「動画版ストリートビュー」を目指すHappaningの技術はマルチ視点ビデオで現実世界を記録し誤情報も防ぐ

スタートアップHappaningは、同じ出来事を異なる視点から見られるようにすることで、ビデオをより没頭的な体験にしようとしている。共同ファウンダーでCEOのAndrew Eniwumide(アンドリュー・エニウミド)氏が好む表現を使うなら「Googleストリートビュー、ただしビデオ版」だ。同社はそのユニークのテクノロジーが提供するマルチ視点ビデオは、ビデオに新たなユーザー体験をもたらすだけではなく、誤情報やディープフェイクなどの問題を解決する可能性をもっていると信じている。同じシーンを別の視点から撮影した検証済み映像は、ビデオ編集によって人を欺こうとする動画のファクトチェックにも使えるからだ。

しかし、その崇高な目標はさらに先を見ている。

米国時間9月22日、TechCrunch Disrup 2021のスタートアップバトルフィールドの「ワイルドカード」枠で公開されたHappaningのアーリーベータ版は、まずマルチ視点ビデオのコンセプトを紹介する。同社はこれを「ViiVid」テクノロジーとして商標登録している。これはユーザーが同社のモバイルアプリを使ってビデオコンテンツを作成し、同じ場所同じ時間に撮影された別のビデオと組み合わせるシステムだ。

ビデオの検証にブロックチェーン技術は使われていないが、コンセプトには類似点がある。Happaningは数多くの人々がmaster ledger(元帳)のようなものに情報を書き込むブロックチェーンの分散ネットワークのアイデアを借用している。ただしHappaningでは、同じ情報をすべて持っているノードは存在しない、ある人のビデオは誰のビデオとも異なるからだ。しかし、組み合わさることで、ある時間と場所で起きた真実をより詳しく見せることができる。

同社は複数ビデオストリームの同期、異なるビデオ視点間をスワイプで移動するユーザー体験など、自社テクノロジーに関係するコンセプトの特許を、チームの拠点がある英国および世界知的所有権機関(WIPO)で取得している。

このテクノロジーの最初の使用事例は、結婚式、コンサート、スポーツイベント、抗議運動、デモ行進、そのた大勢の人の集まる実世界イベントの記録だ。Happanningに記録した後は、同じイベントを異なる角度や視点かから撮影したビデオをタップして見比べることができる。例えばコンサートで後列からステージを見下ろしているビデオから前列のビデオに切り替えるところを想像して欲しい。

エニウミド氏は、ビデオが悪用されたり誤解を招くために使用されている問題を解決するためにHappaningのアイデアを思いついたと話す。彼はこの問題がソーシャルメディア全体に広がっていることを指摘し、誤情報源によるFacebook投稿が、信用あるニュースサイトの記事よりも6倍多く反応を得ていることを示す記事を引用した。

「昨今、うそつきメディアの手法は日に日に高度化し、360度ビデオまで登場しています。しかし、同時に私たちは、それらが悪用されたり、不用意な編集をされたり、偏見やディープフェイクに使われている事実も見てきました」とエニウミド氏はいう。ビデオが改ざんされず、本当に宣言どおりの場所で起きたこと検証できるアプリがあれば役に立つと彼は考えた。

「私はこれをGoogleストリートビューのビデオバージョンと呼ぶのが好きです」とエニウミド氏は続ける。「つまり、あなたがビデオを撮ったのと同じ場所で誰かもビデオを撮っていたら、時間と場所、音声や視覚的なヒントを使って私たちが同期します」。

そして、見ている人は自分の行きたい方向にスワイプすれば、Google Street Viewで別方向に移動できるのと同じように、別の角度や視点からシーンを見ることができる。

公開時点では、ライブストリームビデオに焦点を合わせているが、今後は自分たちの知的財産を一種の技術標準として開発し、ビデオをエクスポートしたり別のところで公開する方法を提供したいとスタートアップは考えている。Happaningのデビューバージョンは、ほぼMVP(実用最小限の製品)か技術デモというべきもので、全体のユーザーインターフェースと体験は開発が完了したようには見えない。しかしアプリは無料で利用可能で、勢いがつけば、長期的にサブスクリプションプランも考えている。

エニウミド氏には、英国のエンジニアリング企業、Detica、BAE Systemsなどでソフトウェア開発者および主要コンサルタントとして12年以上働いた経験がある。その後同氏はCFOのLeslie Sagay(レスリー・サゲイ)氏、CMOのJoanna Steele(ジョアンナ・スティール)氏、CTOのColin Agbabiaka(コリン・アグバジアカ)氏、インフラストラクチャー担当のAJ Adesanya(アジ・アデサニャ)氏らを迎え入れた。ただしチームの大半は現時点で同社のフルタイム社員ではない。

Happaningはこれまでにプレシード資金21万9500ポンド(約3300万円)を調達前評価額300万ポンド(約4億5000万円)で調達しており、調達前評価額450万ポンド(約6億7000万円)でシード資金50万ポンド(約7500万円)を調達することを目標にしている。

画像クレジット:Happaning

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。