「就活相談のるので、偉くなったらビール1杯ご馳走して下さい」――OB・OG訪問サービス「Matcher」が資金調達

OB・OG訪問を行いたい学生と社会人をつなげるサービス「Matcher」を提供するMatcherは2月20日、DGインキュベーションクルーズベンチャーズベンチャーユナイテッド、およびユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏のほか個人投資家1名を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は5300万円だ。

Matcherのメンバー。写真左より2番目が代表取締役の西川晃平氏

自分と同じ大学を卒業した社会人の先輩から、仕事の内容や社内の雰囲気を聞くOB・OG訪問。Matcherはそのプロセスを簡単にするだけなく、ボランティア精神で成り立つOB・OG訪問にギブアンドテイクの仕組みを加えたサービスだ。

学生がOB・OG訪問をしようとする場合、大学のキャリアセンターに行き、卒業生の個人情報が記載された紙の台帳を頼りにアポイントメントを取っていくという流れが一般的だ。ただ、この従来のシステムには2つの問題がある。

1つは、紙の台帳なので情報の更新頻度が低いことだ。例えば、記載されている電話番号が現在使われていなかったり、肝心の訪問相手がすでに転職してしまっていることもある。

2つ目の問題は、その紙の台帳には卒業生のデータしか記載されていないという点だ。大学が自校の卒業生の個人情報しか集められないのは当然といえば当然ではある。でも考えてみれば、それはOB・OG訪問という既存のシステムが抱える問題なのであって、学生にとっては訪問相手が母校の卒業生であるかどうかはあまり重要ではないのかもしれない。

訪問相手がたまたま人事の決定権を持っていて、いわゆる“コネ”が期待できるというのは極めて特殊なケースだと思うし、結局のところ、まずは会社の中の人と会って話しを聞くことこそが学生たちの目的ではないだろうか。

OB・OG訪問時に感じた不満が創業のきっかけ

Matcher代表取締役の西川晃平氏も、これらの問題を身を持って体感した学生の1人だった。就活生だった当時、西川氏は大手広告代理店への就職を志望していた。そこで西川氏はOB・OG訪問を行うためにキャリアセンターを訪れた。

西川氏がキャリアセンターで渡された紙の台帳をめくってみると、彼が志望する企業に勤めている先輩はたったの2人しかいなかった。仕方なくその2人に連絡をとってみたが、連絡先の情報が古いためか、結局彼らから連絡が返ってくることはなかったという。

この経験がきっかけで後にMatcherを創業した西川氏は、同サービスを通してこの2つの問題を解決しようとした。まず、WebサービスのMatcherは紙の台帳と比較して情報の新鮮度は高くなる。また、Matcherは特に出身校ごとに縛りを設けていないため、学生は自分の大学の出身者以外にもアプローチすることが可能だ。

ギブアンドテイクの仕組みを取り入れる

ただ、ここで1つ疑問が生まれる。Matcherに登録する社会人ユーザーのモチベーションとは何だろうか。

母校の後輩と面談する通常のOB・OG訪問の場合、社会人側のモチベーションは恐らく、自分の後輩だから面倒をみてあげたいという美徳と、彼らにちょっとだけ先輩風を吹かしたいという欲のどちらかだ(僕だったら後者)。でも、出身大学に縛りを設けていないMatcherではそのモチベーションが働くことはない。

そのため、Matcherでは社会人ユーザーがプロフィール欄に「就職相談にのるので、〇〇してくれませんか?」というコメントを載せることができる仕組みになっている。ギブアンドテイクの仕組みを取り入れて、社会人ユーザーのモチベーションを増やそうという試みだ。

そういったお願いには「インターンにチャレンジしませんか?」といった採用目的のものもあれば、「将来偉くなったらビール1杯ご馳走してくれませんか?」といったユニークなお願いもあるそうだ。

もちろん、社会人ユーザーのなかには人事部に所属していて、学生発掘の目的のためにMatcherを利用している人もいる。ただ、その割合は全体の30%ほどで、残りの70%はボランティア目的の登録だという。

また、社会人ユーザーを増やす試みは、このギブアンドテイクの仕組みだけではない。西川氏は“未来の社会人ユーザー”となり得る学生ユーザーの満足度を高めることが重要だという。

「現在、就職をした学生ユーザーがそのまま社会人ユーザーとしてサービスに残る率は20%ほど。学生ユーザー時のマッチング回数が高ければ高いほど、その“転換率”も高くなるという傾向がある」と西川氏は話す。当面はこの転換率を30%まで高めることが目標だという。

西川氏によれば、現在Matcherに登録する学生ユーザーは2万4000人で、一方の社会人ユーザー数は6000人だという。その6000人が所属する企業の合計数は2000社だ。

ダイレクト・リクルーティング機能でマネタイズ

MatcherはこうしたOB・OG訪問サービスを無料で開放する一方、企業向けの「スカウト機能」でマネタイズを図っている。これは、企業がMatcherに登録する学生ユーザーを直接スカウトできる機能で、利用料金は1面談あたり1万円〜だ。現時点での導入企業数は約100社で、新卒採用予定のITベンチャー企業がその大半を占めるという。

今回のラウンドで5300万円を調達したMatcherは今後、ユーザー体験向上のためのサービス開発、営業・運用サポート体制の拡充を行うほか、マネタイズの軸を増やすための新規事業および新機能の開発に注力していくという。

Matcherは2015年11月の創業。2017年1月には金額非公開の資金調達ラウンドを実施している

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TechCrunch Japan

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