Apple Watchなど心拍計のあるウェアラブルは高血圧症や睡眠時無呼吸を正確に検出する

ヘルステックスタートアップのCardiogramとカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)による最新の調査によると、Apple WatchやFitbitなどのウェアラブルには、高血圧症(過緊張)や睡眠時無呼吸など、一般的によくある危険な状態を正確に検知できる能力があることが分かった。

両者のこの前の研究では、Apple Watchには不整脈を97%の精度で検出できる能力があることが、実証された。今回の調査では、Watchが90%の精度で睡眠時無呼吸を検出し、高血圧症を82%の精度で検出することが分かった。

American Sleep Apnea Association(アメリカ睡眠時無呼吸協会)の推定によると、アメリカでは2200万人の大人に睡眠時無呼吸症があり、中程度から重度の患者の80%が診療を受けていない。しかしこれは、睡眠時に呼吸が止まって死に至ることもある症状だから、たいへん深刻な状況である。

またCenters for Disease Control(CDC)(疾病管理センター)によると、アメリカ人の大人のうち7500万人が高血圧であり、合衆国で死亡原因のトップである心臓病や脳卒中のリスクを抱えている。

自宅でくつろいだ状態で、しかもシンプルなデバイスを使って、睡眠時無呼吸症や高血圧症を検知できるようになれば、医療は大きく変わるだろう。これまでは多くの患者が、ときどき思い出したかのように医者へ行き、長い時間待たされて検査を受けている。これでは、急な血圧上昇などをお医者さんに知ってもらうことができないし、本人が寝ているときの呼吸停止ともなると、家族はおろか、本人にも分からない。

今回の調査では、6000名あまりの標本がCardiogramアプリを搭載したApple Watchを一定期間装着した。そしてDeepHeartと呼ばれるディープラーニングのアルゴリズムが分析した結果では、1000名あまりに睡眠時無呼吸が、2000名あまりに高血圧症が検出された。

DeepHeartは標本の70%から得られたデータで訓練され、その結果を残る30%に対してテストした、とCardiogramの協同ファウンダーBrandon Ballingerが述べている。

今回使用したデバイスはApple Watchのみだが、Cardiogramの協同ファウンダーで今回の調査を担当したJohnson Hsiehによると、心拍計のあるウェアラブルならどれでも同じ結果が得られたはず、と言う。“それらは、基本的に同じ技術だから”、と。

Hsiehはこう語る: “ウェアラブルのメリットは、高血圧症などの診断が、自覚症状のない人や多忙な人に対しても継続的にできる点にある。そして症状を検出できた人を確実に医療にアクセスさせ、より本格的な検査や治療を講じることができる”。

心臓の健康に関する今回の調査研究は、医療にディープラーニングが本格的に利用された三度目のケースだ。その前には、2016年12月のGoogle Brainによる網膜検査による糖尿病の検出と、今年の1月のスタンフォード大学による皮膚がんの検出があった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Appleよ、ロレックスに勝つのは難しくない

昨日(米国時間9/12)、Apple Watchがほとんどの主要時計メーカーを売り上げで上回ったとき、インターネットがざわついた。Apple WatchがRolexやOmegaなどの高級時計メーカーより多く売れたからといって驚くにあたらない。驚くべきは、RolexとOmegaがこの負け戦をいまだに戦い続けていることだ。

たとえば、Rolexの市場を考えてみて欲しい。私は、Rolexオーナーのほぼ全員がApple Watchを持っていることに賭けてもいいが、Apple WatchオーナーでRolexを持っている割合はごくわずかだ。多くの人にとってApple Watchは所有する唯一の腕時計であり、もしスマートウォッチというものがなければ、そもそも時計を身につけなかった人たちだ。先週長々と書いたとおり、Apple Watchを身につけるのは、これが最高のスマートウォッチだからであり、おそらく所有する最後の腕時計になるだろう。

Appleは間違いなく、売上の数字を誇りを持っている。具体的な数字を語ることは少ないが、われわれの推計によると、Apple Watchは昨年60億ドルの売り上げを立てたのに対して、Rolexは2015年に45億ドルを売り上げている。これは、Appleが1つの製品だけで、Rolexの全製品ラインの売上を越えたことを意味している。

これは、高級腕時計の世界の現状を表している。ごくわずかな非常に特別で非常に高価な製品を除いて、2000ドル以上の高級腕時計はほとんどが今や汎用製品だ。Rolexは1台か2台の時計を売って45億ドルの収益を上げたわけではない。かりに平均的Rolexの値段が8000ドルだとしても、Rolexは約50万台を売ったことになる。これはRolexが、ほかの人気スマートウォッチほど多くは売れていないが、まったく手に入らないと言われないほどには売れているという意味だ。高級腕時計メーカーは、われわれに彼らの製品は引っ張りだこで入手困難だと思って欲しいようだが ―― 稀少性を偽装することさえある ―― どの会社も一台でも多く時計を売るビジネスを続けていることは明らかだ

たしかに製造にかかる手間が増え、分解掃除なしで何年も ―― あるいは何十年も ―― 使えるほど頑強な精密機械を作るのに必要なスキルを持つ人は消えつつある。しかし時計業界は、まず1970年代にクォーツ時計を無視して大きな痛手を受け、今またスマートウォッチでも、雨が上がる前に傘を売り切ろうとパニックになっている売店の店主のような失敗を繰り返している。

つまるところ、ロレックスやオメガやカルティエを抜くのは難しくない。数百万の人たちが使いたくなる安くて良い製品を作ればいいだけだ。むしろ本当に驚きなのは、RolexやOmegaやCartierが未だに競争相手だとみなされていることだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FitbitのPebble買収により、Pebbleのサービスは縮小・停止へ

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Appleや他のスマートウォッチメーカーに先駆けて、腕に装着したデバイスを通じてさまざまな情報を提供する仕組みを開発してきたPebbleが、単独での活動を終了することとなった。

FitbitがPebbleを買収するのではないかというは、先月から流れ始めていた。私たちの入手した情報によると、価格は3400万ドルないし4000万ドルとのことだった。ちょうど、Pebbleの負債額に相当する額だと言われていた。しかしこれまでは、Twitter上に流れるうわさ話に対して、肩をすくめる絵文字を投稿するだけで、話を肯定するようなことはなかった。

ところが今日になって、PebbleのCEOであるEric Migicovskyがブログ記事を公開し、買収されることを正式に認めた。記事の中では製品を今後どうしていくのかということについても記されている。ただし買収価格の詳細などについては触れられていない。

「Pebbleの操業を停止して、デバイスの製造を停止するというのは、かなり苦しい判断ではありました」と記している。「これまでのPebbleはなくなります。ただしチームPebbleの多くはFitbitに移籍し、ウェアラブル向けソフトウェアの開発を続けていくことになります」。

「今日はほろ苦い日として記憶に残ることと思います。しかしともかく、Pebbleコミュニティを支えてきてくださった皆様に、心からの感謝をお伝えしたいと思います」。

また次のようにも記している。すなわち、Pebbleプロダクトが直ちに動作しなくなるようなことはなく、「普通に」使い続けられるとのこと。「すぐに何か変化があるというわけではありません」。ただし「Pebbleのサービスは、徐々に停止していくこととなります」とのことではある。

つまるところ、Pebble端末はいずれ使い物にはならなくなるということだ。いつまで使えるのかは、Fitbitの判断によるということになるのだろう。

Pebble端末についての保証業務は既に縮小されつつある。Pebble 2は今月に出荷が始まったばかりだが、新たな出荷はキャンセルとなり、オーダーも受け付けられていない。

Kickstarterで出資して、その見返り分が到着していない人については、クレジットカードの決済取り消しにより、4ないし8週間以内に全額を返金することになっている。12月7日以前にPebbleデバイスを返品した人に対しても全額返金が行われる。

ブログ記事中、買収によりFitbitが得るものについても記されているが、それはすなわち「多くのPebbleスタッフ」であるとのこと。そうしたスタッフたちはFitbitでウェアラブル関連のソフトウェア開発に従事することとなる。

Fitbit側の目的は、基本的にソフトウェア分野にある様子。「Fitbitによる買収についての最終合意が行われました。Pebbleの持つ技術、ソフトウェア、その他の知財がFitbitのものとなります」。

「Fitbitに移籍するメンバーたちは、ツール類の開発や、今後のFitbitプロダクトの価値を一層高めるためのソフトウェア開発に従事することとなります」とも記されている。

開発者向けのブログには、「Pebble SDK、CloudPebble、モバイルアプリケーション、開発者向けポータル、アプリケーションストア、タイムラインAPI、ディクテーションサービス、メッセージングサービス、およびファームウェアなどはこれまで同様に提供される」旨が記されている。「将来に向けても、可能な限りコミュニティに必要なサービスの提供を続けていきたいと考えています」とのこと。

Pebbleの開発者コミュニティの人たちに、引き続いての参加を促し、そしてそのままFitbitに移行してもらおうという考えもあるのかもしれない。

Crunchbaseによれば、Pebbleは2009年の創立以来1538万ドルの資金を集めている。ちなみに出資者のうちの大きな部分は、Kickstarter経由のクラウドファンディングとなっている。

今回の件は、クラウドファンディングのファンたちにとっては残念な出来事だろう。クラウドファンディングとは小規模なイノベーターを支援するという目的をもつものだ。しかし市場の中で力を持つ存在に出会ったとき、小規模なままで事業を継続していくことは非常に難しいこととなる。

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(翻訳:Maeda, H

このウェアラブル発電機は、体の熱で電気を作る

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これからはその汗ばんだ体がスマホの電源になる。まるで映画マトリクスのネオのように、ノースカロライナ州立大の研究者らが作った新システムを使えば、ウェアラブルデバイスで発電することができる。以前のシステムは硬くて巨大なヒートシンクを使っていた。新しいシステムは体にフィットするパッチワークを使い、1平方センチ当たり 20μWの発電が可能だ。旧システムは1μW以下しか発電できなかった。

システムは肌の上に敷かれた伝導性レイヤーから成り、熱が逃げるのを防いでいる。発生した熱は熱電気発電機を通った後アウターレイヤーに移動し完全に体外へ放出される。厚さは2 mmで柔軟性がある。

システムを開発しているのは、米国国立科学財団のNanosystems Engineering Research Center for Advanced Self-Powered Systems of Integrated Sensors and Technologies (ASSIST)[統合センサー・技術の先端自己出力型システムのためのナノシステム工学研究センター]で、商品化への道は開かれている。

目標は、これを医療器具に埋め込み、充電を必要とせずに生体信号を測定できるようにすることだ。「ASSISTのゴールは、長期の健康モニタリングに使用できるウェアラブル技術を開発することにある。例えば心臓の健康状態を追跡したり、身体的・環境的変化を監視して喘息発作を予測する装置だ。そのためにバッテリーに依存しない装置を作りたかった。このデザインとプロトタイプによって、実現に大きく近づいたと考えている」とノースカロライナ大学のDaryoosh Vashaee准教授は語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook