「顧客フィードバックマネジメント」のフライルが8100万円調達、ZUU最年少執行役員を経験した財部氏が創業

ソフトウェア開発企業向けに「顧客フィードバックマネジメント」SaaSを提供するフライルが、UB Venturesおよびエンジェル投資家8名からシードラウンドで合計8100万円を調達した。同社が提供するFlyle(フライル)は、Slack・メールなどに散らばる顧客要望やアイデアを半自動で集約することで、データドリブンかつ効率的なプロダクト開発を促進するためのツールだ。

散らばったフィードバックを半自動で集約

「昨今、企業と顧客の接点はますますデジタル化しています」。そう話すのは、フライルCEOの財部優一氏だ。「例えば、セールスが受け取ったフィードバックはSalesforce、カスタマーサクセスはZendesk、マーケティングはHubspot、その他はSlack、Gmail……など、プロダクト開発の重要な指針となりえるフィードバックはさまざまなツールに散らばってしまっています」。このような状況のなか、ソフトウェア開発の指揮を取るプロダクトマネージャーは、各ツールに点在するフィードバックを手作業でエクセル等にまとめなおし、分析を行うことが多い。

この方法の問題点は、プロダクトマネージャーの膨大な時間を消費することだ。また、手動で行うため「漏れ」が発生し、すべてのフィードバックをすくい上げることができず、顧客ニーズに沿わないプロダクトの開発にすすんでしまう危険性もある。「プロダクトマネージャーは優秀な人が多く、本来はもっと創造的な業務に多くの時間を使うべきです。彼らが労働集約的な『コピペをしてエクセルにまとめ直す作業』を行っている現状を変えたいと思いました」と、財部氏はフライル創業の想いを語る。

同社が提供するFlyleは、Slack・Zendesk・Gmail・スプレッドシートなど、多様なツールに散らばる顧客要望やアイデアを半自動で集約する。プロダクトマネージャーにとっては、これまで手作業で行っていた集約作業が不要になるだけでなく、Flyleを確認しさえすれば「どのツール」を経由して「何件」「どのような要望」が来ているのかが一目瞭然になる。さらに「どの会社(や顧客)・どの担当者からのフィードバックなのか」「どのような文脈のなかでの要望なのか」などの詳細情報まで、クリック1つで確認可能だ。財部氏は「必ずしも『顧客からの要望件数が多い=優先順位が高い』とはなりません。プロダクトマネージャーは、フィードバックの詳細や熱量も見極めたうえで意思決定を行う必要があります」という。

またFlyleは、バックログツールであるJira Softwareと連携させることで、機能開発の進捗ステータスを一元管理することも可能だ。つまり、ビジネスサイドの人間はFlyleを見ることで「フィードバック→機能アイデア→開発ステータス」まで一気通貫で把握できる。一方で開発チームにとっては、JiraからFlyleに飛ぶことで「開発の背景となったフォードバック」を容易に確認可能。これまでビジネスサイドと開発サイドの間で生まれがちだった「情報の壁」をFlyleが取り除いてくれる。

画像クレジット:フライル

新進気鋭のスタートアップ出身の3人が創業

フライルは、ZUUで最年少28歳の執行役員を経験した財部氏をはじめとして、ユーザベース出身の相羽輝氏、ビズリーチ(現ビジョナル)出身の荒井利晃氏という、いずれもスピード上場を果たしたスタートアップ出身の3人がチームを組み、2020年2月に創業。同年12月にFlyleのクローズドβをリリースし、業界・規模を問わず約30社からフィードバックを得ながら改善を進めてきた。2021年4月末からは有償で約10社が利用しており、6月1日から正式なリリースとなる。

今回のシード調達で注目したい点は、エンジェル投資家にZUU社長の富田和成氏、ユーザベースCo-CEOの佐久間衡氏、ビジョナル社長の南壮一郎氏といった、共同創業者3人の古巣の社長が名を連ねていることだ。ここからは、彼らが前職でパフォーマンスを発揮し、トップから十分な信頼を勝ち得る人材であったことが見て取れる。財部氏は「現在、日本で私たちと同じサービスを提供している競合他社はありません。だからこそ、導入社数の拡大よりもプロダクトの価値を上げることに集中して、日本のプロダクトマネージャーにとって『マストハブ』なツールを創りたい」と意気込みを語る。

米国ではUserVoiceCannyRoadmunkなど、SaaS企業向けにフィードバックマネジメントを行うサービスは徐々に勃興しつつある。日本ではフロンティアともいえるこの新たな市場を、若き3人の起業家がいかに切り開いていくのかに注目していきたい。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:フライル資金調達SaaS日本

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TechCrunch Japan

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