フランス当局が偽造品や危険な製品を扱うeコマースプラットフォームWishの削除を検索エンジンなどに要請

フランスの複数の閣僚が共同声明を発表し、フランスで運営されている主要な検索エンジンとモバイルアプリストアに対し、Wish(ウィッシュ)のウェブサイトとモバイルアプリを完全に非表示にするよう要請したことを明らかにした。Wishは、人気のeコマースプラットフォームで、主に中国の業者の商品を扱っている。商品は業者から顧客に直接発送されるため、在庫は抱えていない。

消費者の権利と詐欺を担当するフランスの行政機関は2020年、Wishの調査を開始した。当時、DGCCRF(競争・消費・詐欺防止総局、Director générale de la concurrence, de la consommation et la répression des fraudes)は、Wishが有名ブランドのロゴを示す画像を不正確に掲載したスニーカーや香水など消費者を簡単に誤解させる偽造品を販売しているのではないかと疑っていた。

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そこでフランス政府は、Wishで販売されている140種の商品を注文したが、そのほとんどが輸入品だった。これを受け、政府はそうした商品が安全かどうかを調べることにした。

Wishで購入したおもちゃの95%が欧州の規制に適合しておらず、そのうち45%が危険だと判断された。電子機器については、95%が欧州では販売されてはいけないはずのもので、そのうち90%が何らかの形で危険なものだった。

さらに、同プラットフォームで販売されている安価なコスチュームジュエリーにもリスクがあり、政府が注文したものの62%が危険とみなされた。繰り返しになるが、これらの指標は商品140点という非常に小さなサンプルに基づいている。

Wishが危険な商品を販売しているという通知を受けた場合、それらの商品は24時間以内にマーケットプレイスから削除されることが求められる。しかし「ほとんどの場合、それらの商品は別の名前で販売されたままであり、時には同じ販売者からも販売されている。同社は、不適合で危険な商品の取引に関する記録を一切残していない」とフランス経済省は声明で述べている。

同調査によると、Wishは危険な製品を購入したことを顧客に通知する際、製品回収の理由については言及していない。

2021年7月、消費者の権利と詐欺を担当するフランスの行政当局はWishに通知し、eコマースと製品安全に関する欧州の規制を遵守するよう求めた。当局は、さらなる行動を起こす前に2カ月間の猶予を与えた。

そして4カ月後、フランス政府は最近の欧州規制の変更を利用して、問題のあるウェブサイトやアプリの参照元を外したり、ブロックしたりしている。これは複雑なプロセスだが、経済省は検索エンジンやアプリストアにWishの参照解除を要請するよう、担当行政機関に依頼した。本稿執筆時点では、WishはまだApp Storeで利用でき、Googleの検索結果にもWishのウェブサイトが表示される。

今後、Wishはフランスでシャドーバンされる。ウェブサイトは今後も利用でき、すでにスマホにダウンロードしているアプリも機能する。しかし、App Store、Play Store、Googleの検索結果には表示されなくなる。

Wishがフランスの規制を遵守するために適切な変更を実施したと行政が判断すれば、シャドーバンを解除する可能性がある。今回の過激な決定によってフランスは前例を作り、ウェブがますます細分化されていることを改めて示している。この場合、フランスは消費者の最善の利益のために行動するとしている。

また、欧州で予定されているデジタルサービス法が、ドロップシッピング全体に大きな影響を与えるかどうかも注目される。欧州は、2000年に制定されたeコマース指令をデジタルサービス法で抜本的に見直す予定だ。

画像クレジット:Kira auf der Heide / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

その他大勢のためのアマゾンになることを狙うWishを小売業投資家は買うだろうか?

ほとんどの人が、Wish(ウイッシュ)のことを、中国からの安価な小物を販売するサイトとして知っているが、サンフランシスコに拠点を置く創業10年のこの会社が、間近に迫ったIPOを見込んで、一般大衆のためのAmazon(アマゾン)としての自画像を描き始めた。

私たちがここ数カ月の間に情報源から読んだり聞いたりしたことから判断すると、Wishは、1兆ドル(100兆円)規模の巨人アマゾンに対抗する、愛国的な代替選択肢として自分自身をアピールしたいと考えている。米国で推定60%を超える、3カ月分の支出をまかなうのに十分な流動資金を持たない家庭のための、より良い選択肢として自分自身を位置付けたいのだ。そのようなコストを気にする顧客は、Amazonプライムに加入することができず、(少なくともWishの言葉によれば)もしかなり安く買えるなら1週間でも、ときには3週間待つことも厭わない。

公開市場の投資家たちが、そのプレゼンを受け入れるかどうかはすぐにわかるだろう。Wishは米国伊J感12月8日朝、来週にも行われると予想されているIPOで、1株当たり22ドル(約2289円)から24ドル(約2497円)の間で4600万株を販売する計画を発表した。評価額は、個人投資家たちによって最後に割り当てられた112億ドル(約1兆1700億円)の評価額から上がって、最大140億ドル(約1兆4600億円)に達するだろう。

Wishには、公開に向かう物語の中で、楽観的に感じることができるたくさんの理由がある。1つには、明らかに多くの人たちがWishのビジネスに気づき続けている最中だということだ。Sensor Tower(センサー・タワー)によれば、2020年11月のショッピングアプリのダウンロード回数は、アマゾンのダウンロードが600万回、Walmart(ウォルマート)のダウンロードが200万回だったことに比べて、Wishは900万回ダウンロードされている。2019年には、すべての種類のアプリ含む総合順位で、Wishは16番目にダウンロードされたアプリだった。

潜在的な顧客がWishに出会ったら、さらに多くのものを発見するだろう。同社の目論見書によれば、100カ国以上にまたがる月間1億人以上のアクティブユーザーが、50万の加盟店からショッピングをしており、プラットフォーム上では約1億5000万点の商品が販売されているという。

そうした商品の多くは、タトゥーキットからペットの爪切りといったWishが長年に渡って扱ってきた不要不急の小物だが、ペーパータオルや消毒剤のような必需品の割合も増えており、顧客を安定したリピーターにするためにひと役買っている。

初期の頃はほとんど重さのない安価なものばかりに力を入れていた同社にとって、これはちょっとした進化だ。そもそもWishは常に、製品やプラットフォームにマーケティングコストをかけられない中国を中心とした無名ブランドの業者と協力してきた。そうすることで業者たちを、既存の市場の中での共食いを回避しつつ、新しい顧客に無償でリーチできるようにできるからだ。

しかし、各取引に15%の手数料をかけているWishは、ePacketと呼ばれるUSPS(米郵便公社)と中国の間の提携にも大きく依存してきた。これにより、商品が異常に大きくて重くない限り、1ドル(約104円)から2ドル(約208円)で海外の商品を米国に送ることができていた。しかし、それは2020年7月1日(Stamps.com記事)に変更され、新しいUSPSの価格体系の中では、Wishのような企業が商品を出荷するためにはもっと支払うか、またはより高価な商業ネットワークに移動する必要が生じたのだ。

当然のことながら、Wishには複数の予備プランがあった。そのうちの1つは、中国内で顧客の所在地に応じて複数の注文をまとめて梱包し、米国に一括して送り、受け取りが行える専門の場所に届けるやり方だ。

関連して、2019年初めにさかのぼるが、Wishは商品をストックしている米国やヨーロッパの何万もの中小企業と提携を始め、その保管スペースをWishの顧客からのアクセスのために利用し、店舗内でのピックアップが行われるごとに小さな金銭的なボーナスを支払うことを始めた(もしその注文を直接顧客の自宅に届けることができるなら、Wishは店舗のオーナーにさらに多くのボーナスを支払うことになる)。Forbes(フォーブス)によれば、これらのパートナーシップにより、Wishは「安価な流通ネットワークを実質的に一晩で」(Forbes記事)手に入れることができたのだ。

コンビニエンスストア業界を破壊することに失敗したゴリアテ(アマゾン)が、自身のコンビニエンスストアを使って挑戦を行おうとしている中で、このWishの動きは、既存コンビニに対する援護射撃となるという意味でアンチアマゾンの物語の中にうまくフィットしている。

またそれは、アマゾンと比較しても必要資産の少ないモデルだ。Wishは在庫を持たず、飛行機やトラック、倉庫を購入したり維持したりする必要もない。

こうしたことは、対峙する巨人アマゾンに比べれば、まだほんの小さなものに留まっていて利益の出ていないWishにとって、挑戦への妨げにはならない。

同社は緩やかな収益成長を示しているが、その報告書によれば、そのマーケティング費用の一部を原因とする一定の損失(SeekingAlpha記事)も続いている。2019年には、Wishは前年比10%増の19億ドル(約1977億円)の売上を報告したが、同時に1億3600万ドル(約141億5000万円)の純損失も計上した。

同社は世界中の新しい地域に進出を続けているが、いまでも中国を拠点とする業者に大きく依存しているのが現状だ。これに対応するために、過剰在庫や返品された品を処分したかったり、整備済電子機器を販売したかったりというニーズを持つ米国や欧州の大手小売業者たちとの提携が徐々に増え始めているという。「多様化したいと思っています」とCEOのSzulczewski(スルチェフスキー)氏はこの夏、フォーブスに語っている。

Wishは常に品質管理の問題に悩まされてきたが、それもまだ完全には解決していない。実際のところYouTubeには、Wishの商品が実際にはどのようなものなのか、そしてオンラインではどのように買い物客に紹介されているのか、という話題に焦点を当てたチャンネルがある(非常におもしろいものもある)。最後の動画を参照して欲しい。

主にこれは文化の問題だ。たとえば2016年に本記者が主催したイベントで、共同創業者でCEOのピーター・スルチェフスキー氏は、米国の顧客の期待値について中国の業者に学んでもらわなければならないと語っていた。

「中国での消費者の期待値が、大きく異なっているのは事実です」とスルチェフスキー氏は当時説明している。「たとえば赤いセーターを注文して青いセーターが届いても、(中国の消費者は)『仕方ない、次に期待しよう』というような感じになります。中国の消費者にしか販売していない商売をしている業者が多いので、私たちは赤のセーターの在庫がないからといって青のセーターを出荷しても良いということにはならないと教育しなければならないのです」。

Wishは、この意識ギャップを埋めるだけでなく、プラットフォーム上の詐欺行為にも徹底的に取り組んできた。そうした多くの動きの1つとして、Facebook(フェイスブック)の元コミュニティマネージャーを、コミュニティエンゲージメントのディレクターとして雇用した。伝えられるところでは、その仕事は腐ったリンゴを取り除く(Forbes記事)ためにWishのユーザーを組織化することを含むものだという。しかし、悪い経験をして、去っていったWishの買い物客は確かに多いのだ。

当面は、公開市場における多くの投資家が見守り、待つことになるだろう。これまで何年もの間、同社に21億ドル(約2184億円)の資金を提供してきたFormation 8、Third Point Ventures、GGV Capital、Raptor Group、Legend Capital、IDG Capital、DST Global、8VC、137 Ventures、Vika Venturesなどのベンチャーキャピタリストたちも同様だ。

ボストンに拠点を置く Flybridge Capital PartnersのAnna Palmer(アンナ・パーマー)氏は、Wish には出資していないものの、いわゆるコマース 3.0に非常に力を入れている人物だ。彼女はWishがアマゾンの買い物客に対するものとは「異なるユースケースと顧客ニーズに対応している」と考えている。

「たとえばDollar General(ダラー・ジェネラル)やDollar Tree(ダラー・ツリー)といったオフプライスならびにディスカウント市場の力強い小売業たちを見れば、Wishの継続的な成長を期待することができます。特にディスカウント市場は追加の流通コストのためにこれまでオンラインにするのが困難だったのですから」。

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(翻訳:sako)

フランス当局が偽造品販売容疑でモバイルショッピングの「Wish」を捜査

フランス政府で消費者の権利と詐欺を担当する機関が、モバイルEコマースプラットフォームで最近上場申請(未訳記事)したWish(ウィッシュ)の捜査を行った。同社は2019年に19億ドル(約1980億円)の売上を記録したが、フランス政府はWishがスニーカーや香水などの製品を、有名ブランドのロゴを偽って表示した画像を使って販売していたと考えている。

製品の誤表示だけでなく、Wishは実際にはそうでないのにセール品であると偽っていると当局はいう。Wishは一部の商品に70%オフ、80%オフ、90%オフなどと表示していたが、元の価格はまったくのでっち上げだった。

捜査を担当するdirection générale de la concurrence, de la consommation et de la répression des fraudes(DGCCRF、競争・消費・詐欺防止総局)は、フランス経済・財務省配下の機関だ。同局はパリの裁判所に報告書を送った。

後は裁判所が、申し立てが正しいか根拠がないかを決めるだけだ。「裁判所はWishを召喚するか罪状を認めるよう提案することができます。近いうちにわかるでしょう」とフランスのCédric O(セドリック・オ)デジタル経済大臣はいう。

もしWishが有罪になれば、フランスでの年間売上の最大10%を徴収される可能性がある。中でもサードパーティーの販売業者が扱った商品についてWishが責任を問われるかどうかが注目される。

本件のタイミングは、欧州のデジタルサービス法によって2000年からのえコマース指針が全面改訂されることを考えると少々奇異に感じる。すべての目はコンテンツ管理に向けられているが、デジタルサービス法は偽造品販売者やマーケットプレイスの責任などにも焦点を当てている。

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画像クレジット:Emilija Manevska / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook