「合法」となった3Dプリント銃の設計図配布が、21州からの集団訴訟を受けた

銃器構成部品をプリントするために使用される3Dモデルの合法化が行われた直後、21の州が連邦政府に対して、その決定が危険であるだけでなく、多くの理由で違法であるという集団訴訟を行った。しかしこの訴訟の効果は、いわゆるストライサンド効果によって裏目に出る可能性があり、この議論の的である技術をさらに確固たるものにしてしまうかもしれない。

7月の初め、米国連邦政府が、銃火器部品の3Dモデルを配布していたCody Wilsonと彼の会社を相手取って行っていた訴訟を、取り下げたというニュースが流れた。銃の製造と販売方法に対しは依然として制限があるものの、3Dデータを含み部品をプリントできるようにするファイルそのものは、そうした制限の下には置かれないと決定されたようだ。

これは、より厳しい銃規制法を支持する人たちにとっては不愉快なニュースだった。明らかに21州の州司法長官たちはそのグループに属しているようだ。ワシントン州の司法長官であるBob Fergusonは、この特定のデータ形式を合法化する連邦判断を、阻止する訴訟を指揮すると発表した。

「これらのダウンロード可能な銃は登録されず、金属探知機を使っても検出が非常に難しく、年齢、精神的健康状態、または犯罪歴に関係なく誰でも入手できるものです。もしトランプ政権が私たちに安全を保証しないならば、私たち自身がそれを行ないます」と彼は本日(米国時間7月30日)発表したプレスリリースで語った

彼らは、政権は国防総省がその決定に署名する必要があり、議会はその30日前に通知を受ける必要があると主張している。この決定は(召喚および諮問の記録が残されておらず)「恣意的で気紛れに」行われたものであり、従って行政手続き法に照らして違法なものである。

また権利章典修正第10条は、州に対して銃器を規制する権利を与えている。したがって訴訟人たちは連邦判断はその権利を奪うものであるから違憲であると主張している。

こうした主張はみな、もっともなものであるが、 3Dプリント銃のデータが持つとされている危険性は誇張され過ぎており、またその配布に対して政府や、州もしくは連邦が行える規制能力も過大に評価されている。もしこの訴訟に勝てたとしても、3Dプリント銃に対してはほとんど、あるいは全く影響はないだろう。

大勢の州司法長官たちから、マイケル・ポンペオ国務長官とジェフ・セッションズ司法長官へ送られた手紙には「銃火器のデザインをインターネット上で配布することを禁止することで、公共の安全と国家のセキュリティが守られている現状は、維持されるべきです」とある。

だが極端に激しい議論と繊細な政治的な話題に陥る危険性があるが(この記事には万一のために「Opinion」タグを添えている)、現状はそのようなものではない。もし効果的な銃規制が目標であるならば、追求すべきより重要なステップがあると言わざるを得ない。既存の規制には多くの抜け穴がある、例えばガンショーでは未登録の銃器が売られているし、少し手を加えれば銃を完成させることのできる「8割完成部品」の売買は全く合法なのだ。

さらには、何かをインターネットから取り除こうとする試みは、すでに何度も何度も見られているように、失敗に終わっている。あまりにも頻繁に観察される現象なので、ストライサンド効果というニックネームがついているほどだ。違法コンテンツを入手する手段は数多くあり、それぞれ有効なものだ。おそらく自分用の銃をプリントすることに関心のある人間は、VPNやトレントサイトを使用することをためらわないだろう。それどころか、インターネットから何かを取り除こうとする協調的な努力は、その対象をネット上に残し続け、当局の悩みのタネとなる。忘却という機能はインターネットのDNAには存在しないのだ。

3Dモデルを違法にすることで検察官や捜査官がもっと忙しくなることは間違いないが、世界の悪党どもは別にこの訴訟の行末をハラハラしながら見守ってはいない。犯罪者、テロリスト、異国の敵などは、そもそも未登録の銃を入手したり作製したりするためにそのようなデータは必要としていないし、違法行為と認定したところで少なくともその行為を抑止することはできない。

今回の訴訟によって、Wilsonとその支援者たちの行動を縛り破産に追い込むことは可能だろう。だがその勝利はさほどのものではなく、誰の安全性も高めることがないことは確かだ。残念ながら、解き放たれた悪魔はもう箱に戻せないのだ。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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