「ゲームクリエイターのマルチバース」を構築するManticore Gamesは約110億円調達

今ほどゲーム分野が熱い時期はなかった。既存の巨大企業よりも早く潮流の変化に乗れる新星に大枚を投じようと構える投資家たちは、これまでになく強い期待を寄せている。

サンフランシスコ湾岸地区を拠点とするManticore Games(マンティコア・ゲームズ)は、市場の勢いに乗って構築されたかに見える二層構造のゲーミングプラットフォームの1つだ。同スタートアップはTechCrunchに、1億ドル(約110億円)のシリーズC投資ラウンドをクローズしたと語った。これで総調達額で1億600万ドル(約177億円)に達した。このラウンドは、XNが主導しソフトバンク、LVP、さらに既存の投資者であるBenchmark、Bitkraft、Correlation Ventures、Epic Gamesが参加している。

2019年9月にシリーズBラウンドをクローズしたとき、投資家たちはRoblox(ロブロックス)とゲーム分野を以前よりも真剣に注目するようになったが、パンデミックの襲撃により、ゲーム市場への彼らの期待は本格的に膨らんだ。「ゲームは今や正真正銘のスーパーカテゴリーです」とCEOのFrederic Descamps(フレデリック・デスキャンプス)氏はTechCrunchに言った。

ManticoreのCore(コア)ゲームプラットフォームの考え方は、Robloxのものによく似ているが、Robloxを卒業すると見られる13歳以上のユーザーに向けたゲームとクリエイターのためのプラットフォームを急速に拡大しようと考えている点が大きく違っている。課題は、Robloxが自身の野心を拡大するよりも早く、またこのほど12億ドル(約1330億円)の評価額で資金調達を果たしたRec Room(レクルーム)のように、ベンチャー投資家の支援を受けて同じレースで競い合うゲームスタートアップに先取りされる前に、そのユーザー層を惹きつけることにある。

他のプレイヤーと同様、Manticoreはゲームを探せるプラットフォームをゲームエンジンに直接埋め込んでいる。同社はエンジン技術を一から開発したわけではない。Unreal Engine(アンリアル・エンジン)を開発し、2020年Manticoreに1500万ドル(約16億6000万円)を投資したEpic Games(エピック・ゲームズ)と密接に協働している。

Coreプラットフォームが最も力を入れているのは、本当の意味でのドラッグ・アンド・ドロップでゲーム制作が行える場をクリエイターに提供することであり、目玉は「リミックス」だ。すでに作られている環境をピックアップし、すでにレンダリングされた3Dアセットを利用し、ゲームモードを選択してウェブでパブリッシュできるというものだ。新しいメカニズムやアセットを導入したい場合は、それなりの技術的ノウハウが必要になるものの、そのハードルを下げて新人クリエイターを招き入れ、彼らがこのプラットフォームとともに成長できるようにしたいとManticoreのチームは考えている。同社の最大の売りは、エンジンの柔軟性にある。大手アプリストアでは認められないような、独自のメカニズムやユニークな収益化方式を作り出せる可能性を目当てに、クリエイターたちがこのプラットフォームに集まることを彼らは期待している。

「クリエイターは、独自スタイルのアプリ内課金方法を実装できます。そこで私たちが望んでいるのは、次なるバトルパスに相当するイノベーションがここから生まれることです」と、共同創設者Jordan Mynard(ジョーダン・メイナード)氏はTechCrunchに話した。

これにはさらにコストがかかる。ゲームクリエイターが受け取るのは、自分のゲームの収益の50パーセント。もっと稼げる可能性があっても、それは手数料に取り込まれてプラットフォームに送られる。Manticoreは、アプリストアに直接出すことよりも、こちらの形に依存している。それでも、この収益分割方式は、Robloxなどのプラットフォームで得られる収入と比べて、ずっとクリエイターに優しい。

クロスプラットフォーム型の二次的ゲームプラットフォームの構築は、数々の難題を同社に突きつけている。ここに接続するPC以外のプラットフォームでは、レベニューシェアの分配金の処理を行わなければならない。だが一部にはどうしてもこれを嫌うハードウェアがある。特に、ソニーがプレイステーションで強くこだわっている部分だ。こうしたプラットフォームが長期的に成功していくには、ますます独立性に依存せざるを得なくなる。コンソールとモバイルのエコシステムでは、そんなことが成り立つとはとうてい思えない。

関連記事
VCたちが新たなRobloxを探す中、VRプラットフォームのRec Roomが約110億円調達
製品がまだないのに投資家が殺到、多様な派生ゲーム体験を作れるManticore Games

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Manticore GamesRobloxプラットフォーム資金調達

原文へ

(文:Lucas Matney、翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。