米国が国家安全リスクを理由にTikTokに続きWeChatの使用禁止を検討

米国で国家安全保障リスクとなっている可能性があるとして、TikTokに厳しい精査の目が向けられている中、中国の人にとってなくてはならないメッセージングアプリのWeChatも米政府から非難を浴びている。

ホワイトハウスの通商アドバイザーであるPeter Navarro(ピーター・ナバロ)氏は米国時間7月12日に「TikTokとWeChatが中国本土で最大の検閲場所となっている。ゆえに断固たる措置を視野に入れている」とFox Businessに述べた

ナバロ氏は「子供が楽しみ、便利そうなモバイルアプリに集まるデータはすべて中国にあるサーバーに保存される。つまり中国軍、中国共産党、我々の知的財産を盗みたがっている中国当局の管理下におかれる」と主張している。

WeChatは、この発言に対するコメントを控えた。TikTokはTechCrunchへの声明で「ユーザーのプライバシーを守ることは当社にとって重要な優先事項だ」とし、「TikTokユーザーのデータを中国政府と共有したことはなく、共有するよう依頼が行わない」と述べた。

この2つのアプリの使用制限に関する最大の違いは、影響を受ける場所だ。中国外では、WeChatは主に四散している中国人、そして中国で事業を展開していたり中国と何らかのつながりがある企業が使用している。一方のTikTokのメインユーザーは世界中の若者だ。

WeChatは中国において、レストランでの支払いや診察の予約まで日々のさまざまな活動に活用されているが、中国外でのWeChatの機能はメッセージだけにほぼ制限されている。その他の機能は外国の競合相手が提供している。

もし米政府による制限が導入されればの話だが、制限がどのようなものになるのかは不透明だ。WeChatユーザーはすでに、中国にいる家族や帰国した友人と連絡を取り合うための他の方法を検討している。Tencent(テンセント)所有のメッセンジャーアプリであるWeChatがAppleのApp StoreやGoogle Playから削除されても、米国拠点のユーザーは他の地域で展開されているストアからアプリをダウンロードすることはできる。IP制限がかかっても、ユーザーはVPNを通じてアプリにアクセスできるかもしれない。VPNは中国の多くの人にとって、中国政府のグレート・ファイアウォールでブロックされているオンラインサービスにアクセスするのになじみのあるツールだ。

VPNは検閲との戦いのためだけのものではない。海外居住の中国人が、ライセンス制限のために海外では利用できない中国のビデオプラットフォームの番組をストリーミングするためにIPアドレスを中国に設定するのは珍しくはない。

ナバロ氏のメッセージは、米政府がTikTokを禁止することを検討していると米国務長官Mike Pompeo(マイク・ポンペオ)氏が明らかにしてすぐのものだ。中国のインターネット新興企業であるByteDance(バイトダンス)が展開しているTikTokは、データを米国とシンガポールに保存したり、企業構造を徹底的に見直すなどして、中国企業と一線を画してきた。

声明の中でTikTokは「当社で情報安全を担う米国人の担当者は何十年も米国の法執行当局での経験があり、セキュリティに関する経験も持つ。TikTokの親会社は最も知られている米国の投資家の支援を受けている私企業であり、役員5人のうち4人がそうした投資家から送られている」と強調した。

にもかかわらず、米国の企業は安全上の懸念を理由とする政治家のTikTokボイコットの呼びかけに応じている。Wells Fargo(ウェルズファーゴ)は従業員にスマホからTikTokを削除するよう求め(Bloomberg記事)、Amazon(アマゾン)も同様の対応を従業員に指示したが、その後すぐに撤回した(The NewYork Times記事)。

画像クレジット:WeChat

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(翻訳:Mizoguchi

WeChatがライブストリーミング買い物フェスを6月開催、中国・広州市と組んで地方経済を押し上げる

中国はいま、ライブストリーミングへの新たに関心を示している。新型コロナウイルス(COVID-19)が国中で猛威をふるい、多くの建物が扉を閉ざし、事業者は物を販売するためにオンラインに向かった。そして多くの人がライブストリーミングを受け入れた。現在、我々のモバイルスクリーンの大半を支配しているショートビデオが先行したモデルだ。客の多くがオフラインショッピングを避ける傾向が強まりつつあり、Alibaba(アリババ)やJD.com(JDドットコム)、Pinduoduo(ピンデュオ)のようなeコマースの巨人たちはライブストリーミングに力を入れている。ライブストリーミングを使って顧客は販売事業者とやり取りをし、リアルタイムに注文する。

異端プレーヤーのWeChat(ウィーチャット)もこの動きに加わっている。月間アクティブユーザーが11億6000人のメッセージサービスである大手WeChatは今週、6月のライブストリームショッピングフェスティバル開催で広州市と提携したと発表した。このニュースの前には、習近平主席が経済におけるライブストリーミングeコマースが、特に地方の農産品の販売を促進するうえで重要な役割を果たすとの認識を示していた。

ライブストリーミングeコマースを通じて地方経済を押し上げるために、地方行政がイニシアチブをとるのは中国では初めてのことだ。この取り組みが交易や輸出の中心地である広州市で行われることは驚きではないだろう。グローバルのパンデミックにより中国の輸出は減少していて、当局は国内需要を刺激せざるを得なくなっている。

WeChatのメッセージ以外のほとんどの機能と同様、ライブストリーミングはミニプログラム(またはライトアプリ)インフラ上に構築されている。WeChatによると、この機能には数万もの小売業者が登録されていて、試験期間の間は無料で利用できる。グローサリーや観光、ファッションの小売事業者はこのサービスの恩恵を最も享受できる。例えば、NASDAQに上場している旅行ポータルのCtrip(シートリップ)は、航空会社や旅行アトラクションが大幅割引で商品を売り出しているため、WeChatでのライブ促進で1億元(約15億円)を売り上げた。中国のライフスタイルブランドであるHeilan Home(ヘイランホーム)はライブセッションでの視聴者300万人超を記録した。

「ここ数カ月、オンラインショッピングの需要は新型コロナパンデミックで急増している。ライブストリームを通じた販売は今や事業や生産の再開、消費者の需要刺激の鍵を握っている」とTencent(テンセント)広州のゼネラルマネジャーを務めるGerald Hu(ジェラルド・フー)氏は発表文で述べた。

WeChatがライブストリーミングに乗り出したのは最近だ。この部門が近年盛り上がっていたにもかかわらず、WeChatがライブストリームを同社のオール・イン・ワンプラットフォームに正式に導入したのは2020年2月のこととなる。これは創業者Allen Zhang(アレン・チャン)氏の製品に対するミニマリストで完璧主義的なアプローチのためかもしれない。

結局のところ、WeChatの根幹は知り合い同士間のコミュニケーション促進にある。買い物やゲームといった他の機能は社交生活の延長であり、会話を邪魔するものではなく補足するものだ。人々は友達がWeChatメッセージを通じてシェアしたスナックを購入するかもしれない。あるいはWeChat上のアプリ内ゲームへの参加を呼びかける友達からの招待状を受け取るかもしれない。しかしどれだけの人が30分間もビデオに費やし、その間に重要なメッセージを逃すリスクを負ってもいいと思うだろうか。

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(翻訳:Mizoguchi

中国ハイテク企業はこうしてコロナと戦っている

新型コロナウイルス感染症の影響についてはTechCrunchでもたびたび取り上げてきたが、今回、中国のハイテク企業がこの大流行にどのように対処してているかを取材した。また、これが中国以外の世界にとっての意味についても紹介する。

新型コロナウイルス感染症の大流行は中国の社会、経済全般に大打撃をもたらしているが、わずかな救いはテクノロジーが人々の相互の接触を最小限とする手助けとなっている点だ。巨大な人口が自宅で過ごすためにテクノロジー企業がどのような役割を果たしているかにも触れたい。

2002年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は800人近い死者を出したが、これが中国におけるeコマースを立ち上げるきっかけとなった。人々は感染を避けようとして外出を控えることととなり、オンライン通販に頼るようになった。ジャック・マ氏の伝記によれば、Alibabaのオンライン・マーケットプレイス、Taobaoが急成長したのも、ちょうどこのSARS流行期だった。

それから20年近く経ってさらに深刻な新型コロナウイルス感染症が中国の多数の都市をマヒさせている。この中でテクノロジー企業は自らの活動を維持すると同時に生活のライフラインとなり、また新型コロナウイルスを封じ込めるための国や民間の努力を助けようとしている。

データ分析企業のQuestMobileのレポートによれば、中国の市民がモバイルデバイスでインターネットを利用する時間は時間は2020年1月には平均1日6.1時間だったが、旧正月(2020年1月25日前後)には6.8時間にアップし、さらに新型コロナウイルス流行で7.3時間という驚くべき数字に跳ね上がった。これはウイルスの影響で旧正月休み明けにも閉鎖を続けている企業が多いことによる。同時に企業がリモートワークを取り入れつつあることも要因だろう。

以下に紹介するのはテクノロジー企業の努力の例だ。

リモートワークアプリが大ブーム

中国のエンタープライズソフトウェアビジネスは西側に比べると立ち上がりが遅かった。しかし消費者向けオンラインビジネスのプレイヤーが激増するにつれ、テクノロジー系大企業から投資家 までいっせいにエンタープライズ部門に目を向けるようになった。 ここにきて新型コロナウイルスの流行により何百万人ものオフィスワーカーが家に閉じ込められることになったため、リモートワーク向けアプリがブームとなっている。

全国的に学校、大学が閉鎖されたことで、Sensor Towerのデータによれば、オンライン教育ビジネスも同様の活況を呈している。

リモートワーク・アプリのメジャー・プレイヤーはAlibabaのDingTalk、Tencentの WeChat(微信)、 ByteDanceのLark. Appで、 Sensor Towerのレポートによれば、2020年の1月22日から2月20日の期間でDingTalkの14倍をはじめとして、以下のとおり著しい伸びを記録している(対前年同期比)。

DingTalk: 1446%

Lark: 6085%

WeChat Work: 572%

AlibabaはWeChat(微信)に対抗しようとして失敗した後、2014年にDingTalk(釘釘)をスタートさせたが、2020年2月に入って突然急成長し、中国におけるiOSアプリの首位に躍り出た。2019年8月時点の発表ではユーザーは1000万人以上ということだったが、現在は登録ユーザーは2億人以上だという。

新型コロナウイルス感染症の流行でiOS無料アプリのダウンロード数トップとなったDingtalk (Sensor Tower)

WeChat(微信)のエンタープライズ版、WeChat Work(企業微信)は2016年に生まれ、DingTalkの後を追い、当時iOSのダウンロードで2位となった。2019年12月にはWeChat Workには250万社、6000万人以上のアクティブユーザーがいると発表された

BytedanceがLarkをリリースしたのは2019年と新しい。上記2つの巨大サービスに比べれば小型で、 2月上旬までは300位台だった。しかし新型コロナウイルス流行後、Larkは爆発的に急成長した。LarkはTikTokの中国国内版であるDouyin(抖音)に広告を出し始めた。Douyin(抖音)はショートビデオの人気が高まると同時に企業マーケティングの寵児となりLarkに大きな注目が集まるようになった。一方、WeChatは月間ユーザー10億という巨大なサイズに達しているものの収益化には踏み出していない。

問題は新型コロナウイルスによる突然のブームが、維持可能な安定した市場に結びつくかどうかだ。DingTalkとWeChat Workは、あまりに急激なユーザー拡大のためにたびたびシステムがクラッシュしている。両サービスともこれほどの規模のユーザー殺到は予期していなかった。 また多くの企業は新型コロナウイルスの流行が収束すればリモートワークから従来のオフィスに出勤する勤務体制に戻ると予測される。

実際、「在宅勤務時間中はウェブカメラを常時オンにしておくこと」といったプライバシーの侵害につながるような要求をする企業もあるため、在宅勤務は社員からは評判が悪いことが多い。 またDingTalkは最近スタートさせたオンライン学習クラスに思わぬ反撃を受けている。旧正月休みが延長されたと思ったらオンライン学習クラスで勉強させられることになった生徒たちが一斉にアプリに一つ星の低評価をつけている。

マスク着用と国民監視システム

ウイルスの拡散を防ぐために多数の自治体が公衆の前に出るときはマスクを着用することを人々に義務付けたが、これは中国で一般化している監視カメラによる顔認証に重大な障害となっている。しかし、顔認証に代わる虹彩認証などの新しいテクノロジーが導入されつつある。

私が取材した旅行者によれば、駅で列車に乗る際、セキュリティゲートでいちいちマスクを外す必要はなかったという。マスクをしていても個人が特定できるならプライバシーを重視する立場からいえば大きな問題だ。しかし当局がそのような進化した生体認証行うようになったのか、ウイルスの流行で一時的にセキュリティを緩めているのかは不明だ。【略】

デジタル記録の活用

中国政府はClose Contact Detector(濃厚接触検知器というウェブベースのアプリを開発し公開した。ユーザーは氏名、身分証番号、電話番号を入力することでデジタル化された移動情報にアクセスすることができる。たとえば航空機で感染者の3列以内に座っていたことが確認されれば「リスクあり」と判断される。これは感染拡大防止に役立つだろうが、一方では「政府がここまで詳しい個人の旅行データを持っているのなら、なぜもっと早く流行の封じ込めに役立てなかったのか?」という深刻な疑問も生んでいる。なぜ流行が拡大し始めて数週間も経ってからこのサービスが公開されたのだろうか?

もちろん中国の膨大な人口と無数の政府機関の存在を考えると実名で登録されたビッグデータを横断的に処理することが極めて困難な問題を引き起こすことは予測できる。新型コロナウイルスの流行は中国政府によるビッグデータの処理の努力を加速しているようだ。旅行許可のデジタル発行の多くは膨大なユーザー数を考慮してWeChatを利用している。【略】

写真:新華社

デマと戦う

感染症の流行はデマの温床となる。Dxy.cn (丁香园)は医療関係者を対象としたオンラインコミュニティで新型コロナウイルス関連の情報の迅速なファクトチェックの提供を目的としている。また中国全土のマップで流行の現状をリアルタイムで確認できるようにしている。

Yikuangは独立のデベロッパーとアプリレビューサイトのSspai.comが開発したWeChatベースのサービスで、新型コロナウイルス感染症の流行地域を示す。データは自治体の公式発表に基づいており、近隣で感染があったかどうかがわかる。

上海の高等学校の生徒によって始められたブログは世界中の諸機関による新型コロナウイルス情報をまとめたもので、中国の多数の若者が参加してサービスを拡充している。

食事とエンターテインメント

全国的な社会のロックダウンは当然ながらオンラインエンターテインメントにブームをもたらす。QuestMobileのデータによれば、ショートビデオ市場は1日当たりのアクティブユーザーが5億6900万人に達した。流行以前の4億9200万人から大きく増加している。多くのミュージシャンがコンサートが不可能にあったため、ビデオストリーミングによるバーチャルコンサートに切り替えている。同様に映画も上映館の閉鎖によりオンライン封切りを行っている。

中国の都市の多くがレストランでの外食を禁じたため、料理宅配サービスが肩代わりを余儀なくされている。飲食店の口コミサイト、Meituan Dianpin(美団点評)が運営するで宅配サービスではコンタクトレスと呼ばれる人的接触を避ける宅配システムを作った。これは料理を入れたロッカーで、注文した顧客はロッカーを開いて料理を取り出すことができる(下のツイートの動画参照)

画像:ROMEO GACAD/AFP via Getty Images

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滑川海彦@Facebook

各国の中国人コミュニティ向けフードデリバリーのHungryPandaが22.3億円を調達

世界各地の都市で中国人コミュニティ向けのフードデリバリーを手がけるHungryPanda(ハングリーパンダ)は現地時間2月20日、2000万ドル(約22億3000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのは83NorthとFelix Capitalで、この資金は人材の雇用や製品開発のほか、海外、特に米国への進出に使われる。HungryPandaは現在の評価額を明らかにしていないが、5月までに年換算値の業績を2億ドル(約223億円)に乗せることを目標にしているという。

画像:K1 Photography / Getty Images

HungryPandaは英国で創業し、同国のノッティンガムで最初のサービスを始めた。現在は英国、イタリア、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、米国の31都市でサービスを提供している。

フードデリバリーは競争が激しく利幅も少ない。しかし、HungryPandaは独自の地位を築いている。ビジネスオーナーも含め中国語を使うユーザーのためのプラットフォームを構築し、中華料理と食材のデリバリーに集中することで、UberEats、Deliveroo、FoodPandaといった競合との差別化を果たしてきた。AlipayやWeChat Payなどの支払いサービスにも対応し、マーケティングにはWeChatを利用している。

世界中の中国人コミュニティは大きな市場だ。HungryPandaは、英国とニューヨークではすでに利益が出ているとしている。2019年に公表された米国国勢調査局のレポートによると、中国以外に在住している中国人は、中国生まれの人を数えると1000万人、国外移住後の第2世代などを含めると4500万人だという。

HungryPandaのCEOのEric Liu(エリック・リウ)氏は報道発表の中で「83NorthとFelix Capitalの支援を受けて、我々のユニークなサービスをより多くの場所の多くの人に提供できることを喜んでいる。両社の抜きん出た投資経験と、顧客のニーズに正確にフォーカスし2週間あれば新しい都市でのサービスを開始できる我々の手腕によって、我々はビジネスを大きく成長させて中華料理の莫大な需要に応えるための理想的な位置にいる」と述べている。

83NorthとFelix Capitalの両社とも、これまでにほかにもフードデリバリーのスタートアップに投資している。83Northは投資家であり、英国のJust Eatとヘルシンキ(フィンランド)のWoltを手がけている。一方のFelix Capitalは、英国のDeliverooと、すべて社内で調理しているフランスのFrichtiを支援している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

自撮りビデオをスターの顔に変えてしまうZaoをWeChatが制限

中国で先週末クチコミで広まったZaoは、ビデオの顔を他人の顔にリアルに変えてしまうアプリだが、そのポリシーをめぐる騒動のあとWeChatは、同社のメッセージングプラットホームの上でそのアプリの使用を禁じてしまった

中国で人気最高のデートアプリであるMomoの開発元が作ったZaoは、ユーザーがアップロードするセルフィービデオ(自撮りビデオ)の顔を、人気映画や音楽ビデオなどの中のセレブの顔に変えてしまう。

今は中国でしか利用できないアプリだが、ユーザーがWeChatやそのほかのソーシャルメディアでビデオをシェアすることによってどんどん広まり、同時にディープフェイク技術の悪用に関する懸念から論争も広まった。現在は削除されているZaoの最初の利用規約では「アップロードされたビデオの所有権やその他の権利がすべて永久にZaoにある」とされていたので論争にいっそう火がついた。

急速に広まったのと、セルフィーが1つだけあれば使える気安さから、ディープフェイク技術に対する関心が高まり、また、誤った情報やいじめなどの拡散も懸念された。なお、この顔変えアプリは元のセルフィーが複数あったほうが結果がいいそうだ。

今現在、Zaoで作ったビデオはWeChatにアップロードできるが、アプリをダウンロードしたり、リンクをほかのWeChatユーザーに送ろうとすると、「このウェブページは何度も報告されており、セキュリティリスクを含んでいる。安全なオンライン環境を維持するためにこのページへのアクセスをブロックした」というメッセージが表示される。

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App Annieによると、Zaoは先週金曜日の8月30日にリリースされたあと、急速に中国の無料iOSアプリのトップになった。9月1日にZaoのWeiboアカウントにポストされた声明によると、「プライバシーに関する皆さまのご心配を十分理解している。この問題は私たちも認識しており、解決方法を考えている。あと少し、お時間をいただきたい」とある。そして今の利用規約では、ユーザーが作ったコンテンツはアプリを改良するためにのみ使用し、削除されたコンテンツはサーバーからも削除される、となっている。

今TechCrunchはZaoにコメントを求めている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

WeChat PayとAlipayのパートナーのQFPay、新デジタル決済手法の開発へ約21億円を調達

デジタル決済スタートアップのQFPayは米国時間8月13日、Sequoia Capital ChinaとMatrix Partnersが主導する新たな資金調達で2000万ドル(約21億円)を確保したと発表した。インドネシアの国営通信会社のTelkom Indonesiaの投資部門であるMDI VenturesとRakuten Capital、VentureSouqも新たな戦略的投資主として参加した。

Crunchbaseによると、これでQFPayの暢達総額は3650万ドル(約38億円)となった。この資金は新たなデジタル決済製品の開発に使われる予定だ。

QFPayはWeChat PayとAlipayの最大のグローバルパートナーであり、世界中の小売業者による支払い処理を可能にしている。2012年に設立されたQFPayは中国で最初にサービスを開始し、QRコードベースの技術で知られている。これにはエンドツーエンドのオンライン/オフラインのモバイル決済手法や、食品注文や顧客ロイヤリティプログラムを含む。同社によると、これまで120万以上の小売業者にサービスを提供し、10億以上の取引を処理したという。

QFPayは現在、カンボジア、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、アラブ首長国連邦の13市場でサービスを提供している。

共同設立者かつCEOのTim Lee(ティム・リー)氏は声明にて、「デジタル決済の発祥の地とされる中国で事業を開始して以来、この分野で実績やノウハウを蓄積してきた。過去7年間で学んだことを活かし、デジタル決済、とくにQRコード決済の需要が高まる中、アジアの他の地域でキャッシュレスの動きをリードできることをうれしく思う」と述べている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

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(翻訳:金井哲夫)

Tencentが決算を発表:当期純利益は15億ドル

Tencent Holdings Ltd.'s new headquarters stand under construction in Shenzhen, China, on Monday, Aug. 22, 2016. The new headquarters for Tencent is a $599 million project aimed at creating a campus-like atmosphere for the urban setting. Scheduled for completion next year, the Shenzhen skyscraper could become one of the largest labs for new internet services and connected devices. Photographer: Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

アジアのテック系企業のなかで最も企業価値の高いTencentが決算を発表し、同社が順調に利益を拡大していることが明らかとなった。メッセージング・アプリのWeChatとモバイルゲーム事業がこの好業績の牽引役だ。

2016年Q3における同社の当期純利益は昨年比43%増の106億人民元(15億ドル)で、収益は同52%増の404億人民元(60億ドル)だった。Wall Street Journalによれば、S&O Capital IQに掲載されていたアナリストの事前予想は当期純利益が109億人民元、収益は393億人民元であり、その予想と概ね一致していると言える。

今年はTencentの創業18周年の年だ。先日、同社はその記念として従業員に合計で2億2000万ドル分の株式を分け与えている。しかし、Tencentの名を世界に轟かせるきっかけとなったのは、つい2年前にローンチしたばかりで、中国では「Weixin」と呼ばれるメッセージング・アプリのWeChatだ。

現在、WeChatのMAUは8億4600万人だ。この数字は前年に比べて30%増加しており、前四半期の8億600万人と比べても順調に成長を続けていると言えるだろう。Tencentが抱えるビジネスのなかでも急速に成長中なのが広告ビジネスであり、それを牽引しているのがWeChatなのだ。

同社のオンライン広告収益の合計は、2015年Q2比で51%増の75億人民元(約11億ドル)だ。なかでも、同社が「パフォーマンス・マーケティング」と呼ぶ分野の収益は同83%増の44億人民元となっている。Tencentによれば、WeChatのタイムラインに表示される広告、同社のモバイル・ニュースアプリ、WeChatのオフィシャル・アカウントとして登録されたブランドからの収益がこの成長の原動力となっているという。

その一方で、今でもTencent最大の事業として君臨するのがモバイル・ゲーム事業だ。今年6月に「Clash Of Clans」の開発元であるSuperCellを買収したことからも分かるように、モバイル・ゲームはTencentが集中的に投資を続けている分野でもある。

2016年3QにおけるTencentのモバイル・ゲーム事業の収益は前年同期比87%増の99億人民元(約15億ドル)だった。一方で、モバイルとPCを合わせたゲーム事業全体の収益は182億人民元(約27億ドル)である。依然としてPCゲーム部門の存在感は大きいが、その成長率は前年比でわずか10%に留まっている。

今年初め、同社はWeChatと統合されたモバイル・ペイメントサービスのWePayに関する数字を初めて公開し、WePayを通して送金された金額の合計が500億ドルに達したと発表している。送金データの詳細については明らかにしなかったものの、WePayとそのクラウド・サービスによって、Tencentがもつその他のビジネスの収益が四半期ベースで348%増加したとコメントしている。金額にすると四半期ベースで50億人民元の引き上げ効果だ。

Tencentの会長兼CEOであるPony Maは決算発表資料のなかで、「私たちのモバイル・ゲーム事業とソーシャル事業の前年比成長率は業界平均を上回っており、健全なマージンを生み出し続けています。その一方で、私たちのエコシステムのインフラストラクチャーとなるようなサービス、つまりオンライン・ペイメントやクラウド・サービスなどのサービスも、急速にユーザーから受け入れられ、利用され始めています」と語っている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

コイニー、決済ページが簡単に作れる「Coineyペイジ」を提供——WeChat Payへの対応も発表

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先ほどは決済サービス「AnyPay」の正式ローンチに関するニュースが流れたが、スマホ・タブレット向け決済サービスを提供するコイニーも昨日、今日と決済サービスに関する発表を行っている。

同社は8月31日、決済ページをネット上で簡単に作成できるサービス「Coiney(コイニー)ペイジ」と開発者向けの「CoineyペイジAPI」を発表。9月1日には、中国・テンセント提供のモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」とのアクワイアリング(加盟店獲得・契約・管理業務)契約を締結したことを発表した。

リアルとオンラインの決済をまとめて管理

まずはCoineyペイジについてお伝えする。コイニーではスマホ・タブレット専用の決済端末を利用した、実店舗向けのモバイル決済サービス「Coiney」を提供してきたが、オンラインショップも運営する加盟店からは「リアルとオンラインの決済をまとめて管理したい」との要望が多かったという。コイニー代表取締役の佐俣奈緒子氏は「事業者にとって分かりやすく、簡単に代金徴収方法の幅を広げられる仕組みを作りたかった」と話す。

Coineyペイジでは、オンラインショップの機能の中でも請求・決済に特化。管理画面から商品名やサービス名と金額を入力するだけで決済用のページが作成でき、顧客へメールなどでURLを送信することで請求が完了する。デザインの簡単なカスタマイズは管理画面から行えるが、ショッピングカートや予約機能などとの連携は、CoineyペイジAPIを利用して行うことになる。

想定される利用シーンについて、佐俣氏は「Coineyを既に利用している工務店の場合、これまではリフォーム施工後にCoiney端末を使って客先で決済をしていたのが、今後はCoineyペイジを使った事後決済も可能になる。今までオンライン販売は銀行決済のみに対応していた家具店もあるが、Coineyペイジで決済ページを作ってURLをメールで送ることで、海外からの受注にも対応できるようになる」と例を挙げた。

年内にはWeChat Pay対応も

また、コイニーは9月1日、中国のテンセントが提供する、アプリを利用したモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」のアクワイアリング(加盟店獲得・契約・管理業務)契約を締結。一般公開に先駆けて、東急カードにWeChat Payサービスの提供を始める。

WeChat Paymentは、中国で人気を集める(月間アクティブユーザー(MAU)7億6000万人以上)メッセージングアプリ「WeChat」の決済機能。ユーザーがあらかじめ銀行口座を登録しておけば、ユーザーもしくは店舗がWeChatのQRコードを提示し、もう一方がそのコードをスキャンするだけで、キャッシュレスで決済が完結する。日本の銀行口座には対応していないため馴染みがないが、中国ではさまざまなシーンで日常的に利用が進んでいるという。

コイニーでは幅広い決済手段を提供することで、Coiney導入店舗の訪日外国人対応を強化する。例えば宿泊施設などであれば、事前予約のオンライン決済はCoineyペイジで行い、施設訪問時や利用後の決済であればWeChat PayアプリやCoiney端末でのクレジット払いができるようになる。先行する東急を除いては、年内にサービス受付開始を予定している。

「より多くの決済、お金の流れに関わるサービスを提供したい。加盟店にリアルの店舗を持っているのが我々の強み。そこへさらにネットの決済もつなげていくことで、お店の人のお金の管理をもっと簡単に、楽にしていきたい」(佐俣氏)

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Facebookの、Messengerプラットフォーム化計画


来週のF8 デベロッパーカンファレンスで、Facebookはサードパーティーが同社のMessengerアプリを通じて新たな体験を提供する方法を発表する、と複数の情報源が伝えている。Facebookは、Messengerをもっと便利にしたいと考えている。アジアのチャットアプリ、WeChatやLineが友達とのテキストメッセージの枠を越え、プラットフォームとして成功しているのを踏まえてのことだ。

まずFacebookは、サードパーティーがMessengerを通じてコンテンツや情報を流すやり方に注目すると思われる。初期の実験の成否によって、FacebookはMessengerの実用性をさらに高めることを熟考するかもしれない。

Messengerプラットフォームが今回のF8の主要な話題になることは、あらゆる情報筋が言っているが、サードパーティーによる具体的な統合方法は不明だ。これまでWeChatやLineがやってきたことを見ると、企業によるユーザーとの直接対話やコンテンツの共有する、友達同志のコンテンツ共有の強化等、数多くの可能性がある。

Facebookは限られたパートナーとだけ、ゆっくりとスタートするだろうが、いずれ多くのデベロッパーに開放されるかもしれない。Facebookはこの件についてコメントを拒んだ。

スパムの回避

Facebookは、初期のウェブプラットフォームの良いところを再現しつつ、同じ失敗を繰り返さない方法を探っている。

Facebookの「ウェブキャンバス」はユーザーの個人情報や友達を簡単にサードパーティーに渡せることから、ゲームと共に急成長した。そして同社のオープングラフ・プロトコルは人々のFacebookプロフィールをアプリと結び付けた。いずれも人気の理由は、デベロッパーが自分に興味のあるユーザーを見つけるのに役立つからだ。それはアプリストアが混雑し競争が激化する今のモバイル時代においては極めて困難だ。

Facebookのゲームスパム(2010年頃)

問題は、ウェブプラットフォームにゲームスパムが氾藍しすぎた結果、Facebookがバイラルを抑制しなければならなくなったことだ。結局、熱中の場が携帯電話へとシフトし、Facebookが困惑してモバイルへの移行に遅れているうちに、ブームは衰えた。オープングラフは、ニュース、音楽、ビデオ等の使用をニュースフィード・ティッカーに自動配信したことによって、シェアのやりすぎだという悪評を得た。

こうした経験に基づき、Facebookはこの比較的未開のMessengerアプリにスパムが紛れ込まないよう慎重になるに違いない。

アジアの一体型チャットアプリにインスパイアされる

これまでMessengerはほぼFacebook上のみの体験だった。ウェブサイトに、ユーザーが友達に直接URLを送ることのできる“送信”ボタンを埋め込むことはできるが、それを除けばMessengerは、テキスト、音声通話、写真、ビデオ、スタンプ、ボイスクリップ、そしてお金の送受信にいたるすべてを、Facebookの独自システムを通じて提供している。

Facebookは、F8カンファレンスでMessengerに関する発表があることを私に話し、同社チャットアプリに新たなデベロッパー向け機能が加わることをほのめかしていた。また、Messengerの責任者、Daivd Marcusは、昨年Wiredに企業と顧客が直接対話する方法に興味を抱いていることを話し、貧弱な体験の原因の多くは電話の番号案内と航空会社のカスタマーサービスにあると指摘した。以前Facebookは、ユーザーがFacebookのビジネスページ管理者に個別メッセージを送るための殆ど知られなかった方法を提供していた。

Messengerのプラットフォーム化に関して、FacebookはLineとWeChatに注目したと言われている。両社は頻繁に使われるインスタントメッセージアプリをモバイルインターフェースの中心に据え、一体型ポータルとして使うパイオニアだ。Snapchatも、最近プラットフォーム・アプローチを急速に推進しているメッセージアプリだ。

Lineのプラットフォームページ

日本のメッセンジャー、Lineには「その他」タブがあり、スタンプショップ、物理的店舗で買い物ができるLine Pay、Lineのファミリーアプリやゲームの一覧などを利用できる。アプリには、自分の顔を友達に送れるスタンプメーカーや、写真共有のLine Toss、お絵描きのLine Brush、グリーティングカードを送れるLine Card、コラージュを作るLine Camera、自撮り写真を飾り付けるB612、マンガを読むためのLine WebToon等がある。

Snapchat Discover

Lineでは、公式アカウントをフォローして、ポール・マッカートニー、The Walking Dead、マンチェスター・ユナイテッド、BBCなどの有名人やエンターテイメント、ニュース機関、ブランド等から直接コンテンツを受取ることもできる。FacebookやTwitterの公式アカウントで起きている投稿の集中砲火と比べると、Line公式アカウントは、ファンとの少数高密度の直接コミュニケーションが特徴だ。

Snapchatは、Discoverページでプレミアム豪華コンテンツ戦略を追求している。Comedy Central、CNN、Vice、ESPNといった主要メディアが、Snapフォーマットの写真、記事、ビデオを挿入広告として送り込める。一方、WhatsAppは、ユーザーがWhatsAppメッセージを通じて友達にURLを送れるSendボタンをサイトに埋め込めるようにして、大量のトラフィックをメディアサイトに誘導している。

Facebookは、上記のいずれからでも着想を得ることができる。例えば、、装飾を加えた写真等のリッチコンテンツを作ってシェアするためのアプリをサードパーティーが提供できるようにする。Facebookは既に、写真にスタンプを貼って友達に送れるコンパニオンアプリとしてStickered For Messengerを提供している。

あるいはFacebookは、ユーザーが公式アカウントをフォローしたりページを訪れたりできるようにしてもよい。そうすればニュースフィードで見落とした最新情報に遅れずにすむ。電話より効果的な方法で企業と直接連絡を取る方法も提供できるだろう。もう一つの可能性は、ウェブやモバイルのコンテンツ提供者が、Messenger経由でバイラルなトラフィックを獲得する簡単な方法をFacebookが提供することだ。Facebook本体のニュースフィードに、読んだニュースをMessengerに送り込むもっと良い方法が用意されてもいい。

Facebook Stickered For Messenger

中国のWeChatプラットフォームは、よりコマース寄りだ。ユーザーはメッセージアプリを使って、映画のチケットを買ったり、タクシー料金を支払ったりできる。

Facebookの当初のMessengerプラットフォームへの取り組みは、コンテンツが中心と思われるが、サードパーティーの体験に手ごたえを感じれば、いずれネット販売にも拡大するかもしれない。つい先週、Facebookはデビットカードを追加することで友達同志がメッセンジャーを通じて送金するしくみを無料で追加した。支払いシステムを内蔵したことによって、Messengerにはすでにインターフェースがあるので、販売機能の構築は容易だろう。

中国のWeChatはアプリ内で買い物体験を提供している。 Via Benedict Evans

5億人以上のユーザーを持ち、Facebook Messengerは今や世界で最も使われているアプリの一つだ。Facebookのメインアプリが実質的にウェブサイトを小さな画面に移植しただけなのに対して、Messengerはモバイルのために作られたアプリだ。Facebookアプリがさして目的もなく気楽に眺めるものなのに対して、Messengerは行動を起こして何かを成し遂げるために作られている。世界の一部の人々にとっては、MessengerがFacebookを使う主要な方法になっている。その中のコンテンツを改善することは、ニュースフィードにかじりついていないユーザーにとっては理にかなっているかもしれない。

Facebookにとって最近のMessengerのミッションは、このアプリを「より有用に、表現を豊かに、快適に」することだと、支払い機能のプロダクトマネージャー、Steve Davidは言っている。今度は、Hacker Way 1番地の外に協力を求める時だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook