020年代の残りは、EV販売だけでなく、ソフトウェア、自律走行、さらにはライドシェアリングからも収益が得られるようになると述べている。

そのために、フォルクスワーゲンは欧州に6カ所のバッテリーギガファクトリーを建設し、西ベルリンに8億ユーロ(約1043億円)のハードウェアプラットフォーム研究開発施設を建設するなど、活発に動いている。また、VWは自社の車載ソフトウエア部門であるCariadを強化しており、同部門はサブスクリプションやその他の販売を通じて、2030年までに1兆2000億ユーロ(約156兆円)もの収益を上げる可能性があると述べている。

フォルクスワーゲンは、自律走行についても大きな計画を持っている。同社はライドシェアリングやレンタカーの市場シェアをつかみ取りたいと考えており、統合されたAV(自律走行車)プラットフォームでそれを達成しようとしている。幹部たちは、10年後までには顧客がフォルクスワーゲンの電動AVタクシーやシャトルバスをリクエストできるようになるという鮮明なイメージを語った。プレゼンテーションで示された画像を信じるのならば、その際にはハンドルや運転席はないかもしれない。

「想像してみてください。あなたのおばあさんや8歳の息子さんが、お父さんやお母さんが運転しなくても、好きなときにフォルクスワーゲンのタクシーに乗ってお互いに会いに行けることを」と、ディース氏は提案した。「当社のモビリティアプリの1つを使えば、ID.BUZZがあなたと友達を迎えに来てくれる(未来を)」。

パーソナルビークルにはCariadが搭載され、2025年までに「レベル4の準備」が整うという。シャトルやタクシーのようなシェアードモビリティは、VWが所有・運営し、AV企業のArgo AI(アルゴAI)が開発した技術を使用する。フォルクスワーゲンは2020年6月、このスタートアップへに26億ドル(約2876億円)を投資した。

欧州最大の自動車メーカーであるVWは、MaaS(Mobility as a Service)への投資が功を奏すると予想している。Volkswagen Commercial VehiclesのCTOであるChristian Senger(クリスチャン・センガー)氏は、2030年までに欧州の5大市場だけで700億ドル(約7兆7445億円)以上の年間収益を見込んでいると述べた。ミュンヘンでのパイロットプロジェクトでテストされている自律型ライドシェアのID.BUZZは、2025年にハンブルクで商用サービスとして展開され、その後まもなく米国でも展開される予定だ。

画像クレジット:Volkswagen

これらの推定に沿って、同社は2025年にはBEV(バッテリー式電動自動車)の販売台数が全体の25%、2030年には50%を占めるようになると予測している。ICE(内燃エンジン)のマージンは、需要の減少、排出ガス規制の強化、税制面での優遇措置などにより、ますます厳しくなると考えられ、フォルクスワーゲンは2030年までに欧州でICEモデルの数を60%削減する計画だ。スケールメリットと工場コストの削減により、ICEとBEVのコストパリティは2〜3年以内に達成できるだろうとアントリーツ氏はいう。

これは楽観的な未来だが、フォルクスワーゲンは十分な自信を持っている。同社は、2025年の利益目標を従来の7〜8%から8〜9%に引き上げた。

「2030年までにモビリティの世界は、20世紀初頭に馬から自動車へと移行して以来の大きな変革を迎えることになるでしょう」とディース氏は述べている。「クルマの未来、個人のモビリティの未来は、明るいものになるでしょう」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenバッテリー電気自動車自律運転

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

環境問題が本格化した1990年代、ドイツの一部の自動車メーカーは、自社の自動車が温室効果ガス排出の点で確実に貢献し続けられるよう、秘密裏に会合を持っていた。欧州連合(EU)によると、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)、BMW(ビー・エム・ダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の親会社であるDaimler(ダイムラー)の5社が、違法に結託し、新型ディーゼル乗用車の排ガス浄化に関する競争を制限し、よりクリーンな排ガス技術の導入を実質的に遅らせていた。EUは現地時間7月8日、排出ガスカルテルに関与したVWとBMWに対し、10億ドル(約1110億円)の制裁金を科した

「Daimler、BMW、VW、Audi、Porscheの自動車メーカー5社は、EUの排出ガス規制が法的に要求する水準以上の有害排出ガスの削減技術を有していました」と、欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)上級副委員長は声明で述べた。「しかし、彼らは、この技術の可能性を最大限に活用せず、法が要求する水準を超えてクリーンであろうと競うことを避けました。つまり、本日の決定は、合法に行われた技術協力というものが、いかに間違っていたかということに関係しています。私たちは、企業が結託することを容認しません。これはEUの反トラスト規則で違法とされています。欧州が野心的なグリーンディール目標を達成するためには、自動車の汚染管理に関する競争とイノベーションが不可欠です。今回の決定は、この目標を危うくするあらゆる形態のカルテル行為に対して、私たちが躊躇なく行動を起こすことを示しています」と述べた。

すべての当事者が自社の関与を認め、和解に合意した。AudiとPorscheを所有するVWは約5億9500万ドル(約655億円)、BMWは4億4200万ドル(約484億円)を支払わなければならない。Daimlerは約8億6100万ドル(約947億円)を支払うが、同社は内部告発者であるため、罰金を免れた。つまり、Daimlerは無罪放免となる。

BMWの2020年の純利益は46億2000万ドル(約5080億円)、VWの2019年の純利益は約230億ドル(2兆5300億円)、2020年は約122億ドル(1兆3420億円)であり、今回の罰金はある意味、手首を平手打ちされる程度にすぎない。忘れてはならないのは、VWが排ガススキャンダルに巻き込まれたのは今回が初めてではないということだ。

米環境保護庁は2015年、VWがディーゼルエンジンにソフトウェアを意図的に追加して排ガス規制に従っているように見せかけていたが実際には法定量をはるかに超える排ガスを出していたとして、VWに大気浄化法違反の通告を行った。

今回の訴訟でEUが特に注目したのは、ディーゼル車の排気ガスに混ぜて有害汚染物質を中和する溶液「AdBlue(アドブルー)」のタンクの大きさについて、関係企業が合意したことだ。自動車をよりクリーンにする技術を持っているにもかかわらず、競争しないことで合意したのだ。

シュピーゲルがこのカルテルのニュースを最初に報じたのは2017年。各社はグリーンウォッシング(偽善的な環境への配慮)に着手した。同年、関係者全員とFord Motor(フォード・モーター)が手を組み「Ionity(イオニティ)」というEV用の高出力充電ネットワークを構築した。計画では、2020年までに欧州全域で約400カ所の充電ステーションを建設・運営することになっていたが、イオニティは欧州全域で300カ所しか設置できず、さらに2020年は充電料金を500%と大幅に値上げしていたようだ。

今週初めには、VWの大型トラック事業、Traton Group(トレイトン・グループ)、Daimler Truck(ダイムラートラック)、Volvo(ボルボ)グループが、約5億9300万ドル(約652億円)を投資し、欧州各地に電動大型長距離トラック・バス用の公共充電ステーションのネットワークを構築に向け協業することが決まった。

関連記事:ボルボ、ダイムラー、トレイトンが約660億円を投じて全欧的な電気トラックの充電ネットワーク構築

カテゴリー:モビリティ
タグ:制裁金EUVolkswagenAudiPorscheBMWMercedes-BenzDaimler

画像クレジット:European Union

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

リマックがブガッティをVWグループから買収、新EV会社「ブガッティ・リマック」を設立

クロアチアの電動スーパーカー・スタートアップであるRimac Automobili(リーマック・アウトモビリ)が、フランスに本拠を置く超高級車ブランドのBugatti(ブガッティ)を、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)から買収することになった。Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)の報道によると、リマックは新会社「Bugatti-Rimac(ブガッティ・リマック)」の支配的な55%の株式を所有し、フォルクスワーゲン・グループのPorsche(ポルシェ)が残りの45%を所有することになるという。

「リマックとブガッティは、互いに提供し合える有益な特色が完璧にマッチします」と、リマックの創業者でCEOであるMate Rimac(マテ・リマック)氏は、声明で述べている。「若く、機敏で、急速な自動車およびテクノロジー企業として、当社は電動技術における業界のパイオニアとしての地位を確立してきました。また、当社は先日発表したNevera(ネバーラ)によって、速いだけでなく、エキサイティングで高品質な優れたハイパーカーを開発・製造できることを証明しました。ブガッティは、1世紀以上にわたる卓越したエンジニアリングの経験を持ち、また歴史上最もすばらしい伝統を持つ自動車会社の1つでもあります」。

リマックは2021年6月初め、120kWhのバッテリーパックと4つのモーターを搭載し、1.4MW(約1914馬力)という驚異的な最高出力を実現したハイパーカー「Nevera」を発表した。同車は停止状態から時速100kmまで1.97秒で加速し、最高速度は時速412kmに達する。Neveraは、これまでブガッティの「Chiron(シロン)」が専有していた世界最速のスポーツカーの座につくことが期待される。

2009年にガレージで起業したリマックが、最も魅力的で有名な自動車ブランドの1つとして、スーパーカーを製造するまでになったことは、いかに電気自動車が高級車やスポーツカーの市場を席巻し始めているかを示している。電気自動車には環境への配慮だけでなく、自動車の未来を切り拓くスピードがある。

今回の発表にともない、リマックはバッテリーシステムやドライブトレインなどの電気自動車用コンポーネントの開発・生産・供給業務を、リマック・グループが100%所有する新会社「Rimac Technology(リマック・テクノロジー)」に分離し、別の組織として世界中の自動車メーカーと協業していくと述べている。

なお、ブガッティ・リマックの設立は、リマック・グループ内の株主構成には影響しない。同社の声明によると、マテ・リマック氏は引き続きリマック・グループの37%の株式を保有し、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)が同12%、その他の投資家が27%の株式を保有するとのこと。ポルシェは最近、リマックへの出資比率を15%から24%に引き上げたが、その保有株式の合計によって新しいEV会社の支配権を持つことはない、と両社はFTに語っている。

マテ・リマック氏が率いることになるブガッティ・リマックの本社は、クロアチアのザグレブに置かれるが、ブガッティの製造施設は、これまでと変わらずフランスのモルスハイムに残る。

関連記事:ポルシェがEVハイパーカー・部品メーカーRimac Automobiliの持分を24%に増やす

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タグ:Rimac AutomobiliBugattiVW電気自動車Bugatti-Rimac買収

画像クレジット:Rimac Automobili

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

北米フォルクスワーゲンの販売業者から330万人分の個人データ流出

Volkswagen(フォルクスワーゲン)によると、北米のある販売業者が顧客データのキャッシュをインターネット上に保護されていない状態のまま放置していたことで、330万人以上の顧客の情報が流出したという。

同社の北米事業本部であるVolkswagen Group of America(フォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカ)は書簡の中で、フォルクスワーゲンおよびその傘下のAudi(アウディ)の米国とカナダの正規ディーラーが提携している販売業者が、2014年から2019年の間に収集された顧客データを、2019年8月から2021年5月までの2年間にわたり、保護されていない状態のまま放置していたと述べている。

販売やマーケティングのために収集されたというこれらのデータには、氏名、郵便番号、メールアドレス、電話番号など、顧客や購入希望者の個人情報が含まれていた。

さらに約9万人のアウディの顧客および購入希望者においては、ローンやリースの審査に関する情報など、よりセンシティブなデータも流出したという。フォルクスワーゲンの書簡によると、流出した詳細な個人データのほとんどは運転免許証番号などだが「少数の」データには生年月日や社会保障番号も含まれていたとのこと。

フォルクスワーゲンは、データを漏えいさせた販売業者の名前を明らかにしていない。同社の広報担当者は「法執行機関や規制当局を含む適切な当局に通知し、外部のサイバーセキュリティ専門家と当該販売業者とともに状況の判断と対応にあたっています」と、危機管理会社を通して述べている。

運転免許証番号に関するセキュリティ事件は、他にもこの数カ月の間に何度か起きている。保険大手のMetromile(メトロマイル)とGeico(ガイコ)は2021年前半に、運転免許証番号を入手しようとする詐欺行為に見積もりフォームが悪用されたことを認めた。他のいくつかの自動車保険会社も、運転免許証番号の盗難に関わる同様の事件を報告している。これらの犯罪者は他人の名前で不正な失業手当を申請し、現金を得ようとしたのではないかと、Geicoは述べている。

だが、フォルクスワーゲンの書簡には、流出したデータが悪用されたという証拠があるかどうかについては書かれていなかった。

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タグ:Volkswagenアウディ個人情報データ漏洩アメリカカナダ

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

エイプリルフール用をうっかり誤発信「Volkswagenが米国法人を『Voltswagen』に社名変更」

【更新】Wall Street Journalによると、これは事実ではなくエイプリルフールのジョークが誤って流出したものだった。VW USAはコメント要求に応じていないが、VW Europeは報道に対してこれがジョークだったことを認めた。この発表を伝えるリリースは現在も米国のVW公式メディアサイトにあり、事実ではないことを示唆する記載はない。Reutersも同じことを報じており、匿名の情報源を3つ挙げている

自動車メーカーのVolkswagen(フォルクスワーゲン)は、電気自動車への取り組みが本気であることをみんなに知って欲しいと思っている。そのために米国ではダジャレのような再ブランドを正式に行う。同社は「Volkswagen of America”」から「Voltswagen of America(ボルツワーゲン・オブ・アメリカ) 」へと社名変更することを 3月30日にプレスリリースで発表した[日本時間3月31日8時現在削除済み]。

Voltswagen(旧名Volkswagen)は変更の理由について「Eモビリティーの新しい未来への投資」への意気込みを明確にするものであり、つまり電気駆動計画に極めて真剣であることを示していると語った。元々「Volkswagen」はドイツ語で「国民のクルマ」という意味であることから、Voltswagenは……「ボルトのクルマ」?

そのようなことだが、ちょっと違う、とVWはいう(これだっていいじゃないか!)

「当社は、電化の未来への転換を始めた時から、作るのはミリオンズ(数百数千万人)のためのEVでありミリオネアだけのためではないと述べてきました」とVWのCEOであるScott Keogh(スコット・キーオ)氏は社名変更の発表文で語った。「この変更は、国民のクルマという過去の私たちへの挨拶とともに、当社の未来は国民の電気自動車になることだという固い決意を表しています」。

この発表は、Volkswagenが全電動SUV、ID.4を米国で出荷し始めた直後のことだった。価格は国の奨励金・税制優遇前で3万3995ドル(約375万円)と、現在の米国電気自動車市場では手頃な価格に位置している。将来は価格に敏感な消費者のための新たな選択肢も計画されており、同社は二酸化炭素排出量削減のために、2025年までに全世界でEV100万台を達成し、2029年にはVWおよびサブブランド全体で70以上のモデルをラインアップすると宣言している。

関連記事:2021年フォルクスワーゲンID.4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

Voltswagenブランドでは、すべての電気自動車にブルーのトーンを明るくしたVWロゴを使用するが、ガソリン車は従来のダークブルーを維持する。「Voltswagen」の単語そのものはイニシャルロゴに加えてEVで使用され、今後米国では従来ロゴはガソリン車のみのブランドとなる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagen電気自動車エイプリルフール

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

2021年フォルクスワーゲンID. 4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

かつては電気自動車の分野において素人だったVolkswagen(フォルクスワーゲン)が今、その未来をテクノロジーに賭けている。3万3995ドル(約370万2700円、連邦政府または州による補助金の適用前の価格)から入手可能な5人乗りフル電動クロスオーバーである新しいフォルクスワーゲンID.4は、EVを主力製品にしようとするフォルクスワーゲンが初めてグローバル市場を目指して取り組んだ成果であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するというさらに大きな目標への一歩でもある。

結論から言えば、VW ID.4は、バランスよく融合されたテクノロジー・快適性・デザインをより手頃な価格で提供しており、Tesla Model Y(テスラ・モデルY)のような手頃な価格帯のモデルが少ないために空白地帯が残っている市場の一部を攻略しようと狙っている。VW ID.4のテクノロジーは堅実なもので、現実離れしすぎてクロスオーバーの平均的な購入者がしり込みするということはないが、1つ問題がある。充電拠点が不足しているために、他社の充電ステーションを見つけてそこに行かなければならないのだが、それがかなり面倒で、手間がかかるのだ。

VWの製品担当シニアマネージャーであるMark Gillies(マーク・ギリース)氏はTechCrunchのインタビューに対し「当社は、富裕層だけでなく、他の何百万人もの人々にも乗ってもらえる大衆向けの電気自動車メーカーになりたいと思っています」と述べた。

その言葉に偽りはないだろうが、ちょっとした問題がいくつかある。例えば、インフォテインメントシステムの反応が少し遅い。これは近日中に予定されているアップデートで改善されるだろう。また、前述のように充電拠点が不足している。もしフォルクスワーゲンがこれらの問題に取り組むことができれば、VW ID.4は活況を呈するクロスオーバー市場にしっかりと食い込む可能性がある。しかし、大衆がガソリン車に近いドライビング体験を提供する完全電動自動車を望み、VW ID.4が「大衆向けのクルマ」になる未来は実現するだろうか。

画像クレジット:Volkswagen

2021年のフォルクスワーゲンID.4クロスオーバーは、VWブランド初のグローバル市場向け全電動自動車だが、VWグループ全体としては以前にも消費者向け電気自動車を発売したことがある。VWグループは、2013年にすでにカリフォルニア州限定のフォルクスワーゲンe-Golf(e-ゴルフ)を発売しており(2020年販売中止)、同社のラグジュアリーパフォーマンスブランドPorsche(ポルシェ)では、2019年に全電動Taycan(タイカン)の販売を開始した。

発売当時のe-Golfは、同社にとってはどちらかというと二次的な位置付けで、カリフォルニア州限定で販売された。カリフォルニア州では電気自動車や充電インフラのインセンティブ、環境規制が比較的しっかりしている。対照的にID.4は「Beetle(ビートル)以来最も重要なフォルクスワーゲンの市場デビュー」の1つであり、全米で販売される予定だ。

際立つテクノロジー

画像クレジット:Volkswagen

ID.4のダッシュボードレイアウトや車内の雰囲気を見ると、フォルクスワーゲンは、ガソリン車のデザインをベースにしたのではなく、テスラを参考にしたようだ。

ID.4のインテリアデザインは、自動運転の未来を感じさせる。ステアリングコラムもインフォテインメントシステムも、完全に無くなる日を思い浮かべることができる。モジュール式カップホルダー、収納スペース、ワイヤレス充電パッドを備えたセンターコンソールも、いずれは改造して乗客スペースを増やし、ID.4のインテリアのフィーリングを今よりもっとオープンで広々としたものにできるかもしれない。

ID.4にはPro(プロ)、Pro S(プロS)、1st Edition(ファーストエディション)の3つのトリムがある。Proには10インチのタッチスクリーンが付属しており、Pro Sと1st Editionでは、12インチのインフォテインメント用タッチスクリーンがダッシュボードの中央にマウントされている。

画像クレジット:Abigail Basset

センタースクリーンの方に手を伸ばすと、システムに近づく手の動きを室内カメラが感知して、スクリーン内のアイコンが反応する。ID.4の車内にある数少ないハードタッチ式ボタンはどれも、どちらかというと医療機器グレードの触覚感知ボタンで、空調やオーディオから、オプションの固定式パノラマガラスルーフの遮光スクリーンの開閉や、ドライビングモード、ドライバーアシスト機能まで、あらゆるものをコントロールできる。コツをつかむまでに少し時間がかかるが、慣れてしまえば、スライダー式ボタンのように機能し、押す強さを少し変えたり、左から右に少しスライドしたりして、音量や温度を調整できる。

「ハロー、I.D.」

フォルクスワーゲンはこの新しいID.4で、ボタンの代わりにハンズフリーの音声コントロールを採用したが、我々が試乗したときは、このシステムはまだベータ版のように感じた。

ドライバーも同乗者も、タッチスクリーンまたは特定の音声コマンドを使って、ID.4の一般的な機能やインフォテインメントの多くを利用できる。「Hello I.D.(ハロー、I.D.)」というと、車内のどの方向から声が発せられたのか(同乗者なのかドライバーなのか)をシステムが感知して、フロントガラス下部の細長いライトが点灯し、その話者が次に発するコマンドに対応する準備ができたことが示される。

画像クレジット:Abigail Basset

今のところ、使えるコマンドはかなり限られており、キーフレーズ(「ハロー、I.D.」)を言うか、ハンドルにある音声コントロールボタンを押して起動する必要がある。ナビゲーションコマンドなどの基本的なことに加えて「寒い」とか「ジョークを聞かせて」といったこともいうことができ、ID.4のシステムは、声が発せられた側の温度を上げたり、シートベルトにまつわるジョークを言ったりして反応する。

試乗したのはロサンゼルスやロングビーチの界隈のみだったのだが、システムの反応は他の市販の音声システムと比べてとても遅く、Sirius XM(シリウスXM)のチャンネル変更などの操作で、接続の確保がスムーズにできなかった(特定のチャンネルの数字や名前が見つからない、という音声が繰り返し流れた)。システムが機能しなくなることもよくあり、コマンドを認識できない場合や接続できない場合に最終的に音声コントロールシステムをキャンセルするのにも、約10秒かそれ以上かかった。

反応の遅いナビ

また、ID.4のナビゲーションシステムも少し反応が遅く、精度も良くなかった。それで、元に戻ってGoogle(グーグル)マップやワイヤレスAndroid Auto(アンドロイドオート)システムをナビとして使った。ちなみに、GoogleマップとワイヤレスAndroid Autoは、Apple CarPlay(アップルカープレイ)とともにID.4の全ラインアップに搭載されている。しかし、ID.4に搭載されたナビゲーションシステムには、曲がり角に近づくとフロントガラスに沿った細長いライトの右側または左側が光って、進むべき方向を示してくれるという便利な機能がある。

インフォテインメントの画面は、ちょうど携帯電話かタブレットの画面のようだ。アプリのページやウィンドウをスワイプしていくと、目的のページにたどり着く。残念ながら、反応の遅いネットワーク接続(インフォテインメントシステムでは4G接続のバーが3~5本表示されているのにも関わらず)と、時間のかかる読み込みが相まって、ページをスワイプしているときに時々画面がフリーズし、次のページを読み込んでいるときにページの半分のみが表示されることがあった。

ここで補足説明をしておく。筆者は幸運にも、ロサンゼルスの記者のために用意された試乗用車両のうち複数台について、十分な時間をかけて試乗する機会が3回あったのだが、遅延やフリーズを経験した車両は1台だけであった。フォルクスワーゲンの広報担当者の話では、試乗車のソフトウェアは顧客が受け取る最終バージョンではなく、オーナーに届く前にアップデートされるので、筆者が経験した奇妙なもたつきや音声コマンドの問題は解決されるはずだという。

画像クレジット:Abigail Basset

ID.4には、Car-Net(カーネット)サービスを通じて2021年中にAlexa(アレクサ)の機能も搭載される予定だ。これには、離れた場所からクルマをモニタリングするのに役立つ、シンプルで使いやすいアプリが含まれる。オーナーはこのアプリにログインして、自分のID.4の位置、バッテリー残量、充電状態を確認できる。

VWは、メイン計器パネルや変速レバーの配置を含め、ID.4車内のデザインについて数多くの興味深い選択をしている。通常のクルマのようにこれらのアイテムをダッシュボードやセンターコンソールに取り付けるのではなく、直接ステアリングコラムに取り付けた。ハンドルを動かすと、計器パネルとトランスミッションつまみも一緒に動く。ハンドルに取り付けられた5.3インチの画面上で、スピードや移動方向から、航続距離、走行距離、基本的なナビゲーション情報まで、あらゆる情報が提供される。運転モードの切り替えには、標準的なボタンやシフトレバーではなく、ハンドルの右側にあるひし形のつまみを使う。

ID.4の始動・停止ボタンはコラムの右側のあまり目立たない所にあるが、そのことはあまり問題ではない。クルマを開錠して運転席に座ると、ID.4の電源が入り、運転の準備ができる。シートベルトを外して車から出ると、ID.4の電源が切れる。クルマに友人や家族がいるときにちょっとした用事で外に出る場合などは少し面倒だが、ID.4の乗客は、ドライバーが車内にいなくても、インフォテインメント画面に表示されるコントロール項目を使って、少しの間エアコンや暖房などを続けて使うことができる。

画像クレジット:Abigail Basset

EVへの乗り換え

フォルクスワーゲンは、自社の調査でクロスオーバーオーナーの約30パーセントが電動クロスオーバーを検討することがわかった、と述べている。ID.4が参入するのは、トヨタRAV4やホンダCR-Vなど、ガソリン車やハイブリッド車の超人気モデルがひしめく競争の激しいクロスオーバー市場だ。フォルクスワーゲンは、自社の調査に基づいて、消費者はまったく航続距離の心配をしないはずだと述べている。ほとんどのクロスオーバーオーナーの走行距離は1日あたり約60マイル(約97キロメートル)で、バッテリーシステムの航続距離はEPA推定で約250マイル(約402キロメートル)だからだ。ID.4は、125キロワットで、5パーセントから80パーセントまで38分で充電できる。

家でのフル充電には約7.5時間かかると推定されているが、外出時の場合、フォルクスワーゲンはID.4のオーナーに、最初の3年間はElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ)のDC急速充電器を無料・無制限で使える特典を提供している。良い話だが、少し補足説明が必要だ。フォルクスワーゲンは、ほとんどの人が通常の住宅電源で一晩充電すると予測していると述べており、オーナーが外出先で公共の充電ステーションを使う頻度はそれほど高くないと同社が予測していることは明らかである。なぜなら、少なくともID.4の発売時点では、利用可能な充電ステーションをスムーズに見つけることは難しいからだ。

画像クレジット:Volkswagen

エレクトリファイ・アメリカはVWの子会社だが、その営業体制はフォルクスワーゲンとは完全に切り離されている。エレクトリファイ・アメリカは、全国で550の充電ステーションと2400を超えるDC急速充電器を運営しており、ID.4の車載ナビでも「充電ステーション」を検索できるが、ナビには近くの充電ステーションがすべて表示され、どれがオンラインで利用可能かはわからない。オンラインで利用可能なエレクトリファイ・アメリカの特定の充電器を見つけるために、オーナーは携帯電話を取り出して、エレクトリファイ・アメリカのアプリを開く必要がある。それから、特定の充電器の位置情報をAndroid AutoやApple CarPlayに送ってナビゲートできる。残念ながら、現時点では、エレクトリファイ・アメリカのアプリはAndroid Autoに表示されない。

このプロセスはかなり面倒で、充電ステーションに向かう前に安全に終わらせるには、オーナーはクルマを路肩に止める必要がある。少なくとも現時点ではそうだ。フォルクスワーゲンは、2021年中に実現する無線アップデートによって、エレクトリファイ・アメリカのステーションと車載ナビがもっとシームレスに統合されると述べている。

朗報がある。Pro Sモデルと1st EditionモデルのEPA推定換算燃費は、市街地走行で104 MPGe(ガソリン換算でリッターあたり約44キロメートル)、幹線道路走行で89 MPGe(同約38キロメートル)、市街地走行と幹線道路走行の組み合わせで97 MPGe(同約41キロメートル)である。

ID.4の際立った特徴の1つは、運転方法だ。ID.4のトランスミッションモードには、Bモードつまりブレーキモードが含まれている。これはどの電気自動車にもある、ことの他便利な設定で、1つのペダルで運転ができる。ブレーキから足を放すと、ID.4は少しスピードダウンし、電気を再生してバッテリーに送り返す。これは、交通渋滞にはまったときに真価を発揮する優れた機能で、フォルクスワーゲンは意図的に、ワンペダル運転を他の電気自動車ほど挑戦的なチューニングにはしていない。初めて電気自動車のオーナーになる人が馴染みやすいようにするためだ。

路上では、ID.4は安定感があり、見かけほど大きくは感じない。俊敏だが、出足が速すぎるわけではなく(VWは0~97キロメートル毎時のタイムを公表していない)、手に汗握るということはない。確かに、タイヤから煙を出して走ったり、ロケットのように駆け抜けるクルマではない。

かなり丸みを帯びた形をしているので、路上でスピードを出すとわずかに風切り音がするが、乗り心地は快適で安定感がある。時速32キロメートルを下回るスピードでは(バックにしたときも)、あの特徴的な電気自動車の音を出して歩行者に注意を促す。ウィンドウが閉まっていると車内では気づきにくいが、ガレージで車の手入れをしている隣人のそばを通ると、きっと家に着いたときに「宇宙船のような音がするクルマを運転していたのはあなたですか」と尋ねるメッセージが届くかもしれない。

ADAS(先進運転支援システム)の形式と機能

画像クレジット:Abigail Basset

VWのTravel Assist(トラベル・アシスト)は、同社のレベル2自動運転システムのブランド名である。このシステムは時速0~153キロメートルの範囲で機能する。Travel Assistは、適応可能なクルーズコントロールと車線維持システムの両方を使って、前方の道路と他車に追従する。オートバイが突然車線に入ってくれば、計器画面上でオートバイの画像が車の直前に表示される。そのオートバイがランダムに急ブレーキをかける場合、ID.4はそれに対応して自動的にブレーキをかける。前方の交通が停止した場合、ID.4のTravel Assistは流れが再開するまで待機する。Travel Assistは、交通の動きに対する人間の反応に非常に近い反応を示す。異常に長く待って車間距離が開きすぎる(車列が間延びする原因になる)ことも、加速しすぎることもない。

このシステムは、ひどい交通状況での長時間運転を耐えやすいものにしてくれる。筆者は、ラッシュの時間にロサンゼルスの405号線で激しい渋滞にはまり、通勤に1時間かかったが、その間も、システムを稼働させ続けるために静電容量方式のハンドルに軽く手を置いておくだけでよかった。

スケートボード型パワートレイン

VW ID.4には、MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブマトリックス)と呼ばれる新しいスケートボード型プラットフォームが採用されており、201馬力、310ニュートンメートルのトルクを発生するAC永久磁石同期モーターがクルマの後部、後軸の上に搭載されている。これは旧型ビートルによく似ている。発売時点では後輪駆動モデルしかないが、2021年の終わりまでには302馬力の四輪駆動モデルが発売される予定だ。

フォルクスワーゲンは、ID.4のバッテリーをパナソニックから購入し、82キロワット時、12モジュール、288パウチセルのバッテリーパックを中国とドイツの自社工場で組み立てる。間もなく米国の工場で生産が始まる予定で、電気モーターもフォルクスワーゲンが自前で作る。

画像クレジット:Volkswagen

すべてが詰まったVW ID.4によって、電気自動車は、Jaguar I-Pace(ジャガー・Iペース)、Tesla Model Y、Polestar(ポールスター)、Audi e-tron(アウディ・eトロン)など、高価でラグジュアリーな全電動クロスオーバーを買う余裕のないクロスオーバー購入希望者層にも手の届きやすいものになる。

さらに、VW ID.4には7500ドル(約81万6000円)もの割戻金が支払われる可能性を考えると、ホンダCR-VやトヨタRAV4をはじめとする人気の高いガソリン車クロスオーバーにも十分対抗できる。VW ID.4が真に際立っているのは、先進のテクノロジーと手頃な価格が、航続距離を心配する必要のない魅力的なEVの中で融合している点である。VW ID.4は「大衆向けのクルマ」になるだろうか。その答えが出るまで、今しばらく見守ることにしよう。

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タグ:Volkswagenレビュー電気自動車

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

QuantumScapeが株式を売却し全固体電池の生産資金調達、市場価値を高める

逆さ合併により上場企業となったわずか数カ月後、QuantumScape(クオンタムスケープ)は、全固体電池のパイロット生産ライン拡張の資金を得るために株式を発行した。

QuantumScapeが規制当局向けの提出書類に記した内容によれば、1300万株の売却(引受人がオプションを行使すれば195万株が上乗せされる)による純利益は、1株あたりの公募価格を59.34ドルと想定した場合、8億9500万ドル(約97兆円)になると思われる。価格は米国時間3月24日に市場が閉じてから確定するとBloombergは伝えている。この資金はQS-0と呼ばれる大規模な予備パイロット生産ラインの建設と、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)との合弁事業の一環として作られる大型生産工場QS-1の建設の一部に使われる。

公募を開始してから数時間は投資家たちの反応は思わしくなく、価格は開始時点から13パーセント以上も下落した。この市場の反応は、公募の突然の発表に動揺してのことと考えられる。ちょうど6カ月前、QuantumScapeは特別買収目的会社(SPAC)のKensington Capital Acquisition Corp(ケンジントン・キャピタル・アクイジション)との合併に合意した。当時QuantumScapeは、合併によって7億ドル(約760億円)以上を調達できると話していたが、これには株式の私募(PIPE)5億ドル(約540億円)が含まれている。この資金調達は、Fidelity Management & Research CompanyとJanus Transactionという機関投資会社に支えられていた。

QuantumScapeは、この数年間、電気自動車の航続距離を飛躍的に伸ばし、高速充電を可能にする次世代技術である全固体電池の開発を密かに行っていた。同社は早くから、Kleiner PerkinsやKhosla Venturesといった高名なベンチャー投資企業の注目と資金を集めていた。Volkswagenがこの絵に乗ってきたのが2012年のことだった。同自動車メーカーはQuantumScapeに、2020年の2億ドル(220億円)を含む合計3億ドル(約325億円)の投資を行っている。この追加資金により、両社の共同開発は加速したと、Volkswagen Group Components(フォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツ)の会長Thomas Schmall(トーマス・シュモール)氏は当時話していた。

VolkswagenとQuantumScapeの提携の核心は、その合弁事業にある。それは2018年に発表された、全固定電池技術の開発と、開発後の商用規模での生産を目指すという内容だ。両社は、全固体電池の産業レベルでの生産ができるパイロットプラントの建設計画を公表した。そしてQuantumScapeは、Volkswagenから2億ドルの投資を受けたわずか4カ月後の2020年9月、Kensington Capital Acquisition Corpとの合併に合意したことを発表した。

QuantumScapeは2021年、カリフォルニアの予備パイロットプラントを20万平方フィート(約1万8600平方メートル)拡張し、生産能力を高め計画があることを発表している。同社の計画がうまくいけば、QS-0と呼ばれる予備パイロット生産ラインは、公表されている2倍以上の生産能力を持つことになる。QS-0の目的は、QuantumScapeが全固体電池の開発、テスト、システム調整、大量生産に向けた生産工程の確立のために使う予定の大量なサンプルを作ることにあると同社は話している。

予備パイロットラインは、Volkswagenとその他の自動車OEMメーカー、さらには他業種の潜在顧客向けに、十分な量の試作品を生産することにもなっている。QuantumScapeは、2021年後半にはQS-0の長期リースを確実にし、2023年には試作品の生産開始を予定している。

QuantumScapeはさらに、Volkswagenとの合弁事業で21GWhのバッテリー生産ラインを構築する計画も立てている。

「この公募による収益は、QS-0の拡張版の建設、QS-0の運営、QS-1 Expansion(エクスパンション)プラント建設の合弁事業経費、合弁事業で想定される負債の補てん、運転資本および一般の企業目的の自己資本割り当てへの、十分な資金供給を目的とするする」と同社は提出書類に記している。

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画像クレジット:QuantumScape

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

フォルクスワーゲンが240GWhのバッテリー生産能力を2030年までに欧州で実現

Volkswagen AG(フォルクスワーゲンAG)は世界最大の電気自動車メーカーとしての地位を確立するために、2030年までに欧州で40GWhのバッテリーセル生産工場を6カ所運用する計画を発表した。

これを達成するためにVolkswagenはスウェーデンの電池メーカーであるNorthvoltに10年間で140億ドル(約1兆5300億円)規模の発注を行ったが、これは計画中の6カ所の工場のうちの1つにすぎない。2025年にはドイツの第2工場でも生産を開始する予定だ。

関連記事:EV用バッテリーメーカーNorthvoltがフォルクスワーゲンから1.53兆円の大型契約を獲得

Volkswagenはまた、中国、欧州、米国の充電インフラへの本格的な投資も発表した。欧州ではパートナーであるIONITYとともに急速充電ネットワークを1万8000ステーションに、中国では合弁会社であるCAMS New Energy Technologyを通じて1万7000カ所の充電ポイントに、そして米国では急速充電ステーションを3500に増やすことを目指している。

Volkswagen初となるバッテリー関連のイベントは、Tesla(テスラ)のBattery Dayを記念して行われたものだが、その中には、コストを最大50%削減する斬新的なバッテリーの化学研究も含まれていた。このバッテリーセルは同社が2010年代半ばに予想されている固体電池セルへの移行への道を開くものでもある。Volkswagenは固体電池メーカーのQuantumScapeに多額の投資を行っている。

関連記事:未来のテスラ車のバッテリーは車体と一体構造で剛性、効率、安全性、コストを改善

Volkswagenの新しい 「Unified Premium Battery」 プラットフォームは2023年に発売され、同社のEV車両の80%で使用される予定だ。この新しいバッテリーを最初に搭載した最初のモデルであるAudi Artemisは、2024年に発売される予定となっている。

Volkswagenの大型トラックおよびバスのブランドであるScania ABも、EVシェアの拡大を計画している。水素燃料電池を選択した他の主要なトラックメーカーとは異なり「大型輸送部門の電動化は間違いなく可能である」と同社の代表者らは述べた。

バッテリーの寿命についてVWは、Hydrometallury(ハイドロメタリー)と呼ばれるプロセスにより、バッテリーを最大95%までリサイクルできると述べている。

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タグ:VW電気自動車資金調達バッテリー欧州充電ステーション

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

EV用バッテリーメーカーNorthvoltがフォルクスワーゲンから1.53兆円の大型契約を獲得

2019年にGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)とVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)がリードしたラウンドで10億ドル(約1090億円)を調達したスウェーデンのバッテリーメーカーNorthvolt(ノースボルト)は、今後10年にわたるバッテリー製造でVWと140億ドル(約1兆5300億円)の契約を結んだ。

今回の巨額契約により、VWが進める電気自動車(EV)への転換のためのバッテリーをどこから調達するのかという疑問がいくらか解けた。VWは2025年までにEV生産能力を150万台に引き上げる計画だ。

契約では、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなるばかりでなく、VWはNorthvoltの株式を追加取得する。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンにあるギガファクトリーは拡張され、またVWは欧州中に電池工場を建設する計画であるため、NorthvoltはSalzgitter(ザルツギッター)の合弁事業株をVWに売却することにも同意した、と両社は明らかにした。

NorthvoltとVWの合意により、Northvoltが10億ドルを調達して以来、同社はこの2年で270億ドル(約2兆9460億円)の契約を獲得したことになる。

「Volkswagenは主要投資家で顧客、パートナーです。VWが急速にEVを展開するのにともない、当社は引き続き地球上で最も環境に優しいバッテリーをVWに提供するという目標に懸命に取り組みます」とNorthvoltの共同創業者でCEOのPeter Carlsson(ピーター・カールソン)氏は声明で述べた。

Northvoltの他のパートナーや顧客にはABB、BMW Group、Scania、Siemen、Vattenfall、Vestasなどがいる。これら企業は欧州最大のメーカーでもある。

2019年にNorthvoltは、電池製造能力が16GWhに達すると見込まれ、2030年までにおおよそ130億ドル(約1兆4180億円)分のバッテリーを販売すると述べた。これは、VWとの契約が拡張されたプロダクト生産ラインのかなりの部分を占めることを意味する。

元Tesla幹部のカールソン氏が立ち上げたNorthvoltのバッテリー事業は欧州連合をSamsung(サムスン)、LG Chem(LG化学)、CATLといったアジア最大のバッテリーメーカーと直接競わせようという意図だった。

Northvoltが10億ドルの投資ラウンドを発表したとき、カールソン氏は2030年のEV販売目標を達成するためにはNorthvoltが150GWhの製造能力にする必要があると述べていた。

スウェーデンにある製造プラントは、大手財務パートナーであるVWとGoldman Sachsに加えて、部分的にはスウェーデンの年金ファンド会社AMF、Folksam、IKEA関連のIMAS Foundationによる支援のおかげで、製造能力は少なくとも32GWhを達成すると予想されている。

Northvoltはここ数カ月忙しかった。2021年3月初めに同社はシリコンバレー拠点のスタートアップCubergの買収を発表している。

この買収でNorthvoltは米国での足がかりを得て高度技術センターを設置した。

また、業界の救世主とされている最新の電池化学、リチウムメタル電池へのきっかけも買収で得ている。

Cubergは、液体電解質にリチウムメタルアノードを組み合わせている、同社がいうところの次世代バッテリーを商業展開するために2015年にスタンフォード大学からスピンアウトした。同社の顧客にはBoeing、BETA Technologies、Ampaire、VoltAeroなどがあり、Boeing HorizonX Ventures、Activate.org、カリフォルニア州エネルギー委員会、米エネルギー省、スタンフォード大学TomKat Centerから支援を受けている。

Cubergのバッテリーは、電動航空機使用向けにデザインされた同程度のリチウムイオン電池に比べて航続距離と容量を70%増やす。声明によると、CubergとNorthvoltは自動車メーカー顧客のあらゆる要件を満たしつつ、2025年に1000Wh/L超のバッテリーを産業化するという野心を持って、このテクノロジーをNorthvoltの自動車・産業プラダクトのポートフォリオに加えられることを願っている。

「Cubergのチームはワールドクラスのテクノロジーを開発する並外れた能力、実証済みの結果、無駄のない効率的な組織での傑出した顧客ベースを示してきました」とカールソン氏は述べた。「こうした強みをNorthvoltの能力、そしてテクノロジーと組み合わせることで、次世代電池のためにコストをさらに下げつつパフォーマンスと安全性の両方を大幅に改善できます。完全EVへのシフトを加速させ、主要自動車メーカーのニーズに応える上でこれは重要です」。

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タグ:NorthvoltVW電気自動車資金調達バッテリー

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

アウディが同社初の電動スポーツセダン「e-tron GT」を発表、欧州では約1270万円から

Audi(アウディ)はドイツ時間2月9日、新型電気自動車「e-tron GT quattro(イートロンGTクワトロ)」と、その高性能バージョンである「RS e-tron GT quattro」を発表した。このドイツの自動車メーカーにとって、両車はその拡大を続けている電気自動車ラインアップにおけるフラッグシップであり、初のSUVやクロスオーバーではないモデルだ。

アウディ e-tron GTとRSは、2018年に発表されたSUV「e-tron」と翌年の「e-tron Sportback(イートロン・スポーツバック)」に続く、(米国市場では)3台目と4台目の電気自動車だ。さらに5番目のモデルとして、もう1つのSUV「Q4 e-tron」の導入が予定されている。これらのe-tronモデルはすべて、2025年までに30台以上の電気自動車とプラグインハイブリッド車を発売するというアウディの計画の一環である。

「このクルマは古典的なGTの、新しい、非常に進歩的な解釈です」と、アウディデザインの責任者であるMarc Lichte(マルク・リヒテ)氏は、9日のプレゼンテーションで語った。「それは、スーパースポーツカーのようなプロポーションと、実際に4人が乗れる使い勝手の良さを併せ持つということです。そして、それはまったく新しいものです」。

画像クレジット:Audi

2021年春に量産が始まり、今夏には米国市場に投入されるe-tron GTは、スポーティなパッケージにパフォーマンスとラグジュアリーが詰め込まれている。ベース車のe-tron GTは、前後に1基ずつ搭載された2つのモーターが合計で350kW(476ps)、オーバーブースト時は390kW(530ps)に相当する出力を発生し、93.4kWhのバッテリーで487km(欧州のWLTP基準)の距離を走行できる。

一方、RS e-tron GTはエントリーレベルのGTと同じフロントモーターを装備するが、後輪側にはより強力なモーターが搭載され、それらの組み合わせによって合計最高出力440kW(598ps)、オーバーブースト時は475kW(646ps)を発揮。その結果、RS e-tron GTはゼロから100km/hまで3.3秒で加速し、最高速度は250km/hに達すると同社は述べている。WLTP基準の航続距離は472kmとなる。

この両車は、Porsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800Vの高電圧システムを採用しており、バッテリー残量5%から80%まで22分30秒で充電できるという。これは業界で最も速い充電速度の1つだ。

e-tron GTは、ポルシェと800Vの充電システムを共有しているだけではない。同じVWグループに属するアウディとポルシェは、e-tron GTとタイカンを共同開発した。この2モデルは、シャシーや「J1」と呼ばれるEV専用プラットフォームも共通だ。

画像クレジット:Audi

e-tron GTの車内には、12.3インチの「Audiバーチャルコックピット」と呼ばれるデジタルインストルメントクラスター(メーターパネル)と、10.1インチのタッチスクリーンが標準装備されており、音楽やナビゲーションのほか、充電ステーションの検索といった電気自動車に特化した機能を、これを使って操作できる。オーナーは追加料金を払ってヘッドアップディスプレイを装備することも可能だ。

レザーフリーのインテリアは多くのリサイクル素材が使われており、「Dinamica」と呼ばれる人工スウェードが標準だが、オプションでナッパレザーも選択できる。

すべてのパフォーマンスとラグジュアリーは価格に反映される。2月中に予約受付が始まる欧州での価格は、e-tron GTが9万9800ユーロ(約1270万円)から、RS e-tron GTは13万8200ユーロ(約1750万円)からとなっている。米国ではe-tron GTのベースグレードが9万9900ドル(約1050万円)で、その上級トリム仕様が10万7100ドル(約1120万円)、RS e-tron GTは13万9900ドル(約1460万円)から。オプションを追加していけばこの価格よりさらに高くなるわけだが、ハイビームの照射を自動で配光するマトリクスLEDヘッドライトは、米国仕様では選ぶことができない。

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画像クレジット:Audi eventVW(スクリーンショット)

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォルクスワーゲンがEV充電ロボットのプロトタイプを開発

Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)はモバイル型の電気自動車(EV)チャージャーを開発した。人間が介することなく、駐車場を自動走行してEVを充電し、基地に戻ることができる。

VW Group Componentsが製造したプロトタイプは、VWが電気自動車を生産・販売するのに伴って増大することが見込まれる需要に対応するのに今後数年間で充電インフラをどのように拡大するかを示すことを目的としている。VWグループは今後10年で数十のEVモデル立ち上げを約束している。同グループ傘下のフォルクスワーゲンブランドは2025年までにEV150万台を生産・販売する計画だ。

「将来のために効率的な充電インフラを整備することは業界全体の主な課題です」とVW Group ComponentsのCEO、Thomas Schmall(トーマス・シュマル)氏は声明文で述べた。「当社は費用のかかるスタンドアロンの方法を回避するのに役立つソリューションを開発しています。モバイル型の充電ロボットとフレキシブルな急速充電ステーションが現在取り組んでいるソリューション例です」

VWグループは一連の異なるDC充電プロダクトを開発している。ここには最大22キロワットで充電するDCウォールボックスも含まれる。VWは12月初め、ドイツにある生産工場でDCウォールボックスの試験を開始した。VWグループはまた、フレキシブルな(しかし設置型に近い)急速充電ステーションを2021年初めにマーケットに投入する計画だ。

モバイル型充電ロボットの発売時期はまだ決まっていない。プロトタイプが出来上がった段階であり、「全体的にさらに開発する」と同社は話した。モバイル型のチャージャーに関しては1つ注意点がある。モバイル型チャージャーがマーケットに浸透するには、車両がインフラに「話す」ことができるようになるカー・トゥー・エックスコミュニケーションが前提条件となる、とVWは述べた。

充電ロボットのプロトタイプは車両のオーナーあるいはカー・トゥー・エックスコミュニケーションが立ち上げるアプリでスタートできる。コミュニケーションが始まると、モバイル型チャージャーはオンになり(ディスプレイに2つのデジタルアイが現れる)、車両に向かって自動走行する。そして充電ソケットのフラップを開けてプラグを接続させたり抜いたりする。このチャージャーはまた、動き回って車両をエネルギーストレージユニットに接続させることもできる。充電が完了すると、ロボットはモバイルエネルギーストレージユニットを回収し、中央充電ステーションに戻す。

DC充電プロダクトは顧客のニーズとEVの技術的な前提条件にフォーカスするだけでなく、駐車場運営者などのパートナーとの経済的な可能性も開く、とシュマル氏は話した。

モバイル型充電ロボットが作動している様子は以下のビデオで閲覧できる。

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画像クレジット: VW Group

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(翻訳:Mizoguchi

待望の米国デビューを果たしたVW製全電動クロスオーバーID.4を写真で堪能

VW(フォルクスワーゲン)は米国時間9月23日、2025年までに年間100万台のEVを販売するという計画の一部である、全電気クロスオーバー「ID.4」を米国で発表した。

除幕式はバーチャルなものだったが、数日前にTechCrunchが車両を間近に見る機会を得て、新型コロナウイルスの感染蔓延の中、本当にシュールで孤独なハンズオンを体験することができた。

画像クレジット: Volkswagen

ID.4は、発売時に82kWh(キロワット時)のバッテリーパックとリアアクスル(後輪車軸)に1つの201馬力のモーターを搭載している。なお、連邦税の優遇措置は3万9995ドル(約421万円)からだ。ID.4の初期バージョンの推定EPA航続距離は250マイル(402km)だ。

VMの新しいIDシリーズが米国発売されるのはID.4が初となる。ID.4はIDバッジをつけた2台目の電気自動車で、欧州でのみ販売された電動ハッチバック 「ID.3」 が初。すべてのID車両は「MEBプラットフォーム」をベースにしており、VWによると電気自動車をより効率的かつ費用対効果の高いものにするための柔軟なモジュラーシステム、実際には共通部品のマトリックスを備えている。なおVWはすでに、ドイツザクセン州にあるツヴィッカウ工場でID.4の量産を開始している。

この記事では、車両の内部と外部を詳しく見ていこう。ここで掲載している写真の中で注意すべき点がいくつかある。これはID.4の最上級モデルで、1st Editionと呼ばれている車体だ。この限定版の価格4万3995ドル(約465万円)からで、より大きな12インチのタッチスクリーンやトリムカラーなど、いくつかの特別仕様品が取り付けられている。写真では、ドアハンドル下の照明、中間シートのストレージパススルー、ダッシュに沿って走行しバッテリー充電などのさまさまな情報をドライバーに伝える照明機能に注目してほしい。

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画像クレジット:Kirsten Korosec

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(翻訳:TechCrunch Japan)