宅配ネットクリーニングのリネット、独自のトラッキングシステム「エスコートタグ」を発表

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宅配ネットクリーニング「リネット」を運営するホワイトプラスは10月6日、富士フイルムイメージングシステムズと共同開発した独自のRFIDを用いたトラッキングシステム「エスコートタグ」を発表した。10月末からふとんの宅配クリーニング「ふとんリネット」で試験運用を開始する。

リネットは、ネット予約で集荷から配送まで頼める宅配クリーニングサービス。関東圏の30代から40代の共働き家庭を中心に利用が拡大。9月には会員数20万人を超えた。9月末からは「“家事の延長”からクリーニング体験を革新する」として「Love more」プロジェクトを始動、「物流」「生産」「商品」の3軸で改革を行っていくとしている。

第1弾として9月29日に発表されたのは、午前0時まで衣服を集配する「夜間便」と、衣類を工場からハンガーにつるしたまま配達する「シワなしハンガー便」の二つのサービスだ。クリーニングの集配が定期的なサービスであることに着目して独自の物流インフラを開発したもので、「物流」面からクリーニングサービスの革新につなげていく。

そして今回発表されたエスコートタグは「生産」のイノベーションとしての導入となる。ホワイトプラス広報・渉外グループマネージャーの中島規之氏によれば、エスコートタグは「クリーニングの生産性を2倍に効率化することを目指し、IoT時代への対応も視野に入れた独自のシステムだ」という。

エスコートタグのRFIDタグは、クリーニングに必要な耐水性、仕上げのアイロンやプレスへの耐熱性、業務用ドラム式洗濯機洗浄への耐衝撃性、ドライクリーニングへの耐油性などを備え、かつ薄く、軽く、柔らかい業界初の独自タグだ。この独自RFIDタグとこれに対応したリーダ/ライタ、アプリケーションを使ったエスコートタグシステムで、検品したクリーニング品の現在地をリアルタイムに把握。工場内で衣類がどの工程にあるかをトレース可能にする。

「エスコートタグ」のRFIDタグ

「エスコートタグ」のRFIDタグ

10月末からふとんリネットにて試験運用を開始し、今後は全工場への導入を目指す。将来的には工程を可視化し、ユーザーが宅配便のように自身のクリーニング品の状況を確認できるサービスを提供したり、注文後の依頼内容を柔軟に変更したりするなど、サービスの拡張も考えているという。さらに「大量のデータを活用することで、例えばクリーニングのタイミングをリコメンドするなど、お客様の満足度を向上するサービスを将来的に提供していきたい」と中島氏は話す。

リネットでは、10月中には物流・生産に続く3軸目の「商品」でも、業界初となる新たなサービスの投入を予定しているそうだ。ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏は「20万人突破は会員の支持のたまもの。現在までに総額で7億円の調達を実施してきたが、すべて品質と顧客の利便性向上に投資してきたことが評価されていると考えている」と話している。

「送料無料のラインを3000円から1900円に引き下げたり、子ども服の料金を標準価格の3割引に設定したり、独自の洗剤を開発するなど、これまでにもさまざまなイノベーションを起こしてクリーニング体験の変革を実施してきた。今回のLove moreプロジェクトはクリーニング革命の集大成とも言えるものだ。顧客からは常にシビアな目で見られている。品質の追求と顧客の利便性向上に対して、今後もより投資していく」(井下氏)

宅配クリーニングのホワイトプラス、YJキャピタルから4億円の資金調達

宅配ネットクリーニング「リネット」を運営するホワイトプラスは2 月10 日、ヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJ キャピタルのファンド「YJ2 号投資事業組合」を引受先とする4億800万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

ホワイトプラスは2009年の創業。これまでリネットのほか、宅配トランクルームサービスの「HIROIE」などを展開してきた。2013年8月にはジャフコから3億円を調達し、同年10月にサービスをリニューアル。さらに2014年4月からはタレントの坂上忍さんを起用したCMやテレビ番組のスポンサーをするなどのプロモーションも実施してきた。

リネットは、ネットで商品の引き取り日やお届け日を指定すれば、自宅までクリーニングに出したい衣服を家まで引き取りに来てくれる宅配クリーニングサービス。2013年12月末に4万6548人だった会員数は、2014年12月末には10万5466人と2倍超に増加。サービスを急拡大している。ユーザーは都市部の既婚者が中心だという。またユーザーの増加に合わせて、提携する工場も拡大。リネットのユーザーのクリーニングを専業で行う専用工場が3つ、リネットのクリーニングと自社など他のクリーニングを行う加盟工場が7つあるそうだ。

ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏

「言葉は悪いが、クリーニング事業は自社が成長する手段の1つでしかない。我々はイノベーションが起こっていない領域の事業をネットとリアルで変えていく企業になりたい。その橋頭堡としてのクリーニングサービスでありトランクルームサービスだ」—ホワイトプラス代表取締役の井下孝之氏はこう語る。

今回の調達で同社が進めるのはサービス品質の向上。「2014年までは『営業の会社』にするべきか迷ってもいたが、今は原価率を上げてでもプロダクトをよくすることに注力している。NPS(ネットプロモータースコア:顧客のロイヤルティを測る指標。0から10で評価される)で10をつけるユーザーがいる一方で、1や0というユーザーもいる。イノベーションが起こっていない領域を変えていくと語っている中で、一部の人だけが満足するサービスにしたくない」(井下氏)。例えば今では、梱包時の緩衝用紙の色をどうするか、安全ピンをつけるかつけないかといった細かな点まで話し合っているという。

ところで、4億円を超える調達によってクリーニング工場の買収や自社工場の立ち上げなどはしないのだろうか? 井下氏はこれを否定し「我々はいわばファブレスのプラットフォームになりたい」と語る。さらにこれまでのクリーニング業界について、「努力しないでも(クリーニング店を選ぶ基準が「近くにあること」という明確なニーズがあって)売れる商材だから、品質のいい会社も悪い会社も生き残っていた業界。だから悪い会社があぐらをかいているとことがある。それをディスラプトしたい」とした。同社は2020年までに会員数300万人を目指す。