「井口さん、Telepathyは本当に作れるんですか?」TechCrunch Japan編集長が自社イベントで切り込む

スタートアップに関する日本最大規模のイベント「TechCrunch Tokyo 2013」が11月11日から12日にかけて開催された。2日目のオープニングセッションに登場したのはメガネ型ウェアラブルデバイス「Telepathy One」を開発するベンチャー、Telepathy創業者の井口尊仁氏と、同社に投資したFirsthand Capital Managementの最高投資責任者であるKevin Landis氏だ。

Telepathyというデバイスが実現する世界観について、そしてウェアラブルデバイスの未来について、TechCrunch Japanの西村賢編集長が切り込んだ。

Telepathy Oneは「Google Glass対抗」としても注目を集めるウェアラブルデバイスで、井口氏いわく、コミュニケーションにフォーカスした設計が特徴とのこと。言ってみれば「コミュニケーショントースター」というべき存在なのだという。「トースターというのはそれを見たときに、何に使うものなんだろう?と迷う人がいない」と井口氏は語った。Telepathyもコミュニケーションというシンプルな目的のために使われるデバイスになるようだ。

井口氏は現在のスマートフォンについて次のような課題を感じている。「スマホの大部分はコミュニケーションやシェアのために使われているが、たとえばFacebookで写真を撮って、アップロードして、シェアするのに12〜13ステップくらいかかっている」。だがTelepathyを使えば、これらのステップを限りなくゼロに近づけられるという。

「何かを伝えて、わかりあう。そういう日々行っていることをゼロステップに近づけて、まさにテレパシーのような体験を作りたい」。Telepathyはこうした井口氏の思想が盛り込まれた製品だそうだ。

ただし、その製品自体のスペックについては多くが語られることはなかった。常に身につけてネットに常時接続するにはバッテリの課題があるが、それについては「どのようにバッテリをマネージメントするか頑張っているところ」と話すにとどめた。Telepathyを操作するUIはどのようなものになるかを聞かれると、「たくさん話したいが広報から止められている(笑)」。

アイウェア型デバイスは腕時計とは違う。メガネをかける習慣のない人が朝起きて、それを装着するのはかなりのハードルではないだろうか。

井口氏は「それを考えると夜も眠れないし、朝も起きれない」と漏らした。「モーニングプロブレムとイブニングプロブレムという2つの課題がある。モーニングは朝それを持って出掛けてもらうこと。イブニングは電源をチャージしてもらうこと。それをクリアするためにはデザインもテクノロジーもアプリもUIも全部優れていないといけない。それを考えるとなかなか大変な開発だ」

途方もないチャレンジのように感じられる。西村編集長も堪らず聞いた。「井口さん、これ本当に作れるんですか?いつ出るんですか?」

井口氏はこう切り返した。

「我々はスタートアップなので誰もが容易にできることにチャレンジする必要はないし、そこにイノベーションはない。開発が大変でよかった。厳しいチャレンジに挑戦することができてよかった。」

決して強がりではないようだ。「ウェアラブルデバイスは誰にとっても大変なものだ。キラーアプリとそれを気持ちよく使えるようにするUI、バッテリコントロール、アプリを動かすチップセット、ディスプレイの機能、それらを含めて決して簡単ではない。でも簡単ではないからこそやっている」と言い切る。

そんな井口氏に投資するKevin Landis氏は、当然ウェアラブルデバイスの未来に大きな可能性を感じている。「携帯電話がスマートフォンに移り変わり、いまやスマートフォンは電話以上の存在になった。この薄い板のようなデバイスで何でもできる。ウェアラブルデバイスはその次の拡張になるだろう」(Kevin)。

Kevin氏はすでに世に出ているウェアラブルデバイスのうち、FitbitやJAWBONEも成功するとみている。「IPOもうまくいくだろう。2014年から15年にはできる」と予想した。その理由は彼らが「健康」という1つのユースケースに絞った上で、大きな市場を狙っているからだという。

「同じようにTelepathyもフォーカスしている。Facetimeを使うときに、お互いがデバイスを覗きこまなくても済むようになり、体験を共有し、より感情をコミュニケーションに入れられる。人が製品を意識しなくなり、製品が消える。それがもっとも美しい姿だ。」(Kevin)

しかし、何でもできるスマートフォンはかなり汎用的な機器として成功したのではないか? 西村編集長は聞いた。

そんなことはないと井口氏は言う。「たぶん皆さん、相当記憶の彼方に忘れていると思うが、iPhoneの最初のキラーアプリはiPodだった。あれだってウェアラブルデバイスだ。それまでデジタルとつながっていなかったミュージックプレイヤーをネットにつなぎ、1000曲をポケットに入れた。そこに音楽をデリバリーするiTunes。それがエコシステムの土台になっている。我々もそういうものを作ろうとしている。ウェアする価値のある、デイリーに必要な、かつウェアラブルじゃないとできないような体験性を、まさにiPodが音楽の聴き方を変えたような形で提供したい」

ところで2013年に入って腕時計型デバイスが出揃ってきた。SamsungやSonyが製品を発売し、Appleも「iWatch」なるものを開発しているとされる。なぜTelepathyは腕時計型ではなく、アイウェア型なのだろうか。

「大きなチャレンジだが、ウェアラブルに最適化された最高なUIを実現したいからだ。Google Glassもそこに大きな予算と高いR&D能力をつぎ込んでいる。コンピュータが使われる新しいスタイル、OS、アプリケーション、エコシステムを、一度にパラダイムシフトとしてやれるチャンスが、いま目の前にある」(井口氏)

もう一度聞きたい。いつ出るのだろうかーー。

井口氏は答えた。「2015年になると競争のチャンスがなくなる。2014年に届けたい。まずは米国のマーケットに向けて出す」。


投稿者:

TechCrunch Japan

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