「ヘッドレス」eコマースプラットフォームFabricが早くもシリーズAで約45億円調達

FabricはGNCやABC Carpet、Homeなどの企業にeコマース機能を提供している。同社はこのほど、シリーズAで4300万ドル(約45億円)を調達した。

Fabricはこの発表からわずか4カ月前に、950万ドル(約9億9000万円)のシードラウンドを発表している。CEOのFaisal Masud(ファイサル・マスウド)氏によると、ここまで早く資金を調達するつもりはなかったが、成長と投資家の関心を見るかぎり「成長を遅らせるよりは、今行けるところまで行く」という積極路線を選ばざるをえなかったという。

というわけで、本誌のこの記事もある。ラウンドをリードしたのはNorwest Venture Partnersで、NorwestのScott Beechuk(スコット・ビーチク)氏がFabricの取締役会に加わる。他にRedpoint VenturesとSierra Venturesも投資に参加した。

ビーチク氏の説明によると「Fabricはドラッグ&ドロップで簡単に構成できて、しかもリッチでモダンな顧客体験を大きな開発チームがなくても作れる唯一のヘッドレスコマースプラットフォームだ。しかし最も重要なのは、CEOのファイサル(・マスウド)氏と共同創業者のRyan Bartley(ライアン・バートリー)氏が、AmazonやeBay、Staples、Grouponなどで経験を積んだeコマースの優秀なベテランであることだ。彼らは顧客の気持ちがよくわかり、既存のプロダクトよりもはるかに優れたプロダクトで、eコマースの市場を変革することができる」。

eコマースはパンデミックの間に急成長し、ネットショップを持たない「ヘッドレス」なプラットフォームも増えた。マスウド氏のブログで説明されているが、ヘッドレスではショッピング体験のフロントエンド(ネット店舗)とバックエンド(ショップの経営)が別になる。

しかしマスウド氏によると「今日の市場ではギャップがまだ大きい」という。D2Cであっても、B2Bであっても、特に大きな成長ブランドをサポートするのが難しい、とマスウド氏は語る。

画像クレジット:Fabric

「よく言うことだが、私たちを高速道路だとすると、Shopify PlusはオンランプでSalesforce Commerce Cloudがオフランプとなる。つまりFabricのサービスが合う企業は『Shopify Plusという服は小さすぎてもう合わないが、Salesforce Commerce Cloudはまだ贅沢すぎる』というレベルの企業となる」とマスウド氏はいう。

そんな顧客にサービスを提供するためにFabricには、既存のeコマースツールと統合して使うアプリケーションが32ある。それらのアプリケーションは、顧客体験やプロダクトの情報、注文の管理など、さまざまなタスクを引き受ける。

マスウド氏の主張によると、ヘッドレスのeコマースプラットフォームを自称しているプロダクトの多くは、粗末な作りのサイトであるため、ヘッドレスと自称しているだけだという。

「それらが作られたのは2007年ごろで、柔軟性、自由度がなく、モジュール構造になってない」とマスウド氏はいう。そんな古いプラットフォームに大きな顧客を乗せようとすると工事には18カ月かかるが、Fabricなら数週間で済むという。

また同社によると、顧客はAmazonなど既存のマーケットプレースに出店していてもよいという。しかし以前、AmazonベーシックとAmazonウェアハウスのディレクターを務めていたマスウド氏によると、彼らだって独自に差別化されたショッピング体験を構築した方がいいし、顧客との直接的な関係を築くべきだという。

「私はAmazonベーシック作りましたが、Fabricはそれぞれの顧客のためのAmazonベーシックです。だからこそ、しっかりと差別化してほしいし、自分のマーケットプレイスとしての道を進み、顧客との直接的なビジネスを築いてほしい」とマスウド氏は語る。

Fabricは今回の資金で、営業とマーケティングのチームを拡大し、プロダクトの改良も継続したいという。現在、マスウド氏は大企業や小企業にはあまり関心がなく、むしろ「副操縦士のようなアプリケーションを提供して成長を一層支援できる」ような中規模の企業に関心があり、オーダーのロジスティクスやフルフィルメントの部分を補強するアプリケーションを提供などを考えているという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Fabric資金調達eコマース

画像クレジット:Christina Reichl Photography/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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