パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開と米国進出狙う

パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開とアメリカ進出を目指すフランス・パリ近郊でSAKE醸造所を運営するWAKAZE(ワカゼ)は6月9日、総額3億3000万円の資金調達を発表した。引受先はジャフコ グループ、ニッセイ・キャピタル、マクアケ、MAKOTOキャピタル。調達した資金により、WAKAZEのビジョンである「日本酒を世界酒に」のさらなる実現に向け、フランスで培ったブランド力を活かし、ヨーロッパ全土およびアメリカにおいても現地醸造のブランド展開を目指す。

調達した資金の用途

  • ヨーロッパ全土におけるブランド認知獲得:全世界ワイン市場規模36兆円のうち半分を占めるヨーロッパにおいて、SAKEでワイン市場の開拓を目指し、ブランド認知獲得を狙う。ポップアップストアなどでも一次認知を獲得するとともに、イギリスやドイツをはじめヨーロッパ諸国からの購入・配送をスムーズに行えるようマーケティングに力を入れる
  • アメリカにおける現地醸造およびブランド浸透:フランスで培った開発力を基に、アメリカ現地での生産を通じてWAKAZEブランドの展開を目指す
  • フランス現地の需要に応える設備増強および醸造効率向上:フランス現地でのSAKEの需要に応えるべくパリ醸造所「KURA GRAND PARIS」の醸造設備増強、テクノロジーを使った醸造効率向上に注力
  • 「商品開発力」強化を見据えた人材採用:WAKAZE顧客の高いリピート率を担う「商品開発力」を、よりグローバルで促進できるよう、造り手人材を積極的に採用および育成する
  • 新規顧客獲得の日本でのマーケティング強化:WAKAZEは、日本国内においても、SAKEが持つ多様性に溢れ奥深い「SAKEのワクワクする世界」を知っている人は少ないと感じているという。「SAKEの世界」の入り口を多くの人に届けるために、マーケティング人材を積極採用し、顧客に直接価値を届けるD2Cを強化する

2016年1月設立のWAKAZEは、「日本酒を世界酒に」をビジョンに掲げ、日本とフランスを拠点に日本酒D2Cブランドを展開するスタートアップ。この言葉には「SAKEが世界中で飲まれ、造られる世界をつくる」という想いがこめられているという。ワンルームのオフィスから出発したWAKAZEは、創業当時からワイン市場の開拓を狙い「食の都 パリでSAKEを造る」という大きな夢を掲げてきたそうだ。

2018年には、東京都世田谷区に自社醸造所「三軒茶屋醸造所」を創立し、日本酒」の概念を飛び越えた新感覚の「ボタニカルSAKE」や「どぶろく」でSAKEの新たな価値を提供。2019年11月には、フランス・パリ近郊に自社醸造所「KURA GRAND PARIS」(クラ・グラン・パリ)を創立した。フランス産原材料にこだわった「フランスならではの酒造り」で、ビジョン「日本酒を世界酒に」を体現したという。

また、2020年2月には現地での流通を始めたものの、直後にコロナ禍に見舞われ対飲食店への流通は激減。WAKAZEはデジタル戦略へ大きく舵をきった。

ブランド立ち上げから1年、オンラインにおける月商は2020年内で60倍に成長。さらにはフランス500店舗と7カ国に展開するフランス最大ワインショップ「NICOLAS」と協業し、すでに250店舗にWAKAZEのSAKEが並んでいるという。オンラインからもオフラインからも、フランスの街中でSAKEが親しまれるシーンを創出するとしている。

パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開とアメリカ進出を目指す

WAKAZE JAPANのメンバー(三軒茶屋醸造所)

パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開とアメリカ進出を目指す

WAKAZE FRANCEのメンバー(パリ醸造所)

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「日本酒を世界酒に」SAKEスタートアップのWAKAZEが1.5億円を調達、パリに醸造所設立へ

カテゴリー:フードテック
タグ:酒 / アルコール飲料(用語)日本酒WAKAZE資金調達(用語)日本(国・地域)

荷物預かりサービスのecboがレストランキット宅配サービス「ecbo kitchen」で飲食業支援へ

ecboは5月12日、飲食店と全国の食卓をつなぐ「レストランキット」の宅配サービス「ecbo kitchen」(エクボキッチン)を開始することを明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大と全国的な外出自粛要請を受け、客足と売上が大幅に落ち込んでいる飲食業の支援と、名店の味を全国どこでも楽しめるようにするという狙いがある。

利用者は専用サイトから加盟店舗が用意したレストランキットを注文するだけ。チーズケーキや焼肉セット、ステーキ食べ比べセット、ポークカレー、サバカレー、生ソーセージなどがラインアップされている。メニューはいまのところ9品目だが、今後順次拡充していくとのこと。

ecbo kitchenの加盟店では、スープや食材を真空パックなどにしてキット化することで全国宅配を可能にする。これまで通販向け商品を作ったことのない飲食店向けには、ecboが持つ宅配商品開発のノウハウを提供するという。ecboで代表取締役社長を務める工藤慎一氏は、ecbo創業前はUber Japanで働いた経験があり、Uber Eatsなどで培ったデリバリーの知見を持つ。

飲食店では来店客減を補うために持ち帰りサービスなどを進めているが、配達可能エリアを考えると商圏がどうしても限られてしまうが、宅配可能なレストランキット化することで、全国どこにでも配達可能になる。事前注文制のためフードロスも回避できる。

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  3. ecbo-kitchen04a

加盟店では独自に通販を展開している店舗もあるが、ecboでは各店のレストランキットを一覧できるECサイトを構築し、利用者から料金を徴収し、店舗に手数料を差し引いた報酬の支払いを担う。ECサイト持たない飲食店にとっては、短期間、低コスト、低リスクで注文から決済までをecboに任せられるので、手軽にお取り寄せグルメ通販を始めることができる。

ecbo kitchenのローンチ時に加盟しているのは、東京・渋谷と恵比寿にある招待制のカレー専門店「6curry」、愛媛・西条を中心に他店舗展開しているピザ専門店の「マルブン・ウチマル・キッチン」、愛媛・西予で飼育から加工、レストラン事業を展開する「ゆうぼくの里」と、兵庫・加古川にある焼き肉店の「焼肉の家 いちえん」、山形を拠点とする日本酒専門店の「WAKAZE」、東京・銀座にあるデザート専門店の「LOUANGE TOKYO」の6店舗。

同社では現在、専用フォームにて飲食店パートナーを募集している。

ecboは現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため主力事業の荷物預かりサービス「ecbo cloak」(エクボ・クローク)と、ecbo cloak加盟店で宅配荷物を受け取れるサービス「ecbo pickup」(エクボ・ピックアッ プ)のサービスを停止中。工藤氏は「国内で新型コロナウイルスが収束してもインバウンド需要が回復するのは数カ月先なので、停止期間中にecbo cloakのサービスやシステムの改良に取り組んでいます」とのこと。

 

「日本酒を世界酒に」SAKEスタートアップのWAKAZEが1.5億円を調達、パリに醸造所設立へ

「世界の食卓において醸造酒と言えば、今まではビールかワインのどちらかが一般的だった。そこに第3の選択肢として『日本酒』というものを浸透させていきたい」

そう話すのは2016年1月に設立された“日本酒スタートアップ”のWAKAZEで代表取締役CEOを務める稲川琢磨氏だ。

同社では山形を拠点に「委託醸造」形式で、酒蔵とタッグを組みながら自社ブランド商品の開発・販売をスタート。昨年7月には東京の三軒茶屋で自社のどぶろく醸造所と併設飲食店もオープンし、事業の幅を広げてきた。

「日本酒を世界酒に」というビジョンを掲げるように、当初から海外へ輸出することを前提として「ビールやワインのように、洋食と合わせて楽しめる」独自の酒を開発。今夏にはパリで酒蔵を立ち上げ、現地に本格進出する計画だ。

そのWAKAZEは6月17日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額1億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

この資金を活用してパリでの製造拠点の開設に向けた準備を加速するほか、国内事業においても自社製品のサブスクリプションサービスなど新たな取り組みをスタートする方針。人材採用の強化も進めるという。

なお今回WAKAZEに出資した投資家陣は以下の通り。

  • Spiral Ventures Japan Fund1号投資事業有限責任組合
  • ニッセイ・キャピタル9号投資事業有限責任組合
  • 中島董商店
  • 御立尚資氏(ボストン・コンサルティング・グループ 元日本代表)
  • 長尾卓氏(プロコミットパートナーズ法律事務所 代表弁護士)
  • 永見世央氏(ラクスル 取締役CFO)
  • 非公開の個人投資家1名

最初から海外展開を見据え「洋食に合った酒」を開発

WAKAZEでは現在大きく2つのブランドを展開している。1つがワイン樽を活用して熟成させた日本酒「ORBIA(オルビア)」、そしてもう1つが植物やスパイスを入れて風味づけをした新感覚の酒「FONIA(フォニア)」だ。

「日本酒と聞いて、透き通った飲みやすいお酒をイメージされる方も多いかもしれないが、WAKAZEの場合はそれよりも洋食との相性にこだわっている。そのためにオーク樽で寝かせたり、米の発酵中に柚子や檸檬、山椒など和のボタニカル原料を入れて薫りを調和させたり。脂身の多い食事にも合う酸味や甘味が効いた味わい、ワイングラスに注いで楽しめるユニークな香りなどが特徴だ」(稲川氏)

洋食に合わせることを意識しているということは、WAKAZEの各商品ページで相性の良い料理が紹介されていることからもわかる。たとえばフレッシュな酸味と赤ワイン樽由来のフルーティな香りがウリの「ORBIA SOL」は、ポークソテーなど油脂分や味の濃い料理とよく合うそう。シトラス・ハーバル系の爽快な香りが特徴の「FONIA SORRA」は白身魚のカルパッチョなど前菜とのペアリングも楽しめる。

「美味しい日本酒はたくさんあるけれど、海外にも広めようと思った時に、どうしても日本食などシーンが限定されてしまう。現状だと国内向けに作られた商品がほとんどで、それをそのまま海外に出しているケースが多い。自分たちは最初から海外用に洋食に合った商品を作り、同じものを日本でも楽しめますよという発想で取り組んでいる」(稲川氏)

前例もなく上手くいかないことも多いと言うが、常に新たな商品開発を続けていて2019年には日本酒とお茶を混ぜた「FONIA tea」を発売。サクラなどの花をボタニカルとして取り入れた酒を作ったりもしている。

次々と世にない酒を生み出す上で鍵を握っているのが、昨年三軒茶屋に開設した自社のどぶろく醸造所と併設飲食店だ。稲川氏いわく、この場所を使って「スタートアップで言うところの『リーンな体制』や『アジャイル開発のような思想』」で酒を作る。

4.5坪の限られたスペースの中に醸造用のタンクを4つ設置。普通の酒蔵なら数千リットルのタンクで酒を作るが、三軒茶屋の醸造所は200リットルと作れる量はすごく少ない。一方でこの4つのタンクを用いて年間に48回、1年を通して醸造できるのが特徴。これを活かし、まずは少量の新種を高速で作り続ける。

「量が少ないので予約販売でも売り切れちゃうレベルしか作れない。それを逆手に取って、新しい酒をどんどん作りフィードバックを得る。反応が良かったものは山形の委託先の酒蔵で本格的に生産する仕組みだ。このサイクルを回す上で、併設で飲食店を始めたのも大きい。ここでお客さんに試してもらい、直接感想が得られるようになった」(稲川氏)

まずは高速でベータ版を作り、実際にユーザーに触ってもらいながら改善して、筋が良くなったものを正式ローンチするような感覚に近いだろう。稲川氏によると毎回違うレシピの商品を作っていて、去年の夏からカウントすると現在作っているものは25作目くらいになるという。

事業も徐々に軌道に乗り始めているようで、実際に商品の販売をスタートした2017年の販売本数が1万本。2018年には3万本に増え、3年目となる今年は委託醸造と自社醸造を含めて7万本の販売を見込んでいる。

日本酒専門店や百貨店など国内にある約150軒の販売店が主な販売チャネルだが、Amazonや楽天、STORES.jpの自社ページなどオンライン経由の売上も全体の2割ほどを占めるそうだ。

三軒茶屋の店舗では桜を取り入れた製品など“プロトタイプ”段階のものを、一足早く楽しむことができる

寿司屋で飲んだ日本酒をきっかけに、日本酒プロジェクト始動

もともとWAKAZEは2014年にコアメンバーが集まり「週末起業」のような形からスタートしたのが始まりだ。

代表の稲川氏はボストンコンサルティング・グループの出身。前職時代に訪れた寿司屋で飲んだ日本酒に衝撃を受け「このような美味しい酒をなんとしても世界に広めたい」と思ったことが1つのきっかけになったと言う。

WAKAZEで代表取締役CEOを務める稲川琢磨氏

「原体験として(慶應義塾大学在学中に)2年間フランスに留学していた際、海外では日本酒を含めて日本文化のプレゼンスがあまり高くないと感じた。実家がカメラの部品工場をやっていることもあり『日本ではものすごく良いモノが作られているのに、全然世の中に知られていない。日本のいいモノを世界に届けていきたい』という考えは以前からもっていた」(稲川氏)

当時からの付き合いで、後に共同でWAKAZEを立ち上げることになる今井翔也氏の実家が酒蔵であったため、まずはプロジェクトベースでマーケティングや商品開発を手伝うことに。2015年はクラウドファンディングも活用しながら、飲み比べセットなどの企画などを少しずつ進めていた。

その後2016年1月にWAKAZEを正式に法人化し事業を開始。上述した通り、まずは自社で作ったレシピを協力関係にある酒蔵で作ってもらう委託醸造で実績を積み、昨年より自社の醸造所でも商品開発に取り組んでいる。

「自社で醸造所を持ったことが1つのターニングポイントになったのは間違いない。これによって事業が加速しただけでなく、業界からも『WAKAZEはどうやら本気らしい』と見られ方も変わった。『飲む人がワクワクする、独自の面白い酒を作る』という意味でも、自社ですぐに試せる場所があるのは重要だ」(稲川氏)

日本酒の多様性を取り戻す

もちろんそこに行く着くまでにも、ハードシングスの連続だった。これについては稲川氏のnoteに詳しい記述があるけれど、そもそも日本酒に関しては法規制が特に厳しく、新規で免許を取得し醸造所を開設するのがかなり難しい。

この辺りが近年国内でもベンチャーメーカーが増え、新陳代謝が進むと共に盛り上がりを見せているクラフトビールやワインのマーケットとは異なる部分だという。

WAKAZEの場合はどのようなアプローチを取っているのか。面白いのはボタニカル原料を用いたFONIAは清酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されるということ。そして「その他の醸造酒」免許は清酒免許と比べて、一定の条件を満たせば新規取得できる可能性が大きいということだ。

創業メンバーの今井翔也氏。WAKAZEの醸造技術担当で、三軒茶屋醸造所の杜氏を務める

WAKAZEでは約2年に渡って委託醸造を通じた実績が積み上がってきていたため、生産要件と販売要件をクリア。加えてその間に今井氏が秋田の新政酒造などで蔵人として修行を積み、酒造りの知識と技術を取得していたことで、2018年7月にその他の醸造酒の製造免許を取得し新たな一歩を踏み出した。

少し時間はかかったが、稲川氏によるとチームも開発体制も徐々にではあるがバランスよくまとまってきたそうだ。

現在、醸造技術担当を務める今井氏はもともと東京大学の大学院農学生命科学研究科の出身。発酵学にも詳しく、新卒で入社したオイシックス(現 オイシックス・ラ・大地)で事業経験もある。また2017年にジョインした取締役COOの岩井慎太郎氏は楽天に7年間在籍。ネット事業に対する知見に加えて、実家が酒屋を営んでいることもあり、酒への熱量も他のメンバーに負けないという。

「日本にある酒蔵の数は、今でこそだいたい1500くらいと言われているが、20年前は約2倍の蔵があり、もっと昔に遡ると数万軒単位で存在していた。その時代は多様性があり、日本酒も今以上に活気があったように思う。『多様性を取り戻す』というのは自分たちの1つのテーマで、それこそ奈良時代の作り方などを取り入れてみるなど伝統的なやり方に原点回帰しつつ、クラフトビールのように新しい産業の考え方も掛け算しながら新しい酒づくりに挑んでいる」(稲川氏)

WAKAZEのメンバー

海外にローカライズしたSAKEで日本酒マーケット拡大へ

そんなWAKAZEはVCやエンジェル投資家から資金調達をして、今後どんなチャレンジを進めていくのか。稲川氏の話では、調達資金の使途は大きく2つあるようだ。

1つは冒頭でも触れた通り、フランスへの進出に向けた準備費用。並行して実施しているクラウドファンディングでもすでに500万円以上を集めているが、今夏を目処にパリで自社の蔵をオープンする計画だ。

ここでは蓄積してきたナレッジを活用しつつも「完全に現地向けにローカライズさせていく」方針。現地の米と水を用い、現地の食事に合わせた味わいの“SAKE”を開発する。パリで自社製造できる仕組みを作ることで、輸送コストや中間マージンを省き、手に取ってもらい安い価格で販売できるのもメリットだ。

「今まで日本の酒が30ユーロで販売されていたところを、半分の15ユーロで提供していくようなイメージだ。現在フランスではワイン市場がものすごく大きいものの、少しずつ落ちてきている。背景にあるのは新しいカテゴリのジンやクラフトビールなど新種の酒が台頭し始めていること」

「日本酒についてもハイクオリティの商品をミドルレンジの価格帯で提供できれば、爆発的に伸びる余地はあると考えている。ヨーロッパだけで数十兆円のワイン市場の半分ほどを占めるとも言われているが、この市場の一部でもリプレイスすることができれば、日本酒のマーケットももっと拡大できる」(稲川氏)

近年日本酒の輸出額は右肩上がりに成長しているものの、日本の「日本酒輸出額」とフランスの「ワイン輸出額」ではまだ大きな差があるという

投資家の1社である中島董商店が現地でのワイン事業を通じて飲食店や小売店とのチャネルを保有しているため、パリでの展開に関しては同社とも協力しながら進める。オープン前ではあるが「すでに何社かから取引の話はもらっている」そうで、将来的には少なくとも数十万本単位の生産設備も作っていく予定だという。

また海外展開と合わせて、日本でもデジタルを組み合わせた新しい取り組みを始める計画。具体的には自社ECサイトの立ち上げや毎月違うお酒を楽しめるサブスクリプション型のD2Cサービスを準備しているほか、広告を含めたデジタルマーケティング領域にも投資をしていくようだ。

「ビールやワインが世界で数十兆円の市場になっているのであれば、日本酒も数兆円規模になる可能性は十分に秘めているし、そこに対してチャレンジしていくのは自分たちの責務だと思っている。そのためにもまずは自社が大きなSAKEメーカーになり、業界を盛り上げていきたい」(稲川氏)

パリ酒蔵のイメージ図