「競合はセルカ棒」カップルのデートに同行撮影する「ラブグラフ」が口コミでじわり拡大

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「カップルのデート写真、撮ります」――昨年1月に個人の趣味で始まったカップルフォトサイト「Lovegraph(ラブグラフ)」が、10〜20代を中心にじわりと伸びている。カメラマンがカップルのデートに同行して撮影するサービス。プリクラや自撮りでは難しい、自然な表情が撮影できることが人気で、月間の撮影件数は100組以上、カップル写真を掲載するサイトは月間30万PVに上る。

友人カップルのデート写真投稿→「私達も撮ってほしい」

ラブグラフを立ち上げたのは、カメラマン志望だった現役大学生の駒下純兵さん。もともとは写真の練習を兼ねて友人カップルのデートに同行し、無料で撮影した作品をサイトに掲載していた。カップルがInstagramやTwitterに撮影されたデート写真を投稿すると、「私達も撮ってほしい」と口コミが拡散。撮影依頼が50件を超えると、一人では対応しきれなくなった。

大阪在住の駒下さんは当初、カップルから交通費だけをもらって、東京、山梨、福岡など全国に足を運んでいた。しかし、撮影依頼が増えるにつれ「遠方だと交通費がカップルの負担になる」と思い、現地にいる知り合いのカメラマンに撮影を依頼。その後も撮影依頼は順調に増え、今年2月に事業化に踏み切った。

現在はサイト経由で撮影依頼を受け、担当のカメラマンがカップルに返信。撮影場所を決め、デート中の自然な表情を撮影している。最も人気が高いのは、カメラマンが厳選した写真12枚をもらえるプランで、料金は撮影費が1万円、カメラマンに払う交通費が1500円。写真をイラストにしたり、動画を撮影するプランもある。

9割以上のカップルが写真掲載を承諾

サイト上には、掲載に承諾したカップルのデート写真が並ぶ。興味深いのは、9割以上のカップルが承諾していること。10代カップルがこぞってMixChannelにキス動画を投稿していることを考えると不思議ではないかもしれないが、見方を変えると、写真の満足度が高いから掲載を許可しているとも言えそうだ。最近では家族の写真も増え、毎日1組ペースで掲載している。

口コミで伸びるラブグラフに、アーティストも注目し始めた。中高生に人気のシンガーソングライター・MACOさんは、新曲のプロモーションでコラボを4月に展開。Twitterでハッシュタグ「#MACO_Lovegraph」とともに写真をツイートしたカップルの中から2組を選び、新曲をBGMにした動画をYouTubeに公開した。

6月18日には、Crystal Kayの3年ぶりとなるシングル「君がいたから」とコラボした動画を公開。家族愛をテーマにした同曲にあわせて、ラブグラフの映像スタッフが脚本を制作した。

カメラマンは全国各地で約120人が在籍する。その多くは週末限定で撮影するセミプロで、報酬は撮影費の50%。志望者には作品のポートフォリオを提出してもらい、面接を経て採用している。「毎月50人ほどの応募があって、採用者は5人程度」(駒下さん)となかなか厳しい審査があるようだ。6月には全国で写真教室を開く「PHaT PHOTO」と提携し、ラブグラフのカメラマン養成講座も始めた。

ラブグラフは駒下さんほか取締役が3名、エンジニア、デザイナー、インターンの計6名。いくつかのVCから投資の提案もあったが、当面は自己資金で運営していく。「撮影収入だけでなく、写真素材をレンタルする事業の需要も伸びています。ある程度のマネタイズはできているので、いまは投資を受けるよりも、シナジーのある企業と組んで事業を大きくしていきたいです」(駒下さん)。

自撮りカップルを見るたびに歯がゆさ

駒下純兵さん

駒下純兵さん

駒下さんは関西大学4年の現役大学生。ラブグラフを事業化する前はカメラマンを志望していて、ミスコンや美男美女大学生スナップサイト 「美学生図鑑」で撮影の腕を磨いていた。ラブグラフもその一環として始めたものだ。

カメラマンとしてのキャリアに未練はないのかと聞くと、駒下さんは「ミスコンのカメラマンをやっていて、ある程度は名前も知れたんですが達成感がなくて。もともとカメラ始めたのは、他人に喜んでもらいたかったから。僕が撮らなくてもラブグラフが大きくなれば喜んでもらえる」と話す。

出張撮影サービスとしては、ミクシィ子会社のノハナが家族の記念日を想定した有料プランを出していたり、スマートフォンからフォトウェディングを申し込む「ファマリー」などがある。カップルの出張撮影サービスではビッグプレイヤーがいないが、駒下さんは「競合はセルカ棒なんです」と言う。

「セルカ棒で自撮りしてるカップルを見るたびに、『うわー、絶対ラブグラフのほうがいいのに』って思います。僕らが作りたいのは、カップルがちゃんと写真を撮る文化。プリクラかセルカ棒でやっていることを、ラブグラフでやってほしいんです。」

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。