「地球上で最もプログラマブルな自動車」の実現を目指すウーブン・プラネット

2日間にわたってオンラインで開催された「TechCrunch Tokyo 2021」で、初日冒頭の「Keynote」セッションに登場したのが、ウーブン・プラネット・ホールディングスでソフトウェアプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデントを務めるNikos Michalakis(ニコス・ミハラキス)氏だ。

「Programmable Mobility」(プログラム可能なモビリティ)と題したこのセッションでは、

  • ウーブン・プラネットの戦略の概要
  • モビリティのプログラミングをよりオープンにするためのArene(アリーン)プロジェクト
  • ウーブン・プラネットが切り開こうとしているビジネスチャンス

の3点を取り上げるとミハラキス氏は述べ、Keynoteが始まった。

技術と投資にフォーカスするウーブン・プラネット

ミハラキス氏はギリシャで生まれ、米国に渡って電気工学とコンピュータサイエンスを学んだ。さまざまな分野のスタートアップやNetflixで働いた後、シリコンバレーのトヨタ・リサーチ・インスティテュートに入社。その後、東京のウーブン・プラネットに移った。

ウーブン・プラネットのビジョンは「Mobility to love, Safety to live」で、技術にフォーカスした2つの会社と投資にフォーカスした1つの会社で構成されている。

技術にフォーカスした会社の1つがウーブン・アルファで、イノベーティブなプロジェクトを推進している。ミハラキス氏のチームが取り組んでいるプロジェクトもここに含まれる。

もう1つがウーブン・コアで、自動車メーカーとサプライヤーが協力しながら自動運転や新しい車載電子プラットフォームを提供している。

そして投資にフォーカスしたウーブン・キャピタルは投資や協業を通じて、スタートアップだけでなく大企業ともパートナーシップを構築しているという。

モビリティは古典的な考え方と現代的な考え方が交差するところに生まれる

モビリティについてミハラキス氏は「自動車に関する古典的な考え方と、ソフトウェア、つまりウェブ、モバイル、インターネットといった現代的な考え方が交差するところに生まれるものです」と語る。

同氏は「(新しい技術ゆえに)モビリティ構築に必要なスキルを持つ人材は今のところいません」とし、ウーブン・プラネットは日本のモノづくりにおけるクラフトマンシップとシリコンバレーのイノベーションの考え方を融合させた文化を構築しようとしていると述べた。また、社内に「DOJO(道場)」を作り、新しいモビリティ・スキルセットを身につけた人材を育成しているそうだ。

快適にソフトウェアを開発できる環境を目指すAreneプラットフォーム

「私たちは地球上で最もプログラマブルな自動車を実現したいと考えています」とミハラキス氏はいう。それを実現するプラットフォームがAreneだ。

Areneのビジョンを、同氏は「開発者が快適に開発を行えるようにしたいのです。最適なツールとプラットフォームを提供し、イノベーションを実現できるようにするのです」と説明する。

このビジョンを実現するためのミッションについては「ソフトウェア開発をシンプルにし、開発頻度を上げて、車載コードをシームレスにアップデートできるようにします。また、そのために安全性が損なわれることもないようにします。これを実現できれば、自動車のプログラミングは誰でもできるものになると考えています」と述べた。

スマートフォンと同じように自動車のプログラミングができるようになる

自動車のプログラミングが誰でもできるとはどういうことか。ミハラキス氏は10〜15年前の携帯電話の状況と対比して説明する。

「かつては電話機をプログラミングできるのは電話機メーカーだけでした。しかし現在は誰もがスマートフォンをプログラミングできます。何千ものアプリケーションが利用可能で、何千もの開発者がこのプラットフォームに参入し新しいアイデアを生み出しています。それにより投資家たちの関心が高まり、利益が見込まれるアイデアには資金が集まるようになりました」と同氏は述べ、このようなポジティブなサイクルが生み出された結果、モバイルエコシステムが成長していると携帯電話の状況を位置づけた。

これと同じように「現在のところ、自動車のプログラミングを行えるのは自動車メーカーだけですが、将来は誰もが車のプログラミングをできるようになるべきです」とミハラキス氏はいう。

オープンな開発プラットフォームで開発者の参入を促し、自動車業界に影響を与える

ウーブン・プラネットの目的は「オープンな開発プラットフォームを構築して、そこでクラウドベースのツールやソフトウェア開発キットを開発者に提供すること」で、自動車の各機能にアクセスするためのVehicle APIも提供する。

ツールを提供するだけでなく「自動車自体についても再考する必要がある」とミハラキス氏はいう。現在の自動車は複数の異なる領域ごとにコンピューティングが活用され、各コンピュータが特定の機能を実行するための専用のものとなっている。これに対し、ウーブン・プラネットは複数のECU(電子制御ユニット)を横断するArene OSにフォーカスする。「アプリケーションがコンピューティング全体に作用していくようにする」と同氏は説明した。

こうした取り組みは業界に大きな影響を与えて「車載アプリ開発者」という職種が生まれる、起業家がモビリティ分野に参入する際の障壁が少なくなる、車載ソフトウェアをアップデートできることで自動車自体のLTV(顧客生涯価値)も高まると同氏は見ている。

アプリ、Arene OS、ECU、ハードウェアの概念図

新しいビジネスチャンスのアイデアは?

このプラットフォームにより「新しいビジネスチャンスが得られると考えています」とミハラキス氏は述べ「ともに考え、創造性を磨いていきましょう」と呼びかける。そして、ビジネスチャンスのアイデアをいくつか挙げた。

まず、アプリのパーソナライズ機能を構築すれば、カーシェアで誰が乗ったかに応じてアプリや構成をロードできるようになる。

また、企業のブランディングも考えられる。企業が実店舗からウェブ、モバイル、ソーシャルメディアにプレゼンスが求められるようになったのと同じで、モビリティにもプレゼンスが求められるようになるだろうという。その例として同氏は、ホテルの送迎車内でチェックインやシャンパンのサービスを提供できるかもしれないと述べた。

分散型アプリケーションの可能性もある。同氏は「すべての自動車に最先端のパワフルなコンピューティング能力とセンサーが搭載されているのを想像してみてください。データの力を活用したすばらしいアプリケーションを構築できるでしょう」と述べ、リアルタイムのマップ構築を例として示した。

そしてビジネスチャンスとして同氏は最後に、これまでにないハードウェアへの期待を挙げた。同氏は個人的に、マッサージチェアがあればいいなと思っているという。

エッジコンピューティングによるマップのイメージ

ミハラキス氏は「成功するものもあれば失敗するものもあるでしょう。結果はわかりません。それが起業というものです」と述べ「自動車のプログラミングをよりオープンなものにしていけば、アイデアを繰り返し実験し、より容易にできるように改良し、実験にかかるコストを低減し、アイデアをさまざまな方法で応用してみるといった活動を通じて、エコシステムを成長させる機会が得られると思っています」と強調して、Keynoteを締めくくった。

(文:Kaori Koyama)

TC Tokyo2021「Keynote」セッションに未来のモビリティを創造するWoven Planet Holdings(トヨタ自動車グループ)のニコス・ミハラキス氏が登壇

Woven Planet Holdings

12月2、3日にオンラインで開催される「TechCrunch Tokyo 2021」。同イベントでは、国内・海外から著名スピーカーをお招きし、様々なセッションが繰り広げられる。

「Keynote」セッションには、ウーブン・プラネット・ホールディングスのソフトウェアプラットフォームを担うSenior Vice PresidentであるNikos Michalakis(ニコス・ミハラキス)氏が登場する。

「テクノロジーとイノベーションで世界を変える」。トヨタ自動車が従来の自動車会社から、モビリティカンパニーになるため設立されたウーブン・プラネット・グループ。ウーブン・プラネット・ホールディングスは同グループ全体の戦略的意思決定を行う。

ミハラキス氏は、Areneやクラウド、ビッグデータ、機械学習インフラ、シミュレーション、車両OSなどのソフトウェアインフラとツールを担当。世界トップレベルのプログラミング対応車両をつくることを目指している。2016年にシリコンバレーのTRIにてトヨタグループに入社した後、クラウドおよびビッグデータプラットフォーム担当ディレクターを務め、現在にいたる。

「TechCrunch Tokyo 2021」の参加チケットは現在も絶賛販売中だ。参加者チケットは2日間の通し券で、他の講演はもちろん、新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」もオンラインで楽しむことができる。ぜひ購入を検討いただきたい。

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トヨタ傘下のウーブン・プラネットが先進的な車両OS開発加速のため米Renovo Motorsを買収

トヨタ自動車の子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、自動運転のような未来の交通技術への投資、開発、そして最終的には市場への投入を目指して、1年足らずで3件目の買収を行った。

今回の買収対象は、2015年にスタンフォード大学と共同開発した自動運転のデロリアンが自律的にドリフト走行をする動画を公開して大きな話題となった、シリコンバレーに拠点を置く自動車向けOS開発企業のRenovo Motors(レノボ・モーターズ)だ。買収の条件は公表されていない。Renovoはシリコンバレーのオフィスを維持し、1240人の従業員を持つウーブン・プラネットの事業に統合される。

ウーブン・プラネットは、2021年初めに高精度マップ生成スタートアップのCarmera(カーメラ)や、Lyft(リフト)の自律走行部門であるLevel 5(レベル5)を買収したが、Renovoを買収したのは、AVドリフトの技術のためではない。同社はRenovoの車両OSに興味があり、それが自社の取り組みを加速させるのに役立つかもしれないと考えているのだ。

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Renovoは、自動運転や地図、その他のモビリティサービスに関連するアプリを車内で動作させるためのOSを開発した。同社の「AWare OS」は、Google(グーグル)のAndroidが、スマートフォン市場でアプリ開発者がサービスを提供できるようにするのと同じような仕組みになっている。またある意味、Amazon Web Services(AWS)が提供するオンデマンドのクラウドコンピューティングプラットフォームと比較することもできる。このミドルウェアは、セキュリティを犠牲にすることなく柔軟に設計されており、他の企業がソフトウェアを展開するためのプラットフォームを提供する。

急成長し、今では統合されつつある自律走行車業界の中で、わずか30人の従業員を抱えるRenovoは小さな存在だった。しかし同社のOSは、Cruise(クルーズ)に買収されたVoyage(ヴォヤージュ)をはじめとする多くのAV開発者の注目を集めた。また、Verizon(ベライゾン)をはじめとする複数の投資家を惹きつけた。

Renovoの共同創業者兼CEOであるChris Heiser(クリス・ハイザー)氏は、最近のインタビューでこう語っていた。「Renovoが開発したIPは、自動車メーカーが将来やりたいことの中核をなすものだと認識されるようになってきたと思います。このような関係を構築し、どのようにして規模を拡大するのかを理解しようとしたとき、巨大な規模を実現するためには、自動車メーカーのリソースと後ろ盾を持ち、何百万台もの車を発売できるパートナーを見つけなければならないことが次第に明らかになりました」。

ウーブン・プラネットは、RenovoのOSを、2025年までに市場に投入する予定の自社のオープンな車両開発プラットフォーム「Arene」の商業化を支援する手段と考えている。

ウーブン・プラネット・ホールディングスは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(Toyota Research Institute – Advanced Development, Inc.、TRI-AD)を傘下に置き、投資部門であるウーブン・キャピタル(Woven Capital, L.P.)と、相互接続されたスマートシティの実験都市であるウーブン・シティ(Woven City)を運営している。トヨタ自動車は2月、富士山の麓に位置する裾野市の東富士工場跡地に着工した。

2021年初め、ウーブン・キャピタルは、8億ドル(約893億円)規模の戦略的ファンドを立ち上げるにあたり、自動運転配送車両のNuro(​​ニューロ)への投資を発表した。

画像クレジット:Renovo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

トヨタのウーブン・プラネットが高精細地図スタートアップCarmeraを買収

トヨタ自動車が自動運転などの将来に向けた交通技術に投資し、開発を進め、最終的に商業化するために設立した企業であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、高精度地図のスタートアップ企業であるCarmera(カーメラ)を、非公開の金額で買収すると発表した。2021年4月末にウーブン・プラネットは、Lyft(リフト)の自律走行車部門であるLevel 5(レベル5)を5億5000万ドル(約604億円)で買収することで合意に至ったと発表したばかりだ。

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また、これは6月に発表されたNVIDIA(エヌビディア)によるDeepMap(ディープマップ)の買収に続く、高精度地図スタートアップの買収でもある。

今回の買収により、Carmeraはウーブン・プラネットの完全子会社となる。ウーブン・プラネットの代表取締役CEOであるJames Kuffner(ジェームズ・カフナー)氏によれば、Carmeraで働く50人のチームはニューヨークとシアトルのオフィスを維持し、最終的にはウーブン・プラネットの1000人を超えて成長を続ける事業形態に統合されるとのことだ。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの事業会社で東京に本社を置くWoven Alpha(ウーブン・アルファ)の米国拠点となり、同社のAMP(Automated Mapping Platform、自動地図生成プラットフォーム)チームと協業する。Carmeraの共同設立者兼CEOであるRo Gupta(ロー・グプタ)氏は、AMPを統括するMandali Khalesi(マンダリ・カレシー)氏の直属となる。

Carmeraは、商用フリート会社に無料で提供しているサービスから収集したデータを、主要な地図製品の維持・拡大に利用するバーター型のビジネスモデルとして、2015年に設立された。Carmeraの主要かつ最初の製品は、自動車メーカーやサプライヤー、ロボタクシーなど、自動運転車を手がける顧客向けに開発された高精細な地図である。自動運転車開発のスタートアップであるVoyage(ヴォヤージュ)は、2021年3月にCruise(クルーズ)に買収されたが、Carmeraの初期の顧客だった。また、Baidu(百度、バイドゥ)はCarmeraの技術を使って、オープンソースの自動運転基盤「Apollo(アポロ)」におけるマッピングプロジェクトをサポートしている。

Carmeraは、車両やドライバーのリスク管理や安全性の向上を図りたいフリート事業者のために、テレマティクスおよびビデオを使ったモニタリングサービスを提供しており、それら多数のフリート車両から得られたクラウドソースのデータを、自動運転に役立つ高精細地図の更新に利用している。カメラを搭載した人間が運転するフリート車両は、都市部で日常業務を行う際に得た日々新たな道路情報を、自動運転用地図に提供しているというわけだ。

これまでCarmeraは、時間をかけて製品ラインアップを進化させてきた。自動運転用地図にリアルタイムイベントや変更管理エンジンを追加し、都市および市街地計画者向けに空間データや街路分析などの製品を開発した。2020年、同社はいわゆるChange-as-a-Service(サービスとしての変更)プラットフォームを発表した。これは、変化を検出して他のサードパーティの地図に統合できる一連の機能を備えた製品群だ。

リサーチ&アドバイザリ企業のGartner(ガートナー)でVPアナリストを務めるMike Ramsey(マイク・ラムゼイ)氏は「高精細地図の会社で常に問題となるのは、このような機能を持っているのはすばらしいことだが、それをどのように拡張し、提供し、更新し続けるかを考えないと、『誰かに売れそうなソフトウェアのよくできた一部分を持っているだけ』という状態に陥ってしまうことです」と述べている。「今回の買収は、Carmeraの拡張に関する問題を解決するものです」。

画像クレジット:Carmera

Carmeraはウーブン・プラネットに比べて規模も資本も小さいが、業界を注視してきた人はこの合併を予測していたかもしれない。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの前身となったToyota Research Institute-Advanced Development(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)と、3年前から協業してきた。このスタートアップが最初に参加したのは、日本で行われた実証実験で、車載カメラを使って都市部や路面の高精細地図を自動生成する方法を開発した。このパートナーシップは2020年に拡大し、日本だけでなくミシガン州のデトロイトなどの道路の地図作成も行われている。

「この関係に多くの投資をすることは実に簡単なことでした」と、グプタ氏は2018年にCarmeraがトヨタと初めて提携したときのことを振り返る。「ビジョンが非常によく似ていたのです。5年前に考えた我々のシードデッキと、ウーブン・プラネットの全体的なビジョンや、地図の自動生成に対する彼らのビジョンを比べると、あまりにも似ていて不気味なくらいでした」。

ウーブン・プラネット(ひいてはトヨタ)は、すでに衛星を使って作成した地図と、現在走行中の何百万台もの車両から得られる膨大なデータを持っている。Carmeraは、ウーブン・プラネットのポートフォリオに、ダイナミックな地図の変更と、フリート事業者や安全性に関するビジネスの経験をもたらすことになる。

「Carmeraとはすでに一緒に実証実験に取り組んできた、近い将来に利用可能なアプリケーションがあります。これらは、まだ発表していませんが、安全性や自動運転の分野に応用できます」と、カフナー氏は語っている。そして、この自動車メーカーの新型Lexus LS(レクサスLS)とToyota Mirai(トヨタ ミライ)に、高精細地図を利用した「Teammate(チームメイト)」と呼ばれる先進運転支援技術が搭載されたことに言及し「私はこれらの次世代の製品にとても期待しています。特に商用フリート車両では、高精細地図には多くの用途があります」と語った。

ウーブン・プラネットが織りなすもの

画像クレジット:Woven Planet/Toyota

LyftとCarmeraの買収は、ウーブン・プラネットが2021年1月に設立されてから行ってきたさまざまな活動の一端を表すものだ。それはトヨタ自動車が、既存のライバル企業や新興企業に対して、特にソフトウェア面での競争力を高めようとしていることも示している。トヨタ自動車の子会社で東京に拠点を置くウーブン・プラネットには、Woven Alpha(ウーブン・アルファ)とWoven Core(ウーブン・コア)という2つの事業会社と、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)というVCファンドを擁している。また、この持株会社は、あるゆるモノやサービスが相互接続されたスマートシティのプロトタイプとして、新技術の実験場となるWoven City(ウーブン・シティ)と呼ばれるプロジェクトをてがけている。トヨタは2021年2月、富士山麓にある静岡県裾野市の東富士工場跡地で、このWoven Cityの建設に着工した。

2つの事業会社であるウーブン・アルファとウーブン・コアは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントの事業をさらに発展・拡大するために、新体制に移行して設立された。ウーブン・コアは地図作成ユニットを含む自動運転技術に焦点を当てており、ウーブン・アルファはWoven Cityを含む新しいコンセプトやプロジェクトの開発を担当している。

そしてウーブン・キャピタルは、これらの次世代モビリティ・イノベーションに投資を行う。このVC部門は、2021年3月に8億ドル(約880億円)規模の新たな戦略的ファンドを起ち上げ、その第一号案件として、無人自動運転車による配送に特化したロボティクス企業であるNuro(ニューロ)に出資すると発表した。6月には、カーシェアリング、ライドシェアリング、自動運転技術企業などの車両管理を支援するためのプラットフォームを開発した交通ソフトウェアのスタートアップ、Ridecell(ライドセル)に非公開額の出資を行っている。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタ自動車Woven Planet買収地図自動運転

画像クレジット:Carmera

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

配車サービスのLyft(リフト)は、その自動運転車部門をトヨタの子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)に5億5000万ドル(約600億円)で売却した。自動運転車技術の商品化にかかる大量の費用と時間に対処しようと各企業の買収合戦が続いているが、これはその最新の動きだ。

米国時間4月27日に発表された買収の条件によると、LyftのLevel 5(レベルファイブ)と呼ばれる部門がWoven Planet Holdingに統合される。Lyftは5億5000万ドルを現金で受け取るが、そのうち2億ドル(約220億円)が先払いされる。残りの3億5000万ドル(約380億円)は5年をかけて支払われることになる。LyftのLevel 5に所属していたおよそ300人の従業員は、Woven Planetに移行する。2020年初頭には、米国、ミュンヘン、ロンドンで400人以上を数えていた同チームのメンバーだが、彼らは引き続きカリフォルニア州パロアルトのオフィスに勤務する。

2021年第3四半期に締結完了を予定しているこの契約により、4年近くにおよんだLyft独自の自動運転車開発は、公式に終了することとなる。

この買収で、Lyftは膨大な年間経費を削減できる。同社は、Level 5を売却することで、年間のnon-GAAP(公式な会計基準に沿わない)運営費は純額1億ドル(約108億円)の削減を期待しているという。収益性を追求するLyftにとって、この節約は極めて大きい。共同創設者で社長のJohn Zimmer(ジョン・ジンマー)氏は今回の発表で、この点を特に強調していた。

「契約が予定期間内に完了し、新型コロナからの回復が順調に続けば、2021年の第3四半期の調整EBITDA(償却前営業利益)では収益性が向上すると確信しています」とジンマー氏は声明で述べている。

この年間経費から解放されがLyftは、同社が創設以来ずっと本気で目指してきたもの、つまり、頼りになる配車ネットワークと、種類を問わずあらゆる商用ロボタクシーサービスが利用できる車両管理プラットフォームになることに資源を集中できるようになる。Lyftはすでに、自動運転車の開発企業数社との提携関係を結んでいる。とりわけ、40億ドル(約4340億円)規模のHyundai(ヒュンダイ)とAptiv(アプティブ)の合弁事業Motional(モーショナル)とWaymo(ウェイモ)だ。その目的は、他者の封じ込めだ。今回の買収では、Woven Planetは、Lyftのプラットフォームと車両管理データを使う商業契約も交わしている。

Lyftは、このWoven Planetとの取り決めは、独占契約ではなく、Motioalなど他企業との提携は今後も継続されると話している。MotionalとLyftは、すでに3年以上も提携を続けているが、これはそもそも、2018年にラスベガスで開催された技術見本市CESの期間中に、Lyftネットワークの自動運転車の試乗会を1週間だけ共同で行うことを想定したパイロット・プログラムだった(実際この提携は、Hyndaiとの合弁事業よりも前からある)。安全のために人間のドライバーを乗せて行われたこの短期の実験は、結局今日まで延長され、継続している。2020年2月には、同プログラムが提供したLyftのアプリを使ったAptive(今はMorional)の自動運転車による賃走が、10万回を超えた。Motionalは2020年12月、Lyftの配車ネットワークを使ったロボタクシーによる完全な無人運転での運行を米国の主要都市で2023年に開始すると発表している。

Lyftは、この新しくなった目標に向けた組織改編の最中だ。自動運転車の配車手配と乗車の顧客体験開発に取り組むエンジニア、製品マネージャー、データサイエンティスト、UXデザイナーは社内に残し、Jody Kelman(ジョディー・ケルマン)氏が彼らを率いることになる。このチームはLyft Autonomous(オートノマス)と呼ばれ、レンタカーとExpress Drive(エクスプレス・ドライブ)プログラムで使われる1万台以上の車両を管理する同社のフリート部門に組み込まれる。2019年に設立され、Cal Lankton(キャル・ランクトン)氏が率いていたLyft Fleet(フリート)は、2030年までに同社ネットワークの車両を100パーセント電気自動車に移行する事業も牽引することになる。この組織改編の狙いは、シェア、電動化、自動運転への取り組みをすべて1つ屋根の下で行うことにある。

その他にも、戦略的な改変がトヨタのWoven Planetで起きている。Level 5、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、Woven Planetは、1200人の従業員からなる1つのチームに統合される。Woven Planetは、Level 5の買収はLyftから自動運転部門を切り離し、自動運転技術の安全性の加速的な向上に注力させるためのものであり、自動運転スタートアップAurora(オーロラ)など、トヨタの他のパートナーとの関係には直接影響しないと話している。

Woven Planet Holdingsは、すでに大きな波紋を呼んでいる新企業だ。これは、Toyota Research Institute Advanced Development Inc.(TRI-AD)に組み入れられた持ち株会社であり、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)として知られる投資会社、相互接続されたスマートシティーの実証都市Woven City(ウーブン・シティー)もここに含まれている。2021年2月、トヨタは富士山の麓、静岡県裾野市にある東富士工場跡地でWoven Cityの建設を開始した。

2021年の初め、Woven Capitalは8億ドル(約866億円)の戦略的ファンドを開設し、自動配送車両のメーカーNuro(ニューロ)への投資を発表した。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタウーブン・プラネットLyft買収自動運転

画像クレジット:Lyft

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

トヨタが圧倒的に信頼性が高いApex.AIの自動運転ソフトウェア開発キットの使用を発表

電気自動車やハイテク車へシフトしつつある自動車メーカー各社は、ソフトウェア、さらにいえばバグがなくワイヤレスでアップデートできるソフトウェアの開発が、顧客獲得に向けて超えなければならないハードルになっていることに気がついた。この問題は、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID.3」や、近々発売されるVolvo(ボルボ)の「XC40 Recharge(XC40リチャージ)」、Ford(フォード)の「Mustang Mach-E(マスタング・マッハE)」などの新型電気自動車でもメーカーを苦心させている。

Apex.AI(エイペックスAI)は、Bosch(ボッシュ)で自動化システムを手がけていたベテランエンジニアであるJan Becker(ジャン・ベッカー)氏とDejan Pangercic(デヤン・パンガーシック)氏が設立したスタートアップ企業で、車両内のソフトウェアを統合し、すべてのアプリケーションを確実に動作させるフレームワークとなるロボットオペレーティングシステムの再構築に4年を費やしてきた。同社は最近、そのソフトウェア開発キット(SDK)が、量産車に使用できるほど洗練されていることを証明する安全認証を取得したばかりで、この度トヨタ自動車と日本の技術系スタートアップのTier IV(ティアフォー)をパートナーとして迎えることになった。

トヨタの先進技術開発部門から2021年1月に新事業体として設立されたWoven Planet Group(ウーブン・プラネット・グループ)は、Apex.OS SDKを自社の車両開発プラットフォーム「Arene(アリーン)」に統合すると発表した。Apex.OS SDKは、車両の安全性に関わる重要なアプリケーションを処理し、自動運転ソフトウェアの開発を加速させ、最終的に量産車への搭載を目指す。米国時間4月14日に発表された別の契約では、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発元として知られるTier IVが、Apex.AIのソフトウェア・スタックを、安全性が最重要視される自動運転システムに使用すると述べている。

「この1年で明らかになった傾向は、自動車メーカーがTesla(テスラ)に勝つために、Software-Defined Vehicle(ソフトウェア定義自動車)と呼ばれるものを目指していることです」と、ベッカー氏は最近のインタビューで語っている。自動車メーカーは、車両のあちこちに100基の電気制御ユニット(コンピュータ)を配置する従来の考え方から離れ、代わりに数台の高性能コンピュータを搭載してすべての機能をソフトウェアで実現しようとしていると、ベッカー氏は説明する。

このような変化は、1台のクルマに何百人、何千人ものソフトウェア開発者が携わる可能性が生じることを意味する。「そのためには、ソフトウェア開発者が同じインターフェースを使い、各部署が連携できるようにする必要があります」と、ベッカー氏はいう。「それを可能にするのが、我々のSDKです。Apex.OSでは、車両のほぼすべての機能に対応できる共通の抽象化レイヤーやSDKを初めて実現させました」。

Apexのツールキットは、個人投資家や戦略的投資家の注目も集めている。2018年、同社はシリーズAラウンドで1550万ドル(約16億9000万円)を調達した。それ以降、同社はAirbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、JLR(ジャガー・ランドローバー)のInMotion Ventures(インモーション・ベンチャーズ)、そしてトヨタやボルボ・グループから、戦略的投資を受けている。これらの投資額について、ベッカー氏は明らかにしなかったものの、同社が現在、シリーズBの資金調達を行っていることに言及した。

関連記事:ボルボが自動運転車両OS開発のApex.AIに投資

Apex.OSのルーツは、研究開発プロジェクトや自動運転車の開発に広く使われているオープンソースのROS(ロボットオペレーティングシステム)だ。Apex.OSの目的は、そのコードを機能安全とリアルタイム処理に対応するように書き換えることだった。このSDKは先日、TÜV NORD(北ドイツ技術検査協会)による機能安全認証を取得した。これは、この技術が量産車に適用できると認められたことを意味する。

ベッカー氏によると、オープンソースのコードは認証を受けられないというのが長年の常識だったという。同社は1年かけて認証を取得した。

「自分のノートPCでソフトウェアがクラッシュしたら面倒ですが、自動車の安全性に関わる重要な機能でソフトウェアがクラッシュしたら大惨事になりかねません」と、ベッカー氏は語る。「だからこそ私たちは、システムのクラッシュや操作ミスから保護される信頼性の高いソフトウェアを開発しようとしたのです。今回の認証取得は、当社のソフトウェアが目標としている統計的に表れないほど低い故障率を達成できたことの証明です」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Apex.AIトヨタ自動車Woven PlanetTier IV自動運転

画像クレジット:Apex.ai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドミノ・ピザがヒューストンで無人のピザ配達を開始、自律配達車両スタートアップNuroと提携

4月12日の週から、米テキサス州ヒューストンでDomino’s(ドミノ・ピザ)にピザを注文する顧客の一部は、人間と接することなく商品を受け取れるようになる。

米国時間4月12日、Domino’sは自律配達車両スタートアップのNuroと提携し、顧客はNuroのR2ロボットから家の前でピザを受け取る方法を選べるようになると発表した。

Domino’sのシニアVP兼最高イノベーション責任者のDennis Maloney(デニス・マロニー)氏は発表の中で「我々には自律配達の分野で学ぶべきことがまだたくさんあります。このプログラムによって我々はお客様の反応、お客様とロボットとのやりとり、ストア運営への影響をもっと理解できるようになるでしょう」と述べた。

いずれかの時点で、Domino’sのウェブサイトでWoodland Heightsストアに注文するとR2を選べるようになる。R2はレーダー、360度カメラ、赤外線画像により動きを制御する。ロボットの場所や、ピザを受け取るためにロボットのタッチスクリーンに入力するPINコードは注文者にテキストメッセージで通知される。

コロナ禍で非接触の自律食品配達業界は急速に成長し、現在Nuroはこの分野のリーダーになりつつある。

Nuroの共同創業者で社長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は発表の中で「Nuroのミッションはロボットで生活を向上させることです。我々の自律配達ロボットをヒューストンでDomino’sのお客様に使っていただけることになり、たいへんうれしく思っています。お客様の感想を楽しみにしています」と述べた。

ヒューストンの公道で電動の無人自動運転車両が料理を配達するのはこれが初めてだ。住宅地であるWoodland Heightsはヒューストンでは最も古い歴史的地区の1つで、高速道路のI-45とI-10にはさまれている。この街のDomino’sはメインの大通りであるHouston Avenueに面しているため、このテクノロジーのテストをするには相当難しい場所だ。

Nuroは元々、Domino’sとの提携およびヒューストンでのテストを2019年に発表していた。同年には、ヒューストンとアリゾナ州フェニックスでスーパーのKrogerの配達サービスを開始した。2020年末にはカリフォルニアの公道でのテストが許可され、ウォルマートやCVSなどのパートナーから商品を配達している。Nuroは米運輸省から無人運転車両に関する安全規定適用除外を承認された初の企業だ。

Nuroがレストランの配達に大規模に進出するのはDomino’sが最初のようだが、間違いなくこれが最後ではないだろう。NuroはシリーズCで5億ドル(約547億円)を調達したと発表したばかりで、メキシコ料理チェーンのChipotleがこのラウンドで出資した。イノベーションにフォーカスするトヨタ自動車の子会社Woven Planetの投資部門であるWoven Capitalも出資した。

関連記事:Nuroの無人運転配達車がカリフォルニア州初の商業運用許可を獲得、2021年早々にもサービス開始予定

カテゴリー:モビリティ
タグ:Domino’sNuro自動運転ロボット配達ヒューストンピザトヨタ自動車Woven Planet

画像クレジット:Nuro

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

イノベーションにフォーカスしたトヨタ自動車の子会社Woven Planet(ウーブン・プラネット)の投資部門Woven Capital(ウーブン・キャピタル)は、シリコンバレー拠点の自動運転デリバリー車両のNuro(ニューロ)への投資を発表した。新たに設立された8億ドル(約878億円)の戦略的ファンドの第1号案件だ。Woven Capitalの投資と買収の責任者George Kellerman(ジョージ・ケラーマン)氏によると、同ファンドは安全なモビリティの未来を構築するというミッションの推進に向けていつの日かパートナーになったり買収対象となったりするかもしれないグロースステージのテック企業に投資する。

Woven Capitalの出資は2020年11月に発表されたNuroの5億ドル(約549億円)のシリーズCラウンドの一環だ。同ラウンドにはChipotle、そしてT. Rowe Price Associates, Incが運営するファンド、新規投資家としてFidelity Management & Research CompanyとBaillie Giffordも参加した。各ステークホルダーの具体的な投資額は明らかにされなかった。

トヨタは2020年9月に、自動運転モビリティや機械学習、人工知能、オートメーション、コネクティビティ、データ・分析などのテクノロジー分野に投資することを目的とする8億ドルの投資プールを発表した。

「Nuroは良い出発点でした。というのも、当社が行っている業務の多くは自動運転の乗用車の開発にフォーカスしているからです。ですので、これは当社にとってローカルの商品配達にピンポイントでフォーカスしているパートナーを通じて学習して発展させる方法です」とケラーマン氏はTechCrunchに語った。「Nuroから学ぶ多くの機会があり、潜在的には今後コラボしたりNuroがグローバル展開するのをサポートしたりする機会もあるかもしれません」。

Nuroの貨物専用自動運転の車両は、すでにカリフォルニアの車両管理局から公道でのテスト実施の許可を得てKrogers、Domino’s、Walmart、 CVSといったパートナー企業の商品を配達しており、この分野でリーダーとなるチャンスをNuroは手にしている。Woven CapitalはNuroのリーダー的な立場の加速・強化をサポートする機会を見出し、一方でNuroとの間で戦略的知識共有の取り決めを結んだ。

「(Woven Capitalは)未来に向けて野心的な目標を掲げるすばらしいチームを招集しました。そして我々は人々の暮らしをより良いものにするために暮らし方や移動の仕方を変革するという共通目的を共有しています」とNuroの共同創業者で会長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は声明で述べた。「当社は引き続きチームを拡大し、すばらしい自動走行配達プロダクトを構築するのに、新たな資金と世界最大の自動車会社からのサポートを使います」。

トヨタ・ウーブンシティのコンセプトレンダー(画像クレジット:Toyota)

オートメーションはWoven Capitalのポートフォリオの大きな部分を占めることになる。これはWoven Cityなど親会社Woven Planetの活動をサポートするためだ。Woven Cityは相互接続するスマートシティプロトタイプでセットされる新しいテクノロジーの試験場で、トヨタは2021年2月に富士山の麓、静岡県裾野市東富士で着工した。

「Woven Cityについて考えるとき、自動走行モビリティとオートメーションをより広範にとらえます」とケラーマン氏は話した。「それを促進するため、人工知能や機械学習、データ・分析、コネクティビティが必要になります。ですので我々はそうした分野に投資するポートフォリオを形成するつもりです」。

モビリティ産業では、モビリティを単に人々や商品の動きとしてではなく、情報やデータの動きとしてとらえる傾向が強まっている。Woven Planetはこれを認識し、特に自動車についてはソフトウェアファーストのアプローチを取っている。従来の自動車産業のデザインとハードウェアファーストのアプローチに取って変わっていて、車両を動かすのにソフトウェアに組み込み、まずソフトウェアで開始してソフトウェア中心にハードウェアを構築することを意味する。

ソフトウェアファーストのアーキテクチャを構築することは、将来のイノベーションに多くのフレキシビリティをもたらす。ハードウェアが変わってもコードを書き直す必要はなく、別の応用を加えるだけでいい。Woven Planetが開発しているすべてのソフトウェアは可能な限り多くの応用で使えるはずだとケラーマン氏は述べた。

真に強固で統合されたソフトウェアを持っていることは、コネクテッドモビリティにとって論理的な次のステップでもあり、車両の輸送のポテンシャルを再考する道を開く。Nuro車両は配達しているあらゆるグローサリーのための車両というだけでなく、交通の流れや気候パターンなど走行中に収集してクラウドに送るすべての情報のための車両でもある。それゆえにその価値は、AからBへのユーティリティというより情報のインターチェンジとなる。

Woven Cityですぐさま活用できるかもしれないNuro車両によって集められた情報の一部は通りの安全に関するものだ。Nuro車両は人を運ばないのでデザインは車両の外にいる人の安全性、人中心の都市計画において有用となるかもしれない集計データにフォーカスしている。

結局、Woven Capitalの長期的な視点は常に将来のM&Aに向けた潜在的なプロセスだとケラーマン氏は話した。

「トヨタは歴史的に買収欲の強い会社ではありませんが、Woven Planetの中でいかに戦略的買収を通じて当社のビジョンとミッションを加速させることができるかをにらみながら経営企画チームを作っています」と述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Woven PlanetNuro投資トヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Toyota

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi