アジア最大のテック会議Riseが香港デモ受け来年は中止

香港の政府とデモ隊の間で続いている緊張はテック業界にも影響を及ぼし続けている。アジア最大のテック会議Riseについて、主催者であるアイルランド拠点の企業であるWeb Summitが「『香港で続いている状況』を鑑みて予定していた来年の開催を見送る」と発表した。

Web Summitは、2020年3月に香港で開催予定だった6回目となる年次カンファレンスを2021年3月に延期すると語った。アジア以外でも同様の大規模カンファレンスを主催しているWeb Summitは11月15日、これまでの出席者に電子メールでその旨を伝えた。広報は、電子メールが事実であることをTechCrunchに対し認めた。

「ここ数カ月、香港の状況を注視してきた。我々の最大の懸念は、イベント出席者が快適に過ごせるかどうか、そして安全性やセキュリティだ」と声明文で述べている。「2020年初めまでの状況が見通せないなか、専門家や顧問に相談し、RISEを2021年まで延期することを決めた」。

近年、Riseはアジアで最大のテックカンファレンスに育っていた。スピーカーとしてUberやByju’s、Grab、Gojek、Razor、そしてStripeといった企業のトップ、そして名だたるVCファンド主要パートナーや政府の高官などが登壇していた。

Rise提供の統計によると、今年のカンファレンスには「世界をリードする創業者やFortune 500社のCEO、投資家、メディア、そして将来を約束された100カ国超のスタートアップ」など、1万6000人が参加したとされている。

本日のWeb Summitの発表は、香港最大のミュージックフェスティバルClockenflapが同様の理由でキャンセルされてから数時間後のことだった。このミュージックフェスティバルでは米国のシンガーソングライターHalsey、ラッパー歌手のLil Pump、英国のバンドMumford & Sons、日本のヘビーメタルBabymetalの出演が予定されていた。ここ数週間で、ほかにもいくつかのイベントの延期や中止が決まっている。

この記事執筆にはTechCrunch記者のRita Liao(リタ・リャオ)も協力した。

画像クレジット:Stephen McCarthy / Sportsfile / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebook、Messenger最新版で広告メッセージの利用を一般企業に公開

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本体であるソーシャル・ネットワークのFacebookとは独立にリアルタイムのコミュニケーション・チャンネルとしてMessengerが着実にユーザーを増やしている。今日(米国時間11/8)、FacebookはMessengerの新バージョンを発表した。これによりデベロッパーにとってMessengerを利用してコンテンツを拡散するためのツールが増えた。同時にFacebookとしてはMessengerに対して広告主からのトラフィックが増えることを期待しているようだ。

Facebookによれば、今日のアップデートで発表されたMessenger v1.3では、「スポンサー・メッセージ」が利用可能になるという。ほとんどすべてのFacebook広告主はMessengerプラットフォームを通じてユーザーに広告メッセージを送信できるようになる。TechCrunchでは6ヶ月前の記事でFacebookが一部のブランドとユーザーを対象にMessenger広告のテストを始めたことを紹介した。

今回のニュースは、ポルトガルのリスボンで開催中のWeb SummitカンファレンスでMessengerのプロダクト担当副社長, David Marcusがステージ上で発表したものだ。これは興味あるタイミングだった。直前にFacebook本体と傘下のサービスであるWhatsApp間でデータを共有する計画を当面停止することが発表されたばかりだった。Facookがこのような決定を行ったのはイギリスとデータ保護団体、ICOからの要請があったためだという。

WhatsAppとFacebook間のデータ共有についてはEUレベルでも批判がある。また多くのユーザーも不満を募らせている。というのもFacebookがWhatsAppを190億ドルで買収したときに、双方のサービスのユーザーを安心させるべく、両社はまったく独立した事業体として運営されると繰り返し約束していたからだ。

しかしこれは話が脱線したようだ。今年4月にFacebookの広告メッセージの実験について書いたとき、われわれはMessengerのユーザーは(通例)特定の友達からのメッセージのみ受信することを予期しているのに、未承諾で広告メッセージが送りつけられるようなことがあればユーザー体験を低下させる危険性があると指摘した。

Facebookではこの危険を避けるためユーザーにある程度の「オプション」を与えるようだ。当面、企業はユーザーに無差別にメッセージを送ることはできない。すでに企業の運営するスレッド内にいる相手にしか送信できない。ユーザーが過去に企業スレッド内に入ったことがあり、そのことを忘れているのに企業側から突然広告メッセージが送りつけられるというような場合も考えられる。こういうときユーザーはそのメッセージないし送り主をブロックすることができる。私はこのブロックの有効期間などの詳細をFacebookに問い合わせているので、情報が得られたらこの記事をアップデートするつもりだ。

さて企業はそもそもこの新ツールをどのように利用できるのだろうか? これにはいくつかの方法がある。企業が提供するボットをユーザーが利用した場合、ユーザーがすでに何らかのサブスクリプション契約に加入していた場合のアップデート、あるいはユーザーがニュースフィード広告になんらかの反応を示した場合などが考えられる。これにはユーザーがクリックすると企業にメッセージが送られる各種の場合が含まれる。こうした機能は広告のボス、Andrew “Boz” Bosworthが昨年9月のTechCrunch Disruptで紹介したものだ。今日、Marcusはこの仕組が一般広告主からも利用できるようになったことを明かした。Facebookによれば、ベータテスターにはAbsolut
Vodka、Tommy Hilfiger、Activisionなどの各社が含まれるという。

ニュースフィード広告をクリックないしタップしたときにMessengerにリンクさせることができるというのは興味ある仕組みだ。ユーザーがニュースフィード広告に関心を持ったとき、ユーザーはFacebookを離れて企業サイトにジャンプするのではなく、Facebook内に留まったままMessengerで企業との会話を続けることができるわけだ。このとき企業側で対応するのは人工知能を利用した何らかのボットになる場合が多いだろう。

今日、Facebookはこの他に、v1.3プラットフォームのボット関係のいくつかのアップデートを発表した【原文参照】。

取材中…

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Webサミットで見た、未だに大きいスティーブ・ジョブズの影


今週ダブリンで行われたWeb Summitに参加していた私は、没後3年以上が過ぎた今も、われわれはAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズに取り付かれていると思わずにいられなかった。当時の彼を知っていたり、ましてや彼とミーティングをしたことのある人がいれば、インタビュアーは必ずそれについて聞きたがる。

TechCrunchでさえ、ジョブズの未公開写真で追想にふけるくらいだ。ジョブズと何らかのつながりのある人には需要があるようだ。例えば、元Apple CEOのジョン・スカリー。彼は1983年、ジョブズに誘われてAppleに入ったことで有名だが、蜜月時代は短命に終り、失意のジョブズは会社を去り1985年にNeXT Computersを立ち上げた。スカリーはAppleに来る前、経営者として成功していた。彼は11年後に黒字のAppleを去り、その後20年間にも様々なことをしてきたが、それを知る機会はない。

誰もが知りたいのは、スティーブがどんな人間だったのか、そして彼がジョズブを会社から追い出したことだけだ(本人は反論しているが)。その事実から30年近くたった今も、人々はそれを話題にし、当時の社内政治を詳細に分析しては、何が起きたのかをスカリーに尋ねる。彼は関係によって有名であるわけで、奇妙な力が働いている。

しかし、ジョブズについて聞かれたのはスカリーだけではなかった。DropboxのDrew Houstonは、2009年に彼がジョブズと会った1度のミーティングこついて質問された。彼がこれについて話したのは初めてではなかった。常に聞かれていると言ってもよい。なぜか? それは、われわれがあの男の話を聞きたいからだ。Houstonにとって、自分の会社を買いたがっていた英雄とミーティングは、あらゆる意味で非現実的体験だった。しかし、彼は売るためにそこへ行ったのではなく、話は先に進まなかった。なぜならHoustonが今週Web Summitの壇上で話したように、会社を売りたくないなら、会社を売るためのミーティングには参加すべきではないからだ。買収話はそれで終ったが、5年後にわれわれは、Houstonがあの男と会話をしたというだけの理由で、今も話を聞きたがっている。

Web Summitの最終セッションで、U2のリードボーカル、ボノが、House of Cardsのプロデューサー、Dana Brunetti、SoundCloudの共同ファウンダー、Wahlforssと共にパネル討論に参加した。そこではもちろん多くの業界トークが交されたが、モデレーターを務めていたNew York TimesのDavid Carrは、ボノに7年前彼がジョブズとフランスで会った時の話を聞かずにはいられなかった。ジョブズに、iTunesはスプレットシートみたいだと言ったという有名な話だ。ボノは、あれほどデザインにこだわっていたジョブズが、iTunesをもっと美しくしなかったことに驚いていた。正直なところ私に言わせれば、iTunesのルックスは数ある問題の中で最も小さなものだが、とにかく彼はジョブズと直接顔を合わせているので、世界はそれについて聞きたかったのである。

ジョブズは3年以上前に死んだが、IT業界に対する彼の影響は今後も長く続くに違いない。そしてWeb Summitが何かの兆候であるなら、この業界に多大なインパクトを与えた男に関する話を聞きたいというわれわれの欲求もまた、続くに違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


DropboxのCEO Drew HoustonがSnowdenの批判に反論

NSAを内部告発したEdward Snowdenが、プライバシーを守りたいなら”Dropboxを利用するな“、と二度も忠告したことが、議論を呼んでいる。今日(米国時間11/4)はDropboxのCEO Drew Houstonが、その非難に応えた。彼は、もっと強力な暗号化の方式はあるけれども、どの方式を使うかは、使いやすさや利便性とセキュリティとのトレードオフだ、と述べ、“ユーザには選択肢を提供している”、と語った。

Houstonのこの発言は、今日アイルランドのダブリンで行われたWeb Summitのステージで述べられた。それはイギリスのGCHQの長官が、テロとソーシャルメディアと政府によるデータへのアクセスについてのエッセイを掲載した日でもある。

Houstonは、政府機関がソーシャルネットワークやそのほかの大手テクノロジ企業からデータを取り出すことの正否について、直接的には何も語らなかった。また、プライバシーが不可侵の権利であるか否かという、倫理的な問題にも触れなかった。むしろ彼は、ユーザ体験に焦点を絞った。

“ゼロ知識暗号化(zero knowledge encryption)を提供しているサイトの動機は十分に理解できるが、それには欠点もある”、と彼は言う。Dropboxが暗号化の方式を今以上に強化したら、検索やサードパーティアプリへのアクセス、モバイルデバイスからのデータへのシームレスなアクセスなどが、とてもやりにくくなるだろう、というのだ。ただしDropboxでも、ユーザがそれを選択することはできる。“うちは、そのためのサードパーティツールを提供しているが、もちろんそれを使えば検索やインデクシング、プレビューの表示などが困難になる。でもトレードオフというシーソーの上では、人びとは自分が選んだどの位置にでも立つことができる”。

彼はDropboxの企業イメージの問題にも、それとなく触れた: “人から石を投げられて、嬉しい人はいない。でも、FacebookやZuckも、これまでさんざん叩かれている。良いことはいっぱいしているはずなのに、急に、不正なことをしている企業にされてしまう。でも企業や人間が、人びとがいろいろ言うほどすごく良いことはないし、また、そんなにひどく悪いこともない”。

ステージ上のインタビューでHoustonは、2009年に協同ファウンダのArash Ferdowsiと一緒にiCloudがまだない頃のAppleを訪れたときの思い出を語った。そのとき彼らは、Steve Jobsからの(巷間9桁の)買収オファーを断わった。そしてCEOの彼は、その後、買収ではなくパートナーシップという企業進化の路線を選んだのだ。

今日Dropboxは、Microsoftとの、Houston曰く“深い統合”を発表した。これで二社のユーザは両方へシームレスに行ったり来たりできる。これはGoogle対抗策でもあるようだが、実際まさに今日Googleも、新たなクラウド事業を発表した。

Houstonは、両社の協働の意義について、“今Dropboxのユーザは12億人いるが、彼らがやってることで一番多いのがOffice文書の保存やバックアップだ”、と述べた。彼は今回のパートナーシップを“うちにとっては異例”と言うが、すでに自前のクラウドプラットホームを持っているMicrosoftにとっては、もっと異例だろう…Dropboxほど、繁盛していないとはいえ。“Microsoftがこのような統合をしたことは、過去に一度もないと思う”、とHoustonは言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))