G7のうち5カ国の政府が使う暗号化メッセージングアプリ「Wire」が約22.9億円調達

エンド・ツー・エンド暗号化されたメッセージングアプリおよびサービスを提供するWire(ワイヤ)は、UVC Partnersが主導するシリーズBラウンドで2100万ドル(約22億9000万円)の資金を調達した。数年前に同社が語ったように、Wireはこれまで以上にエンタープライズ市場に注力しているという。

Wireは消費者向けアプリとしてスタートしたが、他のメッセージングアプリのように何億人もの顧客を獲得することはできなかった。だからといって、Wireが悪い製品というわけではない。

このアプリでは、テキストメッセージ、写真、ビデオ、音声メッセージにより、他のユーザーと安全に会話することができる。また、他のユーザーとビデオ通話を開始したり、ファイルを送信することも可能だ。Wireは1対1の会話だけでなく、ルームでのグループチャットにも対応している。

デフォルト設定では、すべてがエンド・ツー・エンド暗号化されている。これは、同社がユーザーの会話を解読できないこと、裁判所に引き渡せないこと、会話が潜在的なハッカーにさらされないことを意味する。安全性を確認できるよう、ソースコードはGitHubで公開されている。

2019年、同社はTechCrunchの取材に対し、資金調達のために米国に持株会社を設立すると語った。その目的は、企業顧客にさらに力を入れ、収益性に向けた明確な道筋を見つけることだった。そして、この焦点は当時から変わっていない。

WireのCEOであるMorten Brogger(モーテン・ブロガー)氏は、筆者にこう語った。「ビジネスの進化を振り返ってみると、3年前は収益も顧客もゼロでしたが、今日はBラウンドを発表し、Gartner(ガートナー)のような企業に使われるエンタープライズブランドとして明確に認知されるようになりました。これは、私が非常に誇りに思っていることの1つです」。

「また、収益を生み出すエンタープライズビジネスに焦点を当てることで、WhatsApp(ワッツアップ)のように、最終的にデータを収益化するモデルにしか頼れないという状況を回避できると思います」と同氏は付け加えた。

そして、収益拡大に関してはこれが功を奏しているようだ。現時点で、Wireの顧客数は1800人。この1年で同社の顧客数は50%近く増加している。

同社は大企業や政府機関など、潜在的なユーザー数が多い大規模顧客に焦点を当てている。現在、G7のうち5カ国の政府がWireを使用している。全体として、2020年には収益が3倍になった。

メッセージングレイヤーセキュリティ(Messaging Layer Security、MLS)への取り組みに加えて、Wireは電話会議やリアルタイムのインタラクションの改善にも注力している。同社は、メッセージングアプリやリアルタイムコラボレーションアプリは徐々に集約されていくと考えている。そしてこのスタートアップは、さまざまなシーンでうまく機能するサービスを提供したいと考えている。

コラボレーション分野でも、エンド・ツー・エンド暗号化サービスがこれから増えることが予想される。Wireは従業員数90名とまだ比較的小規模であり、それは成長とイテレーションの余地があることを意味する。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Wire資金調達メッセージングアプリ暗号化

画像クレジット:Wire

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)