「最新のアプリ? ほとんど使っていないよ(笑)」Product Hunt創業者が来日講演

今年もいよいよスタートアップ業界最大のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」が始まった。国内外のキーパーソンや注目のスタートアップが集結し、11月18日から2日間にわたってさまざまなテーマの講演やパネルディスカッションを繰り広げる。

有名どころではシリコンバレーのスタートアップ界隈で最も注目されている情報サイト「Product Hunt」の創業者、Ryan Hoover氏が来日中だ。Product Huntはテクノロジー関連プロダクトのためのソーシャルニュースサイトといった位置づけのサービスで、すでにY Combinator、Google Venturesなどから計700万ドルを調達した注目株だ。

TechCrunch Tokyo 2014のオープニングセッションでは、そんなHoover氏に「シリコンバレーで次に来るアプリ・サービスは?」というテーマで、元TechCrunch記者のSerkan Toto氏が切り込んだ。

一番のお気に入りは「Instacart」

まず気になるのは、Product Huntのようなサイトを運営するHoover氏が、日々どんなサービス・アプリを利用しているかである。すると同氏が一番に挙げたのが「Instacart」だった。

Instacartは食品をはじめとした日用品を当日配送してくれるサービスである。シリコンバレーの住まいには近所にスーパーマーケットがないため、こういったサービスが重宝するようだ。

「時間の節約にもなる。実際、年をとるにつれて、こういった便利なサービスが好きになってきた。配送にかかるプラスアルファのお金もそんなに問題ない。10代の頃だったら気にしたと思うけどね」(Hoover氏)

Toto氏も同じような用途で楽天市場を使っているという。「重い水とかは運びたくないからECで注文している。日本だと楽天がInstacartに近いかもしれないが、食品関係の即日配達はないかもしれない」と話す。

ちなみにHoover氏は当然のようにTwitterも利用しているが、お気に入りのクライアントアプリはデスクトップ版「Tweetdeck」だそうだ。

 

「常時50〜60サービスは見てるけど、ほとんど使ってない」

最近、驚愕したサービス、あるいはスタートアップはあるか? との質問にはあっさりと「ない」と答えた。「いろいろな製品を常時50〜60は見ている。トレンドとかインスピレーションを受けるが、とはいえ、ほとんど使っていないよ(笑)」とぶっちゃけた。

でも興味を持ったのは、Snapchatの新サービスである「Snapcash」だという。すぐに消えてしまう写真共有サービスとして知られるSnapchatが個人間の送金をサポートしたものだが、「非常に面白い」とHoover氏は評価した。

もう1つ、「Refresh」というアプリにも注目だという。1年半ほど前にリリースされたアプリだ。「Refreshはカレンダーと紐付いて、誰にいつ会うのかといった情報を取得し、その人のバックグランドを送ってくれる。これで(出会う際の)心の準備をしている」とその用途を紹介した。

似たようなGmailの拡張機能に「apportive」というものがあるとToto氏が補足。こちらはLinekedInから相手の情報をピックアップしてくるサービスのようだ。

シリコンバレーの「Next Big Thing」は何だろうか。Hoover氏ならきっと何かに気づいているのではないか?とToto氏が問いかけたが、「その答えを持っていたら、こんな仕事をしていない(笑)」とあっさりかわされた。

特殊な用途にフォーカスせよ

それでも見解として語ってくれたのは次のようなことだ。「クリエイティビティのあるスタートアップは人々の行動パターンを変えようとしている。それが一般人に理解してもらえるか、根付くかはすごく難しい。スナップチャットがいい例で、あのサービスはすでに確実な写真共有の方法が確立されていると理解した上で始まった。もともとあったユーザー行動を研究し、その中でも特殊なユースケースにフォーカスしたことで生まれた」

要は「“あれもこれも”はもうダメだ」ということ。「狙いを定めたユーザー行動の、特定のユースケースにフォーカスしていくのがとても大事だ」とHoover氏は主張した。そういった流れがいま起きている。

「いまアプリは“分散化”しつつある。大企業もスタートアップも特定のユースケース、あるいはエクスペリエンスにあわせて細かいアプリを複数出すようになった。Facebookも別ブランドで「SlingShot」などのアプリを提供している。Pathもメッセージに特化した「Path Talk」を出した。分散化がトレンドかもしれない」(Hoover氏)

Toto氏は日本の無料通話・メッセージアプリ「LINE」を例に挙げた。「LINEは無料通話とメッセージを提供するマザーアプリだけではなくて、ゲームアプリ、Eコマースアプリ、ニュースアプリなどを次々に公開している」と紹介すると、Hoover氏もLINEの動きは認識しており、「分散化」の一例とみなしていた。

 

日本の起業家にアドバイス「あまりクリエイティブになるな」

Toto氏からHoover氏に最後の質問。米国に進出したいという起業家がいたとして、何かアドバイスをもらえないだろうか?

それについては「自分も学んでいるところ。まず文化的な壁がある」と語った。「キャッチコピーなどをそのまま翻訳しても意味がない。それが我々が日本に出るときにも同じ壁にぶつかるだろう。とにかく文化を学ぶ必要があるということ。それはどこでも同じことだ」と非常に謙虚に語った。

さらに「あまりクリエイティブになるな」と釘を刺した。どういうことかというと、まずは「自分のアイデアが本当に受け入れられるのか」にフォーカスすべきだという。

「あなたのアイデアがどの程度の関心を集めるかをまずは計測して、徐々に拡大していくこと。いまやサービス開発の時間はどんどん短縮されている。まずは小さなプロダクトを作って、どういうユースケースに対応するのかを明確にすることだ」(Hoover氏)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。