「キッズ向け仮想世界」Animal Jamの制作会社が10代のゲーム好き女子対象の新コンテンツ「Fer.al」発表

子供たちは、「Roblox(ロブロックス)」「Minecraft(マインクラフト)」「Fortnite(フォートナイト)」などのゲームの広大な仮想世界へと進む前に、「Animal Jam(アニマルジャム」などでオンラインソーシャルゲームに関わり始めることが多い。ペアレンタルコントロールがかかった安全な環境でアバターのパーソナライズや、ワールドの探索、他のプレイヤーとのチャット、アイテムの交換方法などを学ぶ。米国時間3月8日、この人気ゲームの生みの親WildWorks(ワイルドワークス)は新ゲーム「Fer.al(フェラル)」を発表した。このゲームはAnimal Jamのレガシーをベースに、Z世代のティーンを対象にしている。

「最初にFer.alについて話し合ったとき、Animal Jamで遊ぶ年齢を過ぎた子たちはどこへ行くのかという話になりました」とWildWorksの共同創業者兼CEOのClark Stacey(クラーク・ステイシー)氏は説明した。「Animal Jamなど安全な壁で完全に囲まれたゲームと、同様の保護がないInstagram(インスタグラム)などの大人向けのソーシャルネットワークやゲームの中間がなかったのです」と同氏。

「その壁を少しだけ低くした環境を高学年の子供たちに提供したいと思いました」とステイシー氏は振り返る。

この新しいゲームは、高学年の子供たち、つまり13歳から18歳ぐらいまでの、遊ぶゲームを自ら選び、自分のメールアドレスがあり、ゲームをするのに親の許可が必要ないティーン向けに作られている。Fer.alのチャットのガードレールはAnimal Jamほど高くなく、単語のブロックよりもいじめや嫌がらせの防止により重点を置いている。またプレイヤーは今後、自分のオンラインソーシャルアカウントをゲームアカウントに接続できるようになる。

画像クレジット:WildWorks

WildWorksはFer.alで再び動物を中心としたゲームを展開しているが、今回はファンタジーの世界になっている。プレイヤーは、民話や神話に基づいた二足歩行のヒューマノイドクリーチャーを選ぶ。クリーチャーにはキツネ、センリ、ドラゴン、ジャッカロープ、オオカミ人間、麒麟、死神などがあり、今後さらに増えていく予定だ。

キャラクターのスタイルは、Animal Jamのファンアートからインスピレーションを受けたとステイシー氏は話す。ファンアートでは子供たちがマンガやAnimal Jamのスタイル、その他の昔のアニメーションのスタイルを混ぜた動物のアバターが生み出されている。

Animal Jam同様、Fer.alのプレイヤーも自分のキャラクターをパーソナライズして、見た目を変えたり、パーソナルスペース(「デン」の代わりに「サンクチュアリー」となる)をデザインできる。また他のプレイヤーとやり取りができるワールドを発見して、アイテムを収集したり、トレードしたり、クエストを行うことができるが、ストーリー展開は、ソーシャルメディアへの理解の深まりと、オンラインファンベースを増やしたいといったティーンの関心を反映させるように進化している。

より大きな物語として、Aradia(アラディア)とDelilah(デライラ)という2人の女王が争うリアリティショーが関与する。女王はそれぞれInstagramのアカウントを持っており、策略を用いて支配を目論んでいる。同社はこの物語が長期的にどのように展開していくのかについて多くを語っていないが、新しい服や新しい「グラマー」(キャラクターの周りにつく表現エフェクト)に必要な材料を得るための毎日のミッションやクエストの他、ゲームが成長するにつれ、毎週・毎月開催されるコンテストがあるそうだ。

画像クレジット:WildWorks

Animal Jam、そしてRobloxといった他の仮想世界のゲームと同様に、プレイヤーは協力してゲームを進めていくようになっている。自分1人では完了できないタスクがあるので、やり取りやチャットをする必要が出てくる。またゲームが進むと、2人の女王が率いるファクションに参加できるようになる。

Fer.alで注目すべきその他の点は、ゲーム好きの女子が主な対象となっていることだろう。

ステイシー氏は「この年齢幅の男の子を除外しているつもりはまったくありません」と説明した。「ですがAnimal Jamに最もハマっていたプレイヤーのおよそ80%は女の子たちであると認識しています。Animal Jamではそのことに大きく身を乗り出しました。多くの女性科学者と連携して、女子がSTEM(ステム)教育に興味を持てる要因を探っているのです。なので初めからいるオーディエンスの多くはそこからであることもわかっています」。

「そして私たちが気付いたニーズは、思春期の男の子にとって共感できるオンラインコミュニティを見つけるのは難しくないですが、女の子たちが同じものを見つけるのは非常に困難であるということです。ですのでこのコミュニティ、ルールからビジュアルにいたるあらゆるものを作る上でその点についてはとても意識しました。何を求め、何が良いのかダメなのか、参考にするのは主に女の子の意見です」と加えている。

画像クレジット:WildWorks

Animal Jamのファンベースに基づいて作られたという事実は、Fer.alが順調にスタートするための利点となっている。Animal Jamには毎月250万人から400万人のアクティブユーザーがいる。登録アカウントは合計1億3500万に及んでいる。登録ユーザー数とアクティブユーザー数の差は2010年10月のローンチからAnimal Jamを卒業した子供たちの数を示しているが、ステイシー氏は同ゲームの利用がピーク時より下がっていることも認めている。

だが、WildWorksの次の一手に関心を寄せる声も多い。

Fer.alのウェブサイトがローンチした最初の1週間で、7万5000人の子供たちがベータ版テスターになるために登録した。テスターは2020年4月から徐々にベータ版を紹介されが、当初はデスクトップのみであった。現在ベータ版にはローンチ前で毎日1万弱のアクティブユーザーがいる。またApple App StoreやGoogle Playでは10万人以上がリリース前登録をしている。

Fer.alはAnimal Jamと同じく、フリーミアムのゲームなのだが、Animal Jamの収益のおよそ80%がサブスクリプションからであるのに対し、Fer.alでは、マネタイズにシーズンパスモデルを採用する。シーズンパスは10~20ドル(約1100~ 2200円)でアプリ内課金で購入でき、そのシーズン専用の独自アイテムやエクスペリエンスが利用できる。年間およそ7シーズンとなる予定だ。

画像クレジット:WildWorks

同社はベータ版テストの後半になるまでシーズンパスは提供していなかったが、ステイシー氏によるとコンバージョンレートは「デスクトップでは期待の上をいっていた」そうだ。モバイルのコンバージョンレートもデスクトップ同様高いままであれば、ユーザー獲得への投資を開始することも考えられると言及していた。また同社は、すべてが順調であれば、将来的に広告とグッズ商品化も検討する可能性もある。

ソルトレイクシティに本社を構えるWildWorks(旧Smart Bomb Interactive)は、Signal Peak Ventures(シグナルピークベンチャーズ)がそのほとんどを所有しており、長い年月をかけて2000万ドル(約22憶円)以上投資している。同社は2008年に独自のIPに重点を置くようにシフトし、Animal Jamなどのゲームを発表できるようになった。

過去数年、WildWorksの収益は2000万ドル(約22憶円)以上3000万ドル(約33憶円)未満で、Animal JamとTag with Ryan(タグ・ウィズ・ライアン)がその多くを占めている。Fer.alがAnimal Jamを卒業し、より高学年向けのゲームを求める子供たちを無事獲得することができたら、その収益ベースは大幅に上昇する可能性があるだろう。

Fer.alは米国時間3月8日に、全世界で公開され、まずは英語版のみとなる。PC、Mac、iOS、Androidでプレイ可能だ。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:WildWorksAnimal Jam10代Z世代Fer.al

画像クレジット:WildWorks

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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