よく聞くマルチ商法的なサービスを批判するWest Tenthはアプリで女性の在宅ビジネスえの起業を支援する

シードファンドから150万ドル(約1億6400万円)の資金提供を受けたWest Tenth(ウェストテンス)という新しいデジタルマーケットプレイスは、女性が在宅ビジネスを始め、拡大させていくためのプラットフォームの提供を目的としている。女性は、モバイルアプリを使って、自分のビジネスを地域の人々に宣伝し、アプリに統合されたメッセージングプラットフォームにより問い合わせやリクエストに対応し、アプリの決済機能で取引を完了させることができる。

このスタートアップは、Lyn Johnson(リン・ジョンソン)氏とSara Sparhawk(サラ・スパーホーク)氏により共同で設立された。両氏は、金融機関で働いていたときに出会い、ジョンソン氏は金融業界に残ったが、スパーホーク氏は後にAmazon(アマゾン)に転職した。

ジョンソン氏は、自分の経験から、米国における女性の経済的不平等について理解を深めることができたという。男性が所有する金融資産1ドル(約109円)あたり、女性は32セント(約35円)しか所有していない。その大きな要因となっているのが、女性が育児のために離職し、それに伴い、数年間収入が得られなくなるためだと説明する。

「私たちの社会は、育児のために離職する女性を支援するのは得意だが、復職する女性を支援するのはひどく苦手だ」とジョンソン氏は言い「女性はこのことが分かっていて、当てにならない雇用の代わりに、次々とビジネスを始めている」と話す。

画像クレジット:West Tenth

West Tenthは、こういった起業を奨励することを目的としている。さらに広く言えば、女性たちが家庭で培った多くの才能が、実際にはビジネスになる可能性があることを理解してもらうことも目的としている。

このアプリでは、ホームベーカリーや調理師、フォトグラファー、ホームオーガナイザーやデザイナー、ホームフローリスト、乳幼児睡眠コンサルタント、パーティープランニングやイベントサービス、クラフト教室、フィットネストレーニング、ホームメイドグッズなど、さまざまなビジネスの入口を用意している。

同社は、このアプリが必ずしも男性を閉め出している訳ではないとしているが、子育てのために仕事を辞めるのは女性が多いため、現在の米国のホームビジネス市場は、女性向けになっている。しかし、同社のプラットフォームには男性もいる。

現在、これら起業家の多くはFacebook(フェイスブック)でホームビジネスを展開しているが、地元のグループに積極的に参加したり「いいね!」のリクエストに応えたりしなければ、顧客を獲得する機会を逃すことになる。対してWest Tenthでは、地元のビジネスを1つの場所に集中させることで、発見を容易にしている。

画像クレジット:West Tenth

このアプリでは、顧客は画面上部のボタンを使ってカテゴリー別に地元の店舗を閲覧し、買い物をすることができる。検索結果は提供される商品やサービスの写真、説明、開始価格とともに距離順に表示される。また、アプリのメッセージング機能により、見積もりや詳細情報を直接問い合わせることも可能だ。そして、顧客は、アプリに統合されたStripe(ストライプ)の決済機能を介して購入を完了することができる。West Tenthは、これらの売上に対して9.5%の手数料を取る。

West Tenthのもう1つの重要な側面は、教育部門のThe Foundry(ザ・ファウンドリ)だ。

ビジネスオーナーは、四半期ごとに100ドル(約1万900円)、または年間350ドル(約3万8200円)のサブスクリプション会員になることで、月2回のイベントに参加できる。イベントには、在宅ビジネスを立ち上げるための基礎知識、マーケティング、顧客獲得などに焦点を当てたクラスが含まれている。また、これらのクラスは、セッション単位の支払いとしたい顧客のために、1セッションあたり約30ドル(約3270円)のアラカルトでも提供されている。

さらに、参加者は在宅ビジネス市場での経験を持つゲストスピーカーから話を聞くことができ、同社のマスターマインド・ネットワーキング・グループに参加して会員同士で意見交換をすることもできる。

画像クレジット:West Tenth

教育やネットワーキングとビジネスオーナーシップを組み合わせたこのシステムは、よく見られるMLM(マルチレベルマーケティング、マルチ商法)企業に加入するのではなく、在宅ビジネスの起業家になる女性が増える可能性を秘めている。

「このビジネスを始めた時、MLM企業は、米国における未開拓な巨大人材プールである、離職した女性層に焦点を当てた数少ない産業の1つであることは認識していた」とジョンソン氏は述べ「しかし、MLM業界は非常に搾取的だ。儲かるのは上位1%のディストリビューターだけで、残りの人は損をする。そして、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)も失ってしまう。当社は、さまざまな面でMLMに代わる存在になりたいと考えている」と付け加える。

当然のことながら、West TenthのプラットフォームではMLMは許されていない。

画像クレジット:West Tenth

2020年夏にカンザスシティでのTechStars(テックスターズ)のプログラムを終えたこのスタートアップは、今回、プラットフォームを軌道に乗せるためにシードファンドから150万ドル(約1億6400万円)の資金を調達した。今回のラウンドには、主導したBetter Ventures(ベター・ベンチャーズ)に加え、Stand Together Ventures Lab(スタンド・トゥギャザー・ベンチャーズ・ラボ)、Kapital Partners(キャピタル・パートナーズ)、The Community Fund(ザ・コミュニティ・ファンド)、Backstage Capital(バックステージ・キャピタル)、Wedbush Ventures(ウェドブッシュ・ベンチャーズ)、およびGaingels(ゲインジェルズ)が参加している。

West Tenthは、この資金を製品開発とユーザー基盤の拡大に充て、より地域ビジネスに重点を置いた製品機能の拡充を目指している。これには、友人が購入したものを見ることができるといったショッピング支援機能や、動画によるデモンストレーションなどが含まれる。

2019年以降、West Tenthは、アプリに掲載されたわずか20のショップから、現在では主にロサンゼルス郊外とソルトレイクシティにある600以上のショップへとその対象地域を広げている。現在は、フェニックス、ボイシ、北カリフォルニアで展開中だ。

画像クレジット:West Tenth

West Tenthの事業拡大は、女性の従来型の雇用形態を悪化させ続けている新型コロナウイルス感染症危機に遅れて行われた。

学校や保育園の閉鎖と、女性の職に大きな影響を及ぼす雇用の喪失が相まって、これまで男性に比べてより多くの女性が失業に追いやられているMcKinsey(マッキンゼー)によると、パンデミックが始まって以来、労働人口に占める女性の割合は48%しかないにもかかわらず、離職者では約56%を女性が占めている。誰かが名付けた、この新型コロナウイルス感染症による「シーセッション(shecession:女性雇用の不況)」は、有色人種の女性に偏った影響を与えていることも研究で明らかになっている。

「500万人もの女性が職を失っている。解雇や一時解雇を余儀なくされた人もいれば、育児の負担が重くのしかかってきたために離職を選んだ人も数多くいる」とジョンソン氏はいう。

「育児を理由に女性が離職すると、なぜかそれは軽視され、復職がより困難になるという現実がある。そのため、今後1年半から2年の間に、在宅ビジネスを営んで収入を増やそうとする女性たちによる、自宅での経済活動が急増すると思う」と同氏は語った。

West Tenthのアプリは、iOSAndroidの両方で利用できる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:West Tenth資金調達リモートワーク女性、MLM

画像クレジット:West Tenth

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)