「タッチジェネレーション」が求めるコンシューマーテクノロジー

編集部注本稿執筆者のJosh ElmanはGreylock Partnersのパートナー職にある。@joshelmanのアカウントでTwitterでも活躍中。

10年前、当時のヤングアダルト層(ティーンエイジ後半の層)に、ソーシャルネットワークというものが広がり始めた。Friendster、Myspaceなどが出てきて、そして結局はFacebookが標準的サービスとしての地位を掴むこととなった。他にもいろいろなソーシャル系サービスが出てきて、今の時代はもはやそうしたサービス抜きで語ることはできなくなっている。

これは現在でも同じことが言えるだろう。すなわちこれから10年後に、時代がどのような特徴を示すようになるのかを知るには、今の若者世代の間にどういう状況が生まれつつあるのかを見ることが大切だ。その若者世代は、これまでの大人世代とはずいぶんと異なった形で成長してきた。たとえば、生まれながらに、モバイルデバイスによって世界は繋がっていた。

ベビーブーマー世代が「テレビ」世代としての特徴を持ち、またその前の世代が「車」や(初期の)「電化製品」で特徴を示すように、現在の若者世代は「インターネット」、「モバイル」、あるいは「ソーシャルメディア」というものを、世代の特徴として持つことになる。そうしたものが「最初から」存在していた初めての世代なのだ。

10年前と現世代を比較するだけでも、テクノロジー面ではさまざまな変化を指摘することができる。そうした変化からも現代の若者たちの特徴を垣間見ることができよう。

  • 現在の若者世代は、デスクトップやノートパソコンなどよりも、携帯電話ないしスマートフォンに親しんでいる。
  • 最近の調査によると、ティーンエイジャーの65%が、車よりもスマートフォンの方が大事だと考えている。
  • インタフェースというものも大きく変化した。現代のインタフェースには「キーボードショートカット」や「保存」、ないし「クリック」といった概念も存在しなくなってきている。代わりに用いられるようになったのは「ジェスチャー」や「シェア」(共有)そして「タップ」といったものだ。
  • 常に繋がっている(ネットワークにも繋がっているし、個々人もソーシャルネットワーク経由で繋がっている)ことにより、プライバシーの概念も大きく変容している。

この時代の若者たちを「タッチジェネレーション」(Generation Touch)略してGenTと名づけておこう。GenTにとってのソフトウェアやテック関連プロダクトというのは以前の世代とは大きく異なるものとなっている。昔々の若者は、父親の車を借り出して、友達と一緒にドライブするようなことに「楽しみ」を感じていた。しかしGenTにとって「楽しみ」とは、ネットワークやデバイスを通して得られるものなのだ。ネットワーク系プロダクトは、すべてそうした方向性に則って進化しつつある。

たとえばすべて「タッチ」で動作するというのも、こうした「方向性」のひとつだ。また重要なのは「プライバシー」ではなく、情報の「共有」により生まれる「繋がり」こそが重要であるというのも、時代の目指す「方向性」だ。発信した情報に即座に反応しあうことにより、繋がりを強化していく。こうしたことが、他の世代からはなかなか理解し難い行動指針となっている。

アプリケーションないしデバイスが「タッチ」で動作するかどうかというのは細かい話に思えるかもしれない。しかし「タッチ」は非常に重要な要素だ。というのは、マウスやキーボードによって現実を「比喩的」に捉えるのとは異り、より直感的な振る舞いに繋がっているという点で大きな意味を持つ。人気を集めているアプリケーションは、いずれも「タッチ」動作を非常に有効に活用しているものばかりだ。

「タッチ」は、マウスやキーボードよりも遥かに直感的な操作スタイルを持ち込むもの

VineやInstagramは画面にタッチしてビデオキャプチャを開始して、そしてタッチしている間だけ撮影が続く。指を話すとそこで録画はいったん停止して、再タッチで続きを撮ることができるという仕組みになっている。Snapchatは指定制限時間以内で、画面をタップしている間だけ写真が表示される。Tinderでは右スワイプ(相手に興味があるという意思表示になる)することで、相手から何の反応もないうちに、ある意味で「触れ合う」ことになるわけだ。ここから出てきたものか、実世界でも「右スワイプしておくね」などという言葉を耳にしたことがある。実世界と直接つながる動作でソフトウェアを操作するようになり、以前とは異なる「繋がり」を生み出すようになっているわけだ。スマートフォンやタブレット用のプロダクトを開発しようと考えているのであれば、操作方法がどのような「繋がり」を生み出すのかを十分に考慮する必要がある。

また、GenTは「常に繋がった」世界にいるにも関わらず(それ以前の世代には当然の感情だったといえるだろうが)「世界から切り離されている」感覚を持つことがある。そこで「本物の繋がり」をもたらして「ちゃんとした会話」ができるプロダクトにも人気が集まることとなっている。

GenTにとっては、ソーシャルネットワークが所与のものとして存在し、そのネットワークを通じて、大勢と情報共有するというのは非常に簡単に行えるようになっている。ただ、そうした情報の共有が「コミュニケーション」の一環としてではなく、「人気投票」のような具合になってしまってもいるのだ。そこで、そうした人気投票風の情報共有スタイルから離れて、プライベートな、本当に有益な情報を伝え合いたいというニーズも出てきている。これは「ソーシャル」の次に出てくる流れだ。お互いに繋がりを保ちつつ、しかし膨大なノイズに埋もれない真のコミュニケーションを実現したいという動きになっている。

こうした流れに応じた動きは、いままさに始まりつつあると言って良いだろう。数多くの企業がサービスの開発に取り組んでいる。たとえばMessageMeKikViberLineWhatsAppSnapchatTango、そしてまたWechatなどが流行していることも、新しいスタイルのコミュニケーションツールが求められていることの証拠となるだろう。求められているのは即時性、プライベートな繋がり、そして内容のあるコミュニケーションといったものだ。もちろん、旧来の「直接会って会話する」ことの代替となるだけでなく、スタンプや自分撮り写真、ビデオなど、最新の技術を用いたさまざまな手段によるコミュニケーションを実装するのも大切なことだ。

FacebookやTwitterは人気だが、新たな「関係性」が求められる中でさらなる「工夫」が求められている

ちなみに、新しい世代は、少し前には大いに利用されていたツール類を全く使わなくなっているのも面白い(普通のことかもしれないが)。たとえば電子メールやインスタントメッセージの利用頻度は大いに下がった。また有料であることからSMSも忌避される傾向にある。電話による会話もあまりしなくなっている様子。新しいスマートフォンを手に入れると、まず行うのは電話番号の登録ではなく、アプリケーションをダウンロードしてアカウント登録をすることだ。8年だか9年ほど前に、大学からメールアドレスをもらって、いそいそとFacebookに登録していた様子が思い出される。

メールやIMアカウントを中心に位置づけていたYahoo、AOL、Microsoft/Windows Live、あるいはGoogle/Gmailさえも、GenTによる利用頻度は大いに下がっている。これからも利用者を拡大していきたいと考えるのであれば、「繋がり」を提供する新たな方式を構築する必要があるのだろう。また、新たなエクスペリエンスを実現するジェスチャーも含めて考えていく必要がある。現在人気を集めているFacebookやTwitterにしても油断はできない。この面では、ご存知かどうかはわからないがTencentが良い例になるだろう。Facebook同様に時価総額で1000億ドルを誇る人気企業だ。従来は中国国内におけるウェブ系コミュニケーションサービスをメインとしていたが、Wechatを開発してモバイル環境における新たな展開を狙っている。この試みはかなりの成功をおさめており、現在は世界中に4億の利用者を抱えるまでになっている。

投資家として見るならば、現在の動きは非常に興味深いものだ。従来から提供されていたエクスペリエンスも、モバイルの世界でまた新しい動きをみせてくれそうだ。GenTのニーズや欲求が、今後もさまざまな面における展開のベースを担うことになるのだろう。

情報開示:Greylock PartnersのポートフォリオにはFacebook、Instagram、そしてMessageMeが含まれている。またJoshは以前FacebookおよびTwitterで働いていた経験を持つ。

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(翻訳:Maeda, H


投稿者:

TechCrunch Japan

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