「人財のための財務諸表」を目指し日本に本社機能を移転中、シンガポール発の人事分析ツール「パナリット」が3.3億円調達

「人財のための財務諸表」を目指し日本に本社機能を移転中、シンガポール発の人事分析ツール「パナリット」が約3.3億円の資金調達

人事分析ツール「パナリット」を手がけるシンガポール発のPanalytは7月28日、シードラウンドにおいて約3億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、D4V、千葉道場ファンド、Headline Asia、坂部雅之氏をはじめとする複数の個人投資家。また日本市場での成長性をかんがみ、日本において新設したパナリット・グループを親会社とする持株会社体制への移行完了を2021年8月に予定している。

「人財のための財務諸表」を目指し日本に本社機能を移転中、シンガポール発の人事分析ツール「パナリット」が約3.3億円の資金調達

パナリットは現在までに7カ国で展開しており、組織の意思決定における人事データの有効活用に対して、需給ギャップならびに成長余地が最も大きい国は日本だと判断したという。ここ数年日本も欧米諸国に追随する形で人事データ活用に対する機運が高まっているものの、人材およびインフラ投資の両面で欧米諸国と日本とで隔たりがあるとしている。

需要の急拡大

  • 人事部門のデジタルリテラシー向上:人事業務を効率化するHRテクノロジーツールの浸透が後押し
  • リモートワークマネジメントへの適応:リモートワークマネジメント体制への急速な適応を余儀なくされた企業において、メンバーの生産性やエンゲージメントの状況把握や可視化が困難に
  • 資本市場からの要請:2020年8月にSEC(米国証券取引委員会)が人的資本の可視化義務付けを発表したことから、日本でも人的資本や指標の整備・可視化に対する関心が増大

供給側の課題

    • 欧米企業:ある程度の従業員規模になると、ピープルアナリストなど人事専属データチームを組成。必要なデータ分析インフラへの投資も行った上で、経営や現場と三位一体となって組織・人事課題を解決していく体制を確立
    • 日本企業:人事部門に限らずデータ人材自体がまだ希少。従来のデータ分析基盤に必要な投資を正当化できるような成功事例も少ないため、体制面の強化はあまり進展していない

その中でパナリットは、「Small Start, Quick Win」(小さく始め、成果を素早く積み重ねる)をコンセプトとして、従来の手段よりも低価・低負荷・短期間で人事データ活用に着手できることから、人事部だけでなく経営層や現場の事業責任者も活用するようになっており、同社売上の大部分を日本の顧客企業が占めているという。そのため今後は、日本企業に向けた開発や導入支援体制を一層強化できるよう、日本に本社機能を移転するとともに、需給ギャップの解消を目指すとしている。

なお日本への本社機能移転は、選択と集中のためであり、日本国外市場からの完全撤退を意味するものではないという。人事におけるデータ分析業務の効率化や、先進的な分析アプローチの実装ニーズは海外でも十分存在するため、事業・財務・組織基盤が整い次第、国外にも積極展開を視野に入れている。

パナリットは、企業で人材マネジメントに関わるあらゆる人(人事・経営・現場の管理職)が、必要な時に必要なデータにすぐにアクセス可能にすることで、経験や勘だけに頼らないより良い組織の意思決定を実現できるよう、人事分析ツールを開発・提供している。経営資源のヒト・モノ・カネのうち、カネ領域の財務諸表同様、人事データの処理・可視化・実用化に関わる技術やノウハウを活かし、ヒト領域における「人財のための財務諸表」となることを目指しているそうだ。

「人財のための財務諸表」を目指し日本に本社機能を移転中、シンガポール発の人事分析ツール「パナリット」が約3.3億円の資金調達

この「データをもとにより良い意思決定をサポート・効率化する」ツールやフレームワークは、財務領域における財務諸表に限らず、営業領域のSFAやマーケティング領域のCRMなど、人事以外の領域ではすでに浸透し始めている。人事領域ではここ数年で、各種人事業務の効率化を目的とするSaaSが多数誕生しており、データをデジタルに収集・管理する土台が整い始めたことも後押しとなり、「人事領域でもより良い意思決定を効率化する」ニーズが他領域を追随するように高まっているとした。

「人財のための財務諸表」を目指し日本に本社機能を移転中、シンガポール発の人事分析ツール「パナリット」が約3.3億円の資金調達

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カテゴリー:HRテック
タグ:Panalyt(企業・サービス)資金調達(用語)日本(国・地域)

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TechCrunch Japan

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