Wikipediaの英語バージョンの記事数が600万超え

米国時間1月23日、Wikipediaが重要なマイルストーンを超えた。この世界最大のオンライン百科事典の英語バージョンの記事が今や600万本以上になったのだ。

この偉業は、このウェブサイトの創設から約19年後に達成され、Wikimediaの主席顧問であるRyan Merkley(ライアン・マークリー)氏によると、「人間が力を合わせればできること」の証(あかし)だ。なおWikimediaは、この遍在的なオンライン百科事典を運営している非営利団体だ。

600万番目は、19世紀のカナダの学校教師で紀行作家でフィクションのライターでもあったMaria Elise Turner Lauder(マリア・エリーゼ・ターナー・ローダー)氏に関する記事だ。この記事は、Wikipediaの長年のエディターであるRosie Stephenson-Goodknight(ロージー・スティーブンソンーグッドナイト)氏が執筆した。

Wikipediaは数十か国語で利用できるが、最も記事数が多いのは英語バージョンだ。英語エディションは2015年後期に500万記事を超え、第2位はおよそ230万記事のドイツ語バージョン、第3位が約210万記事のフランス語バージョンだ。

ウェブサイトとしてビジター数がいちばん多いのも英語エディションで、公表されている数字によると英語バージョンのウェブサイトは1日の平均ページビュー数が2億5500万PVだ。SimilarWebのウェブアナリティクスによると、Wikipedia全体はビジター数が8番目に多いウェブサイトだ。

ここ数年Wikipediaは各国でセミナーを開き、それぞれの国の言葉による寄稿者(コントリビューター)を育成してきた。またツールを改良して、執筆や公開、他からの引用などがやりやすいようにした。

今日600万記事を達成した英語版Wikipedia、おめでとう! @WikiWomenInRedの@Rosiestepが作ったその記念すべきページは、19世紀の旅行好きで博愛主義者のライターMarie “Toofie” Lauderの略歴だ。

Jimmy Wales(ジミー・ウェールズ)がWikipediaを創設したとき彼は、目標は「人類のすべての知識へのフリーなアクセスだ」と言った。一部の推計によると、人類のすべての知識は1億400万記事を必要とする。そしてその達成には、あと20年かかる。

画像クレジット: Simon Dawson/Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ウィキメディア財団がインドが提案する仲介者責任規則に深い懸念を表明

Wikipediaをはじめ、さまざまなプロジェクトを運用している非営利団体であるWikimediaが、インド政府に国の仲介者責任規則の変更案を考え直すよう促している。その変更は大量の企業と5億あまりの人々の情報へのオンラインアクセスに影響を及ぼす。

同団体はインド政府に、仲介者(情報の授受を仲介するサービス)ルールの最新の変更案を公開し、インドではインターネットがどのように統治されるべきかに関し、利害を有する者全員に十分な情報に基づく堅固な議論に参加する機会を与えるべきと求めた。

インドの仲介者ルールに対する政府の改定案は12月に提出され、その後数カ月内に承認されると予想される。その提案によると、インドの電子IT省は仲介者アプリケーション(ユーザー数500万以上のサービス)に、インド国内にオフィスを持ち法律的問題に責任を持ちうる上級役員を置くよう要求できる。

Wikimedia Foundationの法務担当Amanda Keton(アマンダ・ケトン)氏は米国時間12月26日、中間者ルールのインドの改定案は、ユーザーの寄与貢献に依存する公開編集方式で、誰もが新しい記事を書いたり既存の記事を改訂できるWikipediaの事業に深刻な影響を及ぼし、他の団体にも影響が及ぶと述べた。

彼女はまた、そのルールにより非営利のテクノロジー団体に相当量の財務的負担が生じ、またインドのインターネットユーザーの表現の自由を損なうと説明する。Wikimedia Foundationはその懸念を、インドの電子IT省長官であるRavi Shankar Prasad(ラビ・シャンカール・プラサード)氏に伝えた。その書簡を誰もが見られるように、自らのブログにも載せた。

仲介者ルールのインドの最近の変更案はインターネットを地元住民にとってより安全な体験にするために起案され、仲介者は「不法な情報やコンテンツへの公開アクセスを事前に見つけて削除または無効化するための」自動ツールをデプロイしなければならないとしている。

この変更案を懸念する者は多い。今年初めにはMozillaとMicrosoftのGitHub、およびWikimediaの連名書簡により、仲介者に不法コンテンツを事前に排除させるというインド政府の要求は、「(仲介者でなく)不法な活動を行っている悪者を有責とし、企業はそういう行為を知っていたときにのみ責任を負うという、既存の法に盛り込まれた細心の均衡を崩す」と主張した。

このグループはまた、インド政府の案では「インターネットサービスの上の監視の要求が大きく拡張される」と注意を喚起した。GoogleやFacebookなども含まれるインドのいくつかの業界団体も、政府案の大幅な変更を求めている。米国時間12月16日に発行された公開書簡でWikimediaのケトン氏もこれらの懸念を繰り返し、「コンサルテーションに参加した者も一般公衆も、昨年以降はルールの新しい案を目にしていない」と言っている。彼女はまた、最近提案されたルール案で仲介者の定義の範囲が広くなりすぎているのを改めるよう政府に求めている。

インドはWikipediaの5番目に大きな市場であり、先月の訪問者は7億7100万件を超えている。Wikimediaはインド語のWikipediaを拡張するために、人々を招いていろんな事業を行っている。

ケトン氏はインド政府に、オンラインのコミュニケーションに「追跡可能性」を導入する要件を考え直すよう説得した。それがあるとWikipediaの寄与貢献者たちが自由に参加することが困難になるからだ。追跡可能性についてはWhatsAppが、そのような要求に応じたら、どのユーザーも自分のメッセージの暗号化を危険にさらすことになると語った。

関連記事: インドが政府による個人データアクセスを可能にする新法案を提案

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ウィキペディア禁止は違憲とトルコ憲法裁判所が裁定

トルコ政府がWikipedia(ウィキペディア)を禁止して2年半がたち、Wikipedia側の訴えが認められたようだ。トルコの憲法裁判所は今週、Wikipediaを閲覧できないようにした2017年の措置は言論の自由を侵害していると裁定した。

Wikimedia(ウィキメディア)財団は、禁止措置について2017年5月から訴えてきた。今回10対6の評決で訴えが認められ、これによりユーザーが誰でも編集できるオンライン百科事典はトルコで再び利用できるようになる見込みだ。

2017年にトルコは、イスラム過激組織Isisや他のテロリストグループとつながっている記事があるとして、ウィキペディアへのアクセスを完全に遮断する2つめの国となった。こうした動きについてトルコ政府は、オンラインセキュリティの脅威を抑制するための法律を活用した行政上の対策と説明した。

ウィキペディアの創設者Jimmy Wales(ジミー・ウェールズ)氏は「Welcome back, Turkey!(お帰り、トルコ!)」という言葉とともに、トルコ国旗の前での自撮り写真をツイートした。しかし、いつからウィキペディアが再び利用できるようなるのかは示されていない。

「今日の憲法裁判所の裁定は、自由な知識とトルコの人々にとって喜ばしい進展だが、人類史上最大の知識のコレクションを自由闊達に、そしてコラボしながら構築し続けるにはこの他にも脅威となるものがある」と同財団は裁定を祝う投稿の中で書いている。「知識や会話の力を信じる我々にとって今日はいい日だ。この裁定には勇気付けられる。全ての人に知識が開かれている世界に向け、我々は今後も取り組みを続ける」

画像クレジット: James Leynse / Contributor / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

悪意あるDDoS攻撃を受け、Wikipediaが欧州の広範囲と中東の一部でダウン

Wikipediaが米国時間9月6日にサイバー攻撃を受けて、いくつかの国でアクセスができなくなった。

downdetector.comによると、欧州の広範囲および中東の一部のユーザーが、英国夏時間9月6日午後7時(日本時間9月7日午前3時)の直前から停止に遭遇している。

WikimediaのドイツのTwitterアカウントは「Wikimediaサーバーは、現在大規模で非常に広範囲なDDoS(distributed denial of service)攻撃で麻痺しています」と投稿している。

サイトは次の声明を発表した

本日Wikipediaは悪意のある攻撃に見舞われ、いくつかの国で断続的にオフラインになりました。攻撃は進行中であり、私たちのサイト信頼性エンジニアリングチームは、攻撃を食い止め、サイトへのアクセスを回復させるために懸命に取り組んでいます。

世界で最も人気のあるサイトの1つとして、Wikipediaは時に「悪意ある者」をひきつけてしまうことがあります。他のウェブ同様に、私たちは脅威が絶えず進化を続ける、ますます高度で複雑な環境の中で運営を行っています。このため、WikimediaコミュニティとWikimedia財団は、リスクを定期的に監視して対処するための専用のシステムとスタッフを用意しています。問題が発生した場合には、私たちは学び、改善し、次回はより良く対処するために準備を行います。

この種の攻撃を私たちは糾弾します。それらはWikipediaをオフラインにするだけではありません。妨害攻撃は、情報に自由にアクセスして共有する、すべての人にとっての基本的な権利を脅かします。Wikimedia運動と財団に関わる私たちは、すべての人のためにこれらの権利を保護することに、献身的に取り組んでいます。

現在、世界中のどこであろうともWikipediaへのアクセスを回復できるように、作業を続けています。続報は随時お知らせします」。

英国の大部分とポーランド、フランス、ドイツ、イタリアでサイトがダウンしていることが報告されている。

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(翻訳:sako)

Googleが日頃のお返しに$2MをWikipediaに寄付

Googleは長年、そのほかの多くの企業と同じく、コンテンツをWikipediaに依存している。そこで今度は、GoogleとGoogle.orgがお返しをする番だ。

Googleのチャリティー部門Google.orgの代表Jacquelline Fullerが今日、Wikimedia Endowmentへの200万ドルの寄付を発表した。別途110万ドルの寄付が、Wikimedia Foundationへ行く。それはGoogleの社員たちの意思で、GoogleからWikipediaへ直接寄付が行われるようになったためだ。Wikimedia FoundationはWikipediaを支える非営利団体、Endowmentはファンド(基金)だ。

Wikimedia Foundationがブログに書いている: “GoogleとWikimediaは多様なユーザーの役に立ちまたその多様性を反映しているインターネットにおいてそれぞれ、ユニークな役割を演じている。われわれは今後もGoogleとの協働関係を維持し、世界中のコミュニティとの密接なコラボレーションを継続していきたい”。

GoogleとWikipediaは、寄付による関係にとどまらず、Project Tigerの拡張でも協力している。それは、Wikipediaをより多言語化する企画だ。そのパイロット事業では、12のインド語群言語で書かれた、各地域に関連するコンテンツの量を増やした。今後はさらに、10の言語に対応する予定だ。

“編集者を支援して情報や知識の量を増やしていくだけでなく、Wikipediaを今後の何世代にもわたって支持し支援して、未来の人たちが十分有益に利用できる状態を維持する努力も重要だ”、とFullerはブログ記事で言っている。

3月にGoogle傘下のYouTubeは、Wikipediaからの情報をもとに、陰謀的なビデオと闘うことを決めた。そのときWikimediaの事務局長Katherine Maherは、Wikipediaを利用する企業がそのお返しをするとよいのだが、と述べた。

そのときMaherはこう言った: “世界中の人たちにWikipediaを利用し、共有し、加筆し、リミックスしてほしい。それと同時に、Wikimediaのコンテンツを利用する企業には持続可能性のためにお返しをしてほしい”。

GoogleはこれまでWikimediaに累計で750万ドルあまりを寄付している。たとえば2010年にはWikimedia Foundationに200万ドルを助成した。しかしGoogleがWikimedia Endowmentに寄付するのは、これが初めてである。この基金は、Wikimediaの長期的な成功を支えている。

Wikimedia Foundationにお返しをしているのは、Googleだけではない。昨年晩くにはAmazonが、Alexaの情報アシスト能力がWikipediaに相当依存していることを認めてWikimedia Endowmentに100万ドルを寄付した

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Wikipedia上の壊れたリンク(ページが存在しないリンク)をInternet Archiveらの努力で大量に修復

【抄訳】
Webは、脆(もろ)い場所だということがわかってきた。企業や政府機関や教育機関や個人や団体が、しょっちゅう、サイトを立てたり下ろしたりしている。でも問題は、Webが記録のシステムになってることだ。だからページが存在せずリンクが切れていたら、その記録が得られない。そこで、多くのWebページを永久保存しているボランティアサイトInternet ArchiveとWikipediaが協力して、900万の壊れたリンクを生き返らせ、わずかひとつのナレッジベースではあるけれども、この問題を解決した。

Internet Archiveは、できるかぎり多くのWebサイトのコピーを作り保存して、Webのアーカイブ(‘文書館’)を作っている。なくなったページのリンク(URL)が分かっているときは、Internet ArchiveのアーカイブWayback Machineで3380億ページのWebページを検索できる。そこには、World Wide Webの草創期からのページがある。ただし問題は、現状ではリンクのURLが正確に分かってないと探せないことだ。

しかしWikipediaのページ上の壊れたリンクは、ページのソースにそのリンクのURLが当然ある。WikipediaのコントリビューターMaximilian Doerrが、ソフトウェアの力で、その壊れたリンクの問題を解決した。彼は、Internet Archive botを略したIAbotというプログラムを作った。Internet Archiveがもう一人クレジットしているStephen Balbachは、DoerrとInternet Archiveに協力して、Wikipediaのアーカイブを調べ、データエラーを修復するプログラムを書いた。

まず、IAbotが壊れたリンクを見つけた。そういうページは、404 “page not found”、というエラーを返す。見つかった壊れたリンクをBalbachのプログラムがInternet Archiveで検索し、それがアーカイブにあったら、アーカイブのリンクに置き換える。物理的には同じページではないが、コピーだから内容は同じ…コピーを作った時点のまま…だ。

これで、死んだリンクが生き返る。

これまでの3年間で彼らのソフトウェアは、22のWikipediaサイトの600万のリンクを蘇生した。またWikipediaのボランティアたちは、手作業で300万のリンクを修復した。驚異的な作業量だが、おかげでWebのWebらしさが維持され、監査証跡も得られる。

このプロジェクトの結果を発表するブログ記事でInternet Archiveは、Wikipediaのユーザーが最近10日間にクリックしたリンクについて報告している。それによると、クリックの相当数がInternet Archiveのページだった(下図)。Wikipediaの壊れたリンクを直したことには、大きな効果があったのだ。

〔クリック数のグラフ: グラフのいちばん下の圧倒的に長い棒がアーカイブ、そのすぐ上はbooks.google.com〕

グラフ提供: Internet Archive

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazon、Wikimediaに100万ドルを寄付

今年3月、本誌はWikimediaにこんな質問をした、 「Wikipediaを利用している企業はお返しをしているか?」。答えは、一応イエス、ただしひとつの例外を除いて。「Apple、Facebook、Microsoft、およびGoogleはそれぞれ、従業員からの寄付に上乗せする形でおよそ5万ドルを寄付している。一方、Amazonはそのリスト上のどこにも見つからない」

しかし本日、オンライン小売の巨人は、見落としともいえるこの問題に目を向け、Wikipediaの運営母体であるWikimedia Endowmentに100万ドルを寄付すると発表した。同社によると、同オンライン百科事典はAlexaの成功に著しく貢献しており、AIアシスタントの持つ知識の大部分を支える基盤となっている。

「Alexaは質問に答えるために何百という情報源を活用しており、Wikipediaもその一つだ」とAmazonがTechCrunchに宛てた声明で言った。「AlexaチームはWikipediaおよびWikimedia Foundationと同じようなビジョンを共有している:全世界で簡単に知識を共有できるようにすることだ」

Wikipediaを「何百もの情報源」の一つとするのは、Alexaや多くのライバルたちにとっての同サイトの重要性を軽視しているようにも思えるが、Amazonの巨大な金庫から寄付を得たことは、非営利団体であるWikimediaにとって重要な意味を持つ。

さらにAmazonは、新たなスキル「Alexa、Wikipediaに寄付して」を使って、ユーザーも募金に参加することを望んでいる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Wikipediaを利用している企業たちはそのことに報いているのか?

企業は情報をソースとしてのWikipediaに大きく依存しているが、それは必ずしも双方向ではない。

Wikipediaの情報を使って、陰謀論ビデオと戦おうというYouTubeの計画は各方面からの反対を巻き起こした ―― 驚くべきことにWIkimedia自身からも懸念の声は挙がった。どうやらGoogleは、今月初めにこの計画をSXSWで発表する前に、Wikimedia財団に対してこの計画について何も知らせていなかったようなのだ。あーあ。

WikimediaのエグゼクティブディレクターKatherine Maherはこれに対し、クラウドソースで作り上げられた情報は真に自由利用が可能だが、まあ、もしそれを利用する企業が少しでもお返しをしてくれるなら嬉しい、と冷静に繰り返した。

「Wikipediaのコンテンツは、誰でも自由に使えるようにライセンスされています」とMaherは書いている。「それが、どんな人でも自由な知識を分かち合えるという、私たちのミッションの一部なのです。世界中の人々がWikipediaを使い、共有し、追加し、リミックスすることを願っています。同時に、私たちは、WIkimesiaのコンテンツを使用する企業が、持続可能性の精神の下に、何らかの寄付を行うことを奨励しています」。

もちろん、GoogleがWikipediaの貢献者や編集者たちの、一連の仕事を利用したのは、今回が初めてではない。最近は、このサイトに蓄積された、一般人の編集による豊富な知識は、良くも悪くも、多くの広く使われるサービスのバックボーンになっている。特にスマートアシスタントたちによる利用が目立つ。AlexaやSiriに英国の女王は誰かと聞いてみよう。どちらもこの情報を同じ場所から引き出して来るだろう。

先週の初め、Wikimediaの歳入担当者Lisa Gruwellは、TechCrunchに対して、このような使い方は、正式な関係を通して行われているものではないと語った。ほとんどの企業は、多かれ少なかれAPIにアクセスして、その幅広い知識を活用している。もちろんそれは手軽で、Wikimediaのフェアユースルールの中では何の問題もない。しかしMaherの発言と同様に、歳入担当者も一方的な関係にある種の懸念を表明した。

「私たちのコンテンツは利用されるために存在しています」とGruwell。「それは自由にライセンスされていますが、目的をもって自由にライセンスされているのです。同時に、それは環境のようなものです。それは使われるためのものですが、搾取(exploited)されるためのものではありません。私たちは、コンテンツを使って何らかの返礼を行ってくれる人たちを、本当に必要としています、それが私たちが奨励しているものです。一部の人だけにアクセスを許す有料の壁はありません。私たちはデータに対しては請求を行いません。もし余裕があるならば、私たちは寄付をお願いします、しかし、もし余裕がなくても、変らず利用することができます。それは私たちが読者に皆さまと結んでいる社会的契約のようなものです」。

もちろん「搾取」(Exploitation)というのは、Wikipediaのようなものの性格を考えると難しい表現である。NPR(National Public Radio:公共ラジオ局)やPBS(Public Broadcasting Service:公共放送サービス)のように、誰に対しても自由に提供されるサービスだが、Wikipediaは存続するために慈善寄付に依存している。スマートアシスタントたちは確かにその情報ベースを活用するという点では、適用されるルールに従っているが、その現在の使われ方では最終的にWIkipediaへ及ぼす影響は限定的なものとなる。

主に音声を利用するAlexaの様なものの場合、Wikipediaが引用されているとしても、元となる情報素材への直接の関係はない。つまり、ユーザーは元になるソース(WikipediaのDNAである重要な部分)を直接見ることはできない。また、Wikimediaからの寄付情報も前面にも中心にも出ることはない。

「まるで『ロラックスおじさんの秘密の種』(Dr. Seuss’ The Lorax)のようだと言いたいわけではありませんが」とGruwell。「もし何かを使いすぎて、それに対して何も返さないなら、害をなすこともあるでしょう。AlexaとSiriの場合、私たちのコンテンツは仲介されているわけです。Wikipediaが上手くいくのは、みなさんがそれに貢献することができ、それを編集することができるからです。そして私たちがお願いするのは年に一度ですが、みなさんは寄付を行うこともできます。みなさんが、私たちの持つ情報を、私たちからではなくSiriやAlexaのようなものを通して得ているときには、編集者として何かを返す機会は失われていますし、活動に貢献したり、寄付したりという機会も失われているのです」。

財団に対する支援の大半は、平均10ドルを支出する600万人のユーザーから寄せられたものである。Gruwellによれば、企業からの支援 (各種財団からのものを除く)は、同財団に対する寄付金の約4%を占めている。もちろん、匿名の巨額資金提供者の一部が、これらの企業と直接関係している可能性もあるが、企業からの寄付のリストには少々驚かされる。

2017-2018会計年度の数字は次の通りである:

  1. Google(100万ドル以上)
  2. Humble Bundle (45万6000ドル)
  3. Craigslist財団(25万ドル)
  4. Cards Against Humanity (3万5000ドル)

Gruwellによれば、最近のYouTubeを巡る騒ぎにもかかわらず「大手の大手インターネット企業上位5社のうち、Googleとの関係は遥かに良いものです。彼らが私たちの組織に貢献している点と、一般的に私たちと協力するやり方の両方で。多くの場合に、彼らは私たちに接触し、私たちと協力していると言うことができます。私たちは彼らとパートナーシップを結んでいます。私はそれは他のものと比べて、確かに良い関係だと思っています」。

他の大きな企業も、マッチングドネーション(集まった寄付金に企業が上乗せして寄付を行うこと)を使って貢献している。Apple、Facebook、Microsoft、そして(ここでも)Googleはそれぞれ、従業員からの寄付に上乗せする形でおよそ5万ドルを寄付している。一方、Amazonはそのリスト上のどこにも見つからない。

政界のあらゆる団体が互いに「偽のニュース」を叫んでいるこの時代に、情報源の引用と事実の確認はますます重要になっている。最も注目されているトピックであっても中立性を維持しようとしているため、その両者(引用と確認)は長い間、Wikipediaの基本的な特性だった。

「インターネット上のあらゆるプラットフォームと同様に、私たちは懸念していますし、時には悪い連中と向き合うことになるかも知れません」とGruwellは言う。「そうした懸念は事実です。私たちは、悪意ある貢献を検出するための機械学習ツールといったツールを構築しようとする過程で、多くのことに対処しました。私たちのコミュニティでは、そうしたツールが特定のページを見張っています」。

スマートアシスタントとして、YouTubeなどはますます日々の生活の一部となっている。そしてWikimediaがその中で果す役割はますます重要になっているのだ。そして「寄付のなる木」は存在しないことに留意したい。

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(翻訳:Sako)

Webの最古参の一人Craig NewmarkがWikipediaのハラスメント防止のために50万ドルを寄付

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CraigslistのファウンダーCraig NewmarkがWikipediaの“Community health initiative”(コミュニティ健全化運動)に50万ドルを寄付し、このサイトのハラスメントや乱暴な行為を減らし、モデレーターが毎日使うツールを改良して、平和を維持したい、と訴えている。

一見おだやかに見えても、今のWikipediaは戦場だ。編集者やボット、そして野蛮な破壊者たちがいつも戦っていて、そしてもちろん、コンテンツそのものと同じく、その戦いへの停戦介入や鎮静努力は、大量のボランティアに任されている。彼らは、効果的なツールを持つべきだ。

NewmarkはWikimediaのブログ記事でこう言っている: “Wikipediaがその活力を確実に維持できるためには、善意の人びとが協力して、トロルやハラスメントやサイバーいじめを防ぎ、公共財を妨害行為から守る必要がある。その目的のために私は、Wikimedia Foundationのハラスメント防止努力を支援したい”。

この寄付は、craigslist Charitable FundとCraig Newmark Foundationからのそれぞれ25万ドルずつだ。寄付の宛先(指定目的)は、Wikimedia FoundationによるCommunity health initiativeの立ち上げ努力だ。これからの2年間で、Wikipediaの悪用の発見と報告と撃退努力が、大きく改善されることを期待したい。

でも、Wikipediaの主幹Jimmy WalesがCraigにジョークをメールしている。この気前の良い寄付を、今後も繰り返してほしい、というおねだりだ。

please-craig

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Wikipediaの上ではボットたちが毎日のように喧嘩している

bots-glitch

ボットはWikipediaの便利なツールだ: 彼らは編集結果をアンドゥーする破壊行為を見つけ、リンクを加え、人間のご主人様が命じた面倒な仕事をこなす。でも、彼らのような自動化されたヘルパーたちですら、争いに巻き込まれ、同じ記事の上でお互いに、書いたり消したりを繰り返す。中には、長年続いている抗争もある。

それは必ずしも、本格的な戦争ではない。むしろ、家庭で繰り広げられる、エアコンの温度設定をめぐる争いに似ている。誰かが70度(華氏)にセットする。次の日にルームメートが71度にセット。翌日70に戻す。また71にされる。その繰り返しだ。必ずしも緊急の問題ではないが、オックスフォード大学のアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)の研究者たちによると、それでも研究に値する。彼らは、単純なボットでも予想外の対話的行為に及ぶことがある、という。

彼らは10年間にわたる編集履歴を調べ、ボットがやることは、いろんな点で人間がやることとは違う、ということに気づいた。

ボットたちは機能が単純だから、自分がやってることの意味を知らない。2体のボットが長年にわたって、同じ箇所のアンドゥー/リドゥーを繰り返していることもある。その記事はいつまでも更新されず、ボットが互いに相手がやったことをキャンセルしているだけだ。人間の場合は、ミッション意識があるので、互いに相手を消し合うことはなく、一人の人間が他人の仕事の数百箇所を変えても、何も言われないこともある。

botbattles

English Wikipedia is by far the largest, and has the most total, but Portuguese bots reverted more often.

ボットが互いに相手の編集結果を消す/元に戻す行為は、国によって激しさが違う。10年間で、ドイツのボットは比較的礼儀正しく、お互い消し合う行為は、ボット1体につき平均約32回だった(1年平均3.2回)。逆に激しいのがポルトガル、ボット1体あたり188回やりあっている。それが何を意味するか、その解釈は読者にお任せしよう。

結局のところ、このような些細な小競り合いは、重大な結果には行き着かない。しかし研究者たちによると、それは、Wikipediaがとても注意深くコントロールされている環境だからだ。でも、少人数のお行儀の良い、公認のボットでも、抗争はつねにあり、それらは往々にして複雑、そして変化が激しい。野放しの環境では、もっとひどいだろう。研究者たちは、これは人工知能の分野の人たちにも参考になるはずだ、と述べている:

互いの相違を管理でき、不毛な抗争を避け、社会的かつ道徳的に許せるやり方で仕事ができる協力的ボットを設計するためには、何がどうやって、ボット間の対話的行為〔抗争など〕の契機になるのかを理解することが、きわめて重要である。

研究報告書“Even Good Bots Fight”(善良なボットでもファイトする)は、Arxivで無料で入手できる

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Wikipedia共同ファウンダーのJimmy Wales、自社のWikiページを編集する企業は「狂っている」と非難


South by Southwest(SXSW)のGuy Kawasakiとの対談で、Wikipediaの共同ファウンダー、Jimmy Walesは、インターネットの共同百科事典上で、利己的な人々が自身のページを編集していることについて強く意見を述べた。

「企業はこれを強力なマーケティングツールだと考えているが、狂っていると私は思う。放っておいてくれ。」とWalesは言った。それでも彼は、優秀な広報チームは分別があるので、誤解を招く記載を指摘された時のリスクを避けると信じている。

「一流の広報会社は、概してWikipediaの扱いに長けている」とWalesは強調した。

WalesはWikipediaの起源について、今はなきNupedia[ヌーペディア]からのピボットだったと話した。「成功するためには、伝統的な百科事典よりも学術的にする必要があった」と彼は言った。

Wikipedia、およびWikimedia Foundation傘下のサイト群は、インターネットで最も活発なサイトの一つだ。Alexa.comはWikipedia.orgを、世界で7番目にトラフィックの多いサイトにランク付けしている。

そしてそれは、中国の力を借りることなく達成されている。当地でWikipediaは禁止されている。Walesによると、SSLセキュリティーの採用によって、各国がWikipediaの一部をフィルターすることが難しくなったという。「われわれは妥協しないし、彼らもすぐには妥協しそうにない」と中国について語った。

Walesは、現在進行中のNSA監視に関する米国政府との法的闘争についても触れた。これは「言論の自由に深刻な影響を与える」ものだとWalesは言う。

Walesは、スマートフォンの普及は会社の売上低下につながる恐れがあると言った。Wikipediaに広告はないが、Walesが他に手がけているWikiaファンページ等のプロジェクトでは広告を掲載している。「モバイルのページビュー当たり売上はデスクトップよりずっと低い」とWalesは言った。「もしこの傾向が続くようなら…今の半分の売上になるかもしれない」。

Walesはさらに、無人運転車や沈没船への強い興味や、ドナルド・トランプへの軽蔑についても話した。「私は既にロンドンに住んでいるので、もしドナルド・トランプが大統領に選ばれたら自分は国を離れる、と脅すことができない[のが悔やまれる]」と彼は言った。

彼はロボットがWikipediaを乗っ取ることを当面心配していない。「コンピューターが百科事典の項目を書けるようになった時は…もっと大きなことを心配する必要があるだろう」とWalesは言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Wikipediaが、企業等から報酬を得て宣伝的記事を書いていた、数百名の悪質エディタのアカウントを停止

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Wikipediaのコンテンツはボランティアが書いているが、ときには、それが仇(あだ)となることがある。今朝(米国時間9/1)同団体は、Wikipediaの英語バージョンのボランティアエディタ381名のユーザアカウントを停止した、と発表した。彼らの容疑は、“特定のグループや企業等に有利な記述を報酬をもらって書いていたこと”だ。たとえば彼らは、この、ユーザが自由にエディットできる百科事典に宣伝記事を書き、そのことで報酬を得ていたことを、隠していた。

この件に関するエディタコミュニティのディスカッションによると、彼らいわゆる‘靴下人形(sockpuppet)’たちは、かなり前から跋扈していた。怪しげな行為に対する調査は7月に始まり、4月から8月までのエディットを調べた。ちなみにこの調査活動のことを、最初に見つかった靴下人形のアカウントにちなみ、”Orangemoody”と愛称している。しかしそれらのエディットの内容は、報酬を得るエディットが相当前から行われていることを、示唆していた。

それらの記事は、企業や企業人、アーチスト関連のものが多くて、偏った情報や誤報、出典が明記されていない…あるいは根拠のない…材料、著作権侵犯らしきもの、などがほとんどだ。Wikipediaの上位団体Wikimediaのブログが今朝、そう説明している。

これらの靴下人形たちが独自に作った210の記事も、削除された。しかし210は、‘それらのすべて’ではないようだ。

ディスカッションのページでは、“このリストは完全ではない。時間的制約があったため、調査の網にかからなかった靴下人形記事もまだ相当あると思われる”、と説明されている。

 

このpaid advocacy(報酬を伴う好意記事)と呼ばれる記事やエディットにWikipediaが直面したのは、これが初めてではない。Wikipediaはもちろん、不偏不党で正確で信頼に足るリソースを目指しているが、2013年の10月には、同団体のボランティアたちが、コンサルティング企業Wiki-PRと結びつきのある数百のアカウントをブロックした。そのときWikipediaはその企業に、業務停止を命ずる書簡を送った。同社は、“Googleの検索結果でトップに来るような記事タイトルを作ってあげる”、と宣伝していたのだ。

Wikipediaによると、同社との結びつきのある300のアカウントを停止した。一方Wiki-PRの方は、その仕事に関わっていたのはわずか45名だ、と主張した

今回停止したアカウントは381だから、前回の300よりは多い。また今回の件でおもしろいのは、ここでもやはり、記事のタイトルや主題が問題になっていることだ(後述)。またこれらの新しい靴下人形たちは、報酬をもらって記事の内容を操作したり新しい記事をポストしただけでなく、月額30ドルで、顧客の記事が削除されないように守る、というサービスを提供していた。

“拒否された草稿や、ときには削除された記事から、‘見込み客’を見つけて接近することが、彼ら靴下人形たちの最新の営業テクニックのひとつだった”、とディスカッションページで説明されている。“記事を‘保護する’ことも、彼らの重要な収入源になった。そのために靴下たちは、わざと、ページの削除をリクエストするのだ”。

この悪事に企業がからんでいたのか、その点をWikipediaは明らかにしていないが、しかしその注記によると、靴下たちが行ったエディットはどれもよく似ているので、一定の指揮下にあるグループがやったことに違いない、ということだ。

問題は記事の編集に報酬が伴ったこと自体ではなく、その場合のガイドラインに従っていないことだ。たとえば多くの博物館、美術館、大学などは、職員の企業等との結びつきを事前に情報公開しなければならないし、また顧客のためのページをメンテしているPR企業は、Wikipediaの、報酬を伴うエディティングのガイドラインサインしなければならない。 Wiki-PRのスキャンダルを契機に作られたガイドラインは、企業やそこの人間に関する記述をエディットするときは倫理的に振る舞うべし、と規定している。

またPR企業等は、記事の主題(企業名等)との関わりを情報公開し、変更に関しエディタたちと協働しなければならない。今回アカウントを停止されたグループは、何も情報公開しなかった。それが目下の、より大きな問題だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

WikipediaなどWikimedia FoundationのサイトがデフォルトでHTTPSを採用…政府機関による検閲などを抑止へ

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【抄訳】
Wikipediaなどの重要なwikiプロジェクトをホストしているWikimedia Foundationが今朝(米国時間6/12)、今後はすべてのサイトのトラフィックをHTTPSにより暗号化する、と発表した。同団体によると、これにより各国の政府などがユーザトラフィックをモニタすることが困難になり、またISPがWikipediaなどの記事を検閲することも難しくなる。

同団体は2013年に、サイトのアカウントを持つログインユーザのトラフィックに関してはHTTPSを実装したが、そのとき、中国やイランなどトラフィックのHTTPS化が難しい国に関しては、ログインユーザに対しても従来どおりのアクセスを認めた。

しかし今日のWikimedia Foundation(WF)の報告では、同団体はHTTP Strict Transport Security(HSTS)を使用して、トラフィックをHTTPS破りから保護する、と言っている。

同団体はネットワークのインフラストラクチャの弱い国でも、レイテンシなどの問題がなるべく起こらぬよう、HTTPSの構成等に細心の配慮を講じているが、しかし事務局長のLila Tretikovが以前インタビューで語ったように、まさにこのインフラの格差という問題こそが、これまで暗号化によるユーザ保護をためらってきた原因だ。したがって実際に起きる影響を、今後も見守っていく必要がある。

今日WFが発表した談話によると、“中国ではここ数週間、中国語WikipediaはHTTPとHTTPSの両方で、多くのユーザにとってアクセス不能になっている。しかし、香港や台湾など一部の、アクセスできているユーザにとっては、HTTPSがセキュリティの向上に資すると思われる。また、中国でも英語版Wikipediaにはアクセスできるので、英語版の利用に関しては、ユーザはHTTPSのセキュリティ効果に浴することができる”、ということだ。

ユーザがトラフィックのHTTPS化をオプトアウトする方法は、2013年のときと違って提供されていないが、そのために政府等がユーザのWikipediaアクセスを妨害することがより困難になるはずだ、とWFは言っている。

また同団体は、ブラウザプラグインHTTPS EverywhereによるHTTPS化を、4年前からサポートしてきたことにも触れている。またユーザが大手の検索エンジンからリダイレクトされてWFのサイトにアクセスした場合も、HTTPSをサポートしていた。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Wikipedia、自前の「Fact Card」作成/共有できる新版iOSアプリケーションをリリース

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Wikimediaは最近、モバイル版アプリケーションの機能改善に取り組んでいる。しばらく前にAndroid版の新しいアプリケーションがリリースされていたが、このたびiOS版も登場した。ビジュアル面を改良し、検索が容易となり、またFacebook、Twitter、Google+などのソーシャルネットワークにて記事や画像をシェアしやすくなっているのが特徴だ。

Wikipediaの月間ビジター数は現在、5億程度なのだそうだ。このオンライン百科事典の項目数は3400万件で、対応言語は288にものぼっている。このWikipediaはiOSの機能と密接に結びついてもいるのだが、それには良い面もあったが悪い面もある。すなわちSpotlightSiriなどでWikipediaのコンテンツが探せるというのは、Wikipediaにとっても悪い話ではない。しかし他アプリケーションとの連携を深めるあまり、ネイティブアプリケーションを使ってもらえる機会を減らすことにも繋がってしまったのだ。さらに、モバイルアプリケーションの数は増加の一途を辿っており、Wikipediaアプリケーションはホームスクリーンのみならず2番目、3番目の画面からも追いやられてしまうことになってしまったのだ。

Wikipediaが、アプリケーションに新機能を投入しようと考えたのには、そうした理由もあったわけだ。ネイティブアプリケーションの魅力を高め、手軽に使えるようにし、そしてもちろんエンゲージメントを高めたいと考えたのだ。目的を持って項目の検索をしているとき以外にもアプリケーションを使ってもらえるような工夫を加えようともしている。

たとえば新版には「Random」(おまかせ表示)機能があり、面白い記事を紹介するようになっている。また「Nearby」(付近)メニューを使うと、現在いる場所に関連する記事を提示するようにもなっている。こうした機能を実装することで、Wikipediaの利用場面を広げていきたいと考えているわけだ。

また新しい版では、モバイル上での操作性は向上しコンテンツへのアクセス速度も改善しているようだ。デザインも一新しており、画面右上のメニューからは記事の見出しを一覧して簡単に概要をつかむことができるようにもなっている。さらに多くの場合は記事の先頭部分に大きな画像が表示されるようになっていて、ビジュアル的な魅力も高めようとしている。

検索バーをより目立つようにして、また最近の検索項目を表示するなどして、基本的な使い勝手もよくなっているようだ。

Wikipediaアプリケーションを起動した人に、ひとつの項目だけでなく、他にも多くの記事を読んでもらって、より長い時間使い続けてもらおうと配慮されているわけだ。記事末尾には「さらに読む」の欄もあり、ここから簡単に他の記事にジャンプすることもできる。また記事中の画像をタップすると、記事内で利用されているすべての画像を順にみていく機能も実装されている。

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ソーシャル機能をみてみると、画像の上に記事中から選択した箇所をオーバーレイ表示した画像をFacebook、Twitter、Google+、メール、テキストメッセージなどで共有できるようになっている。これはAndroid版でも注目されていた機能だ。Wikipediaを実利的なツールとしてのみならず、ソーシャルで楽しめるアプリケーションにしようとする試みのひとつだと評価できる。

Wikipediaに載っているような内容について、議論するときなどにもとても便利な機能だと思う。記事へのリンクと必要な抜粋部分を別々に記述するのでなく、必要な箇所を強調した「fact cards」のようなものが簡単に作れるわけだ。ただ議論に勝つだけでなく、スマートに勝つことができるようになったと言えようか。

アプリケーションはこちらから入手できる。

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(翻訳:Maeda, H

Wikipedia、Android版アプリケーションをバージョンアップ(画像閲覧性の向上等)

Wikimedia Foundationは、モバイル版のWikipediaアプリケーションのリニューアルを行った。より快適に閲覧できるようにし、検索性能を向上させ、そして画像も見やすく変更したと主張している。今回のアップデートはまずAndroid版がリリースされた。iOS版も間もなくリリースされることになっている。

アップデートの狙いの第一は、Wikipedia(現在287の言語で3350万の項目を掲載している)のモバイルデバイスによる操作性を向上させることだ。

新しいバージョンから、内容に関するわかりやすい画像が記事の先頭に表示されるようになった。また、最近の検索項目とともに表示される検索バーも見やすくなった。

個人的に嬉しいのは、画像の閲覧性の向上だ。画像をタップすると画像のみが表示されるウィンドウが開き、右ないし左スワイプで記事内に含まれる画像を一覧していくことができる。

それぞれの記事の末尾には「続きを読む」(Read More)が掲載されるようにもなっていて、関連する項目へのリンクが表示されるようになった(訳注:「外部リンク」とは別)。Wikipediaをより多く利用してもらおうとする工夫の一貫だろう。

ちなみにこれらの機能は、公式リリースの前からGoogle Playに別アプリケーションとして登録されているWikipedia “Beta”に実装されていたものだ。このBetaアプリケーションは、公式リリース前にさまざまな新機能を試すためにリリースされている。スマートフォンからの編集機能や、iOS版で7月に先行実装されたWikipedia Zero(提携プロバイダーにて通信料が無料になるサービス。訳注:但し日本では利用不可)への対応なども、まずWikipedia Betaで実装されていた(ある機能がiOS版で先行実装されるか、それともAndroid版で先行するのかは、その時々により変わるようだ)。

新しいアプリケーションはGoogle Playのこちらからダウンロードできる。

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(翻訳:Maeda, H


Wikipediaのインタフェイスを現代化するWikiWandが$600Kを調達

人気サイトWikipediaに魅力的なインタフェイスを与えるWikiWandが、エンジェル投資家Saar Wilfから60万ドルを調達した。たしかにWikipediaは全世界からのビジター数でトップテンの一つだし、インターネット上の重要な情報源だが、ルックスはそれがローンチした2001年から変わっていない。

WikiWandはそれを、ブラウザのエクステンションで解決しようとしている。今はChromeSafariFirefox用が用意されているが、WikiWandのサイトでそのインタフェイスを見ることもできる。Wilfは自分の会社Fraud Servicesを2008年にPayPalに1億6900万ドルで売った人物で、今はWikiWandの会長でもある。

協同ファウンダでCEOのLior Grossmanによると、彼らがこのWebアプリケーションを作ったのは、自分たち自身がWikipediaのユーザインタフェイスに不満だったからだ。

“世界で5番目に人気の高い、5億人もの人たちが利用しているWebサイトの、インタフェイストが10年以上もアップデートされていないなんて、ナンセンスだ”、とGrossmanは語る。“Wikipediaのインタフェイスはごちゃごちゃしていて読みづらい。小さな文字のテキストが長すぎる。ナビゲーションがしづらい、とにかく、使いづらい”。

WikiWandのレイアウトには、ページ幅いっぱいの写真や、ギャラリー(スライド)、上部メニューバーによるナビゲーションの改良、動的に提供される目次、ナレーションやオーディオクリップへの容易なアクセス、リンクをホバーしたらプレビューがポップアップする、そして読みやすいフォント、などなどの改良が盛り込まれている。

将来的には、教科書や記事や教育サイトなどの広告を収益源とし、利益の30%はWikipediaに寄付する意向だ。

今回得られた資金はWeb用のWikiWandの改良と、iOSとAndroidアプリのローンチに充てられる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Wikipediaの共同ファウンダー、たくまずしてBitcoinによる寄付キャンペーンを始める

Jimmy Walesは、WikipediaにBitcoinで寄付する方法を試しているのか? Redditのあるスレッドによれば、彼がそれを考えていることは間違いない。それは1件のツイートで始まった ― Wikipediaの共同ファウンダーはCoinbaseに個人アカウントを開設した。

しかしその後、Walesは彼のウォレットアドレスをTwitterとRedditで公開した。「Coinbaseを気に入った。インターフェースがすごく直感的でいい」と彼はRedditに書いた。

Bitcoinユーザーは自分たちのウォレットを使って参加した。多くの人々が少額のBitcoinを送金し、BitcoinがWikipediaの新しい支払い方法になるべきであることをWalesに知らしめた。彼らはWikimedia Foundationに直接寄付しているわけではないが、Walesは全額を基金に寄付することを明言している。

「私は次のミーティングで(その前にメールでも)Wikimedia Foundationの理事らと、WikimediaがBitcoinを受付けるべきかどうかの議論を再開するつもりだ」とWalesは書いた。しかし、大きな問題はBitcoinが主流な支払い方法にほど遠いことだ。Bitcoinボタンを付けることは人々を怖がらせるだけだ ― 少なくともBitcoinに触れたことのない人たちにとって。

言い換えれば、Wikipediaの募金ページにBitcoinボタンが付くことはない。代わりにWalesは、Bitcoinアドレスをソーシャルネットワークや様々な人気Bitcoinディスカッショングループ、例えばBitcoin subreddit等で共有する考えだ。そうすることで、Bitcoinが何かを知る人はWikipediaにBitcoinで寄付できることを知り、そうでない人はWikimedia FoundationがBitcoinを受け付けていることすら気付かない。

Bitcoin熱狂者たちは、Wikimedia Foundationが変わる可能性を大いに喜んでいるが、WikipediaがBitcoinの有力な支持者になることはなさそうだ。Bitcoinの利用に関わる様々な物事を変えることもない。

Wikimedia Foundationにとって、Bitcoinを受入れることは、支払い方法の選択肢を1つ増やすことにすぎない。おそらく彼らは、Bitcoinをすぐ米ドルに換金して暴落リスクを最小限にするだろう。

これまでのところ、Walesはこの小さな実験で1万1000ドル以上を集めた。彼はBitcoinをいじることを楽しんでいるようだ。「以前は為替トレーダーだったんだ」と彼は書いた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook