アプリ運営プラットフォーム「Yappli」が外部サービス連携を強化、APIを順次公開

Yappli(ヤプリ)」は、直感的なUIを使ってプログラミングなしでiOSやAndroid対応のネイティブアプリが開発できる、クラウド上のアプリ運営プラットフォームだ。2013年に正式公開され、現在では専任の開発チームを持たない一般企業など、小売・アパレル領域を中心に200社以上に利用が広がっている。

サービスを提供するヤプリは6月26日、開発者向けのポータルサイト「Yappliディべロッパーサイト」を公開した。ヤプリでは情報提供に加えてYappliの外部サービス連携を強化し、第1弾として、ポイント連携APIとプッシュAPIを公開する。

ポイント連携APIでは、YappliとのAPI連携により、自社システムで管理する顧客情報とアプリ端末とのひも付けが可能。ポイント照会やログイン、新規会員登録など、Yappliで作ったアプリをポイントカードとして利用することができる。

プッシュAPIでは、ポイント連携機能のログインAPIとあわせて利用することにより、自社システムで持つユーザーのステータスに応じて「再入荷のお知らせ」「配送状況のお知らせ」などのプッシュ通知を配信することができる。

ヤプリによれば「ポイントカード機能は、ECやサービスなどをアプリで提供する際、最近では必須の機能となってきている」という。またプッシュ通知についても、タイムセールの全体配信や位置情報によるエリア別、セグメント別での通知はこれまでも可能だったが、「さらにパーソナライズさせたい」との要望が多かったそうだ。

このため、これまではYappliの基本機能にこうした機能を追加でカスタマイズする形で提供されてきた。しかし需要の多さから、ヤプリがカスタマイズ対応するにはリソースに限りがあり、開発の待ち時間が課題となっていた。

ヤプリでは、Yappliを開かれたサービスにすることで、開発ベンダーや顧客のシステム担当がこれらの機能追加を早く、簡単に行えるようにと、APIの公開と開発者向け情報を集約したデベロッパーサイトの開設に踏み切った。

今後ヤプリでは、ECの商品情報や在庫情報、決済システムなど、連携できるAPIを増やしていく予定。APIを利用することで、アプリ内でのブラウザ表示(WebView)を使わず、ネイティブアプリで決済まで完結できるようにするのが、当面の目標とのことだ。

「アプリのユーザーがより快適に買い物を完了できるように、また開発パートナーがよりスムーズにアプリのカスタマイズができるようにしていく」とヤプリの担当者は述べている。

さらにヤプリでは、Yappli独自のSDKも開発中とのこと。自社サイトなどへSDKを組み込むことで、アプリ経由の売上や在庫状況などをサイト横断で分析したり、接客に生かせるように可視化することを目指す。

「ヤプリでは、今後データにも重きを置いていく」と担当者は述べている。自前で機能を用意することで、プラットフォーマーとして、アプリを利用するユーザーのデータ収集やノウハウの蓄積も狙う。

アプリ運営プラットフォーム「Yappli」運営のヤプリが6.7億円の調達、導入企業は220社に

ヤプリの経営陣。前列右が代表取締役の庵原保文氏

アプリ運営プラットフォーム「Yappli(ヤプリ)」を手がけるヤプリは10月16日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(本ラウンドのリード)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、YJキャピタル 、川田尚吾氏を引受先とした第三者割当増資(グロービス、YJキャピタル、川田氏は既存投資家)とみずほ銀行等からの融資を合わせ、総額約6億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

同社はこれまでグロービス・キャピタル・パートナーズ、YJ キャピタル、Salesforce.com、川田氏らから資金を調達しており、累計調達総額は約10億3000万円となる。また、資金調達と合わせてCFO(最高財務責任者)に元マナボCFOの角田耕一氏が就任したことも発表している。

「この2年はとにかく伸びている。最初の3年はすごいプロダクトを作ったものの、セールスやマーケティングに課題があった。いいプロダクトがあったけど売れない状態からセールスのグロースハックに成功した」——ヤプリ代表取締役の庵原保文氏はそう語る。

同社は2013年に設立(当初の社名はファストメディア)。ブラウザ上でドラッグ&ドロップしてスマートフォンアプリを制作できるYappliを開発し、中小企業や個人までをターゲットに、安価に利用できるサービスとして展開。しかしサービスインから1年足らずでの売上が数十万円という状況だったため、方針を転換。大手企業をターゲットにすることで、半年後には単月黒字を達成するという結果を出した(当時の様子は前回の資金調達の記事に詳しい)。

現在、専任の開発チームを有しない一般企業など、220社がサービスを導入。サービス継続率は99%を誇る。Yappliで制作したアプリの累計ダウンロード数は1000万件を越えた。特に小売・アパレル領域での販促支援のためのアプリは好調で、中には売上の50%以上がアプリ経由になったというアパレルブランドもあるという。そのほかにも、ゴルフ場運営の太平洋クラブで予約数2倍、アウトドアブランド「THE NORTH FACE」では、来店クーポンの利用回数が2万回以上増加、同じくアパレルの「Right-on」では、ポイントカードのアプリ化により、会員数の伸び率50%アップといった結果が出ている。販促支援にとどまらず、採用サイトのアプリ化や自社製品カタログのアプリ化など、利用用途も広がっている。

「オウンドメディアよりエンゲージしたいといった理由もあり、一般企業でもアプリを利用したいというニーズは増えている。スタートアップであれば、アプリなんて当たり前になっているかも知れないが、今まで(一般企業は)そのテクノロジーにアクセスできなかった。マーケティングで言えばGPSを使って、プッシュをして、とメルマガをリプレイスするモノになってきた。iOS11でQRコードが標準で使えるようになったので、よりアプリへの登録も容易になった」(庵原氏)

同社は今回調達した資金を元に、人材を強化。Yappliの機能強化を進める。

「創業の時から、簡単に、ちゃんと動くアプリが作れる、というのが受けている。素晴らしい管理画面こそが競争優位性だ。実際、セットアップ以降は(エンジニアが不在な)企業のウェブ担当者やマーケティング担当者が運用できている。この2年はセールスとマーケティングに注力してきたので、次はプロダクト回帰。エンジニアも10人規模で拡大する」(庵原氏)

今後は「(Yappliで制作した)自社アプリのデータの資産化にも取り組んでいく」(庵原氏)という。自社アプリを利用するユーザーの端末IDをもとに、FacebookやSmartNewsといった外部サービスにおいてもレコメンデーションを行うなど、アプリ内にとどまらない販促施策のプラットフォームとして開発を進める予定だ。

わずか1万DLのアプリが月商1000万円を達成する事例も——アプリ制作ツール「Yappli」運営元が3.3億円を調達

11990297_10156017543510343_1940117219_o

「1年目は本当に大苦戦、月の売上は数十万円で毎月微増を繰り返すだけ。『いいプロダクトを作ったから来て使ってよ』というのでは全然ダメだった」——ノンプログラミングでアプリを制作できるツール「Yappli」を手がけるファストメディアの取材は、代表取締役の庵原保文氏のこんな重たい言葉から始まった。

同社は9月1日付けでグロービス・キャピタル・パートナーズ、Salesforce Ventures(米Salesforce.comグループのコーポレートベンチャー事業部)、YJキャピタル(既存株主でもある)、個人投資家の川田尚吾氏を引受先とした総額約3億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。出資比率やバリュエーションは非公開。

ファストメディアは、ヤフーで同僚として働いていた庵原氏と共同創業者で取締役の佐野将史氏、取締役の黒田真澄氏の3人が2011年に立ち上げた個人プロジェクトからスタート。2013年にYappliを正式公開した。

Yappliはブラウザ上で機能をドラッグアンドドロップで配置し、クリエイティブをアップロードしていくことで、ノンプログラミングでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービスだ。詳細は以下の動画を見てもらえばと思う。

ジオプッシュ(スマートフォンが特定のエリアにある際にプッシュ通知を送る機能)を含むプッシュ通知にも対応し、広告配信も可能、アプリの申請も代行する。冒頭で庵原氏が語るように、プロダクト自体は——初めてデモを見たリリース時から——イケていると思った。価格も月額9800円からと比較的安価で中小規模の会社でも使いやすい。だが、クラウドサービスとしてサイト上で販売していたところで有料ユーザーはほとんど増えなかったという。

同社はYJキャピタルからシードマネーを調達していたが、サービスインから1年経たずで売上は数十万円。さすがに「これでは危ない」となって方針を転換。大手企業をターゲットに営業を始めたところ、今度は驚くように案件が取れ始めた。新生銀行や日本ロレアル、女性アパレルのアダストリアホールディングスなどが次々と自社アプリの制作にYappliを導入。3人というスモールチームだったこともあって、サービスインから1年半経たずして単月黒字を達成した。

「革新的なサービスを作って数万円で手軽にスモールビジネスに提供しようとしたが、結局市場のニーズを見ていなかった。自社アプリを求めていたのはすでに顧客を抱えている大手企業。だがいざ制作会社に相談すると1000万円単位の見積もりが来るので、容易にアプリを制作できないという課題があった」(庵原氏)。そんな大手企業にこそプロダクトが刺さったのだという。「制作会社と比べれば10分の1程度で導入が可能。またノンプログラミングでアプリを作れるというのは、ITリテラシーの低いEC担当者であっても運用できるということ。そこも評価されている」(庵原氏)

サービスに登録する法人は、無料も含めて5000社。有料ユーザー(社数非公開)の7割はアパレル関連の自社アプリやブランドアプリだという。アプリはそのブランドのファンがダウンロードすることもあって、アクティブ率が高く、売上への貢献度も大きいケースが多いという。

「ブランドアプリであれば、アプリのプッシュ通知はメールマガジンよりも効果がある。ECサイトの売上全体のうち10%程度がアプリ経由というブランドも複数ある。1社だけだが、1万ダウンロードのアプリだけで月商1000万円を達成するという事例もある」(庵原氏)。プッシュ通知の開封率(通知が来て、そのアプリを起動すること)は約30%、通知から5分以内での開封率が5〜10%あるため、タイムセールなどを積極的に行うブランドも多いという。

同社では今回の調達を契機にサイト上で提供していた低価格帯のサービスの新規募集をいったん終了する。今後は人員を拡大し、サービス開発および法人営業に注力するとしている。