「鮮魚版Amazon」さらに網を広げる、八面六臂がリクルートなどから4.5億円調達

「鮮魚流通のAmazon」を標榜するスタートアップの八面六臂が17日、リクルートやYJキャピタル、DeNA、マネックス・ベンチャーズなどから総額4億5000万円の資金調達を実施した。八面六臂は鮮魚を扱う飲食店に専用アプリを組み込んだiPadを無償で貸与。飲食店は専用アプリを使うことで、八面六臂が全国各地の市場や漁場で買い付けた魚を取り寄せられる。調達した資金では営業やシステム開発の人員を強化するとともに築地の物流センターを拡大し、関東中心に導入店舗を増やす狙いだ。現在、導入店舗は東京や神奈川、埼玉を中心に1000店に上る。

通常、漁師から飲食店に鮮魚が届くまでには、産地市場、築地市場、納品業者など多くの業者が間に入る。八面六臂代表取締役の松田雅也氏によれば、こうした中間業者の人件費は「約50%が無駄なコスト」。おまけに、鮮魚流通のプロセス間では「いまだに9割以上が電話やFAXでやりとりされている」のだという。そこで八面六臂は、市場流通品に加えて全国各地の漁場から鮮魚を調達。iPad経由の発注に応じて、築地の自社物流センターで検品・梱包を行った上で飲食店に届けている。八面六臂は鮮魚の流通プロセスでいうと「納品業者」に位置していて、その市場規模は3兆円に上るのだという。

飲食店はアジ1本から、カツオやブリの半身や4分の1といった切り身まで、ニーズに応じて豊富な種類を小ロットで購入できるのが利点。漁師としては、市場を通さずに販売することで利益が増えるのがメリットだ。八面六臂は過去の販売データを分析して注文数を予測し、先行して鮮魚を調達することで仕入れの無駄を省いている。こうしたITを駆使した流通予測に加えて、営業担当者が毎月飲食店に足を運び、旬の魚や売れ筋情報に応じた鮮魚の組み合わせを提案したり、鮮魚のポスターやチラシ、POPといった販促物を提供している。

年内には、iPadで従来の商品情報に加えて、レシピや売れ筋情報、調理法などを料理人向けに配信するサービスを開始する。来年には物流基盤を整備し、米や酒、肉、野菜、果物といった食材発注プラットフォームになることも視野に入れている。さらにその先には、毎日の購買を通じて蓄積される与信データをもとに、飲食店の運転資金や料理人の出典資金を資金を提供する金融業にも参入する。「鮮魚流通のAmazon」を掲げる八面六臂だが、2017年にIPO、2020年に年商3000億円を目指すなど、まだまだ網を広げようとしているようだ。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。