Z世代向け音楽療法アプリのSpokeがAda Ventures主導で約1.7億円のラウンドを獲得

Spokeのチーム(画像クレジット:Spoke)

CalmやEndelといったアプリは「機能的な音」として知られるようになりつつある新しい世界を模索している。Calm(カーム)や各社が瞑想や睡眠の領域でそれを行っている一方、750万ドル(約8億6400万円)を調達したEndel(エンデル)は、仕事やその他の活動を強化するための「機能的な音」を作り出している。そして今、新しいスタートアップが「機能的音楽」と呼ぶものを立ち上げようとしており、その次の段階を後押しする機関投資家の支援を獲得している。

Spoke(スポーク)は「マインドフルネス効果」と称する音楽を生成する新しいアプリである。このアプリは、現代音楽アーティストや科学的アドバイザーとの18カ月にわたる研究開発に基づいており(臨床試験も予定されている)、主に「中高年向け」のマインドフルネスアプリやムーブメントを敬遠しがちなZ世代、もしくは25歳以下の年齢層を対象とした、マインドフルネスの要素と音楽を組み合わせたものだ。

このたび、英国を拠点とするAda Ventures(エイダ・ベンチャーズ)が110万ポンド(約1億7200万円)のプレシード投資を行い、英国の著名なエンジェル投資家が多数参加している。

AIを使って音を生成するEndelとは異なり、Spokeは臨床心理学者、セラピスト、神経科学者のチームによって訓練されたアーティストを採用し、ユーザーが望む精神状態になるように音楽を制作しており、同社は、これには治療行為と同じ効果があると主張している。

「Spokeは、音楽文化とメンタルヘルスという一見相反する世界を結びつけるものです」と、Spokeの創設者で共同CEOのAriana Alexander-Sefre(アリアナ・アレクサンダー=セフレ)氏は声明で述べている。「音楽業界は、リスナーやアーティストのメンタルヘルスにすばらしい役割を果たすことができ、根本的に変わる必要があると私たちは考えています。メンタルヘルスのアプリはたくさんありますが、十分なサービスを受けられていない世代がいます。これは私たちの第一歩です。私たちの使命は、音楽がいかにパワフルであるか、そして業界がいかに進化しなければならないかを示すことです」と語る。

Spokeによると、現在Jordy(ジョーディ)、VIC、Jamilah Barry(ジャミラ・バリー)を含む25以上のアーティストと協力しているとのことだ。おわかりかもしれないが、これらのアーティストは、瞑想アプリのような快適な世界とはかけ離れた存在であることが多い。

アレクサンダー=セフレ氏は、自ら命を絶った若者を知って、このアプリに取り組む気になったのだという。「私はこのことをとても身近に体験してきました。私が知っている最年少の若者はわずか15歳で、このことは当然、その子の身近な人たちに人生を変えるような影響を与えます」と語る。

彼女は私にこう言った。「私の最初のビジネスは、ライブ音楽とウェルビーイング体験を融合させたイベント会社でした。私は、ウェルビーイングの空間では、同じ人しか見かけないことに気づいたのです。通常、年配の女性、中流階級の女性です。ところが2017年、私の弟の親友が自ら命を絶ちました。そして、翌年中に友人の兄弟2人も命を絶ちました」。

「起こったことを本当に代謝するのに1年ぐらいかかりました。明らかに、起こったことは受け入れがたいことです。でも、それ以上に胸が痛むのは、弟とその友人たちが、学校のセラピーやカウンセリングを拒否していることだと思います。私は当時、福祉関係の仕事をしていましたが、何百万人もの人々が使っているこれらのツールのどれもが、この若者たちに文化的にフィットしていないことがわかったのです。そして、イギリスとアメリカでは、自殺者の80%が男性であり、静かな流行が起きていることを知りました。また、マインドフルネスの分野を大衆化させたと思われるCalmやHeadspaceは、25歳以上の女性に多く利用されていることもわかりました」と語る。

彼女は何千時間にも及ぶリサーチを行い「若者はヨガの先生や専門家のお坊さんのような人の話を聞くことには興味がない」けれど、ミュージシャンのような文化的リーダーには興味があることがわかった。「私が話をしたほぼすべての若者にとって、ミュージシャンが最も影響力があることがわかりました。音楽産業がウェルネスの世界にまったく入ってきていないのは、とても皮肉なことだと思いました。実際、ミュージシャンというのは、精神衛生上、最も悪い状態にある人たちです。レーベルは彼らの面倒を見てくれないのです。そこで、マインドフルネスの新しい文化として、この科学的なインパクトが証明されたマインドフルネスと、セラピー的なガイダンスを組み合わせるというアイデアを思いついたのです。Spokeは、現在のマインドフルネス・アプリの実用性と、音楽アプリのエンターテインメント性を融合させ、パーソナライズされた体験を提供するものです」と語る。

Ada Venturesの創業パートナーであるCheck Warner(チェック・ワーナー)氏は「Spokeは、若い男性のためのメンタルヘルス・セラピーという、重要かつ完全に未開拓の市場に取り組んでいます。若者、特に若い男性が精神的な問題と戦っているという日々のニュースはとても悲しく、Spokeが取り組んでいる問題の大きさと重要性を常に思い起こさせてくれます。Spokeのユニークな製品は、音楽やラップを神経科学と組み合わせることで、不安や鬱を軽減する効果のある瞑想の製品を作り出しています」と語る。

アレクサンダー=セフレ氏の共同創業者兼共同CEOは、かつてアプリ出版社Zolmo(ゾルモ)を設立した連続起業家、Michael Maher(マイケル・メア)氏だ。

Spokeのクリエイティブ・チームには、リード・アーティストのLemzi(レムジー)とエグゼクティブ・プロデューサーのDaniel Miles(ダニエル・マイルズ)氏がいる。Lemziは、イースト・ロンドンを拠点とするラップ/ヒップホップ・アーティストだ。マイルズ氏は、Ivor Novello(アイヴァー・ノヴェロ)にノミネートされたプロデューサーで、以前はSony Music(ソニー・ミュージック)と契約していた。

Ada Venturesの他、プレシードラウンドには、Bethnal Green Ventures(ベスナル・グリーン・ベンチャーズ)とエンジェル投資家のNikhil Shah(ニヒル・シャー)氏(Mixcloud共同創業者)、Marla Shapiro(マーラ・シャピロ)氏(HERmesa創業者)、Toby Moore(トビー・ムーア)氏(Space Ape Games共同創業者)、Ascension Ventures(アセンション・ベンチャーズ)のCFOのEmma Blackburn(エマ・ブラックバーン)氏、スーパーエンジェルのEd Zimmerman(エド・ジマーマン)氏らが参加している。Metail(メテイル)の創業者であるTom Adeyoola(トム・アデユーラ)氏も投資しており、現在はSpokeの会長を務めている。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

オンライン文房具市場をリードするためPapierは約57.7億円のシリーズCを獲得

テクノロジーを活用して非テックな製品を世に送り出しているスタートアップPapier(パピエ)は、オンラインで販売しているパーソナライズされたノート、手帳、カードなど、紙ベースの文房具に対する強い需要を受けて、事業拡大を続けるために資金調達を行った。このロンドンのスタートアップは、シリーズCで5000万ドル(約57億7000万円)を調達した。今回の資金は、米国への進出と、より多くの紙ベース製品やペン、その他デスク収納、ペンや鉛筆などの文房具、その他の書くことを支援するあらゆる物を含むデスク周りの消耗品などの製品の拡大を継続するために使用する予定だ、とPapierのCEO兼創業者のTaymoor Atighetchi(テイムール・アティゲッチ)氏は述べている。

「世界的な文房具ブランドを作ることが使命です」と彼はインタビューで語っている。「2000億ドル(約23兆円)規模の市場でありながら、強力なオンラインブランドは存在せず、他の業種に見られるようなカテゴリーを定義するようなものはありません。今回の資金調達は、その計画の重要な一部です。グローバルに、そして米国に、私たちを押し出してくれるのです」と述べている。また、Papierは現在のところ非公開を続けるものの「株式上場は絶対にこの先の旅の一部だと考えています」とも付け加えている。

パリのVCであるSingular(シンギュラー)がこのラウンドをリードし、その他にdmg ventures(ディーエムジー・ベンチャーズ)、Lansdowne Partners(ランズドーン・パートナーズ)、Kathaka(カサカ)が新たに出資し、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)とBeringa(ベリンガ)が以前から出資している。このスタートアップは現在6500万ドル(約75億円)を調達しており、その評価額は公表していないが、過去2年間で収益は150%成長しているという。

このラウンドにおけるPapierの主要な投資家の1人が、世界有数の新聞社であるDaily Mail Group(デイリー・メール・グループ)のコーポレートベンチャー部門であるというのは興味深いことだ。出版業界など紙媒体の産業がどんどんデジタル化している今、Papierはある意味、アナログ製品の無名から脱却し、収益基盤全体をカニバライズしない興味深いルートを提示していると言えるだろう。

同スタートアップは、伝統的なものを現代の消費者の興味を引くような方法で倍増させることで、単純に成長する機会を見出したのである。つまり、カバーデザインは、InstagramやPinterestなどのサイトで目を引くモダンなグラフィックに寄せているということだ。V&A(ブイ・アンド・エー)、Mother of Pearl(マザー・オブ・パール)、Temperley London(テンパリー・ロンドン)、Rosie Assoulin(ロージー・アズーラン)、Headspace(ヘッドスペース)、Matilda Goad(マチルダ・ゴード)などの有名企業とのコラボレーションにより、購入者の名前とひと言でそのデザインをパーソナライズする方法を提供している。

そして、これらの製品は、若い消費者の間で生まれているある種の美学に対応していると、アティゲッチ氏は考えている。現代の私たちは、何でもできるアプリで埋め尽くされた海の中を泳いでいる。今日の話題は、NFTのような仮想オブジェクトに価値を与え「株」を購入することかもしれない。ミレニアル世代やそれより若い消費者は、デジタルネイティブであるがゆえに、これらをより敏感に感じているのかもしれない。

しかし、プロダクティビティや余暇の過ごし方、そして決定的なのはお金の使い方に関して、彼らは自分たちの生活の大部分を決めているスクリーンに代わるものを積極的に探しているようだ。テクノロジーを使って生産され、販売されるPapierの製品は、現代のデジタル世界に対する保護カバーのようなものでもあるのだ。

ノートの典型的な顧客は高齢者だと思われるかもしれないが、ミレニアル世代は現在Papierの最大の顧客層で、売上全体の53%を占めており、Z世代ユーザーは最も急速に成長しているセグメントであることがわかっている。

アティゲッチ氏によると、同社の成長計画の1つは、すでに販売している製品の市場での認知度を高めることだという。英国ではブランドの認知度は約30%、米国では15%だという。つまり「当社の存在を知らない文房具バイヤー」へのマーケティングに多くの投資を行うことになる。

この点で特に注力するのが米国で、同社は2022年の売上高の40%を占めると予測しており、2019年以降5倍に成長している。

同社は、製品のデジタル版を作る予定はない。書いたメモをアプリに変換するEvernoteのようなスタイルはとらない。しかし、アティゲッチ氏は、消費者がデジタル世界から離れるための方法を提供するという考えにある他のデジタルビジネスと連携したいと述べている。実際、この分野は中小企業だけでなく、iOSに新しいモードを組み込み、通知を最小限に抑え、1日の特定の時間帯にデバイスを使用する方法を合理化することによって、人々が画面から離れるのを助けているApple(アップル)のような大手プラットフォーム企業も推進している技術だ。

「Papierは、このアナログ革命の動きを拡大するものです」とアティゲッティ氏は言い、これはPapierだけではないとも指摘した。ただ他の市場をどう見るか次第だと。「Calm(カーム)もアナログ製品を販売しています。Sleepと呼ばれています」と語っている。

投資家はそのコンセプトと将来性を高く評価している。

「このブランドの魅力は、家庭と一体化したスタイルにあります」と、SingularのNahu Ghebremichael(ナフ・ゲブレミーチェル)氏はいう。「最近では、多くの人がホームオフィスで仕事をするようになりました。以前ほど、仕事と生活を切り離して考えることができなくなっています。Papierは、その両方の領域で何かできるかもしれません」と述べる。彼女はこのラウンドで役員に加わっている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Tinderも写真やプロフィールを見る前に会話をするバーチャルのブラインドデートを導入

米国時間2月10日、Tinderは新たなアプリ内機能で「ブラインドデート」を復活する。ただし今回は、2人の会員を一緒にブラインドデートに送り出すのではなく、お互いをソーシャルなチャットで紹介しあい、相手のプロフィールを見る前に対話とチャットができる。この機能は、写真ではなくお互いの人柄や会話に基づいて第一印象を得ることを狙っている。

Tinderの親会社であるMatch Groupは先に行われた決算報告でこの機能を追加する計画をちらつかせ、まだ新しい「Explore」セクションで新しい体験を試すことができ、ユーザーのエンゲージを継続できるようになったと述べた。2021年9月に導入したExploreは今では、Tinderのさまざまな対話的機能のホームであり、ビデオシリーズの「スワイプナイト」の他、互いの関心事項でマッチを見つけたり、マッチングの前に気軽なチャットを始めるなどの機能もある。後者をTinderは「ファストチャット」と呼んでおり、それがブラインドデート機能のベースでもある。

ブラインドデートを利用するためには、会員はまず、少々の肩慣らしの質問に答えてから、共通性に基づいて誰かとペアになる。2人は時間制限があるチャットを開始するが、相手の詳細はわからず、選択式の質問に答えるだけだ。軽い質問ばかりで、中には馬鹿らしいのもある。

・シャツを洗わずに__回着られます。
・ケチャップは___にもかけます。

時間が来たら、互いのプロフィールを見ることができる。そして気に入ったら、もっと相手のことを知ることができる。

Tinderによると、この新たな体験は、本物性を重視するZ世代のデート文化を反映している。同社によると、ブラインドデートのテストは大成功で、同じファストチャットを使った機能でも、最初からプロフィールを見られるものと比べてマッチの成立率が40%高かった。そこでTinderは今回、展開に踏み切ったのだ。

もちろん、Tinderのようなデートアプリの最大手が、写真に頼らない紹介方法を導入したのはちょっと皮肉だ。Tinderをはじめ、今のデートアプリはデートを表層的な環境に変えてしまったと批判されている。そこでは人間に関する決定が、写真の魅力だけに基づいて1秒にも満たない時間で行われてしまう。そのため近年は新種のデートアプリが勃興し「反表層的」で真実性があると謳っている。そんなアプリは、ルックスよりも人柄を重視して、写真を隠したり、音声チャットで互いを結びつけたりしている。S’MoreSwoonMeJigsawなどが、そのようなアプリの例だ。

しかしTinderは、本物的で人間的な出会いのためにわざわざまったく新しいアプリを作らなくても、自分たちが提供するブラインドデートで十分だと信じているのだ。

Tinderのプロダクトイノベーション担当副社長Kyle Miller(カイル・ミラー)氏は、Fast Chat:Blind Date(ファストチャット:ブラインドデート)の立ち上げの発表で次のように述べている。「写真で先入観を作らずに、会話で人柄を紹介することには、何か本当に特別の感覚があります。Tinderのブラインドデートは、意外なほど楽しくて、冗談なども言い合えるような、対話と結びつきを作れるTinderにとってもまったく新しい機能だ」。

英語圏では、今日からExploreの中でブラインドデートが展開される。グローバルな展開は数週間後だ。

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マッチングアプリBumbleの初買収はZ世代向けの同アプリFruitz、あらかじめ目的を明らかしておける点が人気

マッチングアプリ企業のBumble, Inc.(バンブル)は、米国時間2月7日、初の買収を行い、急成長中のフランスのマッチングアプリ「Fruitz(フルーツ)」を自社アプリのファミリーに加えるというニュースを発表した。Bumble, Inc.は、欧州で特に人気のあるBadooの親会社としてすでに国際的な事業展開をしているが、Fruitzを傘下に加えることで、より若いZ世代の利用者の間で勢いを増すことができると考えている。

取引条件は公開されていない。

Fruitzは、ユーザーのマッチングを支援するために、型にはまらないアプローチをとっている。同アプリでは、長期的な関係を望む人から一夜限りの関係を求める人まで、特定の関係タイプごとにフルーツが割り当てられている。これにより、ユーザーは自分と同じ考えを持っていない人を除外することができる。また、マッチングされた相手にメッセージを送る前に、アイスブレーカーとして機能する質問に答えるよう促される。

Fruitzは、CEOのJulian Kabab(ジュリアン・カバブ)氏、CTOのFabrice Bascoulergue(ファブリス・バスクーラーグ)氏、CFOのArnaud Ruols(アルノー・ルオール)氏によって共同設立され、最初は2017年2月1日にフランスでサービスを開始した。カバブ氏は、このアプリのアイデアは、自身がマッチングアプリを利用しようとした際に、その体験に何を求めているかという点で意図が異なる相手とマッチングしたことがきっかけだと語っている。

「自分が求めているものを表現することは、批判されることを恐れているので容易ではありません。その結果、誰もが自分の意図に正直にならず、お互いに時間を無駄にしていたのです」と同氏は語る。「人々が自分の意図に関して正直になれるようにすることが、私たちの最初のミッションでした」。

画像クレジット:Fruitz

Sensor Towerのデータによると、現在までにFruitzは、App StoreとGoogle Playで全世界で560万回ダウンロードされている。2022年2月3日現在、ホームマーケットであるフランスでは、iPhoneのトップ無料アプリチャートの「ライフスタイル」カテゴリーで4位にランクインしている。

現代の多くのマッチングアプリと同様に、Fruitzはスワイプベースのインターフェースとフリーミアム体験を提供している。

だがBumbleにとっての魅力は、このアプリのユニークな機能ではなく、その利用者層にある。Bumbleは、Fruitzがマッチングアプリ市場で成長しているZ世代に特にリーチしていることに着目した。またフランス、ベルギー、オランダ、スイス、スペインなど、西ヨーロッパの主要国でも人気を博しており、カナダでも急成長を遂げていた。

Bumbleの創業者兼CEOであるWhitney Wolfe Herd(ホイットニー・ウォルフ・ヘルド)氏は、声明の中でこう述べている。「Fruitzは、私が何年も動向を追ってきたブランドであり、リーダーシップチームです。ジュリアン(・カバブCEO)、ファブリス(・バスクーラーグCTO)、アルノー(・ルオールCFO)は3人ともダイナミックですばらしいリーダーであり、フランスをはじめとするヨーロッパ全域の消費者の共感を強く得るユニークな製品を作り上げました。このアプリを当社の技術プラットフォーム、コミュニティサポート、ブランドおよび成長マーケティングと組み合わせることで、Fruitzの成長を加速させることができます。Fruitzの買収により、当社が重視する人間関係のエンパワーメントに沿って、消費者向けの製品提供を拡大することができます」。

Bumbleは、Fruitzを同社の一連のマッチングアプリに組み込むとともに、機械学習(ML)技術、マーケティング、ローカリゼーション、安全性プラットフォームなどのリソースを提供する。なお、Fruitzのブランド変更や運営終了の予定はない。その代わり、共同創業者全員を含む9人のチームが、母国フランスでアプリの運営を継続する。現在、Fruitz、Badoo、Bumbleを擁するBumble, Inc.を合わせると900人以上の従業員がおり、オースティン、ロンドン、バルセロナ、パリ、モスクワにオフィスを構えている。

画像クレジット:Bumble

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

コロナ禍での友達同士の出会いを支援するアプリ「Flox」がNYの大学生に人気

新成人の困難に勝るものはないが、ロックダウンの中、人格形成期を過ごした大学生の年齢のZ世代にとって、有意義な友達づくりはさらに難しくなる可能性がある。パンデミック中はコロンビア大学のリモート授業に参加していたJamie Lee(ジェイミー・リー)氏は、この隔離がいかに同級生、特にクラスメイトと一度も顔を合わせることなく通学する2~3年生に影響したかに気づいた。

「ミドルスクールでInstagramをダウンロードしてから、オンラインで常に私自身を個人として表現してきましたが、オンラインでリアルに自己表現するのをとても不安に感じました」と、リー氏はいう。「『それじゃ、どうやってみんなとリアルにつながる方法を探そうか?』という考えを受け入れたかったのです。そして一番リアルな存在である友人と一緒に行うのが最善策だと思いました」。

2020年夏、リー氏はFlox(フロックス)のノーコードのベータ版を立ち上げた。人々が会うのを助けるアプリである。プロフィールを作成してマッチするTinder(ティンダー)、Hinge(ヒンジ) 、Bumble(バンブル)のようなもので、グループとしてサインインしてから他の友人グループとつながるだけでよい。

「利用者からはオンラインで体験したものの中で一番楽しいとのフィードバックをもらいました。私にとってはターニングポイントでした。これはとても本気のものになり得る、これをやるなら今だと思いました」とリー氏はいう。

そうして彼女はアプリに全力を挙げるため、コロンビア大学卒業まであと1年を残して中退した。

画像クレジット:Flox

2021年2月、リー氏と2人のフルタイム勤務のエンジニアは(彼女のチームの範囲では)約250人の利用者を対象にアルファテストを実施し、ニューヨークシティだけで学部生と最近の卒業生にプライベートなベータテストを開発した。これまでに順番待ちの利用者は2万人に達したが、リー氏は2021年11月頃にFloxを順番待ちしている大学生の年齢のニューヨーカーにも公開し始めると述べた。後に他の都市にも拡大する。さらに、FloxはHoneycomb Asset Management (ハニーコムアセットマネジメント)が主導しBBG Ventures(BBGベンチャーズ)とBanana Capital(バナナキャピタル)が参加した120万ドル(約1億3662億円)の資金調達ラウンドを終えた。

「正直なところ、最初のラウンドは驚くほど難しかったです。私はプエルトリコ人であり中国人です。当時21歳で、これに関する経歴もないし、コロンビアも退学しました」とリー氏は述べた。「こういう会話に入る上で、そもそもみなさんから私に関するご意見があるに違いないと思います。ピッチミーティングではもっとZuck(ザック)のようになれと言われました」。

リー氏は彼女自身の年齢層の人々のためにプラットフォームを開発する創設者として、賢いやり方でアプリを市場に出した。利用者にはリアルに感じて欲しいと考えた。そこで、TikTok(ティックトック)利用者でもあるオーディエンスに会い、アプリの販促用の動画を投稿したところ三つの投稿で閲覧数は180万回とバズった。

「トイレにも1人で行けないのに」リー氏はあるTikTokでいう。「なぜ1人で出会いアプリを使っているの?」。

@jamietylerlee

WELCOME TO FLOX. Waitlist early access in bio #startup #entrepreneur #app #friends #dating #fyp #selfimprovement #watchmegrow #tech #foryou

♬ original sound – Jamie Lee

Floxはグループ基準のソーシャルネットワーキングを試みる初のアプリではない。Tinderは友人とグループに参加し、他のグループとマッチする機能を持つTinder Social(ティンダーソーシャル)にこのアイデアを反映していた。しかし2016年の前途多難なスタートのあとたった1年ほどでこの機能は終了した。不注意にも、自身の連絡先からTinderのアカウントを持っている人を特定できたからである。リー氏は、Tinder SocialがうまくいかなかったのはTinderがすでに出会い(ナンパ)アプリとしてのブランドを確立していて、利用者1人がそのプロフィールを持っていると、同じバージョンの自分を友人やデート相手となる可能性がある人に見せることになったからだと考えている。

「個人に焦点を当てることはやめたいと考えています。それはデートを指すからです」とリー氏。「グループのアイデンティティを受け入れたいと思います。そうすればフロックは『アパートメント11』と呼ばれるかもしれません。グループを構成している人々よりも、誰がグループを立ち上げているかを見られます。強調されることを入れ替えているのです」。新たな人に会うことに焦点を置きながら、リー氏はFloxのグループ(フロック)を作る友人同士も近付くことを望んでいる。

Bumbleも出会いアプリとして始まったが、友達を作りビジネスパートナーを見つけるモードもある。リー氏は、Bumble BFF(バンブルBFF)をFloxのインスピレーションとして言及するが、彼女がアプリを使用したとき、ほとんどの人が新しく友達を作るよりもルームメイトを探しているように見えた。

画像クレジット:Flox

「Z世代は最も孤独で、不安で、落ち込んだ世代です。友人が必要な人はとてもたくさんいます」。リー氏は述べた。「しかし、『一対一の友情アプリを使用すること』にともなう社会的スティグマがあります。不運にも、一対一で友達を探すとき、相手や、あなたがBumble BFFを使用していることを知っているかもしれない誰かに、あなたが友人がおらず、希望する立ち位置に自らを置いていないことを示唆することがよくあります。そのため、私達のFloxの目標は、より快適に、安全に、楽しくすること、そして友人探しの裏にある社会的スティグマを取り除くことです」。

このアプリは、人は現在の友人に無視されると、新たな人と会うことを最も心地よく感じるというリー氏の仮説に依存する。しかし集団力学によって安全の層が新たに備わる。Floxは出会いアプリではないが、リー氏は一部の人がその目的でアプリを使用することを知っている。しかし、グループの中の人と出会うことで、他人と一対一で会うことにつきまとうリスクの軽減に役立つ可能性がある。

「2~3年前に住んでいた街で、出会いアプリで散々な目に遭いました。私はその出来事を報告しましたが何も措置が取られず、そのプラットフォームでは守られている感覚を得られませんでした」とリー氏はいう。「2020年、利用者と初めてお話ししたとき、利用者は『出会いアプリで他者に会うのは不安。一対一では安全ではないと感じるから。』と言っていました。そのため、私達はもっと心地よく、安全に人と会えるこの環境を提供したいのです」。

Floxの最近のシードラウンドにより、リー氏はアプリを構築し、利用者をどんどん増やし続けることを願っている。同時に、アプリ体験が既存の利用者にとって肯定的でリアルな物であり続けるよう慎重に進めたいとしている。

画像クレジット:Flox

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックやツイッターの元幹部が出資するTaggはZ世代向けの「ソーシャルブランディング」アプリ

Z世代は、自分たちが育ってきたソーシャルメディアに満足せず自分たちが使いたいアプリを作っている。クリエイティブな10代、20代の若者向け「ソーシャルブランディング」アプリである「Tagg(タッグ)」は、米国時間12月17日、シードラウンドで200万ドル(約2億3000万円)を調達したことを発表した。出資したのは、Twitter(ツイッター)共同創業者のBiz Stone(ビズ・ストーン)氏、Facebook(フェイスブック)の元インターナショナルグロース担当VPだったEd Baker(エド・ベーカー)氏、TripAdvisor(トリップアドバイザー)の創業者であるStephen Kaufer(スティーヴン・カウファー)氏、Pillar VC(ピラーVC)などだ。

Brown University(ブラウン大学)と近隣のRhode Island School of Design(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)の卒業生によって設立されたTaggは、まだプライベートベータ版だが、数千人のユーザーが利用しており、さらに数千人がウェイティングリストに申請している。Taggはいわゆるlink in bio(リンク・イン・バイオ)サービスのようなものだが、若いクリエイティブな人たちがつながり、協力し合い、友人関係を築くことを促進するソーシャルな要素が含まれている。

「デジタルの世界では、あなたのブランドが本物であればあるほど、あなたのつながりも本物になります。現在のソーシャルプラットフォームは、このブランドとつながりの進化する交点に対応できるように作られていません」と、同社は説明している。「Taggは、制限もスティグマ(偏見や差別)もない、自分自身の完全な創造的表現を可能にする環境を構築して、成長させています」。

Taggでは、自分のプロフィールを何に使いたいか(ソーシャルなプロフィールにしたいのか、自分のアートを宣伝してネットワークを広げたいのか)に応じて、アプリにログインしたときに5つのプロフィールスキンから選ぶことができる。そこから自分のページをカスタマイズし、他のSNSアプリでやるように、誰かをフォローしたり、コンテンツを投稿したりすることができる。しかし、Taggでは、投稿に「いいね!」の数が表示されない。これは意図的に選ばれた仕様だ。

「Taggに『いいね!』はありません。コメントやシェア、ビューだけです。なぜなら、クリエイティブな人たちには、自分の好きなものを、スティグマを気にすることなく、好きなように表現することに集中して欲しいからです」と、Taggの共同設立者であるVictor Loolo(ビクター・ルーロ)氏はTechCrunchに語っている。

特にTaggが対象としているZ世代では、ユーザーは「いいね!」の数を必ずしも求めていない。なぜなら「いいね!」の数は、表面的な形で仲間と自分を比較することを助長する可能性があるとわかっているからだ。米国の上院議員であるEd Markey(エド・マーキー)氏(民主党・コネティカット州選出)や、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンタール)氏(民主党・マサチューセッツ州選出)も、10代の若者の精神衛生に悪影響を及ぼす可能性があるとして、16歳未満のソーシャルメディアユーザーには「いいね!」のカウントを禁止する法案を提出している。

画像クレジット:Tagg

Taggの「ソーシャルブランディング」というマーケティングは、一見すると直感に反したものに思えるかもしれない。また、このブランディングという概念は、自分自身を箱の中に入れてしまうことのように聞こえるかもしれない。しかし、Taggは、ユーザーが自分の居心地の良い場所から抜け出すことを促すようにデザインされている。ユーザーはあらかじめ用意されたスキンを使ってプロフィールを作成するが、これはあくまでも提案であり、もしユーザーが、白紙の状態からプロフィールを作成したり、独自のカテゴリーを作成してコンテンツを整理したいなら、それも可能だ。

「プロフィールはいかようにも見せることができる、それが魅力です。私たちは、すべてのソーシャルアプリに備わる伝統的で制限の多い、型にはまったプロフィールから脱却したいと考えました。なぜならZ世代の私たちは、表現の自由と独自性に大きな価値を置くからです」と、ルーロ氏は説明する。「私たちは、伝統的なプロフィールと真っ白なページの間で、心地よくユーザーフレンドリーな場所を見つけたかったのですが、それは多くの人にとって難しいことでした。そこで私たちは、プロフィールスキンを採用することにしたのです」。

Taggは、ブラウン大学でフットボール選手だったルーロ氏自身の経験からインスピレーションを得たものだ。同氏は当時、学生アスリートとしてのアイデンティティ以外で、自分を定義することは難しいと感じていた。そのことが、共同設立者のBlessing Ubani(ブレッシング・ウバニ)氏とSophie Chen(ソフィー・チェン)氏とともに、Taggを起ち上げる切っ掛けとなった。

「人は1つの枠にはめられてしまうものです。例えば、私がTikTok(ティックトック)で料理動画を配信しているとしましょう。そうすると、人は私のことを『料理動画を配信している男』という枠にはめて見ますが、しかし、私は同時に、ビデオゲームやその他のことを楽しんでいるかもしれないのです」と、ルーロ氏はTechCrunchに語った。「私たちは、そのような状況を打破し、クリエイティブな人たちが自分自身をより全体論的に表現できるようにしたかったのです」。

画像クレジット:Tagg

Taggのユーザーは現在、このプラットフォームに参加することでポイントを獲得するようになっている。このポイントは今のところ、特に価値のない機能に過ぎないが、ルーロ氏はこれをアプリの将来的な可能性として捉えている。

「Taggは現在、分散化やトークン化されていませんが、私たちのプラットフォームの原則は、Web3.0の価値観を反映しています」と、ルーロ氏は語る。「私たちの目標の1つは、コンテンツ共有やコミュニティへの参加から直接報酬を得られることが、クリエイター経済の問題を解決する手段であると、クリエイティブな人々に理解してもらうことです。それは、現状のクリエイターに対する支払い不足や、一貫性のないブランドとの提携とは相対するものです」。

将来的にTaggは、ユーザーが価値のあるコインやトークンを獲得できるようになる可能性もある。しかし今のところ、Taggはウェイティングリストからより多くのユーザーを参加させること、より多くのユーザーを獲得することに注力している。

2020年に大学を卒業した後、チームはベイエリアに移り、そこでアプリの開発を続けてきた。今回調達した資金を使って、Taggはチームを拡大するために採用活動を行っている。最近では、15年のエンジニアリング経験を持つSteven Fang(スティーブン・ファン)氏が、CTO兼共同設立者としてTaggに参加した。

画像クレジット:Tagg

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Z世代が安心して少額寄付を行えるようにするソーシャルメディアWishly

米国時間11月16日、社会的責任に焦点を当て、Z世代の視点から資金調達のあり方を変えることを目指す新しいソーシャルメディアプラットフォームWishly(ウィッシュリー)が、120万ドル(約1億4000万円)を調達したことを発表した。同プラットフォームは、消費者ブランド、慈善活動家、非営利団体の活動が交差する興味深い地点を目指している。その願いは、ソーシャルメディアの力を利用して、社会に貢献することだ。

このアプリは、経験豊富なソーシャルインパクトマーケターであり、非営利団体の資金調達者であり、管理者でもあるJoanne Gonzalez-Forster(ジョアン・ゴンザレス=フォースター)氏とJustine Makoff(ジャスティン・マコフ)氏の2人によって作られた。彼らは、Z世代の楽観主義と利他主義を受け入れ、人びとが団結し世界に真のポジティブな変化をもたらすことができるソーシャルプラットフォームの必要性を感じていた。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やBlack Lives Matter(ブラックライブスマター)への支援が爆発的に増えた2020年初頭、私たちは子どもたちやその友人たちがソーシャルメディアを使って、フォロワーに行動を起こさせたり、自分たちが気にかけている活動に寄付をさせたりしている様子を目の当たりにしました」と、共同創業者でCEOのジョアン・ゴンザレス=フォースター氏は語る。「しかし彼らにとって、非営利団体を見つけて吟味したり、少額の寄付をして友人にも参加を促すような簡単な方法はありませんでした」。

同社は、Pelion Venture Partnersの創業パートナーであり、現在は引退しているJim Dreyfous(ジム・ドレイファス)氏や、ソーシャルインパクト投資家であるJoshua Mailman(ジョシュアメールマン)氏などの、名のあるエンジェル投資家を集めることができた。この2人は、2020年に40万ドル(約4570万円)のプレシードラウンドに投資したあと、現在のシードラウンドに80万ドル(約9140万円)を投資するために他の投資家を連れて戻ってきてくれたのだ。

ゴンザレス=フォースター氏は「Z世代やミレニアル世代の子どもたちが何をしてくれるのか、私たちはとても楽しみにしています。機会はたくさんありますし、世界にはやるべきことがたくさんあります。毎日のように自然災害が起きていますし、たくさんの社会的な動きがあります。私たちは彼らが、つまり今の若い世代が、小さな行動で世界にポジティブな影響を与えることができるようにWishlyを作りました」という。「『慈善家』をGoogle検索しても、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットといった人たちの写真は出てきますが、若い人の顔は出てきません。私たちはそれを変えたいのです。さまざまな色や形、そして大きさの若い顔を見たいのです」。

同社のビジネスモデルはシンプルで、プラットフォーム上で調達した資金の5%を得るというものだ。また、Wishlyは、プラットフォームに掲載されるすべての非営利団体をしっかり精査する。

「私たちはIRS(米国国税庁)から、登録されているすべての501c3団体(課税を免除される非営利団体)のリストを入手しており、それらの団体はすでに私たちのプラットフォームに登録されていて、それらの団体向けの寄付を受け付けることができます。ゴンザレス=フォースター氏は「非営利団体がアプリ上でプロフィール掲載を要求したら、それを合図にその団体の審査を始めます」という。「私たちはIRSの検索ツールを使って、彼らがIRSと良好な関係にあるかどうか、つまり3年連続できちんと税金を申告しているかどうかを確認します。また、Charity Navigator(チャリティーナビゲーター)やBetter Business Bureau(ベタービジネスビューロー)をチェックしたり、Googleでその非営利団体に関する詐欺や訴訟、誤解を招くような情報がないかを確認したりします。世の中には悪質なチャリティがたくさんあるのです」。

このアプリは現在、iOSAndroid上で提供されているが、チームによれば、このプロダクトは近日中に予定されているより一般的なローンチまでは、基本的に親しい者向けのステージだという。

画像クレジット:Wishly

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

クリエイティブ業界の環境改善を目指すプラットフォームContact、女優メイジー・ウィリアムズやZ世代起業家が支援

生活のあらゆる面をデジタル化したパンデミックの影響で、かつてないほどの盛り上がりを見せているクリエイターエコノミーは、今や1000億ドル(約11兆円)以上の市場になっているという試算もある。しかし、モデル、俳優、作家、デザイナーのプロとして生きていくためには、電子メール、手作業の契約手続き、膨大なPDFファイルなど、さまざまなものを処理する必要がある。トップレベルのタレントエージェンシー全体の評価額が200億ドル(約2兆2000億円)に達しているにもかかわらず、クリエイターたちは支払いの遅延や不透明な業界慣習に苦悩している。しかし、モデルとして活躍するタレントが、20~40%ものコミッション料を請求されることがある一方、ソーシャルメディアは、タレントの参入障壁を下げ、タレントにコンタクトしやすくすることで、従来のエージェンシーを徐々に排除してきた。それでもやはり、いうまでもなく、誰もがソーシャルメディアで自分のキャリアを高められるわけではない。

2020年末に登場したContact(コンタクト)は、当初、モデルの契約の代行や、仕事の一部を管理するといったサービスを提供していた。現在は、クリエイティブ業界のキーパーソンたちを巻き込んで新たな資金調達を行い、前述の広範な問題に対処しようとしている。

「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」で名を馳せたMaisie Williams(メイジー・ウィリアムズ)氏は、クリエイティブ業界の環境改善を熱心に訴えるとともに、このスタートアップのクリエイティブストラテジスト兼アドバイザーに就いている。

コンタクトは今回、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)が主導するシードラウンドで190万ドル(約2億1000万円)の資金を調達した。また、LAUNCH(ローンチ、投資家のJason Calacanis[ジェイソン・カラカニス]氏が率いるファンド)、Sweet Capital(スウィート・キャピタル、Pippa Lamb[ピッパ・ラム]氏主導)、Rogue VC(ローグVC、Alice Lloyd George[アリス・ロイド・ジョージ]氏主導)、エンジェル投資家のSimon Beckerman(サイモン・ベッカーマン氏、Depop[デポップ]の共同創業者)、Eric Wahlforss(エリック・ウォールフォース氏、SoundCloud[サウンドクラウド]の共同創業者で、現在はDance[ダンス]の創業者兼CEO)、Abe Burns(アイブ・バーンズ)氏、Joe White(ジョー・ホワイト)氏も参加している。

コンタクトの原型は、モデルの世界を対象としているが、その視線ははるかに大きなものを見据えている。コンタクトの共同設立者兼CEOのReuben Selby(ルーベン・セルビー)氏は、ファッションデザイナーであり、ウィリアムズ氏がキャリアをスタートさせた会社の設立チームに所属していたことや、Nike(ナイキ)、Thom Browne(トム・ブラウン)、JW Anderson(JWアンダーソン)などと仕事をしてきたこともある。同氏によると、このプラットフォームは、1042億ドル(約11兆4000億円)規模のクリエイターエコノミー全体のスケーラブルなバックエンドソリューションとなり、世界トップクラスのクリエイティブな才能へのアクセスを「民主化」することを目指しているという。

ルーベン・セルビー氏(画像クレジット:Reuben Selby)

近頃、自閉症の創業者であることを語ったセルビー氏は、自身のレーベルReuben Selby(ルーベン・セルビー)の創業者兼クリエイティブディレクターでもあり、クリエイティブエージェンシー兼コミュニティCortex(コルテックス)の共同創業者でもある。セルビーには、Deliveroo(デリバルー)、Daisie(デイジー)、Government Digital Service(ガバメント・デジタル・サービス)などを手がけたJosh McMillan(ジョシュ・マクミラン)氏がCTOとして加わっている。

大まかに言えば競合他社には、Patreon(パトレオン)Creatively(クリエイティブリー)The Dots(ザ・ドッツ)などが挙げられるが、これらのプラットフォームのさまざまな側面を1つの屋根の下に集めようとするコンタクトのビジョンは、意欲的であると同時に、魅力的であると言えるだろう。

エージェンシーに牛耳られているこの業界で、個人や企業がエージェンシーを介さずに直接クリエイターやクリエイティブなサービスを見つけ出し、契約できるというのは挑戦的な試みだ。

コンタクトはまず、2020年10月にファッションモデルの発掘や契約機能を備えたプラットフォームを立ち上げたが、資金調達後はフォトグラファー、スタイリスト、ビデオグラファーなど、他のクリエイティブ分野でのサービスも展開する予定だ。

画像クレジット:Contact

セルビー氏は、自身がモデル、フォトグラファー、クリエイティブディレクターとしてクリエイティブ業界に参入しようとした経験から、コンタクトのアイデアを思いついたという。同氏は、報酬を得るための安全で確実な方法がほとんどないこと、委託会社には基本的な技術的ツールが欠けていることを知り、さらに「中間業者」と「エージェンシー」がピンハネによって利益をむさぼる黒幕であり、多くの場合サービスのクオリティーも低いことに気づいた。

では、コンタクトはどのような仕組みになっているのだろうか。

クリエイターが登録すると、さまざまなクリエイティブサービスに渡って自身のポートフォリオを公開し、直接オファーを受けられるようになる。

企業は、フィルターを使って人材を閲覧して見つけ出し、クリエイティブな人材を絞り込み、仕事の詳細を伝え、クリエイターと直接契約することができる。クリエイターは、ウェブ上のプラットフォームや、間もなく公開予定のスマートフォンアプリを使って、仕事の受諾や拒否を行うことができる。仕事が終われば、クリエイターにはコンタクトを通じて報酬が支払われる。

モデル業界での限定公開以来、コンタクトは約600人のクリエーターと、デポップ、Farfetch(ファーフェッチ)、Nike(ナイキ)、Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)、Vogue(ヴォーグ)など1400以上のクライアントを獲得したという。そして、このプラットフォームのユーザー数は、前年同期比で100%増加したとのことだ。

セルビー氏によると、コンタクトはバックグラウンドに徹し、タレントがさまざまな分野で独立してブランディングできるようにするつもりだという。重要なのは、コンタクトがクリエイターからは料金を取らず、委託会社からのみ取引に対して20%の手数料を徴収することだ。

画像クレジット:Contact

ファウンダーズ・ファンドのパートナーであるTrae Stephens(トレエ・スティーブンス)氏は「特定の会社を作るために生まれてきたような創業者を見つけると、いつも興奮する。ルーベン氏は、まさにそのような創業者の1人だろう。コンタクトが規模を拡大し、新たなクリエイティブ分野に進出していくのを見ることが楽しみだ」とコメントしている。

また、スウィート・キャピタルのパートナーであるピッパ・ラム氏は「コンタクトのチームは『クリエイターエコノミー』という言葉がバズワードになるずっと前から、クリエイターエコノミーのフロンティアを開拓してきた。コンタクトは、世界レベルの技術的才能と、今最も創造的な精神から生まれる真の革新性を併せ持つ稀有な存在だ。この次の展開に期待している」と述べている。

「ゲーム・オブ・スローンズ」のArya Stark(アーヤ・スターク)役で知られるウィリアムズ氏にとって、スタートアップで働くことは初めてではない。同氏は以前、デイジーのプラットフォームに貢献したことがある。そのプラットフォームは、クリエイター同士を結びつけてお互いのプロジェクトに取り組むことや、クリエイターが自分の作品のための協力者を見つけることを支援している。

しかし「中間業者」に支配されているクリエイティブ業界の構図を破壊したいという同氏の思いは、その経験ではまったく満たされなかった。

ウィリアムズ氏とセルビー氏は、筆者の独占インタビューに答えて、自分たちのビジョンを説明してくれた。

セルビー氏は、現在のモデル市場はほんの始まりに過ぎないとし「ビジョンは、常にクリエーターを中心に据え、クリエーターが自分の仕事に対して報酬を得られるようにすることだ。基本的に、モデル業界という1つの分野からスタートした。そして今、フォトグラファー、メイクアップアーティスト、スタイリストなど、新たな分野に展開しているところだ。しかし、それは全体的なビジョンの中では非常に小さな部分だ」と語る。

また同氏は現在「作品の配信、視聴者との関係構築、収益化の方法」に焦点を当てているという。そして「つまり、物理的な制約の解放だけでなく、創造性を収益化するためのツールキットを提供することであり、今はそれを模索しているところだ。マーケットプレイスはあるが、それはごく一部であって、もっと大きなものを考えている」と述べる。

マーケットプレイスモデルは、企業とクリエイターを直接結びつけることができるが、企業が大きな力を持っていることに変わりはないと、同氏はいう。そして「クリエイターたちは、誰かが何かを与えてくれるのをただ座って待っているだけだ。そのため、クリエイターが自分の作品を配信し、自分のやり方で収益化できる方法を模索している。バックエンドではすべてのロジスティックスが機能し、運用面では当社が構築したサービスを使って、支払いやライセンス、保険を処理している」と述べる。

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ハリウッドの大スターであるにもかかわらず、ウィリアムズ氏は、同氏がよく知るクリエイティブ業界やエンターテインメント業界は、テクノロジー業界が構築し使い慣れているプラットフォームではなく、電子メールやハイパーリンクといった旧態依然とした世界に留まっていると話してくれた。「タレント事務所に所属していたため、オンラインでのやり取りはすべてメールだ。デジタル化されている資産もなく、台本を保管する『オンライン金庫』も、オーディションテープをアップロードする場所もない。いつもメールの中にリンクがあるだけだ。業界標準というものがない。エージェンシーについていえば、彼らが行う仕事はどれもあまり効率的ではなく、方向性も定まっていない」と同氏は語る。

同氏は、それを変える必要があるとし「キャスティングのプロセスがあるが、今はまだ、キャスティングディレクターと俳優、脚本家などの間では、非常に時代遅れな方法が取られている。そのため、もっと効率的なプロセスを構築したいと考えている」と述べる。

コンタクトを支援するために集めた投資家について、セルビー氏は、チームがファウンダーズ・ファンドをリードインベスターとして選んだ理由は、同社のアプローチにあるという。「彼らが創業者と一緒に仕事をする方法は、個人に対して非常に裁量を持たせてくれるものだ。[彼らは]創造的に考えるために、多くの自由とスペースを与えてくれる。そのため、明快な連携を取ることができる」と述べる。

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今回のラウンドに参加した他のエンジェル投資家について、同氏は「エリック・ウォールフォース氏やサイモン・ベッカーマン氏のような人たちは、ファッションや音楽文化全体に渡って大きなコネクションを持っている」という。

一方でウィリアムズ氏は、エンターテインメント業界がコンタクトにどのような反応を示すかについて「俳優は、俳優業以外にもさまざまなことをしている。そのようなことすべてを収益化できるプラットフォームを持てるということは、特に俳優は仕事がない時間も長いため、とても重要なことだ」と述べる。しかし、現在のシステムは「エージェントが受けさせてくれるオーディションからしかチャンスが得られない」仕組みになっていると同氏はいう。そして「これでは意欲が湧かずやりがいもない。だから多くの俳優は、ストリーミングプラットフォームで自分の番組を配信したり、自身のドキュメンタリーを作ったり、他の方法で作品を売ったりしている」と続ける。

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同氏は、コンタクトがプラットフォームを通じてそういった場を作り、クリエーターがより自立できるようにしたいと述べ「映画業界や音楽業界には、さまざまな分野でマルチな才能を発揮する、信じられないほど優秀な人たちが溢れている。しかし、彼らはいまだに、強大な権力をもつエージェンシー、レコード会社、マネージャーらに支配され『萎縮』している。才能を発揮するために、他の多くの手段を提供することは、本当に重要なことだと思う」と語る。

セルビー氏、共同設立者、そしてウィリアムズ氏のビジョンが非常に大きなものであることは明らかだ。問題は、同氏らがそれを成し遂げられるかどうかということだ。

しかし、ハリウッドスターを含めたZ世代の影響力を持つ情熱的なチーム、本格的なテクノロジープラットフォーム、米国の有力な投資家、クリエイティブ業界から集められたエンジェル投資家らの組み合わせは、確かに成功の可能性を示しているといえるだろう。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

Vungle傘下のモバイルマーケターが「Fontmaker」をApp Storeのトップに押し上げたカラクリとは

よくあることだろうか?TikTokをはじめとするSNSで話題になったアプリが、すぐにApp Storeのトップに躍り出て、その露出度の高さからさらに新規インストール数を増やしていく。最近、米国のApp Storeで1位になった定額制のフォントアプリ「Fontmaker」は、TikTokの動画やその他のSNS投稿による口コミの恩恵を受けていたようだ。しかし、ここで私たちが目にしているのは、App Storeマーケティングの新しい形であり、この分野で最も歴史のある企業の1つ、Vungleを巻き込んだものだ。

Fontmakerは、一見すると、大ヒットしたインディーズのアプリのように見える。

Mango Labsが開発したこのアプリは、ユーザーが自分の手書き文字を使ってフォントを作成し、それをカスタムキーボードで利用できるというもので、1週間あたり4.99ドル(約551円)というかなり高額な料金が設定されている。このアプリが最初に登場したのは7月26日だった。Sensor Towerのデータによると、約1カ月後には、米国のApp Storeで第2位のアプリとなった。8月26日には、さらに1つ順位を上げて1位になったが、その後、無料アプリ総合ランキングの上位から徐々に下がっていったという。

8月27日には15位となり、翌日には一時的に4位まで上昇したが、その後は再びランクダウンした。現在アプリは全体で54位、競争の激しい写真 / ビデオカテゴリーでは4位となっているが、主に若いユーザーをターゲットにした新しくてややニッチな製品としては、堅実な位置にある。Sensor Towerによると、このアプリは現在までに6万8000ドル(約750万円)の収益を上げている。

しかしFontmakerは、ボットではなく実際のユーザーからのダウンロード数の増加によってトップチャートにランクインしたにもかかわらず、真の純粋なサクセスストーリーとは言えないかもしれない。むしろ、モバイルマーケティング担当者がアプリのインストールを促進するために、インフルエンサーのコミュニティを活用する方法を見つけ出した一例と言えるだろう。また、インフルエンサーマーケティングによって流行ったアプリと、真の需要によってApp Storeのトップに躍り出たアプリとを区別するのは難しいということを示す例でもある。例えば、トランシーバーアプリのZelloは、ハリケーン「アイダ」の影響で最近1位になったという。

Fontmakerは、典型的な「インディーズアプリ」ではない。実際のところ、誰が作ったのかは不明瞭だ。そのパブリッシャーであるMango Labs, LLCは、実際には、モバイル成長企業JetFuelが所有するiTunesの開発者アカウントである。JetFuelは最近、モバイル広告・収益化企業のVungleに買収された。Vungleは長年この分野で活躍し、時には物議をかもした企業で、自身も2019年にBlackstoneに買収されている。

Vungleが主に関心を示したのは、JetFuelの主力製品であるインフルエンサー向けアプリThe Plugだった。

モバイルアプリの開発者や広告主はThe Plugを通じて、合計したInstagramのフォロワー数は40億人、TikTokのフォロワー数は15億人、Snapchatの1日の再生回数は1億回になる1万5000人以上の検証済みインフルエンサーが集うJetFuelのネットワークにアクセスできる。

マーケターは、これらのネットワークのそれぞれに組み込まれた広告ツールを使ってターゲット層にリーチしようと試みることもできるが、JetFuelの技術を使えば、Z世代のうち価値の高いユーザーにリーチするためのキャンペーンを迅速に展開することができるとしている。このシステムは、従来のインフルエンサーマーケティングよりも労力をかけずに済む場合がある。広告主は、アプリのインストールに対して、CPA(Cost Per Action)ベースで支払いを行う。一方、インフルエンサーはThe Plugをスクロールして宣伝したいアプリを見つけ、それを自分のSNSアカウントに投稿するだけで、収益を得ることができる。

The Plugのウェブサイト。インフルエンサーにプラットフォームの仕組みを紹介している

つまり、多くのインフルエンサーがFontmakerに関するTikTok動画を作成し、消費者にアプリのダウンロードを促していたかもしれないが、インフルエンサーはそれに対する報酬を得ていたのだ(また、Fontmakerのハッシュタグを見ていると、金銭的な関係を一切開示せずに動画を作成している場合が多く、これはTikTokで増加しているよくある問題であり、FTCも懸念している)。

厄介なのは、Mango LabsとJetFuel / Vungleの関係を整理することだ。App Storeを見ていると、Mango Labsは楽しい消費者向けアプリをたくさん作っているように見えるし、Fontmakerはその中でも最新のものだ。

JetFuelのウェブサイトがこのイメージの促進にも役立っている。

同社はMango Labsという「インディー開発者」のケーススタディと、同社の初期アプリの1つであるCaption Proを使い、インフルエンサーマーケティングの仕組みを紹介していた。Caption Proは2018年1月に配信された(App Annieのデータによると、2021年8月31日にApp Storeから削除されている)。

画像クレジット:App Annie

しかし、VungleはTechCrunchに対し「Caption Proアプリはもう存在しないし、長い間App StoreやGoogle Playにも載っていない」という(App Annieの記録には、Google Playにこのアプリが掲載されている記録は見つからなかった)。

また「Caption Proは、JetFuelになる前にMango Labsが開発したもの」であり、JetFuelの広告機能を強調するためにケーススタディを使用したのだとも話した(しかし、その関係を明確に開示することはなかった)。

「JetFuelが現在のようなインフルエンサーマーケティングプラットフォームになる前、同社はApp Store向けのアプリを開発していました。同社がマーケティングプラットフォームへと方向転換した後、2018年2月にはアプリの作成を中止しましたが、Mango Labsのアカウントを時折使用して、第三者機関と収益化パートナーシップを結んだアプリを公開し続けていました」とVungleの広報担当者は説明している。

つまりこの主張は、Mango Labsは元々、ずっと前に方向転換してJetFuelになった人々やCaption Proのメーカーと同一であったけれども「Mango Labs, LLC」の下で公開されている新しいアプリはすべて、JetFuelのチーム自身が作ったものではないということだ。

「App StoreやGoogle PlayでMango Labs LLCの名前で表示されているアプリは、実際には他社が開発したものであり、Mango Labsはパブリッシャーとしての役割しか果たしていません」と広報担当者はいう。

Mango Labsを「インディー開発者」と表現するJetFuelのウェブサイト

この主張が腑に落ちないのには理由があり、JetFuelのパートナーがMango Labsの名前に隠れて喜んでいるように見えるからだけではなく、Mango Labsが過去にJetFuelチームのプロジェクトであったからでもある。また、Mango LabsとTakeoff Labsが一連の同じアプリを提供していることも奇妙だ。Mango Labsと同じく、Takeoff LabsもJetFuelと関係がある。

この記事を書いている現時点で、Mango LabsはApp StoreとGoogle Playの両方でいくつかの消費者向けアプリを公開している。

iOSでは、最近のNo.1アプリFontmakerをはじめ、FontKey、Color Meme、Litstick、Vibe、Celebs、FITme Fitness、CopyPaste、Part 2などがある。Google Playでは、さらに2つのアプリ、StickeredとMangoを提供している。

画像クレジット:Mango Labs

App StoreにあるMango Labsのリストのほとんどは、アプリの「開発者のウェブサイト」としてJetFuelのウェブサイトを提示しており、VungleがいうJetFuelがアプリのパブリッシャーとして機能していることと一致している。

しかし奇妙なのは、Mango Labsのアプリ、Part2が、App StoreのリストでTakeoff Labsのウェブサイトにリンクしていることだ。

Vungleの広報担当者は当初、Takeoff Labsは「独立したアプリ開発会社」であると説明していた。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同創業者兼CEOのTim Lenardo(ティム・レナルド)や、JetFuelの共同創業者兼CROのJJ Maxwell(JJ・マックスウェル)など、JetFuelのリーダーたちで構成されたチームが表示されている。Takeoff LabsのLLC登記申請書は、レナルドによって署名されている。

一方、Takeoff Labsの共同創業者兼CEOのRhai Goburdhun(ライ・ゴバードハン)は、LinkedInとTakeoff Labsのウェブサイトを見ると、今も同社で働いているのだ。この関係について質問されたVungleは、ウェブサイトが更新されていないことに気づかなかったと答えており、今回の買収ではJetFuelもVungleもTakeoff Labsの所有権を持っていないとのことだ。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同設立者を含むチームが掲載されている

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社の「ポートフォリオ」として、Mango LabsがApp Storeで公開しているCeleb、Litstick、FontKeyの3つのアプリも紹介されている。

Google Playでは、Takeoff LabsはCelebsの他、VibeとTeal(ネット銀行)の2つのアプリの開発者となっている。しかしApp Storeでは、Vibeを公開しているのはMango Labsだ。

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社のアプリのポートフォリオが紹介されている

(さらに事を複雑にするわけではないが、RealLabsという企業もあり、同社はJetFuelやThe Plug、そしてMango LabsがGoogle Playで公開しているアプリMangoなどの消費者向けアプリを提供している。Labsという名前を付けたがっている人がいるようだ)。

Vungleによれば、この混乱は、同社がMango LabsのiTunesアカウントを使ってパートナーのアプリを公開していることと関係があり、これはApp Storeでは「よくあること」だと主張する。Vungleも混乱を招いていると認めており、Mango Labsで公開されているアプリを開発者のアカウントに移行するつもりだという。

またVungleは、JetFuelは「現在アプリストアで公開されているいかなる消費者向けアプリも作っておらず、所有していません。同社がMango Labsとして知られていた頃に作られたアプリは、ずいぶん前にアプリストアから削除されています」と主張している。

JetFuelのシステムは混乱しているが、今のところその目標は成功している。Fontmakerは、インフルエンサーマーケティングによってグロースハックが行われ、確かに1位になった。

しかし消費者としては、自分がダウンロードしているアプリが実際に誰によって作られたのか、そして自分が非公開の広告に「影響」されてダウンロードしたのかどうかを知ることができないということになる。

インフルエンサーによるプロモーションを通じてグロースハックによりトップに躍り出たのは、Fontmakerが初めてではない。夏に大ヒットしたPoparrazziも、同様の方法でApp Storeのトップに躍り出た。しかしPoparazziはその後、写真 / ビデオ部門で89位に沈んだ。

Fontmakerについては、手を回したインフルエンサーのおかげで1位を獲得したものの、トップチャートにいる時間は短いものだった。

関連記事:米App Storeトップに華々しく登場、作られた完璧さが並ぶInstagramのアンチを謳う新SNS「Poparazzi」

画像クレジット:Fontmaker

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

TumblrがZ世代のクリエイターのためのサブスクサービスPost+を開始

Twitter(ツイッター)がSuper Follows(スーパーフォロー)を開始し、YouTube(ユーチューブ)が新しいマネタイズツールを追加し、Instagram(インスタグラム)がeコマースを導入するなど、ソーシャルメディア界はクリエイターが生計を立てるための新しい方法で盛り上がっている。この争いにTumblr(タンブラー)も、ユーザーがコンテンツを収益化できるようにする初の試みであるPost+(ポストプラス)で参入する。Post+は米国時間7月22日より限定ベータ版として開始されるが、当初はTumblr自身が厳選した米国内のクリエイターに限定される。

TwitterのSuper Followsのように、TumblrのPost+ではオリジナルアート作品、個人のブログ記事、二次創作のファン作品など、クリエイターが有料化したいコンテンツを選択することができる。クリエイターは、サブスク専用コンテンツの価格を月額3.99ドル(約440円)から始めて、さらに5.99ドル(約660円)、9.99ドル(約1100円)と段階的に設定することができる、Tumblrは、クリエイターの利益から5%を徴収する。

Post+でコンテンツを作成するプロセスは、他のTumblrの投稿と同じだ。クリエイターはビデオ、オーディオクリップ、テキスト投稿、画像などの投稿が、有料購読者専用であることを示すボックスにチェックを入れるだけだ。

画像クレジット:Tumblr

Tumblrの広報担当者は、TechCrunchに次のように語った「TumblrのPost+はプロや1万人以上のフォロワーを持つ人だけのものではなく、インターネット上でお金になるコンテンツの限界を押し広げるものになります。たとえばネタ作家、ミームクリエイター、アーティスト、ファンフィクション作家、上記のすべての人々、そしてその間にいる人たちが、ファンコミュニティを構築しながらコンテンツを作成し、Post+で報酬を得ることができるようになります」。

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2010年の発売日に「The Hunger Games(ハンガー・ゲーム)」の最終巻を読んだことをライブブログで書き込んだミレニアル世代にとって、Tumblrは過去の遺物のように思えるかもしれない。2007年に設立されたこのプラットフォームは、これまでさまざまな変化を遂げてきた。2013年にTumblrはYahoo(ヤフー)に11億ドル(約1212億円)で買収され、その後YahooはVerizon(ベライゾン)に買収された。

画像クレジット:SimilarWeb

しかし、2018年12月にTumblrに大規模な変化が訪れ、プラットフォームはすべての露骨な性的表現のあるコンテンツやポルノを禁止した。その1カ月前に、Tumblrアプリは、そのフィルタリング技術を児童ポルノが突破したことで、iOS App Storeから削除されていた。これを受けて、同プラットフォームでは、ポルノを全面的に禁止することになったのだ。その禁止4カ月後、Tumblrの月間ページビューは1億5100万回(29%)減少した。それ以来、SimilarWeb(シミラーウェブ)によると、このプラットフォームはコアなユーザーベースを維持しており、月に約3億1000万から3億7700万ページビューの間で推移している。ただし分析結果によれば今でも若干の減少傾向を示しているようだ。Tumblrは、月間アクティブユーザー数を公表していないが、同プラットフォームには1日あたり1100万件以上の投稿があり、5億件のブログがあことを発表している。

2019年、このプラットフォームはWordPress.com(ワードプレス.com)を所有するAutomattic(オートマチック)に売却された。Tumblrは、ポルノ禁止令以降、大きな成長は見せてこなかったが、新しいオーナーの下で、若い層にアピールする機能を提供することで、収益を上げるための新しい方法を模索している。Tumblrによると、ユーザーの48%以上が(1990年代半ば以降生まれの)Z世代である。このZ世代のユーザーは、旧世代のブロガーに比べてプラットフォームの利用時間が26%長く、1日の平均利用時間は年に100%以上増加している。

関連記事:WordPress.comのオーナー企業Automatticがプライベートな日記アプリ「Day One」を買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TumblrZ世代クリエイター収益化サブスクリプション

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

eコマースEtsyが中古品も扱う英国のZ世代向けマーケットプレイスDepopを約1780億円で買収

eコマース業界におけるかなり大きなニュースが6月2日、欧州から届いた。手芸クリエイターやスタイルに関心のある人がさまざまなアイテムを発見したり購入したりできる、ニューヨーク拠点のマーケットプレイスEtsy(エッツイ)が、ソーシャルショッピングという新たなアプローチでミレニアル世代とZ世代の消費者をターゲットにしているロンドン拠点のマーケットプレイスDepop(デポップ)を買収すると発表した。買収額は16億2500万ドル(約1780億円)で、Etsyは大半をキャッシュで支払う取引だとしている

わずかな差で、今回の取引はEtsyにとってこれまでで最大の買収ではない。同社はこの他に7件の買収を行ったが、ほとんどが10億ドル(約1095億円)以下だった。とはいえ、欧州のeコマースにとっては大きな買収で、ビジネスモデルの中でも特に若い、そして、あるいはよりクリエイティブなユーザーをターゲットとしているコマースモデルを構築している企業にとってはかなり心強いものだ。

Depopのユーザーの90%ほどが26歳以下で、EtsyはDepopのそうした若い人々やそのコミュニティにアクセスする大きな機会を手にするが、Depopはより多くのコンテンツや若い買い物客をEtsyに持ってくる橋渡しのように機能しそうだ。Etsyは若い人に目を向け始めたが、かなりの数の若くないユーザーも抱えている。同社は上場企業であり、直近の時価総額は200億ドル(約2兆2000億円)を超えている

Depopが最後に資金調達したのは2019年のようで(6200万ドル、約68億円のラウンド)、ユーザー1300万人を抱えて米国で急成長中と当時は絶好調だった。それから約2年、同社のユーザー数は2100万人を超え、その多くはスタイリストやデザイナー、アーティスト、コレクター、ビンテージ販売者などで、米国(Etsy最大のマーケットだ)とホームマーケットである英国(こちらもEtsyの大きなマーケットだ)でかなりのユーザーを抱えている。

Etsyにとってこれはボリュームゲームだが、必ずしも最初から利益をともなうわけではない。2020年のDepopの流通総額は6億5000万ドル(約712億円)だったが、売上高はわずか7000万ドル(約77億円)で、いずれも前年は100%増だった。

ただし、Etsyが自社の成長についてのとらえ方、特に衣服、家庭用品、そして消費財の買い物という分野における反Amazonという点で、Depopの精神は有望だ。Depopはまた現代の風潮にもぴったり合っている。2020年はeコマースが急成長したばかりでなく、人々が地元で買い物したり個人をサポートしたりし、またこれまでよりも中古品を買うようになった結果、零細事業や家内工業が繁盛した。Depopが強みを持っている分野だ。

「Z世代にとっての再販のホームだと我々が信じているDepopがEtsyファミリーに加わることに胸躍らせています。Depopは活気がある二面性のあるマーケットプレイスで、情熱的なコミュニティ、高度に差別化されたユニークなアイテムの提供をともなっています。そして我々はさらなる展開の大きな可能性を確信しています」とEtsyのCEOであるJosh Silverman(ジョッシュ・シルバーマン)氏は声明文で述べた。「Depopのワールドクラスの経営陣と従業員はこのコミュニティを育て、EtsyのDNAそしてKeeping Commerce Humanというミッションとよく一致している方法でオーガニックで正真正銘の成長を推進するというすばらしい仕事を成し遂げました。我々は専門性を共有するすばらしい機会、それぞれに異なる巨大な「ハウス・オブ・ブランド」ポートフォリオ、そしてかなり特別なeコマースブランドになる成長シナジーを目にしています」。

シルバーマン氏はeBayで何年もShopping.comを率いた経歴を持ち、これはEtsyの成長を今後どのようにとらえるか考えるときに考慮するに値するものだ。

DepopのCEOであるMaria Raga(マリア・ラガ)氏は次のように述べた。「我々はDepopを次世代がユニークなファッションを見つけるために訪れ、買い物方法を変えるコミュニティの一部になる場所にするというすばらしい旅をしています。当社のコミュニティは新たなトレンドを確立し、古いものから新しいものをつくることで新しいファッションシステムを創造する人によって構成されています。彼らは衣服のためにDepopにやって来ますが、カルチャーのためにとどまります。当社はいま、Etsyファミリーの一員としてジョッシュと彼のチームの専門性、Depopのものと一致する価値観を持つ大企業のリソースの恩恵を受けながら、エキサイティングな躍進を遂げようとしています」。

米国と英国の当局の承認やクロージング条件次第ではあるが、買収は2021年第3四半期に完了する見込みで、取引完了後はEtsy、そして2019年に買収された楽器マーケットプレイスReverbとともにDepopは別のブランドとして運営されるとEtsyは話した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Etsy買収Z世代ミレニアルイギリスマーケットプレイスファッションeコマース

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

家計や引っ越し、給料交渉など大学を卒業したばかりZ世代のための大人の手引書を提供するRealworldが3.7億円調達

Realworld(リアルワールド)は大きなビジョンを持っている。目標は「大人であることをシンプルにすること」だと創業者でCEOのGenevieve Ryan Bellaire(ジェネビーブ・ライアン・ベルエアー)氏は筆者に語った。そしてニューヨーク拠点の同社は目標を達成するためにシードファンディングで340万ドル(約3億7000万円)を調達した。

どうやらそれはベルエアー氏自身が20代前半に苦労したことだったようだ。MBAを持つ弁護士であるにもかかわらず、自分自身が「こうした実世界のことにまったく準備できていなかった」ことに気づいた。住宅や医療保険のことなどだ。これらに関しては筆者(弁護士でもなく、MBAも持っていない)もまったく同感だ。

「クレジットカードを申し込むのに、このフォームを記入してくださいと教示するコンテンツはそこら中に山ほどあります。しかしあなたは自分自身が何を知らないかをわかっていないのです」とベルエアー氏は話した。「大人であることを1カ所で定義する場所はありません」。

と同時に、大人であることの側面を簡単にするオンラインサービスがある。保険であればLemonade、投資であればBetterment、診察の予約であればZocdocなどだ。しかし繰り返しになるが、こうしたサービスを探すこと、そしてそれらのサービスを使うべきだと知っていることはハードルとなる。だからこそ、Realworldは「1つのエントリーポイント」として機能することを意図している、とベルエアー氏は述べた。

そのために、Realworldは家計や引っ越し、給料の交渉などをカバーする90以上のステップ・バイ・ステップの計画を作成した。大学を卒業し、就職したばかりのZ世代のためのものだとベルエアー氏は語る。

RealworldのCEO、ジェネビーブ・ライアン・ベルエアー氏(画像クレジット:Realworld)

もちろん、特定の年代にフォーカスするとして、同じ20歳代でもそれぞれに異なるバックグラウンドを持ち、収入レベルや抱えている問題も異なる。計画はユーザーの特定の目標や状況に応じてインストラクションをカスタマイズするとベルエアー氏は話したが、Realworldの15の計画から構成される「スターターパック」は予算の作成やアパート探し、所得税の理解などすべての大人が何らかの形で対処する必要があるものをカバーするとも主張した。

Realworldは初のモバイルアプリを2021年5月にリリースする計画で、目標は「プラットフォーム、マーケットプレイス、コミュニティ」になることだ。計画はプラットフォームで重要な役割を果たし、そしてゆくゆくは大人になることの目標を達成するのをサポートするサービスのためのマーケットプレイス、そしてユーザーが知識やアドバイスを共有するコミュニティも含むことになるかもしれない。

Realworldは当初、計画へのアクセスに課金していたが、現在は無料で利用できる。その代わり、追加の機能や「コンシェルジュのようなサポート」にサブスク料金を課すかもしれないとベルエアー氏は話した。

「これは、正しいものを手にすれば、大きな影響を与えることができる問題の1つです。しかし経済的に大きな成功を手にすることができるものでもあります」と付け加えた。

投資家らはこれに同意しそうだ。Realworldは以前110万ドル(約1億2000万円)を調達したが、今回のシードラウンドはFitz Gate Venturesがリードし、Bezos Expeditions(ジェフ・ベゾス氏の個人的な投資会社)、Knightsgate Ventures、The Helm、Great Oaks VC、Copper Wire Ventures、AmplifyHer Ventures、Underdog Labs、Human Ventures、Techstarsが参加した。

AmplifyHerのパートナーであるMeghan Cross Breeden(メーガン・クロス・ブリーデン)氏は、Realworldが現在のZ世代のための「人生のマイルストーン」のマーケットだけでなく、家の購入から親の介護まで長期にわたる「あらゆる未来のマイルストーン」のマーケットを追求することになるかもしれないと指摘した。

カテゴリー:その他
タグ:Realworld資金調達Z世代

画像クレジット:Realworld

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

「キッズ向け仮想世界」Animal Jamの制作会社が10代のゲーム好き女子対象の新コンテンツ「Fer.al」発表

子供たちは、「Roblox(ロブロックス)」「Minecraft(マインクラフト)」「Fortnite(フォートナイト)」などのゲームの広大な仮想世界へと進む前に、「Animal Jam(アニマルジャム」などでオンラインソーシャルゲームに関わり始めることが多い。ペアレンタルコントロールがかかった安全な環境でアバターのパーソナライズや、ワールドの探索、他のプレイヤーとのチャット、アイテムの交換方法などを学ぶ。米国時間3月8日、この人気ゲームの生みの親WildWorks(ワイルドワークス)は新ゲーム「Fer.al(フェラル)」を発表した。このゲームはAnimal Jamのレガシーをベースに、Z世代のティーンを対象にしている。

「最初にFer.alについて話し合ったとき、Animal Jamで遊ぶ年齢を過ぎた子たちはどこへ行くのかという話になりました」とWildWorksの共同創業者兼CEOのClark Stacey(クラーク・ステイシー)氏は説明した。「Animal Jamなど安全な壁で完全に囲まれたゲームと、同様の保護がないInstagram(インスタグラム)などの大人向けのソーシャルネットワークやゲームの中間がなかったのです」と同氏。

「その壁を少しだけ低くした環境を高学年の子供たちに提供したいと思いました」とステイシー氏は振り返る。

この新しいゲームは、高学年の子供たち、つまり13歳から18歳ぐらいまでの、遊ぶゲームを自ら選び、自分のメールアドレスがあり、ゲームをするのに親の許可が必要ないティーン向けに作られている。Fer.alのチャットのガードレールはAnimal Jamほど高くなく、単語のブロックよりもいじめや嫌がらせの防止により重点を置いている。またプレイヤーは今後、自分のオンラインソーシャルアカウントをゲームアカウントに接続できるようになる。

画像クレジット:WildWorks

WildWorksはFer.alで再び動物を中心としたゲームを展開しているが、今回はファンタジーの世界になっている。プレイヤーは、民話や神話に基づいた二足歩行のヒューマノイドクリーチャーを選ぶ。クリーチャーにはキツネ、センリ、ドラゴン、ジャッカロープ、オオカミ人間、麒麟、死神などがあり、今後さらに増えていく予定だ。

キャラクターのスタイルは、Animal Jamのファンアートからインスピレーションを受けたとステイシー氏は話す。ファンアートでは子供たちがマンガやAnimal Jamのスタイル、その他の昔のアニメーションのスタイルを混ぜた動物のアバターが生み出されている。

Animal Jam同様、Fer.alのプレイヤーも自分のキャラクターをパーソナライズして、見た目を変えたり、パーソナルスペース(「デン」の代わりに「サンクチュアリー」となる)をデザインできる。また他のプレイヤーとやり取りができるワールドを発見して、アイテムを収集したり、トレードしたり、クエストを行うことができるが、ストーリー展開は、ソーシャルメディアへの理解の深まりと、オンラインファンベースを増やしたいといったティーンの関心を反映させるように進化している。

より大きな物語として、Aradia(アラディア)とDelilah(デライラ)という2人の女王が争うリアリティショーが関与する。女王はそれぞれInstagramのアカウントを持っており、策略を用いて支配を目論んでいる。同社はこの物語が長期的にどのように展開していくのかについて多くを語っていないが、新しい服や新しい「グラマー」(キャラクターの周りにつく表現エフェクト)に必要な材料を得るための毎日のミッションやクエストの他、ゲームが成長するにつれ、毎週・毎月開催されるコンテストがあるそうだ。

画像クレジット:WildWorks

Animal Jam、そしてRobloxといった他の仮想世界のゲームと同様に、プレイヤーは協力してゲームを進めていくようになっている。自分1人では完了できないタスクがあるので、やり取りやチャットをする必要が出てくる。またゲームが進むと、2人の女王が率いるファクションに参加できるようになる。

Fer.alで注目すべきその他の点は、ゲーム好きの女子が主な対象となっていることだろう。

ステイシー氏は「この年齢幅の男の子を除外しているつもりはまったくありません」と説明した。「ですがAnimal Jamに最もハマっていたプレイヤーのおよそ80%は女の子たちであると認識しています。Animal Jamではそのことに大きく身を乗り出しました。多くの女性科学者と連携して、女子がSTEM(ステム)教育に興味を持てる要因を探っているのです。なので初めからいるオーディエンスの多くはそこからであることもわかっています」。

「そして私たちが気付いたニーズは、思春期の男の子にとって共感できるオンラインコミュニティを見つけるのは難しくないですが、女の子たちが同じものを見つけるのは非常に困難であるということです。ですのでこのコミュニティ、ルールからビジュアルにいたるあらゆるものを作る上でその点についてはとても意識しました。何を求め、何が良いのかダメなのか、参考にするのは主に女の子の意見です」と加えている。

画像クレジット:WildWorks

Animal Jamのファンベースに基づいて作られたという事実は、Fer.alが順調にスタートするための利点となっている。Animal Jamには毎月250万人から400万人のアクティブユーザーがいる。登録アカウントは合計1億3500万に及んでいる。登録ユーザー数とアクティブユーザー数の差は2010年10月のローンチからAnimal Jamを卒業した子供たちの数を示しているが、ステイシー氏は同ゲームの利用がピーク時より下がっていることも認めている。

だが、WildWorksの次の一手に関心を寄せる声も多い。

Fer.alのウェブサイトがローンチした最初の1週間で、7万5000人の子供たちがベータ版テスターになるために登録した。テスターは2020年4月から徐々にベータ版を紹介されが、当初はデスクトップのみであった。現在ベータ版にはローンチ前で毎日1万弱のアクティブユーザーがいる。またApple App StoreやGoogle Playでは10万人以上がリリース前登録をしている。

Fer.alはAnimal Jamと同じく、フリーミアムのゲームなのだが、Animal Jamの収益のおよそ80%がサブスクリプションからであるのに対し、Fer.alでは、マネタイズにシーズンパスモデルを採用する。シーズンパスは10~20ドル(約1100~ 2200円)でアプリ内課金で購入でき、そのシーズン専用の独自アイテムやエクスペリエンスが利用できる。年間およそ7シーズンとなる予定だ。

画像クレジット:WildWorks

同社はベータ版テストの後半になるまでシーズンパスは提供していなかったが、ステイシー氏によるとコンバージョンレートは「デスクトップでは期待の上をいっていた」そうだ。モバイルのコンバージョンレートもデスクトップ同様高いままであれば、ユーザー獲得への投資を開始することも考えられると言及していた。また同社は、すべてが順調であれば、将来的に広告とグッズ商品化も検討する可能性もある。

ソルトレイクシティに本社を構えるWildWorks(旧Smart Bomb Interactive)は、Signal Peak Ventures(シグナルピークベンチャーズ)がそのほとんどを所有しており、長い年月をかけて2000万ドル(約22憶円)以上投資している。同社は2008年に独自のIPに重点を置くようにシフトし、Animal Jamなどのゲームを発表できるようになった。

過去数年、WildWorksの収益は2000万ドル(約22憶円)以上3000万ドル(約33憶円)未満で、Animal JamとTag with Ryan(タグ・ウィズ・ライアン)がその多くを占めている。Fer.alがAnimal Jamを卒業し、より高学年向けのゲームを求める子供たちを無事獲得することができたら、その収益ベースは大幅に上昇する可能性があるだろう。

Fer.alは米国時間3月8日に、全世界で公開され、まずは英語版のみとなる。PC、Mac、iOS、Androidでプレイ可能だ。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:WildWorksAnimal Jam10代Z世代Fer.al

画像クレジット:WildWorks

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

リアルタイムでテキストが表示されるが履歴は残らないZ世代向けメッセージングアプリ「Honk」

新しいモバイルアプリHonk(ホンク)は、友だちとのメッセージのやり取りをもっと対話的でリアルタイムな体験にすることを目指している。テキストを虚空に向かって放り投げて反応が来ることを期待するのではなく、Honkのメッセージは入力するそばからライブで表示され、チャット履歴は残らず保存ボタンもない。相手とその場で会話している感覚だ。そしてもし、今すぐ相手の注目を引きたい時は、「Honk」を送ることができる。チャットへの参加を促す見落としようのない通知だ。

もっと緊急の場合は、スパムのようにHonkボタンを繰り返し押すこともできる。そうすると友だちがアプリを開いていなければ通知が送られ、開いていればカラフルな絵文字の洪水が送られる。

アカウントを作り、プロフィール写真やユーザー名の設定、友だちの追加を行なったら、リストから友だちの名前を選んでメッセージを送ることができる。

Honkのチャット画面に入ると、大きな吹き出しが2つ出る。上にあるグレーの吹き出しには友だちのメッセージが表示され、ブルーの吹き出しには自分がテキストをタイプする(色とテーマは変更可能)。

入力ボックスにタイプし始めると、相手にはリアルタイムでテキストが表示される。ひと息ついたり打ち間違えを修正するところなど、普通なら見られることのないものも送られる。この「ライブタイピング」体験は、過去の通信テクノロジーを彷彿させる。初期のインスタントメッセージングアプリICQや、革新的コラボレーションツールだった Google Waveなどだ。

Honkでは、自分の想いを伝えるために160文字が与えられ、画面右の吹き出しの下には文字数がカウントダウンされいくところが見える。しかし、メッセージを送るための「Send(送信)」ボタンはない。相手は、テキストをタイプされたところをすでに見ているからだ。代わりに二重矢印の「refresh(リフレッシュ)」ボタンを押し画面をクリアして次のメッセージを書く。

絵文字を入力したり、写真を撮ったり、カメラロールの写真を送るためのボタンもある。Honkの絵文字は、単独で送られるのではなく、iMessageの「Send with Echo(エコーで送信)」エフェクトのように、大きな絵文字が一時的に相手の画面いっぱいに表示される。

個々チャットの中で絵文字を好きな単語やフレーズに割り当てる「Magic Words」機能を使えば、タイプしている途中でエフェクトを起こすことができる。会話ごとにチャットテーマをカスタマイズしたり、あまりたくさん受け取りたくない相手からの通知をオフにすることもできる。

会話は一切保存されず、履歴を見返すこともできない。これは、SnapchatやMessengerのVanish Mode(日本では未提供)などに似ている(Honkはセキュリティに関する立場を明らかにしていないので、リスクの高いコンテンツを送るときは気をつけたほうがいい)。

そしてもちろん、誰かの注意を引きたいときは、「Honk」ボタンをタップして相手の画面を通知で溢れさせることができる。

ここまで読んで、なんだかバカバカしいと思った人は、おそらくHonkメッセージ体験のターゲット層ではない。

このアプリは明らかにティーンエージャー主体の若者を狙っている。その証拠に、Honkの初期設定で年齢を聞かれる時、リストから正確な年齢を選ぶようになっているが、年齢選択肢の最後にあるのは 「21+」で、これが「年長者」に用意された枠だ。自分たちをネットのトレンドセッターだと思っているミレニアル世代はちょっと傷つくかもしれない。

とはいえ、Honkの狙いは「Z世代」(1990年代後半以降のネット世代)を取り込むことのようだ。実際、TikTokでも彼らに向けてマーケティングを行なっていて、すでに1万4000以上の「いいね」がついている。最初の動画をアップロードされたのは米国時間12月22日のことだ。HonkのファウンダーであるBenji Taylor(ベンジ・テイラー)氏はTwitter(Twitter)で、東海岸の2020年12月23日午後時点で、55万回の「Honk」が送られたことも発表した。

ウェブサイトによると、Honkはソフトウェア会社でアプリケーションパブリッシャーのLos Feliz Engineering (LFEの旗艦製品であり、同社はNaval Ravikant、Elad Gil、Brian Norgard、David Tisch、Jeff Fagnan、Ryan Hoover、Sarah Downey、Josh Hannah、Sahil Lavingiaらから出資を受けている。

「このアプリのデザインは並外れて素晴らしい」とProduct Huntのファウンダーで、Weekend Fundの出資者であるRyan Hoover(ライアン・フーバー)氏がHonkについて語った。「テイラー氏のチームは、アニメーションからサウンドまで細かい部分までよく目を配っている。スピードにも特別に力を注いでいる」と付け加えた。

テイラー氏はTechCrunchのインタビュー依頼を断り、現在チームは製品開発に全力を注いでいるとだけ語った。

「私たちは時間をかけてHonkの開発を続けてきました。メッセージングを楽しくし、人々が関係を深められる新しいクリエイティブなコミュニケーション方法を提供することを目指しています」とテイラー氏はTechCrunchに話した。「もともと私たちは自分たちや友だちのために、小さなチームでこれを作ってきました。もし、気に入ってくれる人たちがいるなら、こんなにうれしいことはありません」と彼はいった。

なお、Honkは開業直後の新規登録と多くの利用による負荷で苦闘している。Honkユーザーは、アプリがときどきオフラインだというが実際にはそうでないなどのバグを報告している。Honkは問題を認識しており、現在解決に取り組んでいるとTwitterで言った。

HonkアプリはiOS向けに無料公開されている。アプリ内購入はなく、その他の明確なビジネスモデルも今のところ見られない。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:HonkZ世代メッセージングアプリ

画像クレジット:Honk(TechCrunchで編集済み)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

1990年中盤以降生まれのZ世代は非ゲームアプリを月4.1時間使用、モバイルで最もパワフルな消費者に

1990年代中盤、後半以降に生まれたZ世代の消費者が、どのようにスマートフォンやモバイルアプリを利用しているのかを掘り下げた新たなレポートがApp Annieから発表された。2020年第3四半期に集められたデータによると、Z世代ユーザーは、人気の非ゲームアプリに1カ月あたり平均4.1時間費やしていて、これは上の世代よりも10%長い。Z世代ユーザーはまた、上の世代より頻繁にアプリを利用し、ユーザー1人あたりの非ゲームアプリのセッションは20%長く、1つのアプリのセッション数は1カ月に120回だ。

アプリ利用状況についてのこのデータはZ世代に照準を当てたものだが、米国、英国、ブラジル、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、メキシコ、韓国、トルコというマーケットに絞っているため完全な分析ではない。また、Android端末からのデータのみを使用しているため全体像は描けていない。

レポートによると、Z世代は上の世代よりもゲームの利用が多いが、使用時間ほど頻繁にゲームにアクセスしてはいない。25才以上の世代は実際には、最も使用するゲームに関しては20%以上長く時間を費やし、アクセス回数は10%多い。Z世代そしてZ世代より上の世代も、非ゲームアプリよりもゲームにより多くの時間を費やしている。

データは、一部の市場におけるプリインストールされたAndroidアプリを除く、MAU別のゲーム以外のアプリトップ25に焦点を当てている。(画像クレジット:App Annie)

Z世代ユーザーが利用するゲームの中で突出しているのは、カジュアルアーケードゲームのAmong Usだ。これはチームを基本とするマルチプレイヤー機能とTwitchストリームによるものであり、世界で3番目に多くプレイされているゲームになった。共和党議員Alexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)氏が10月20日夜にTwitchでゲームをした(未訳記事)とき、ピーク時には43万5000人が視聴し、これまでで最大のTwitchストリームの1つになった。

その他、Z世代に人気のゲームはCandy Crush SagaやToon Blastのようなパズルゲーム、PUBG MobileやFree Fireといったアクションゲーム、Minecraft Pocket EditionやRobloxのようなシミュレーションゲームだ。

画像クレジット:App Annie

App Annieはまた、Z世代ユーザーがiOS、Android両方の非ゲーム部門でどういうアプリを好んでいるのかも調べた。

調査が実施された10のマーケットのうち9つのマーケットのZ世代の支持を得ていたのがTikTokとSnapchatだ。Snapは米国時間10月20日に素晴らしい内容の決算を発表したが、決算内容はアナリスト予想を上回り、デイリーユーザー数は4%増の2億3800万人だった。

Discordもまた成長中で、特にフランスで人気だ。パンデミック中、モバイルとリモートのゲームが他の人との関わりにおいて中心的役割を果たすようになったためだ。

画像クレジット:App Annie

エンターテインメントアプリとしては、10マーケット中6つのマーケットでTwitchが最も人気だったが、日本では動画配信サービスniconico(ニコニコ)が人気だった。

App Annieによると、ファイナンスやショッピングアプリはまだZ世代に幅広く受け入れられていないが、有望株であることが示されている。

画像クレジット:App Annie

Z世代に人気のファイナンスアプリはほとんどないが、Z世代はVenmoやMonzo、DANAのようなノンバンク系のフィンテックアプリを活用する傾向がある。韓国ではローンや保険、クレジットを提供しているP2P決済アプリのTossが人気だった。

一方でZ世代に人気のファッションアプリは、Shein、ASOS、Shopee、 Mercariだった。

全体的に、アクティブなZ世代ユーザーは分析対象となったマーケットで大きな存在になりつつある。インドネシアやブラジルのような新興マーケットでは特にその成長は目覚ましい。

画像クレジット:App Annie

Z世代は、モバイルにおいては最もパワフルな消費者世代になりつつある。98%がスマートフォンを所有していて、推定される年間支出額は1430億ドル(約15兆円)だとApp Annieは指摘した。

「Z世代はスマホがない世界を知りません。彼らはまずモバイルを通して世界を見ています」とApp AnnieのCEO、Ted Krantz(テッド・クランツ)氏はレポートに関する声明で述べた。

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タグ:Z世代スマートフォンアプリ

画像クレジット:Sally Anscombe / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi