公開停止中のDeNA「MERY」に新代表が就任——再開の可能性を模索

ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけていたキュレーションメディアの1つ、「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した問題は、3月13日に第三者委員会による調査報告書の内容と、関係者の処分(WELQを含むDeNA Palette事業の統括であり執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長の村田マリ氏が辞任意向(子会社iemoおよびFind Travel含む)を表明、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役の中川綾太郎氏が辞任。その他社員25人を含む合計30人の処分)が発表されたことで、ひとまず収束に向かっているようだ。

もちろん不正確、もしくは誤った情報で被害を受けた読者への補償をはじめとして、まだまだ関係者の抱える課題は少なくない。最近ではDeNAは謝罪広告も展開している。

あるサイトに掲載されたDeNAの謝罪広告

だがDeNA Paletteの今後については、調査報告書が発表された際の記者会見でDeNA創業者・代表取締役会長兼執行役員の南場智子氏が「事業の継続に関しては全く目処が立っておらず白紙」「この3カ月間、事業として継続することが可能か、また再開ありきではなく、どのような形であれば、問題を起こさないサービスになるか検討は進めてきた」「同じ形で再開することはあり得ず、どのような形であればありえるのか」といったコメントをしていたとおりで、直近に再開する予定はないとしていた。

そんな中、MERYを運営するペロリの新代表に、4月より元アイ・エム・ジェイ(IMJ)執行役員CMOの江端浩人氏が就任する予定であることがTechCrunch Japanの取材で明らかになった。

江端氏は伊藤忠商事などを経て2005年に日本コカ・コーラに入社。2012年9月より日本マイクロソフトの業務執行役員セントラルマーケティング本部長に就任。2014年11月よりIMJの執行役員CMOに就任していた。IMJのサイト上では、まさにDeNAの会見があった3月13日に「江端氏が2017年3月31日をもって一身上の都合により退任する」という発表がされていた。同氏は日本コカ・コーラ時代に会員数約1200万人、月間約10億ページビューまで成長した会員制サイト「コカ・コーラ パーク」(2016年10月にサービス終了。とはいえ2007年6月にスタートし、オウンドメディアの一時代を築いたサービスだ)を立ち上げるなど、デジタルマーケティング業界に明るい人物だ。

こんな話を聞くと「DeNAはMERYをすぐ復活させる気なのか」と思う人もいるかも知れないが、DeNA広報部ではこの人事を認めた上で、「あくまで再開については白紙。事業再開の可能性を含めて検討できる人物に全権を委ねた」としている。僕が業界関係者から聞いたところでも、実際今日明日の再開計画があるわけではないようだ。

DeNAは広告やマーケティングといった領域で知見のある「大人」に事業継続の可否までを委ねることで、社外とのコミュニケーションも含めて交通整理をしていくということだ。MERYの再開は未定だが、スタートアップとして運営してきたペロリ社が大きく変わることは間違いない。

DeNA南場氏「キュレーションメディアの再開は全くの白紙」、WELQ問題でDeNAが会見

ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は3月13日、医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した一連の騒動の第三者委員会による調査報告書(全文要約版)を受領したことに加えて、関係者の処分などを含む今後の体制について発表した。(これまでの経緯は以下参照)

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「心より深くおわび」WELQを契機にした“キュレーション問題”でDeNAが謝罪

TechCrunch Japanでも第三者委員会の調査報告書の概要について報じたが、発表に合わせて同日、東京・渋谷にて第三者委員会およびDeNAによる記者会見が開かれた。冒頭、第三者員会の会見では、第三者委員会委員長の名取勝也弁護士、委員の西川元啓弁護士、岡村久道弁護士、沖田美恵子弁護士が出席した。会見では名取氏の口から第三者委員会の調査報告書の概要が語られたのち、DeNAの会見が行われた。

事業の定義が曖昧、管理体制が不十分だった

DeNAの会見にはDeNA代表取締役CEOの守安功氏のほかDeNAの創業者であり代表取締役会長兼執行役員の南場智子氏(3月13日より代表に復帰)、DeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏の3人が出席。

冒頭、守安氏の口から「当社、キュレーション事業における一連の騒動により、ご迷惑をお掛けしたみなさまに深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」(守安氏)と謝罪し、改めて騒動の経緯とついて見解を述べた。

今回の騒動が起きてしまった原因はどこにあるのか? 守安氏はその原因は3点に集約されると語った。

1. 事業において最も大切な利用者への本質的な価値、世の中への貢献が考えられていなかった
2. キュレーションメディア事業の定義、理解が曖昧なままだった
3. 問題を早期に発見、チェックする管理体制が不十分だった

こうした事実を踏まえ、今後はチェック、管理体制を導入するだけでなく、守安氏を含めた経営陣を筆頭に全従業員の徹底的な意識改革を行っていくとしている。具体的には、カスタマーサービスや運営に届いていることをチェックし事業運営に反映していくだけでなく、新規事業などにおいては、社外の有識者の方からアドバイスをもらうなど、客観的な視点を交えて正しい事業運営がされているかを議論していくそうだ。

「この3カ月間、社内外の多くの方からさまざまな声をいただきました。その中でも『DeNAは儲け主義だよね。だから、こうした問題が起きるんだよ』といった声は本当につらかったですし、深く反省しました。今後はユーザーへの提供価値、世の中にどういった貢献をしていくのか、を事業推進の中枢に据え、全ての意思決定、行動を変えていいきたいと思っています」(守安氏)

また、3月13日開催の取締役会において、取締役会長から代表取締役会長兼執行役員となった南場氏は、「この度は一連の問題により、ご迷惑をお掛けしたみなさんに心から深くお詫び申し上げます。私自身も会長として十分にチェック&バランスの役割を行えなかったことを戒め、今後は私も代表取締役として強い決意を持って守安とともに会社全体の変革に取り組んでいきます」(南場氏)と語り、守安氏と代表取締役2人体制でコンプライアンスや管理体制の強化を図っていくとした。

キュレーションメディアの再開予定は白紙

また、記者会見では質疑応答も行われた。その一部の内容をお伝えする。

— 今回の騒動の根本的な問題は何だったのでしょうか?

守安氏:先ほどと少し被ってしまいますが、キュレーション事業自体、どんな価値をユーザーに提供していくのか、そしてそれが社会的にどういった意義をもたらすのかが徹底的に議論されていなかった。それ故に事業運営がちぐはぐになってしまったと思います。また、企業買収からPMI( Post Merger Integration:合併後の統合)、そして事業拡大とフェーズが進むにつれて“攻めの体制”は出来上がっていたのですが、“守りの体制”が出来上がっていなかった。そのため、このような騒動が起きてしまったのかな、と思います。

— 南場さんにお伺いしたいのですが、キュレーション事業は今後も続けていく予定はあるのでしょうか?仮に続けていくとするならば、事業と柱の1つとして考えますか?

南場:キュレーション事業の継続に関しては全く目処が立っていません。白紙です。この3カ月間、事業として継続することが可能か、また再開ありきではなく、どのような形であれば、問題を起こさないサービスになるか検討は進めてきました。事実として、多くのユーザーが楽しんでいたサービスもありますたし、「復旧をしないのか?」という声もたくさんいただきました。サービス事業者としてはすごくありがたいですし、バーティカルに情報を提供するサービスへのニーズはあるな、と思いました。

ただし、同じ形で再開することはあり得ず、どのような形であればありえるのか。メディア型にしても、編集体制、校閲体制、教育体制など社外の専門家に話を聞くと、非常に奥が深く、経験のない我々が形だけ整えてできるものではない。そのため全く再開の目処が立っていない。いわんや、収益の柱などとするのはあり得ません。

— また南場さんが代表取締役に戻られましたが、具体的に何が変わるのでしょうか?

南場:「DeNAイコール創業社長」のイメージが強くなってしまうのを避けるため、これまでは「社会の公器として発展させていきたい」という思いから若い世代にバトンタッチすること、最終的な意思決定者をはっきりさせるために代表取締役は1人にすることを重視してきましたが、そのような形にこだわってはいられない事態になってきた。この問題は私も会長という立場でありながら見過ごしてしまった。代表取締役に戻ったからといって問題が解決するわけではありませんが、守安と力を合わせて複眼的に意思決定を行っていきたいと思います。

守安氏、事業責任者2人の責任の違いは?

— 事業責任者の対応について、村田マリさん(執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長)は辞任意向、中川綾太郎氏(ペロリ代表取締役)は辞任となっていますが、この違いは何でしょうか?

守安:辞任意向と辞任の違いに関してですが、書類としてもらっているか、メールベースでもらっているかの差です。村田マリは海外在住ということもあって、メールでのやり取りが基本なので違いが出ています。

— 今回、事業担当者の2人に関しては厳しい対応をとられていると思うのですが、一方で大企業として本来、買収した会社を社会の公器として導くことも重要だったんじゃないかな、と思います。そもそも、DeNA自体がベンチャーの雄として成長されてきたことも踏まえて、会社の代表の責任について守安さんと南場さんにお伺いしたいです。

守安:この3カ月間、私自身すごく反省しましたし、いろいろ悩みました。これだけ大きな社会問題となり、さまざまな方にご迷惑をお掛けしてしまったことを自分が先頭に立ってリカバリーしていきたい。その思いはずっと持ち続けていた一方で、自分が先頭に立ってやっていくのはベストなのかは迷い、南場にも相談しました。また取締役会でもたくさん議論を重ねた結果、この決定に至りました。

南場:守安が申した通り、私にも相談されましたし、私自身も今後のDeNAを作っていくにはどうやっていくのが一番良いのか、随分と悩みました。もちろん守安が代表取締役社長として継続するのが良いことなのかどうか、取締役会でも重点的に議論を重ねました。本件に関して、守安は事業を推進する立場として責任は重いけれど、違法である実態を認識した時点で自制するように指示を適切にしたこと、他の事業に対する責任を全うする必要性があることから、守安を除く全員一致の見解で継続してやってもらうことになりました。過去どうだったかよりも、今後のDeNAを作っていくことが大事ですので、そういう意味では代表取締役の2人は厳しく監視されることになります。

— 失礼な言い方になるかもしれませんが、今回の対応はベンチャーの尻尾切りをしているような感じもします。かつてベンチャーの創業者だった南場さんは、その点どのようにお考えでしょうか?

南場:キュレーション事業において、相当なコンプライアンス違反があったことについては直接の事業責任者の責任は重い。そこを甘くなってしまっては、今後のDeNAは作れない、というも思いから取締役会の総意で今回の決断に至りました。この2人の事業責任者は一生懸命、誠心誠意、事業に打ち込んでいましたし、このような事態になった後も第三者委員会の調査にも誠実に協力してくれた。なにか悪徳なことを企んでいる2人ではありません。そういう意味では、有能な2人の若者を正しく導けなかったDeNAの責任は重いと捉えています。これはずっと私たちが背負っていかなければいけないことだと思っています。

— 代表取締役を辞任後、2人はDeNAに籍は残るのでしょうか?もし残る場合は、どこの所属になるのでしょうか?

守安:両名とも籍に関しては、DeNA本体の人事付けになります。今後、どういった役割を担ってもらうかは現時点で未定です。

「法令上違反の可能性、倫理的にも問題」DeNAがWELQ問題の第三者委員会の調査報告書を公表

医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した「WELQ問題」の一端がこれで解決するのだろうか。ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月13日、この騒動の第三者委員会による調査報告書(全文要約版)を受領したことに加えて、関係者の処分などを含む今後の体制について発表した。

※これまでの経緯は以下の記事を参考してほしい。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

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「心より深くおわび」WELQを契機にした“キュレーション問題”でDeNAが謝罪

代表は南場・守安両氏の2人体制に、村田マリ氏は辞意を表明

まず先に関係者の処分についてお伝えすると、DeNA代表取締役兼CEOの守安功氏はすでに月額報酬の30%を6カ月間減額すると2016年12月時点に発表しているが、これを月額報酬の50%を6カ月間に減給変更。事業を統括していた執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長の村田マリ氏は、就業規則に基づく処分を行ったことに加えて、3月12日付けで執行役員のほか、子会社iemoとFind Travelの代表取締役を辞任する意向を表明しているという。

またMERYを運営していたペロリ代表取締役の中川綾太郎氏も3月12日付けで代表取締役を辞任した。加えて、執行役員で前経営企画本部長の柴田大介氏、執行役員経営企画本部長の小林賢治氏ほか25人に関しても就業規則に基づく処分を行ったとしている。

加えて、3月13日開催の取締役会において、DeNA創業者で取締役会長の南場智子氏が代表取締役会長兼執行役員となり、代表取締役2人体制でコンプライアンスや管理体制の強化をするとしている。

厳しい第三者委員会の調査報告書

さて肝心の調査報告書だが、要約版でも34ページに渡る内容となっているのでさらにまとめると次の通りだ。委員会は2016年12月から合計26回開催。ヒアリング調査は134回97人に対して実施した。

キュレーション事業の法令上の問題について

・サンプルにしたのは10サイト37万6671件の記事。このうち複製権および翻案権侵害の可能性のある記事は1.9〜5.6%。これらの一部の記事については同時に公衆送信権侵害、同一性保持権侵害、氏名表示権侵害の可能性があった。

・掲載されていた画像472万4571点のうち72万7643点については、個別許諾されたものもあるが、公衆送信権侵害と氏名表示権侵害の可能性がある。

・WELQの記事19件についての調査では、薬機法(8件)、医療法(1件)、健康増進法(1件)に違反する可能性があった。

キュレーション事業の法令上以外の問題について

・WELQの記事の一部にはセンシティブなーマを扱う記事にアフィリエイト広告を掲載するのに際し不適切である。また医療に関する記事でユーザーに対する配慮を欠いた内容があったほか、医療に関する記事に医師の間でも見解に相違がある内容を安易に記載しているなど、倫理的にも問題があった。

・またキュレーション事業の10サイトには、文章自体には著作物性が認められないものの、他記事のコピー&ペーストがなされていると考えられるものや、出典が不明瞭で、引用方法として不適切であるものなど、倫理的に問題のある記事が掲載されていた。

・DeNAは、掲載していた記事の画像や文章の無断利用に関するクレームがあった場合、プロバイダ責任制限法の適用が受けられない場合であっても、プラットフォーム提供者としてプロバイダ責任制限法の適用が受けられるかのような対応をしていた。

DeNAは本日会見を開催し、本件の詳細を説明する予定だ。TechCrunchでも追ってお伝えしたい。

「心より深くおわび」WELQを契機にした“キュレーション問題”でDeNAが謝罪

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏
左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけるキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」。中でも医療・ヘルスケア領域を対象にした「WELQ」の記事の信頼性に端を発した大騒動についてはTechCrunch Japanでもこれまで複数の記事でお伝えしてきた。

これを受けるかたちでDeNAは12月7日、東京・渋谷にてDeNA Paletteの全記事非公開化および第三者調査委員会の設置に関する記者会見を開催した。会見にはDeNA代表取締役CEOの守安功氏のほかDeNAの創業者であり取締役会長の南場智子氏、DeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏の3人が出席(南場氏については、本日になって追加で出席する旨の案内があった)。これまでの経緯を説明したのち、来場したメディアとの質疑応答を行った。

会見の冒頭、守安氏は改めて一連の問題に対して、自社サービスのユーザー、インターネットユーザー、取引先や株主、投資家などの関係者にして、「多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、心より深くおわび申し上げます。また、直接私からご説明する機会が遅くなってしまったことを、重ねてお詫び申し上げます」として謝罪した。

これまで本件について伝えてきた記事は以下の通り。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

改めて今回の経緯を説明すると、DeNAは2014年9月にiemoおよびペロリを買収。加えて2015年4月にはFind Travelを買収。DeNA Paletteとして合計10のキュレーションメディアを立ち上げた(WELQに関しては2015年10月のローンチ)。

だがその後はリンクした記事にあるとおりで、WELQを中心にして医学の知識に乏しい・誤った内容や薬機法に抵触する、もしくはその可能性が高い内容の記事が掲載されているにも関わらず、専門家の監修がなかったことが発覚した。

さらにはDeNA側が既存コンテンツのリライトを指示するようなマニュアルを用意し、クラウドソーシングなどを用いて記事を発注しているといったことなどが報じられた。会見で小林氏は記事作成のプロセス(記事作成は社内のプロデューサーが指示し、実際は社外のディレクターが外部パートナーやライターには中していた)を説明した上で、その品質等について最終的な責任を負う機能が明確に存在してなかったと説明。さらに前述のマニュアルの存在についても明らかにした。

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

そこで11月29日にWELQの全記事を非公開化。12月1日にはそれに加えてMERYを除く8媒体の全記事を非公開化。MERYに関しても、12月7日をもって全記事を非公開化している。

今回の騒動を受けてDeNAでは、WELQを読んだ結果の健康被害や記事の出展などの相談を受け付ける窓口を開設。コーポレートサイトのトップページに掲載するとした。また既報の通り第三者調査委員会を設置。これと並行して社内でプロジェクトチームを発足し体制の健全化に努めるとした。

続いて南場氏が「批判が組織や企業風土のあり方にまで及んだ。取締役会長そして創業者として、責任のある立場にあり、直接おわびを申し上げたく参りました」と謝罪した。これに続き守安氏が冒頭と同じくユーザーや取引先、株主などに対する謝罪の言葉を述べた。このあと2時間以上の質疑応答が続いたが、その様子はのちほど紹介する。

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

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先日のインタビューの内容とはどうも状況が異なるようだ。キュレーションメディア「WELQ」の記事公開停止に端を発したディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」の公開停止騒動。DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏は残る8つのキュレーションメディアの記事公開停止と自身の役員報酬の減額などを発表していた。

経緯をまとめた記事はこちら

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

本件に関する守安氏のインタビューはこちら

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

当初は子会社であるペロリが運営するファッション系キュレーションメディア「MERY」に関しては、運営体制も異なるため記事の非公開は行わないとしていたが、現時点ではかなりの割合の記事が非公開化されている状況だ。そして本日12月5日、DeNAはMERYに関しても12月7日に全記事非公開とすることを発表した。加えて取締役会の委嘱を受けた社外取締役を含む外部専門家による第三者調査委員会を設置し、事実関係の調査を行なうとしている。

TechCrunch Japanでは現在改めてDeNAへの取材を打診している。状況が確認でき次第、記事をアップデートする予定だ。

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

 

ディー・エヌ・エー(DeNA)は12月1日、ペロリが運営する女性向けキュレーションメディア「MERY」を除く、キュレーションメディアプラットフォーム「DeNA Palette」9媒体の全ての記事を非公開にすることを明らかにした。

先日から情報の不正確さや制作体制について各所で問題視されていた、医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」を含め、MERY以外すべての運営が一次ストップするかたちとなる。その経緯は以下の記事にまとめた。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

この一連の騒動に対してDeNAはどう考えているのか? 代表取締役社長兼CEOの守安功氏に話を聞いた。

「あとから監修」は認識が甘かった

–今回の一連の騒動について、どうお考えですか?

守安氏: WELQに端を発した一連の騒動に関しまして、多くの方々にご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げたいと思っています。

私自身、今回の騒動の問題点は2つあると考えています。1つめが医療・ヘルスケア情報の取り扱いに関して認識が甘かった点です。数カ月前から(WELQについて)医療関係者の監修がない状態で記事が公開されている事実を把握していました。当時、「後で監修をつければいいのではないか」と思っていたのですが、この認識が甘かったと思っています。医療・ヘルスケアというセンシティブな情報を取り扱うメディアとして、あるべき姿ではなかったな、と。監修をつけるプロセスは進めていましたが、もっと早い段階で取り入れるべきだったと思います。

2つめはWELQに限らず、私たちが運営するその他のキュレーションメディアも含まれることなのですが、記事の作り方に問題があったと思っています。BuzzFeed( Japan)が公開した記事を見まして、マニュアルや指示の内容、例示の仕方など記事を作る一連のプロセスがクリーンであったか、モラル的に問題がなかったかと考えると、決してそうではない。記事の作り方に問題があると感じました。

現場にも確認したところ、組織的に独立した形でやっているMERYを除き、私たちが運営している9つのキュレーションメディアは似たような体制で記事を作っていることが判明しました。最初、アップされている記事で問題があるものを順次非公開にしていくという方法も考えたのですが、それではWELQの医療記事と同じように判断が遅れてしまうと思ったので、MERY以外に関してはいったん記事を非公開にすることを決めました。現在公開されている記事の中には問題がないものも含まれていると思うので、その記事に関しては社内の管理委員会で内容を精査した上で、問題がなければ再度アップしていこうと考えています。

MERYに関しては組織が違うこともあり、運営ポリシー、記事の作り方も我々とは異なります。代表の中川(ペロリ代表取締役の中川綾太郎氏)にも問題がないことを確認しており、基本的には非公開措置はとらず、現状の運営方法でやっていってもらえればと思っています。

–最近の決算発表などを見ていると、ゲーム事業の次の柱にとしてキュレーションメディア事業を据えていましたが、事業を見直す必要性が出てきました。

当然、事業には大きな影響が出ると思っています。ただ、どれくらいの影響が出るかは分かっていないので、まずは今回の問題に誠意を持って対応した後で見直すつもりです。

–WELQに関しては、サイト終了前に広告販売を停止していたのですが、その他の媒体に関しても広告販売は停止するのでしょうか。

これから広告販売を停止していきます。これに関してはクライアント・代理店にご迷惑をお掛けしてしまったなと思っています。

–MERYはサービスを継続するということですが、今回の騒動の影響は出ているのでしょうか。

細かく把握はしていないのですが、今後は影響が出る可能性は高いと思っています。

–東京都福祉保健局から呼び出しがあったとITmediaが報じています。

DeNA広報:呼び出しといいますか、「WELQの内容に関してヒアリングしたい」という連絡があって、今後お会いする予定です。

グロースに注力する現場、どこまで把握していたか

–以前から「Medエッジ(メドエッジ)」というヘルスケアメディア(現在はWELQにリダイレクトされているため、実質的にはWELQの前身のメディア)を運営して言いました。どういった経緯でDeNA Paletteで医療やヘルスケア領域に参入することになったのでしょうか。

守安氏:もともとは「ヘルスケア」というジャンルで、医療よりも少しライトテーマで立ち上げたメディアです。サイトを運営していく中で、グロースを意識し始めた結果、医療情報が少しずつ入ってきて、今の形になりました。その変遷は認識していたのですが、(直近のような体制になるまで)止めることができなかった。

–「止めることができなかった」ということですが、どの程度DeNA Paletteの運営実態を把握していましたか。

DAU(デイリーアクティブユーザー)やMAU(月間アクティブユーザー)、売上といった数字の把握はしていました。あとは「SEOを重視していく」という方針は(自身が)出していたので、SEOを軸にしてメディアをグロースさせていく運営手法も知っていました。

ただ、どうやって記事を作っているのか、どういったオペレーションで回しているのか…現場に近い部分は「クラウドソーシングサービスを使っている」こと程度で、細かい部分までは把握していませんでした。

–WELQの記事の一部は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に抵触しているとの指摘もあります。それでも監修は後付けでも問題ないという認識だったんでしょうか?

薬機法がどうかは知らなかったのですが、「医療情報を取り扱っているけれどもエビデンスがない」という状況は認識していました。「あとの対応でもいい」と思ったのはすごく甘かったですね。

–この騒動によって、子会社のDeNAライフサイエンスが手がける遺伝子検査サービス「MYCODE」など、グループのヘルスケア事業のブランド毀損にもなり得ます。現時点での影響や今後の対策などを教えて下さい。

ヘルスケア事業自体は、非常にセンシティブな領域でもあるので、立ち上げ時から社内に倫理委員会を設けるなど高い倫理観を持って運営していました。ただし、WELQに関しては違う意識で運営することになってしまった。そこは私たちの責任です。

事業自体は切り分けられているので、WELQが(ヘルスケア事業の運営に)直接的に関わってはいません。ですが、医療関係者からは「DeNAどうなってるんだ?」という声はいくつも頂いているので、そこは真摯に受け止め、信頼回復に努めていきたいと思っています。

–DeNAがキュレーションメディア事業に参入したのが約2年前。当時から守安氏の「肝入りの事業だった」と聞いています。

そうですね、ヘルスケア事業は南場(取締役会長の南場智子氏)が見ているので別ですが、それ以外のほとんどの事業を私が見ていますので、どの事業も肝入りです。ただ、その中でも注力したい分野だったことは間違いありません。

–しかし一方では、iemo、MERYの買収にあたってDeNAの法務部門から反発があったとも聞いています。

金額的に2社で50億円。規模的にはアメリカのゲーム会社(ngmoco)に次ぐものだったので、重要な事業になるだろうと思っていました。

反発……というよりは「著作権的に黒か白か分かりづらい」という話がありました。法律的には大丈夫という認識のもとで買収を行ったのですが、曖昧な部分もあった。そこは運営していく中でクリーンにしていこうと考えていました。

–その買収やDeNA Paletteの構想を発表して、健全なメディアが生まれると思いきや、実情は結構違っていました。この原因についてどう分析していますか。

「モラルを守って適切に運用する」という認識が私を筆頭に足りていなかった。そこに尽きると思います。

著作権無視のバイラルメディアが関与

–DeNA Palette構想でできた内製メディアには事業を統括するDeNA執行役員、キュレーション企画統括部長でiemo代表取締役CEOの村田マリ氏と親交のある元WebTechAsiaの人材が大きく関与していると伺っています。同社はかつてBUZZNEWSというバイラルメディアを運営しており、盗用問題に端を発した炎上騒動があったのですが、その経緯は把握していましたか。

はい、把握していました。立ち上げ期に関わっていて、メディアが一通り立ち上がった今年の頭に退職しています。

–上場企業のメディア運営において、著作権まわりでトラブルを起こした人材を登用する狙いとは。

メディアを立ち上げるノウハウを持っていたので、彼らを登用することにしました。そこは上場企業として問題ないという判断を下しました。

–過度とも言えるSEOによるグロース施策を実行していた人物として、キュレーション企画統括部の部長の名前が具体的に挙がっています。

それぞれのメディアには担当者がいて、グロースハック部とメディア部がどう絡み合っていたのかは分からないのですが、私を含め「SEOを重視しよう」という方針で運営していました。村田が責任者でいて、配下の部長が数名いる中の二人だったという認識です。

–事業のキーマンの採用は現場の采配によるところが大きかったということでしょうか。

メディア全体の方針やモラル的な問題に関しては私に責任があると思っていますが、現場の判断に関しては村田の判断が大きいです。

–ただ、社内外からSEOの手腕に関して「ちょっと強引じゃないか」という声も挙がっていたと伺っています。

報道を見るとそういう面もあったのかなと思いますが、社内の中では把握していませんでした。

— 今回の記事非公開という決断で組織体制の変更はありますか。

(今日の)朝決めたことですので、今後の体制に関してはまだ考えてないです。

DeNA Palette、再開のめどは

— ヘルスケア事業は南場氏が担当しているとのことでしたが、今どういったコミュニケーションを取っていますか。

(南場氏は)毎日会社に来ていますし、週1回経営会議もやっているので、普通に常勤役員としてコミュニケーションしています。

–今回の騒動について何か話し合いがあったのでしょうか。

いくつかありましたが、多くの方々に迷惑をお掛けし、これまで積み上げてきた信頼を全て失ってしまったと思っているので、まずは失った信頼を取り戻していくという話を今はしています。

— ネット上では本事業について「南場さんが舵をとるべき」という意見も見かけました。

外部で色々と言われていることがあるのですが、現時点で何か体制を変える、といったことは考えてないです。

— 今後、健全化のスキームを考えるとコストが1記事あたり10倍以上の単位で変わってくると思っています。すでに医療従事者などに1記事1万円以上でWELQの記事の監修を依頼しているというもあります。今後のコンテンツ制作コストに関して同お考えでしょうか。

今回の問題では、SEOを主体に考えすぎていたと思っているので、まずはユーザーに喜ばれるコンテンツ作りをやっていきます。それにあたって、方針や手法は変えていかなければいけない。その過程で発生するコストはやっていかなければ分からない部分もあるので、何とも言えません。

–WELQも問題さえクリアになれば再開するのでしょうか。

そうですね、ユーザーにとって役立つサイトになれたら再開したいと思っています。信頼できる医療情報を求めている人たちは多くいるので、コンセプト自体が間違っているとは思っていません。ただ、記事の作り方や監修が問題でした。それをちゃんとやったときにビジネスとして成り立つかどうかは別の話。ユーザーにとって役に立つ記事が出せて、ビジネスとして成り立つのであればやっていきたいと思っています。

–SEOによって「検索結果を汚した」という声もあります。インターネット事業を手がける会社の一個人として、どうお考えでしょうか。

DeNAは1999年からインターネット事業を手がけています。、私自身もインターネットがすごく好きですし、インターネットサービスを多くの人たちに必要と思ってもらいたいので、そう言われてしまうのはつらいし、変えていきたい。

ただSEOそのものが悪いと思っておらず、ユーザーにとって役立つコンテンツを作り、その記事の検索順位を上げていければ、社会的にも良いことだと思っています。ただ、今回はテクニックに頼りすぎてしまっていたのではないかと思います。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

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ここ最近、その情報の不正確さや制作体制について各所で問題視されていたディー・エヌ・エー(DeNA)のヘルスケア情報キュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」。DeNAは11月29日夜に発表したプレスリリースで、同日午後9時をもってすべての記事を非公開とした。同時に、現在WELQで取り扱いのある全ての広告商品の販売を停止したと発表。ユーザーや広告主への謝罪を行っている。加えて、DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏を長とした管理委員会を設置。チェック体制の強化や信頼性の担保できる仕組みを整備していくとした。

さらに12月1日、今度は「DeNA Palette(ディー・エヌ・エー パレット)」の名称で展開するキュレーションメディアプラットフォームで運営する特化型のキュレーションメディアのうち、「MERY」(女性ファッション)を除く「CAFY」(飲食)「iemo」(インテリア)「Find Travel」(旅行)「JOOY」(男性向け情報)「cuta」(妊娠、育児)「PUUL」(アニメ、漫画)「UpIn」(お金)「GOIN」(自動車)の8つについて(WELQもこのDeNA Palette内のメディアの1つだ)、記事をいったん非公開にすると発表。また同時に、守安氏の役員報酬の減額(月額報酬の30%を6ヶ月間減額)を発表した。先行するWELQ同様に、広告販売も終了し、チェック体制などを強化して再掲載の体制を作るという。

「WELQ」のトップページ

「WELQ」のトップページ

TechCrunch Japanでは11月30日夜の時点でDeNA広報部からWELQについて「(薬機法上の問題だけでなく、他媒体の記事のリライトではないかとう)指摘も含めて、社内のチェック足りなかった。そこは変えなければいけない。そういった点も合わせて、どうやったらこのようなことが起きないか、指摘を受けないコンテンツ作りのためのフローの見直しをやる。そのためにリリースの最後にあるように管理委員会を立ち上げている」という回答を得ていたが、結果的にDeNA Paletteの中でも比較的独立性高く運営していたMERYを除き、全てのコンテンツを見直すことになった。

WELQの何が問題だったのか

DeNAがDeNA Paletteを発表したのは2015年4月のこと。WELQは一歩遅れて同年10月にスタートした。ニールセンの発表によると、2016年7月の利用者数は631万人。直近3カ月で2倍のユーザーを集めるまでに成長した。そんなWELQについて、この数カ月(特にここ数日)に渡ってオンラインメディアやブログが問題提起をしていた。その概要と当該の記事は次の通りだ。

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

(1)医学の知識に乏しい、もしくは誤った内容の記事が掲載されている。また薬機法に抵触する、もしくはその可能性が高い内容が含まれていること。

(2)DeNA Paletteはユーザーが自由に記事を投稿できるキュレーションプラットフォームであり、DeNAは記事の責任を負わないとしながら、実際にはDeNAがクラウドソーシングなどを用いて記事を発注していること。またその発注に際して、「コピペ(コピー&ペースト)」で他サイトのコンテンツをそのまま無断転載するのではなく、他サイトのコンテンツの語句を一部変えるような「リライト」や、責任追及回避のために「○○と言われています」といった伝聞形式の文章にするなど、ライターにマニュアルを用意して指示をしていたこと

(3)毎日大量の記事を投稿し(1日100本程度)、SEOの知識を駆使することで、(2)のような問題のあるコンテンツでGoogleの検索結果上位を取り、集客を行っていること(またはこういったコンテンツに対してGoogleが正しい評価をできていないこと)

医療情報に関わるメディアは「覚悟」を – 問われる検索結果の信頼性(医学部出身のライター、朽木誠一郎氏のYahoo! ニュース 個人)

DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言(BuzzFeed Japan)

DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)(永江一石氏のブログ「More Access! More Fun!」)※第4回まで続く

決算が読めるようになるノート:Welq問題は(DeNAだけじゃなくて)Googleも批判されるべきだと思う(Searchman Co-Founder柴田尚樹氏のnote)

また、WELQの執筆や運営に関わったと見られる人物のブログや、SEO手法について解説するブログなどもいくつか確認できた。信ぴょう性の高い内容に見えるのだが、実際に当事者だったのかは確認できていないことは注意して欲しい。

元welqライターからの告発

WELQの面接で落とされ、その後WELQが炎上して、思うところ

命に関わるヘルスケア、医療の情報である以上、その信頼性が担保できていないだけでなく、媒体側が「コンテンツの内容に責任を負わない」と明示しているのは大問題だ。現役の医師からも、ライターの知識不足により、リライトによって本来とはまったく異なる意味になってしまっているコンテンツもあるという話も聞いた。そんな問題のあるコンテンツが検索結果としては上位に来るものだから、患者が自身の治療法を勘違いしてしまって認識しているといった、医療の現場でのトラブルも現実に起きたという。

コンテンツ制作の実態についてはリンクしたBuzzFeed Japanの記事が詳しいが、キュレーションプラットフォームとうたいながらも、その実態は信頼性の担保できないコンテンツによる、SEO超重視のメディア運営であったことが露呈したと言っていい。「SEO=悪」ではないが、Googleの裏をかくことで検索結果の上位を目指したのは事実。それこそ以前にGENKINGが「Googleで検索しない」と言っていた言葉を思い出してしまう。確かにキュレーションメディアの登場以降、商品名やブランド名でググると、キュレーションメディアが上位に来ることが多い。

TechCrunchでは、DeNAが住まい領域の「iemo」とファッション領域の「MERY」を買収した際や、旅行領域の「Find Travel」の買収、DeNA Paletteを立ち上げた際にニュースとして紹介してきた。スタートアップの動向を伝える僕たちとして言えば、いわゆるイグジット事例としては喜ぶべき話だと思っている。

ただし買収後の各キュレーションメディアも、初期のYouTubeのように…と言えばきれいごとかも知れないが、記事や写真の転載にまつわるトラブルなどを聞かないわけではない状況だった。しかし——YouTubeがGoogleに買収され、著作権管理の仕組みが整い始めたように——DeNAという上場企業の傘下に加わることで健全な運営がなされていくと思っていた。例えば2014年11月にハフィントンポスト・ジャパンがDeNA創業者で取締役会長の南場智子氏へのインタビューをしているのだが、その最後にも、キュレーションメディアのライツ健全化に向けての取り組みに言及している。だが実態として、そういった状況にはなっていなかったというわけだ。

薬機法無視、低品質コンテンツ大量生産は誰が指示したのか

WELQの騒動を受けて、MERYを除くDeNA Paletteのキュレーションメディアがいったんクローズすることになった。ここで関係者から聞いたMERYの状況をお伝えすると、自社内に出版社出身を含めたライター・編集者を採用し、写真も自社スタジオで撮影するなどして、オリジナルコンテンツに注力し始めているのだそうだ。もちろんいまだ品質に疑問を持つような内容もあるようだが、カスタマーサポートも独自で持っていると聞いた。少なくともDeNA Paletteの全てのメディアの運用がまったく同じ状況という訳ではないようだ。

ではこのWELQが薬機法を無視し、盗用と言っても過言ではないコンテンツをクラウドソーシングで大量に生産するように指示した人物は誰なのだろうか? WELQは「編集部」を名乗っているが、実態として編集長を置いていない。DeNA社員を含む関係者からは、事業を手がけるのはパレットの事業を統括するDeNA執行役員、キュレーション企画統括部長でiemo代表取締役CEOである村田マリ氏に加えて、同氏が管掌するキュレーション企画統括部のグロースハック部の部長であるY氏、メディア部部長であるH氏が実質的に指示を出していたという声が上がった。特にY氏は前職でのSEOの知識を買われてDeNAに入社しており、DeNA内製のキュレーションメディアのグロースハックを担当していたという。だが結果として薬機法への抵触などをいとわない手法を取っていたため、DeNA Palette関係者内では違和感を持つ声もあったという。

炎上バイラルメディアの元社員らも関与

関係者から話を聞いてさらに驚いたのが、このDeNA内製キュレーションメディアの立ち上げに関わっていた「ある会社」の元社員たちの存在だ。

読者の皆さんは「BUZZNEWS」という名前を覚えているだろうか。2014年にライターのヨッピー氏がコンテンツの盗用問題を指摘。謝罪と和解金の支払いを行ったのちに閉鎖したバイラルメディアだ(経緯はTHE PAGEのこの記事に詳しい)。

このBUZZNEWSの運営元であったシンガポール・WebTechAsia社の複数人の元社員がDeNAに入社し、DeNA Paletteのキュレーションメディア群の立ち上げに従事していたのだ。元社員らは2016年に入ってDeNAを退社しているということだが、公器であるべき東証1部上場企業・DeNAのメディア立ち上げは、盗用問題でサイト閉鎖に追い込まれた人物らに教えを受けた、「クラウドソーシングでの終わりなきコピペとSEOノウハウの融合」(関係者)からスタートするという残念なものだったのだ。

ただ一方で、これはDeNAに限定した問題でもないと僕は思っている。前述のヨッピー氏は「ウェブメディアの信頼に対する瀬戸際ではないか」と語っていたのだけれどもまさにそのとおりで、気軽にメディアを作れるようになった今だからこそ、その情報の正確さやモラルなどを考えていかないといけない段階に来ているのではないだろうか。

DeNAでは今後、守安氏直轄の管理委員会を通じてコンテンツの健全化を図った上でDeNA Paletteを再開する見込みだ。

“正しい”医療情報はまだまだネット上に少ない。だからこそそういった情報を発信してもらえるのであればそれは本当に価値のあるメディアになるだろう。だが、信頼性の低いコンテンツを安価かつ大量に生産してきた体制を変えるのは決して簡単な話ではない。11月4日に開催された2016年度 第2四半期決算説明会では、キュレーションプラットフォーム事業が9月時点で事業の単月黒字化、第3四半期の黒字化予定を発表していたが、今回の動きは業績への影響も小さくない話だ。今後は健全化に向けた同社の動向が問われることになる。

なおTechCrunchでは今回の発表に関して、DeNA代表取締役の守安功氏に独占個別取材を実施している。その内容は以下のリンクから確認して欲しい。

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

キュレーションプラットフォーム事業の業績について

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