米国がウィキリークス創設者アサンジ氏の身柄引き渡しを求める訴えで勝訴

WikiLeaks(ウィキリークス)の創設者Julian Assange(ジュリアン・アサンジ)氏に、米国への引き渡しが間近に迫っている。精神衛生を理由とする2021年1月の英国判事の引き渡し拒否に対する米政府の上訴で、英国高等裁判所が米政府の主張を認めたためだ。

引き渡しを許可するかどうか、最終決定は英国の国務長官が行う。

米国は、アサンジ氏をハッキングの共謀とコンピュータの不正使用の容疑で裁判にかける意向だ。また、同氏は物議を醸しているスパイ活動法に基づくいくつかの罪にも直面している。

裁判の概要によれば、アサンジ氏は主に2009年と2010年に、しかし「それ以降もある程度」、WikiLeaksのウェブサイトを通じて「防衛および国家安全保障に関する資料を入手し、開示した」ことに関連する18件の罪に問われている。

極端な人物であるアサンジ氏を擁護する人たちは、権力に真実を伝えたことで迫害されているとし、米政府が機密情報の公開などの罪を追求していることから、同氏の引き渡しはジャーナリズムに冷ややかな影響を与えるだろうと主張している。

アサンジ氏は、元米軍兵士で内部告発者の Bradley Manning(ブラッドリー[現チェルシー]・マニング)氏から情報を得た。マニング氏は何十万もの軍事・外交機密文書を明らかにし、アサンジ氏はそれをWikiLeaksを通じて公開して米政府に大きな恥をかかせた。

漏洩した文書には、イラクやアフガニスタンでの民間人の死を含む空爆の報告書やビデオ、数十万もの米国外交文書などが含まれていた。

英国高等裁判所は、現地時間12月10日に発表した判決要旨の中で、アサンジ氏に自殺の危険性があるという地裁判事の以前の懸念に関連して、米国政府からの一連の保証を受け入れたと述べた。

同裁判所は、4つの保証が提供されたと述べ、アサンジ氏が現在非難されている行為に関して「特別な行政措置」の対象となることや、米国コロラド州フローレンスのセキュリティが最上級の刑務所に収監されること(公判前または有罪判決後)などの可能性を排除するこれらの保証に「満足」していると付け加えた。

裁判所要約によると、米国はまた、アサンジ氏が有罪となった場合、オーストラリアに移送されて刑に服することを申請することに同意し、米国で拘束されている間は「拘束されている刑務所の資格のある医師が推奨する適切な臨床的・心理的治療」を受けることに同意した。

「裁判所は、アサンジ氏のために主張されたこれらの保証に対するさまざまな批判を退け、その保証が地裁判事の決定に至った懸念を満たすのに十分であると納得した」と付け加えている。

アサンジ氏の引き渡しを許可するかどうかの最終決定は、英国の内務大臣であるPriti Patel(プリティ・パテル)氏に委ねられる。

10年前には、英国のコンピューターハッカーであるGary McKinnon(ゲイリー・マッキノン)氏が、軍のコンピューターをハッキングした容疑で米国に送還されるのを、当時の内務大臣だったTheresa May(テレサ・メイ)氏が人権上の理由で申請を却下したために免れた。

オーストラリアのパスポートを持つアサンジ氏は、英国籍ではない。

同氏は以前、2018年にエクアドルから市民権を与えられていた。しかし2012年にレイプや性的暴行の疑惑に直面したスウェーデンへの送還を避けるために逃れたエクアドルの大使館から同氏を追い出そうとする試みは失敗した。

これらの容疑はその後取り下げられたが、2019年にエクアドルは同氏の亡命を撤回し、同氏は大使館に政治亡命を求めることで英国での保釈条件に違反したとして、ロンドンの警視庁に逮捕された。

また、2021年初め、エクアドルはアサンジ氏の市民権を剥奪した。

画像クレジット:Jack Taylor / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi