「ヘッドレス」のeコマースプラットフォームを手がけるSaleorがシードラウンドで約2.7億円調達

ポーランドと米国を拠点とするスタートアップ企業のSaleor(セーラー)は、開発者がより優れたオンラインショッピング体験を簡単に構築できる「ヘッドレス」eコマースプラットフォームを提供している。同社はシードラウンドで250万ドル(約2億7000万円)を調達した。

今回のラウンドは、ベルリンのCherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)が主導し、さまざまなエンジェル投資家が参加。その中には、Vercel(バーセル)のCEOでNext.js(ネクスト・ジェイエス)の発明者であるGuillermo Rauch(ギレルモ・ローチ)氏や、Contentful(コンテントフル)の元CMOだったChris Schagen(クリス・スカーゲン)氏、Lookout(ルックアウト)の共同創業者Kevin Mahaffey(ケビン・マハフィー)氏などが名を連ねている。

Saleorでは今回調達した資金を、間もなくローンチするクラウド製品や、フロントエンドエンジニア向けのGraphQL(グラフQL) APIなど、同社のヘッドレスeコマースプラットフォームのさらなる開発に投資するという。

Saleorの設立は2020年だが、その歴史は2013年、創業者のMirek Mencel(ミレク・メンセル)氏とPatryk Zawadzki(パトリック・ザワツキ)氏が、彼らの在籍していたエージェンシーの業務とは別に製品を生み出した時にまで遡る。Saleorは「ヘッドレス」アプローチを採用した「APIファースト」のeコマースプラットフォームと説明されている。これは、開発者がユーザーのために価値を生み出すフロントエンドに集中できるよう、プラットフォームがバックエンドの面倒な作業を行うというものだ。

「Saleorは、私たちのMirumee Softwareにおける代行業務の中で、よりモジュール化された、柔軟でスケーラブルなeコマースソフトウェアを必要としていたことから生まれました」と、Saleorの共同設立者であるミレク・メンセル氏は振り返る。「大規模なブランド向けのソリューションの多くは、ベンダーロックインや、新技術の採用の遅れ、商用認証プログラムなど、独自仕様による障害を内包していました。その一方で、オープンソースでは、私たちはMagento(マジェント)の開発環境が気に入らず、他の代替となる製品ではスケールアップが見込めないと感じていました」。

そこでSaleorは、既存の独自仕様のソフトウェアよりも優れたスケーラビリティと拡張性を実現する「技術的な卓越性と品質」に注力したオープンソースのプラットフォームとして構想された。当初はメンセル氏とザワツキ氏のエージェンシーが社内で使用していたプロダクトが、2016年には世界中の開発者に使用されるプラットフォームへと成長した。

「そこで止めることもできたのですが、しかし、私たちは、各ブランドがより革新的なフロントエンド体験を求めているのを目にしました」とメンセル氏はいう。「Saleorのコアをプレゼンテーション層と切り離せば、革命的なフロントエンドへの道が拓けることは明白でした。困難はありましたが、私たちはオープンソースの優れたeコマースプラットフォームだったものを解体し、APIファーストで再構築しました」。

当初からヘッドレスという信念を持っていた2人は、RESTよりもGraphQLの方が「パワー、精度、開発者の満足度が高い」ということにも気付いた。多くの開発者は「たくさんのことを上手くやるよりも、いくつかのことを見事に成し遂げる」方を好むと考え、彼らはSaleorにGraphQL APIのみを採用した。「私たちは一度も振り返ったことがありません」と、メンセル氏は語っている。

当初の6人だったチームは、2018年にSaleor 2.0をリリースした。現在は20人に増えているSaleorは、メンセル氏によると、オープンソース、GraphQL、そして「フェアプライス」のクラウドによる開発者ファーストのコマースというシンプルなビジョンを持っており、Cherry Venturesはこのビジョンに明確に賛同しているという。

Cherry Venturesの創業パートナーであるFilip Dames(フィリップ・デイムス)氏は「私たちは今、開発者がヘッドレスコマースソリューションに切り替えることで、より柔軟で差別化されたショッピング体験を可能にするパラダイムシフトを目の当たりにしています」と語っている。「ミレク、パトリック、そして彼らのチームは、この開発の最前線にいて、革新的なマーチャントが消費者のあらゆるタッチポイントやデバイスに対応した最先端のショッピング体験を構築することを可能にするでしょう」。

「私たちは、Saleorのコアチームの規模を拡大し、2021年立ち上げる予定のSaleor Cloudの構築を加速させるため、ベンチャーの支援を受けることを決めました」と、メンセル氏は付け加えた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Saleorネットショッピング資金調達

画像クレジット:Saleor

原文へ

(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。