「ASIA Hardware Battle 2019」の日本代表はセンサー内蔵衣類開発のXenoma

サムライインキュベートは9月11日、中国TechNodeと共同でハードウェアスタートアップを集めたピッチイベント「ASIA Hardware Battle 2019」の日本予選を開催した。

日本のほか、中国、韓国、シンガポールなどで同様の予選が実施され、日本からは1社が10月25日に中国・上海にて開催される決勝大会にファイナリストとして進出する。ちなみにTechNodeは、米国TechCrunchとライセンス契約を結んでいる中国のメディアで、TechCrunch記事の翻訳・配信を手がけているほか、米国TechCrunchと共同で「TC Hardware Battlefield at TC Shenzhen」を企画。今年は11月9〜12日に開催される。

審査の結果、オーディエンス賞はSe4、イノベーティブ賞はAC Biode(エーシーバイオード)、日本予選優勝はXenoma(ゼノマ)が獲得した。

ASTINA

洗濯物を全自動で畳んで分類・収納するタンス「INDONE」(インダン)を開発。本体に設置された衣類カゴに洗濯・乾燥させた衣類を入れるだけOK。衣類は1枚1枚折り畳まれて、複数用意された引き出しに分類されていく。独自の画像処理技術と汎用のロボットアームを組み合わせることコストを圧縮し、30〜50万円程度での販売を計画している。業務用にタオルのみの折り畳みに特化したマシンも開発しているとのこと。さらに来年以降、マンションのビルトイン家具としても販売予定だ。同社ではINDONEのほか、短い時間で眠りに着くことができるベッド、疲れがものすごく取れるバスルーム商品、誰でも簡単においしい料理が作れるキッチン製品といったコンセプトの商品開発を進めている。

PacPort

スマートフォンと連動するIoT宅配ボックスを開発。宅配業者が発行する追跡番号を利用することで、ドライバーは伝票に記載されたバーコードと追跡番号をスキャンすれば宅配ボックスを解錠して荷物を中に置ける。ボックス内部にはカメラが設置されており、確実に荷物が投函されたかどうかもわかる。荷物が投函されると期限付きのQRコードが発行されるので、受取人はそのコードを宅配ボックス本体にかざせば解錠可能だ。宅配ボックスは、単三形電池6本を使用し、Wi-FIでネット接続する。9月12日からMakuakeにて、戸建て住宅向け製品のクラウドファンディングの実施が決まっている。そのほか、マンションなどの集合住宅向け、シェアオフィス向けに複数のユーザーが利用できる仕組みも検討している。

クォンタムオペレーション

電極式の心電・血圧計測ヘルスバンドを開発。同社開発のヘルスバンドには、同社独自の省電力かつ強力な近赤外線LED発光の回路技術と、ノイズを除去しつつ特徴点を抽出する技術が利用されているのが特徴とのこと。赤外線やレーザーなどでバイタルデータを計測する競合製品はあるが、同社独自の強力な近赤外線LED発光とそれを解析する技術が他社に比べて優れているとのこと。現在はこのヘルスバンドをベースに、糖尿病患者向けの非侵襲小型連続血糖値センサーを開発中。非侵襲、つまり針などを刺さずに血糖値を計測することが可能になる。

N-Sports tracking Lab

ヨットや自転車、ウィンドサーフィンなど広域スポーツが抱える、観戦しにくい、コーチングしにくいという共通の課題を解決することを目指し、独自のアルゴリズムを搭載したレース中継用やトレーニング用のエッジデバイスの開発を進めている。感覚に頼っていたコーチングを数値化できるほか、各選手にGPSを持たせて観戦者が選手の位置を把握できるようにするといった製品を計画している。現在は、走行データをリアルタイムにチェックできる通信デバイスを開発中だ。

ZMP

自律移動を行う高さ1mほどの宅配ロボット「CarriRO Deli」を開発。利用者がスマートフォンから商品を注文すると、コンビニエンスストアなどの店舗スタッフがCarriRO Deliに商品に積み込み、利用者のところまでCarriRO Deliが自律走行して宅配してくれる。利用者はQRコードをかざすだけでボックスを解錠可能だ。一度の充電で8時間程度の走行が可能。走行ルートが人に塞がれた場合、人を回避するのではなく音声で人に回避を促す。そのほか、指定した目的地まで自律移動する「Robocar Walk」という移動補助ロボットも手がけている。こちらは、空港やショッピングセンターなどでの利用が想定されており、ロボットに備え付けられたタブレット端末で行き先を指定する。

HoloAsh

注意欠陥・多動性障害(ADHD、Attention-deficit hyperactivity disorder)を持つ人々を支援するハードウェアを開発。ホログラフィーで表示されたキャラクターとの会話などを通じて精神の安定を図る「モチベーション・インタビューイング」という会話の手法を採っており、質問を繰り返しながらポジティブなマインドを醸成する。

AC Biode

独立型交流(AC)電池を開発。現在使われている電池はすべて直流タイプだが、大容量化や安全性が完全には解決できていないという問題がある。同社が開発した特殊な電気回路により、交流電池の開発が可能になったという。この交流電池は、プラスとマイナスの2極の間に中間電極(Biode)を設けることで安全性を高められるうえ、直流タイプに比べて容量が30%コンパクトになり、ライフサイクルも2倍になるという。さらに既存の材料や製造工程、機器を流用できるのが特徴だ。2020年後半には、ドローンや電気自動車に向けたライセンス供与を開始予定とのこと。

Xenoma

スマートアパレルテクノロジー「e-skin」を開発。e-skinを着用することで、常時の全身計測(ライブモーションキャプチャー)が可能になり、それらのデータを集約したビッグデータを活用したサービスの開発を目指す。日常利用できる素材やデザインを採用しているのも特徴だ。高齢者向けの在宅医療サービスも計画されており、e-skinを着用することで室内の移動や転倒(つまづき、滑り)、睡眠状態などを把握できる。睡眠状態を判断してエアコンの制御なども可能になる予定だ。来春からアパレル会社と組んで、高齢者だけでなく成人向けのパジャマとして販売予定とのこと。センサーは基本骨格の動きを検知する。

エスイーフォー

VRシミュレーターを使用し、通常では実現が難しい遠距離、もしくは通信遅延が発生するような環境での操作を可能にするロボット遠隔操作技術を開発。

MAMORIO

忘れ物防止タグを開発。Bluetooth Low Energyを利用して専用アプリを介してスマートフォンとつながっており、タグとスマートフォンが一定距離から離れると通知を受けることができる。このタグを装着した鍵やカバンなどを紛失した場合、MAMORIOアプリをインストールしているスマートフォンを持つほかユーザーが、紛失した場所の近くを通るとタグと通信してその場所を特定できるようになる。音で知らせる機能はMAMORIOには搭載されていないが、室内などの狭い場所で紛失した場合はAR機能を使ってスマートフォンの内蔵カメラでなくしたものを探し出せる。そのほかタグの場所を常時監視できるIoTデバイスとしてMAMORIO Spotを開発し、鉄道会社の忘れ物預かり所などに設置することで忘れ物、落とし物の早期発見を支援している。

Mira Robotics


ビル内に設置したロボットを専門のオペレーターが遠隔操作することで清掃作業を代行するサービスを提供。ロボットは、1.5kg程度のモノが掴める2本指の2本のアームを搭載しており、これをオペレーターがリモートコントロールすることで、自律ロボットでは操作やプログラミングが難しい拭き掃除などを実現。遠隔操作なので、ビルのフロア移動にエレベーターに乗ることも可能。ロボットは最大高さ180cmまでの昇降機能を内蔵するため大型だが、今後は3分の2ほどのサイズにコンパクトにすることを考えているという。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。