AIとサブスクモデルで補聴器に変革をもたらすWhisperが約37億円調達

数年前、Whisper(ウィスパー)の社長で共同創業者のAndrew Song(アンドリュー・ソン)氏は、祖父がつけていた補聴器について祖父と話していた。祖父は聴覚改善のために設計された医療機器に数千ドル(数十万円)を費やした。その過程で彼の生活の質は向上したが、補聴器は着けなくなってしまった。ソン氏の共同創業者も祖父母が同様の体験をしており、エンジニアや起業家として、より優れた最新の補聴器を開発するために行動を起こすことにした。

同社は10月15日、ゼロから構築した新しい補聴器とともにステルスモードから抜け出した。同社の補聴器は、騒がしいレストランにいるときやテレビを観ているときなどさまざまな聴覚の環境に対し、人工知能を利用して自動で学習・調整する。また、最初に数千ドル(数十万円)を払う必要はなく、3年間のサブスクリプションで月額料金を支払いさえすれば、その間無料でソフトウェアアップデートが受けられる。

同社は開発と並行して、Quiet Capital(クワイエットキャピタル)がリードする3500万ドル(約37億円)のシリーズBラウンドを発表した。既存投資家からはSequoia Capital(セコイアキャピタル)とFirst Round Capital(ファーストラウンドキャピタル)が参加した。同社は、本日発表した補聴器システム開発のために、累計では5300万ドル(約56億円)を調達した。

ソン氏は同社を立ち上げる前に祖父と話し、なぜ補聴器を装着しなくなったのか、どんな問題を抱えていたのか、なぜうまくいかなかったのか疑問に思うようになり、最終的にスタートアップを立ち上げることになった。

「そのことが我々を新しい製品の開発に向け突き動かしました。使用する人のニーズを適切にサポートし、時間が経つほどに良くなる補聴器です。補聴器自体が良くなると同時に、人工知能により使用者が捉える音を実際に改善する補聴器です」とソン氏は説明した。

創業チームにはテクノロジーとエンジニアリングのバックグラウンドはあったが、聴覚科学の専門知識がなかったため、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)オーディオロジー学科からRobert Sweetow(ロバート・スウィートウ)博士を招いた。

同社が開発したテクノロジーは、3つの主要な部分で構成されている。まず、耳に合う補聴器があり、次にウィスパーブレインと呼ばれるポケットサイズの『外箱』がある。同社によればそれが「イヤーピースとワイヤレスで連携し、その中で独自のAIベースのサウンドセパレーションエンジンが動く」。最後に、システム上のソフトウェアを更新するスマートフォンアプリがある。

  1. Whisper1

  2. Whisper2

  3. Whisper3

ソン氏によると、他の補聴器と同社製品を分かつのはAIだという。「困難な体験に遭遇し毎日が荒れ狂う中で、当社がサウンドセパレーションエンジンと呼ぶものが、あなたを助けてくれます。これは当社が開発した一種のAIモデルで、信号処理を支援してくれます。本当に独自性のあるものだと思います」と同氏は述べた。

さらにソン氏によると、自動運転車が時間の経過とともに学習し、ドライバーから会社にフィードバックされるデータから恩恵を受けるのと同じダイナミクスが補聴器で機能する。補聴器が時間をかけて信号をより適切に処理する方法を学習する。特定の個人だけでなく、Whisperのすべての補聴器ユーザーの体験が利用される。

同社はこの補聴器を店頭ではなく、補聴器の専門家のネットワークを通じて提供する。ソン氏によると、これは複雑な機器であるため、製品のフィットとサポートのために製品の一生にわたりオーディオロジストを関与させることが重要だと同社が認識しているためだ。

Whisperは、補聴器を3年契約、月額179ドル(約1万8800円)のサブスクリプションベースで提供する。これには、すべてのハードウェア、ソフトウェアのアップデート、聴覚ケアのプロからの継続的なサポート、3年間の損害保険、業界標準の機器保証が含まれる。同社は期間限定で月額139ドル(1万4600円)の導入価格を設ける。

月額179ドル(約1万8800円)だと、補聴器を借りるのに3年間で合計6444ドル(約67万7000円)になる。サブスクリプション終了時に、ユーザーは(契約を)更新して最新のハードウェアを手に入れるか、またはハードウェアを返却することができる。ユーザーが補聴器を所有するわけではない。

Widex(ワイデックス)やStarkey(スターキー)など、他の補聴器会社も補聴器にAIを使用しており、どちらも外部ハブを必要としないことは注目に値する。多くの補聴器会社がさまざまな支払いプランやサブスクリプションプランを提供しているが、Whisperは補聴器に対し異なるアプローチを提供する試みだ。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Whisper、補聴器

画像クレジット:Whisper

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(翻訳:Mizoguchi

Whisperライクな匿名画像共有アプリ「Pictory」が月間200万PVに–自撮りで炎上しない世界の実現を目指す

月間アクティブユーザー12億人を越えるFacebook。そこでの開かれたコミュニケーションと逆行する形で、10代の若者を中心に、クローズド、匿名といった特徴を持ったサービスが登場し、注目を集めている。

送信したメッセージや画像が数秒で消えるメッセンジャーアプリの「Snapchat」、匿名で画像とつぶやきを投稿できる「Whisper」、FoursquareやInstagramのチェックイン情報をもとに、知り合いと出会わないようアラートを出す「Cloak」など、そのアプローチもさまざまだ。

日本でも同様の傾向があるのか、Whisperライクなサービス「Pictory(ピクトリー)」が賑わいを見せはじめているという。PictoryはAndroidアプリとPCで利用できるサービスで、カクテルが1月に公開した。ユーザーが持つ画像を加工してアップロードし、テキストを入れた作品として匿名で投稿、共有できる。投稿した作品にはお気に入りに入れたり、匿名でコメントをつけたりできる。ノンプロモーションながら月間の投稿数は1万4000件、月間200万ページビュー(PV)まで成長しているという。

特徴的なのはアクティブユーザー1人あたりの投稿数だ。アクティブユーザーの実数は答えてもらえなかったが、3月のアクティブユーザ1人あたりの平均作品投稿数は1日0.45件と、2人に1人が1日1回投稿をしているという状況だという。メインユーザーは10代の学生。そのため、下校時間となる夕方から深夜にかけてトラフィックが集中する傾向があるという。

「自撮り」でも炎上しない仕組み作り

僕が投稿された画像を見て気づいたのは、「Selfie」、いわゆる「自撮り」画像の多さだ。多くのユーザーが自分の写真や友人、カップルでの写真にテキストをつけてアップしているのだ。そしてそこには独り言やポエムから、自分のメイクが可愛いか、ファッションがおしゃれかといった質問など、さまざまなメッセージが添えられている。

自撮りが多いと気になるのは、それらに対する罵詈雑言のコメントだ。Pictoryでは——悪質なユーザーに対策がなされる可能性もあるとして詳細な方法は聞けなかったが——クラウドソーシングを使った人力での監視やテクノロジーを組み合わせることで、「自撮り画像をアップしても『危険』と言われない、居心地のいい場所を作っており、変な方向に荒れたりしないようにしている」(カクテル取締役CTOの天野仁史氏)とのことだ。公序良俗に反する画像、コメントも削除しているそうだ。

インキュベイトファンドのほか、メルカリ山田氏やモイ赤松氏が出資

カクテルは2012年の設立。インキュベイトファンドのほか、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏やモイ代表取締役の赤松洋介氏が出資をしている。

同社ではこれまでTwitterやFacebookとは異なるソーシャルグラフの構築を目指してサービスを開発してきたという。それは実名制でもなく、決まったタイムラインがあるわけでもない、かといって「出会い系」にもならないもの——現在代表取締役を務める水波桂氏はこう語る。

今後はダイレクトメッセージ機能をはじめとしたコミュニケーション機能を強化する。「『匿名かつ居心地のいいところ』ができないかを考えている。友達やつながりを持てて、でもその関係をリセットできたりというもの」(天野氏)

そのほか、画像の検索機能やiPhoneアプリの提供などを予定する。ただしiPhoneアプリに関しては、「開発サイクルの早いAndroidアプリで機能が一通りそろった時点で提供していきたい」(天野氏)


匿名で「ささやき」をシェアするWhisper、トピックス機能を実装して使い勝手が大幅アップ

Sequoiaなどが出資するWhisperは、匿名で「ささやき」(whisper)を共有するソーシャルネットワーク(secret sharing application)だ。このWhisperが新版のアプリケーションをリリースした。いろいろなトピックス(タグ)を検索してブラウズできるようにしたものだ。また、「ささやき」を簡単に作成できるようにする、新しい仕組みも導入している。

ちなみにWhisperは、写真とテキストを一緒にして、個人的な「ささやき」を共有するためのツールだ。ウェブサイトではPostSecretというものがずいぶん前から存在するが、そのモバイルアプリケーション版といったイメージだ。匿名で「ささやき」を公開できるので、他の人にどう思われるかとか、あるいは個人的な評判に影響を与えてしまうのではないかというようなことは心配せずに利用することができる。

サービスのスタートは今年初めの頃で、そこから急速な成長を遂げている。月間ページビューも、5月時点の15億から伸びて、現在では30億に達している。利用者は、他の人の「ささやき」を閲覧するのに30分以上を費やしている。

最新版では「ささやき」を投稿する際には、システム側で自動的に関連トピックスを検知して、投稿にタグ付けを行ってくれるようになっている。さらに投稿に付加する写真までも自動的に探しだしてきてくれるのだ。もちろん提示された写真が気に入らなければ、他の写真を探したり、あるいは自前のライブラリから写真をアップロードすることもできる。

こうした機能強化により、一層多くの「ささやき」が投稿されるようにもなることだろう。但し、同じ範疇に入る他のアプリケーション同様、Whisperの利用者もコンテンツを投稿するよりも、むしろ他の人の作成した「ささやき」を愉しむ方に軸足をおいている。自分で「ささやき」を投稿することよりも、他の人のひそかな投稿を見ることの方に面白さを感じているわけだ。

これまで、そうした人にとってのオプションは3つしかなかった。新しい「ささやき」から見ていくか、最もポピュラーなものを見ていくか、あるいは近くにいる人の投稿を閲覧するかだ。しかし今回のアップデートにより、自分の興味に基いて見ていくということができるようになったわけだ。

「これまでは膨大なコンテンツを充分に愉しむことができない状態になってしまっていました。興味の持てないものも見ていかざるを得ないという仕組みになっていたのです」と、CEOのMichael Heywardが電話インタビューでこたえてくれた。「利用する人に応じた、それぞれに適したコンテンツを提供する方法を構築することが急務だったのです」。

今回のアップデートで、Whispers内をトピックスによって検索していくことが出来るようになった。閲覧者の興味に応じて、自分の求める情報を追い求めていくことが可能となったのだ。単純なことのようにも思えるが、実のところトピックス毎にまとめて読めるようにするためには、バックエンド部分に相当な変更を加えることとなったようだ。

トピックスの種類としては100万種類もある。どのトピックスに属するのかは、見ている「ささやき」の下に記されている(訳注:いわゆるタグの形式で付加されます)。すなわち、検索した場合はもちろん、偶然であった面白そうなトピックについてでも、該当するトピックスを指定することで同じようなテーマの「ささやき」を追いかけることができるわけだ。

「これまでとは異なる魅力を付け加えることができたと思います」とHeywardは言う。「YouTubeでも、特定のストリームないし人気ビデオしか表示できないようなものだったら今ほどの人気を獲得することはなかったでしょう。私たちもYouTubeのように柔軟なコンテンツ選択メカニズムを導入したわけです」とのこと。

トピックス検索の機能が加えられて、かつすべての「ささやき」にトピックスが関連付けられたことにより、登録されている「ささやき」を外部から利用したくなるケースも考えられるようになた。Heywardも、外部から利用できるAPIを用意するのならば、今回のトピックス機能に関連したものになるだろうと話している。

Whisperはロサンゼルスに拠点をおき、現在の従業員数は30名だ。これまでにSequoia Capital、Lightspeed Venture Partners、Trinity Ventures、ShoedazzleのファウンダーであるBrian LeeおよびFlixsterのJoe Greensteinたちから、合計で2400万ドルの資金を調達している。

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(翻訳:Maeda, H


秘密共有アプリのWhisperが月間15億ページビューを達成、Android版も公開

秘密共有アプリのWhisperは、昨年秋の公開以来著しい成長を遂げてきた。しかし最近までiOSのみでしか利用できなかった。今週Google PlayストアでAndroid版が公開され、Whisperは多くの新しいユーザー、特に重要な年齢層である18~24歳のヤングアダルトにも利用可能になった。

ご存じない方のために説明すると、Whisperは、他のユーザーと簡単に匿名で秘密を共有するために作られた超ホットなアプリだ。モバイル版のPostScretとも言うべきもので、ユーザーは画像をアップロードあるいは検索し、そこにテキストメッセージを付け加えることができる。投稿した “Whisper”[ささやき]はアプリの全ユーザーと共有され、他ユーザーから得られたハートやレスポンスの数に応じて最も人気の高いものがトップに掲載される。

公開レスポンスの他に、Whisperユーザーは互いにプライベートメッセージをやり取りできるが、そのためにはこの機能のための料金を支払わなければならない。これはマーケティング費用を低く抑えるだけでなく、そうでなければ出会うことのなかった相手とつながる方法をユーザーに提供している。

アプリは今も恐ろしい早さで成長している。以前本誌がWhisperを調べた時、ユーザーがアプリ上で見ていたのは月間約10億ページだった。現在それが約15億ページになっている共同ファウンダーのMichael Heywardは言う。Whisperの売上の大部分を占めるアプリ内でのメッセージングはもっと急激に伸びている。Heywardによると、メッセージングを使うためにサインアップした ― かつ料金を払った ― ユーザーの離脱率は事実上ゼロだ。

「この機能の利用者が新しく加わるたびに、われわれの成長はいっそう指数的になる」と彼は言った。その結果、現在プライベートにやりとりされるメッセージは数百万件に上る。

Whisperは、過去数週間にわたって素晴らしい成長を遂げてきたが、iOS専用であるために対象市場が限られていた。Whisperの最も重要なユーザー基盤である18~24歳層にはAndroidユーザーが多い傾向にあるため、特にそれは真実だった。このためiOSアプリだけでは最重要層の約40%にしかリーチできていないとHeywardは考えた。

このことを念頭に、チームは夜を徹してAndroidアプリのリリースにこぎつけた。アプリの開発を始めたのは6週間ほど前で、人気のiOSアプリの全機能を再現することを目標にした。

Androidアプリは今週始めにGoogle Playに登場し、初めの48時間で5万ダウンロードを記録した。会社としてプロモーションは一切行っていない。しかも、初期AndroidユーザーのエンゲージメントはiOSユーザーと同等あるいはそれ以上の水準だ。例えば、初期Androidユーザーの40%がすでにWhisperを投稿している。

Whisperは、Lightspeed Venture Partnersのリードで300万ドルの資金を調達している。他に、Trinity Ventures、Shoedazzleのファウンダー、Brian Lee、FlixsterのJoe Greesteinらも参加した。同社の従業員は現在14名だが、近くあと何人か増やす予定だとHeywardは言っている。

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(翻訳:Nob Takahashi)