“オーディオのYouTube”SoundCloudがコンテンツの有権状態を追跡するZefrとパートナーして売上増に本腰

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音楽ストリーミングのSoundCloudは今、できるだけ多くの曲から、広告や有料化による収益を上げたいと努力しているが、その努力の一環としてこのほど、このサイト上でどの曲がいつ聴かれているかを知るための重要なパートナーシップを結んだ。これからパートナーZefrの力を借りて同社は、どんなコンテンツがいつポストされて、いつ聴かれているかを逐一知ることができる。

今日の発表声明には詳細が乏しいが、Zefrはパートナーシップのねらいを、“このプラットホーム上の共有の様相をよく理解すること”、と述べている。今両社に、パートナーシップによって具体的に何をするのか、Kobaltのような著作権管理サービスの関与は今後あるのか、など、いくつかの質問を送っているので、答が得られ次第この記事をアップデートしたいが、今すでに明らかなのは、これが今後の売上増大策の一環であることだ。

SoundCloudの協同ファウンダでCEOのAlexander Ljungは、声明で次のように述べている: “SoundCloudはレーベルとアドバタイザーズのための成熟したプラットホームとして進化を続けている。Zefrと協働することによりSoundCloudは、デジタルオーディオビジネスにおける強力なプレーヤーになるための次の一歩を踏み出した”。

このパートナーシップは、ZefrとSoundCloudの両方のビジネスにとって重要だ。

Zefrは、YouTubeのパートナーとして、このビデオネットワークにポストされるビデオの著作権の有無の状態を調べ続けた。同社の旗艦サービスContent IDとBrand IDは、音楽や映画のストリームだけでなく、Cokeのような製品まで判定する。NascarやレーベルとしてのSonyなども顧客にしているZefrは、各月に2億7500万のオンラインビデオと、それらの310億あまりの視聴を調べているという。

とはいえ、これまでZefrにとってはYouTubeが唯一の、メジャーなストリーミングプラットホームのパートナーだった。しかし同社は、昨年IVPからの3000万ドルの資金を獲得したとき、今後はGoogleのビデオ部門に限定されずに、メディアストリーミングやソーシャルメディアなど、そのほかの成長企業に対する顧客開拓努力に資金を使っていく、と声明した。SoundCloudは、その声明以降同社が発表した最初のパートナーだ。もちろん、今後ほかにも出てくるはずだが。

SoundCloudは“オーディオのYouTube”と呼ばれることもあるから、それはお似合いのカップルでもある。

SoundCloudはこれまで、1億2300万ドルあまりの資金調達を公表しており、もっとも最近発表された2014年の数字では1億7500万のアクティブユーザがいる。その後も成長が続いているから、今はもっと多いだろう。

しかしながら、その成長には、昨年の決算報告にも見られるように、高い費用が伴っている。

2013年度の決算では、Soundcloudの売上は1120万ユーロ(1410万ドル)で、2012年度の800万ユーロから40%の増加だ。しかし同じ時期に経常損失は倍増し、2012年度の1240万ユーロから2013年度には2310万ユーロ(2920万ドル)になった。

ということは、同社はさらなる投資を必要としているはずだ。実際に今、12億ドルの評価額で1億5000万ドルの資金調達を進めているという報道もある。しかし、それではなぜ、そんなときにSoundCloudは収益化のための新しい技術(Zefr)を導入しようとしているのか?

コンテンツビジネスの日々の詳細な内情を追跡するZefrのようなパートナーを得たことによって、SoundCloudは主なコンテンツオーナーたちとの交渉がやりやすくなる。今現在は、SoundCloudとコンテンツのライセンス契約を結んでいるメジャーなレーベルはWarner Musicだけだが、Warner Musicは、SoundCloudのストリームからお金を得ている唯一のレーベルではない。ではそもそも、他社は今後、このサービスからコンテンツを引き上げたり、コンテンツの提供を控えたりするつもりなのか? それを避けるためにSoundCloudは何をすべきか?

Zefrの協同ファウンダZach Jamesは、今日の声明の中で次のように述べている: “Zefrは長年、権利管理におけるリーダー企業であり、SoundCloudはファンがコンテンツをシェアする活気に満ちたプラットホームだ。そのファンのアクティビティを正しく利用するやり方を見つけることは、SoundCloudとその音楽レーベルのパートナー、およびパブリッシャーにとって利益である。SoundCloudがコンテンツクリエイターやアドバタイザーズにとって積極的に利用したいプラットホームになるために、弊社の技術と専門知識が活かされることは、まことに欣快至極である”。

SoundCloudの企業サイズはYouTubeに比べてずっと小さいが、しかしユーザの滞在率や再訪率はきわめて高いことが実証されている。同サイトにアップロードされる音楽やそのほかのオーディオコンテンツの量は、毎分12時間ぶん以上にも達する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

YouTubeネットワークは明日の大型メディア企業だ

ここ数年で、YouTube上にはマルチチャネルネットワーク(MCN)がものすごく増えた。彼らは、チャネルを多くし、オーディエンスを増やすことによって、ビデオ作品からの収益を上げようとしている。これら、YouTubeをベースとする収益目的のビデオネットワーキングのことを、通常は“YouTubeネットワーク”と呼んでいる。しかし目標は同じでも、その達成方法は各ネットワークによりまちまちだ。

ぼくは先週いっぱい何をやっていたかというと、ロサンゼルスにオフィスのあるこれらYouTubeネットワーク各社を訪ね回っていたのだ。Big Frame、Fullscreen、Machinima、Maker Studios、Tastemade、ZEFRなどなどは、それぞれ、どこがどう違っているのか。ビデオの作者たちへの待遇は、どうなっているのか。

コラボレーションとコーディネーション

YouTuberでビジネスをしようとする者たちはまず、コラボレーションによってオーディエンスを増やそうとする。つまりAさんとBさんがコラボレーションして、それぞれ相手のオーディエンスを自分のオーディエンスにもする。彼らのチャネルにサブスクライブしているオーディエンスの多くが、とくに嫌いでもないかぎり、新たに増えたBさんAさんのビデオも視聴するだろう。

Big FrameとMaker Studiosは、この方法で人気クリエイターたちの作品をたくさん集めて成績を上げている。視聴者が増え、会員も増え、そして結果的に広告収入の源泉である視聴数(ビュー数)も増える。

コラボレーションを広めようとしているのは、MCNだけではない。YouTube自身が、多くのクリエイターを傘下に集めるために、本格的で大規模なプロダクション施設YouTube Space LAを開設した。スタジオがあり、撮影機材があり、ビデオのクォリティを上げるためのポストプロダクションの施設や機材もある。またこの施設はコミュニティセンターとしても利用され、いろんなソーシャルなイベントや教育訓練のためのワークショップに、年間を通じ多くのクリエイターを集めている。

古き良き日のハリウッド的プロダクション

ハリウッドをハリウッドたらしめているものは、大作の商業コンテンツを作る意志だ。そしてYouTube上のMCNたちも、単純にクリエイターを集めてコラボレーションさせ、彼らにベストプラクティスのリストを与えるだけでなく、視聴者を満足させる、価値の高いオリジナルコンテンツを作らなければだめだ、と気づきつつある。

これまでYouTubeでは、視聴者がカジュアルな見方しかしないので、ビデオはなるべく短くすべし、とされていた。でも最近では、時間をかけて複数のビデオをじっくり見るタイプのオーディエンスが増えつつある。そのため、長時間ビデオが徐々に増え、またそのためのプロダクション投資も増えている。

その方面でいちばん意欲的なのが、たぶんMachinimaだ。同社はMortal Kombat: Legacy(今では第二シーズン)やBattlestar Galactica: Blood & Chromeなどに投資して、YouTube上の長時間ビデオの限界を模索している。そして今のところ同社は、視聴者の熱心な視聴態度から、“これで行ける!”という前向きの感触をつかみつつある。

またMakerやTastemadeなどは、Machinimaのようにシリーズもののコンテンツを作るのではなく、作品の質の向上に力を入れている。両社とも、クリエイターたちに使わせる専用のスタジオがあり、そこで彼らのコンテンツを作らせる。Makerでは、クリエイターたちはスタジオのセットを再利用できる。一方Tastemadeは、キッチンのセットを何種類も作ってクリエイターたちに使わせている。

特定ニッチや業種に焦点

最近では、オーディエンスを特定のニッチや消費者特性、あるいは特定の業種業態に絞ったビデオ制作が増えている。この路線を最初にやり始めたのMachinimaだが、同社は最初、ビデオゲームのファンの男の子、という層に着目した。しかし最近では、そういうニッチ路線を行くYouTubeネットワークが増えている。

たとえばTastemadeの場合は、最初から“グルメ指向”でスタートした。食べ物に関心のある人たちは、相当な視聴数、ひいては広告収入を、期待できる層なのだ。またDanceOnは、その名のとおりダンスファンを対象としている。

オーディエンスの層を特定しないネットワークも、個々の企画では層化のきざしがある。たとえばBig Frameは、都市住民のためのForefront、ファッションと美容に絞ったPolished、女性クリエイターのためのWonderly、性的少数者層のためのOutlandish、などを作っている。

技術の向上

商用プロダクションとなると、ビデオの高品質化が重要だ。しかし視聴者増に欠かせないのは、チャネルそのものの技術的管理だ。そのために、FullscreenやZEFRはYouTubeネットワークが自分のチャネルの視聴率や広告収入の動向などをチェックするためのダッシュボードを提供している。

Fullscreenが最近作ったCreator Platformは、ビデオチャネルを管理するためのツールだ。最初はアクセス分析と広告収入を見るためのダッシュボードだったが、今ではクリエイターたちが自分のチャネルを良くしていくためのいろんな情報を提供している。

一方ZEFRは、YouTubeにアップロードされた、大手メディア企業に著作権のあるコンテンツを見つける。昔は、ファンが勝手にアップロードしたそんなコンテンツは無条件で取り下げられたが、今では著作権保有者にとってお金を稼ぐ手段だ。今やZEFRは、このサービスの対象をメディア企業だけでなく一般企業にも拡大し、悪質ビデオの発見などに役立てている。

FullscreenとZEFRはどちらも、自社でコンテンツを制作しているわけではないけれども、YouTubeネットワークとそのコンテンツをビジネスとする企業であることには変わりない。

次にやってくるメディア企業とは

今私たちは、ビデオの未来へ向かう曲がり角にいる。次世代の大型メディア企業はYouTube(など)の上に生まれる。テクノロジと伝統的なプロダクション技術の両方を身につけた彼らが、今の大手メディア企業の敵にもなりパートナーにもなる。しかしそこまで昇りつめるYouTubeネットワーク企業は、アートにおいても、サイエンスにおいても、プロダクションにおいても、コンテンツにおいても、そして運においても、大きく恵まれた企業でなければならない。

写真クレジット: chelsea(:, Compfight ccより。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))